44 / 53
いやらし天狗 ~穂波編~
凶弾
「なるほど、そんな事が……おそらく徳守のしわざで間違いないでしょう」
目元へシワをよせた桃井は、確認した写真を封筒へおさめた。筋蔵の名を聞いて、穂波は胃のあたりが冷えて気持ち悪くなった。
富岡がこちらを見たあと視線をもどす。封筒の中身が気になるのだろうけど、彼は触れなかった。人には見せられない姿を映された写真、忖度されないのは正直ありがたい。
「で? 宮司の爺さんは協力すると思うか? 」
「巴那河さんには、私から話しましょう。徳守の家に写真のネガか元データがあるはずです。潜入するにしても警備がきびしい……少々時間がかかりますね」
相手の家へ押し入ってすぐに解決とはいかないようだ。本人も言っていたが権力をもっているので対処がむずかしい、それでも巴那河たちの協力を得られそうで少しだけ安心した。
「桃井さんのような方が、巴那河さんを信頼されてるのは何故……ですか? 」
穂波は前々から気になっていた疑問をぶつけた。桃井は困ったような笑顔を浮かべて、生い立ちを語りはじめる。
この村で生まれ育った桃井はニエに選ばれ、マエ様の『御手つき』になった。現在よりも閉鎖的だった村を嫌い、彼は村を出た。その時に助けてもらったのが富岡の祖父だという。
村を出た後は海外へわたり、様々な職を経て向こうで家族を持った。車のレースドライバーをしていた時期もあったが、妻が他界して望郷の思いから村へ戻ってきた。
むかし住んでいた生家は見る影もなく、老いた自分を知る者もない。そんな桃井を助けて世話をやいたのが巴那河だった。
「小さい頃に1度会ったきりの私を覚えていたのです。彼は天狗様に対する信仰心が厚く、時として異様に映るかもしれない。しかしそれ以上に、この村と村に住む者達を守ろうとする使命を持ってます」
「けっ、詭弁だな」
富岡は吐き棄てるように唸ったけれど、穂波はなんとなく分かる気がした。皆が強く1人で生きられるわけでは無い、きっと桃井の拠りどころは巴那河のいる此の村なのだろう。
オォンッ!
話し合いの空気を破って、玄関先でトラが吠えた。様子を見に行った富岡が険しい顔つきで帰ってくる。
「犬みたいな鼻の奴らだ、もう嗅ぎつけやがった」
「山川さんへ封書を出してから、ずっと動向を探っていたのでしょう。よりによって巴那河さんのいない時に……」
ピリピリした緊張がはしる。玄関から呼び鈴の音が聞こえた。
「彼らは強引な手段にでるかもしれません。私が時間かせぎをします」
宿舎へ押しいり、穂波を見つけしだい拉致する可能性があった。表へ行こうとする富岡を制止して、桃井は2人を宿舎の地下階段へ誘導する。
長い廊下をわたり、見覚えのある地下室へ出た。格子状の扉をくぐった時、穂波は記憶がよみがえりゾクリと身をふるわせる。桃井はかまわず奥の倉庫へ進み、棚を動かして床板をはずした。
そこには暗い穴が開いていた。
「この地下壕は鼻高山の裏側へ通じています、出たら富岡さんの家へ。犬や車はほとぼりが冷めてから迎えに来てください」
筋蔵の手に落ちないように穂波を逃がすのが先決だと、桃井は富岡へ伝えた。靴を履き、暗い穴へ下りる。人ひとりが身を屈めてやっと通れる洞穴を無言で歩いていたら、苔むした岩場があらわれ地上へつづく出口が見えた。
「すべりやすい、気ぃつけろ」
富岡が大きい掌を差しだす。握ると強い力で引き上げられて山の斜面へ出た。山中をしばらく歩けば林道があったが、黒いスーツ姿の男たちが待ち構えていた。引き返そうとしたものの発見されてしまった。
「コイツら、徳守の手下か? 」
舌打ちした富岡が庇うように前へ立つ。黒服たちは囲んだ輪を縮めて穂波を追いつめる。林道へ1台の黒い車が停まり、見覚えのある男が降りた。
「穂波くん、私の所へ1番に会いに来てくれないなんて悲しいなぁ。今度は従順になるよう、しっかり教育してあげるからねぇ」
ダブルスーツを着た肩幅の広い男がニンマリした笑顔をうかべ、戦慄した穂波は恐怖で動けなくなった。すかさず横から跳びかかった男を富岡が蹴とばし、黒服は斜面をゴロゴロ転がっていった。
「相手がイヤがってるの、分かんねぇのか? 」
「なんだね君は? 汚らしい青二才がいっぱしにボディガード気どりかね? 」
白い歯をみせた筋蔵がこちらを向き、笑顔なのに笑っていない瞳の奥が見えた。ざらりとした舌や丸い粒の感触を思い出して穂波は身ぶるいする。
膠着状態で睨みあっていると、車から降りて走ってきた黒服が細長いケースを筋蔵へ渡す。
「てめえっ、それは!? 」
「おやおや君の物かね? 私も趣味でハンターをしていてね、コレの扱いは慣れてるのだよ。あぁ~そうだ、コレが暴発したら君も大変なことになるねぇ」
細長いケースから猟銃が取り出され、弾が装填される。ニヤニヤ笑った筋蔵は銃をかまえた。人へ向けることを何とも思ってもいない様子で、銃口は富岡へ向けられた。
「さあ穂波くん、こっちへ来たまえ」
やや高圧的な口調で筋蔵が命令する。
富岡を犠牲にするわけにいかない、最後に会えただけでも良かった。体の震えを抑えながら穂波は1歩、1歩と足を踏みだす。
「穂波、イヤなら行くんじゃねえ」
手を掴まれて立ち止まった。
「……でも……」
「行くな」
握った手のひらの熱が昨晩の名残をつたえ、視線が交差して見つめあう。その様子にイラついたのか、筋蔵の口調が荒ぶる。
「そんな青二才より私の方が天国を見せてあげられるよ。穂波くん、あの写真をご家族さんが見たらどう思うかな!? 」
「ご執心だな。だいたい『御手つき』は、お前たちにとって天狗さまのものじゃないのかよ? 」
「天狗がなんだというのだ! 村に貢献してる私の方が、天狗より偉いに決まっているだろう! 邪魔な若造め!! 」
引き金へ指が掛かった瞬間。
グルル、グァウ!!
大きな犬が跳びかかり、腹部へ凶弾が命中した。大きな犬――トラの体は吹っとび、地面へ横たわった。
「トラ!? 」
怒りの形相へ変化した富岡が地面を蹴った。筋蔵は頭を狙って再度引き金を引く。銃弾は肩を掠めて衣服を切り裂いたが、尋常ならざる動体視力で避けた富岡は、目にも留まらぬ右ストレートを顔面へ炸裂させた。
筋蔵の顔は拉げ、欠けた歯が飛びちり白目を剥いて倒れた。
「テメエっ、ぶっ殺してやる!! 」
「ダメっ、剛っダメだっ! 」
猟銃をとり戻した富岡は、銃口をひしゃげた顔面へ向ける。こんな男のために彼を殺人犯にするわけにはいかない、穂波は銃を持った腕へ縋った。
「クソがっ、俺が殺す前にさっさとコイツを連れてけ! 」
冷静になった男は銃を下ろした。命令する者がいなくなって烏合の衆と化した黒服たちは、倒れた主人を引きずって車へ乗せる。
「わらひをこんな目に合わせるなんてぇ、覚えておへよ! 貴様ら後悔しゅるがいい!! 」
去りぎわに意識が戻った筋蔵は、血まみれの顔で叫んでいた。
目元へシワをよせた桃井は、確認した写真を封筒へおさめた。筋蔵の名を聞いて、穂波は胃のあたりが冷えて気持ち悪くなった。
富岡がこちらを見たあと視線をもどす。封筒の中身が気になるのだろうけど、彼は触れなかった。人には見せられない姿を映された写真、忖度されないのは正直ありがたい。
「で? 宮司の爺さんは協力すると思うか? 」
「巴那河さんには、私から話しましょう。徳守の家に写真のネガか元データがあるはずです。潜入するにしても警備がきびしい……少々時間がかかりますね」
相手の家へ押し入ってすぐに解決とはいかないようだ。本人も言っていたが権力をもっているので対処がむずかしい、それでも巴那河たちの協力を得られそうで少しだけ安心した。
「桃井さんのような方が、巴那河さんを信頼されてるのは何故……ですか? 」
穂波は前々から気になっていた疑問をぶつけた。桃井は困ったような笑顔を浮かべて、生い立ちを語りはじめる。
この村で生まれ育った桃井はニエに選ばれ、マエ様の『御手つき』になった。現在よりも閉鎖的だった村を嫌い、彼は村を出た。その時に助けてもらったのが富岡の祖父だという。
村を出た後は海外へわたり、様々な職を経て向こうで家族を持った。車のレースドライバーをしていた時期もあったが、妻が他界して望郷の思いから村へ戻ってきた。
むかし住んでいた生家は見る影もなく、老いた自分を知る者もない。そんな桃井を助けて世話をやいたのが巴那河だった。
「小さい頃に1度会ったきりの私を覚えていたのです。彼は天狗様に対する信仰心が厚く、時として異様に映るかもしれない。しかしそれ以上に、この村と村に住む者達を守ろうとする使命を持ってます」
「けっ、詭弁だな」
富岡は吐き棄てるように唸ったけれど、穂波はなんとなく分かる気がした。皆が強く1人で生きられるわけでは無い、きっと桃井の拠りどころは巴那河のいる此の村なのだろう。
オォンッ!
話し合いの空気を破って、玄関先でトラが吠えた。様子を見に行った富岡が険しい顔つきで帰ってくる。
「犬みたいな鼻の奴らだ、もう嗅ぎつけやがった」
「山川さんへ封書を出してから、ずっと動向を探っていたのでしょう。よりによって巴那河さんのいない時に……」
ピリピリした緊張がはしる。玄関から呼び鈴の音が聞こえた。
「彼らは強引な手段にでるかもしれません。私が時間かせぎをします」
宿舎へ押しいり、穂波を見つけしだい拉致する可能性があった。表へ行こうとする富岡を制止して、桃井は2人を宿舎の地下階段へ誘導する。
長い廊下をわたり、見覚えのある地下室へ出た。格子状の扉をくぐった時、穂波は記憶がよみがえりゾクリと身をふるわせる。桃井はかまわず奥の倉庫へ進み、棚を動かして床板をはずした。
そこには暗い穴が開いていた。
「この地下壕は鼻高山の裏側へ通じています、出たら富岡さんの家へ。犬や車はほとぼりが冷めてから迎えに来てください」
筋蔵の手に落ちないように穂波を逃がすのが先決だと、桃井は富岡へ伝えた。靴を履き、暗い穴へ下りる。人ひとりが身を屈めてやっと通れる洞穴を無言で歩いていたら、苔むした岩場があらわれ地上へつづく出口が見えた。
「すべりやすい、気ぃつけろ」
富岡が大きい掌を差しだす。握ると強い力で引き上げられて山の斜面へ出た。山中をしばらく歩けば林道があったが、黒いスーツ姿の男たちが待ち構えていた。引き返そうとしたものの発見されてしまった。
「コイツら、徳守の手下か? 」
舌打ちした富岡が庇うように前へ立つ。黒服たちは囲んだ輪を縮めて穂波を追いつめる。林道へ1台の黒い車が停まり、見覚えのある男が降りた。
「穂波くん、私の所へ1番に会いに来てくれないなんて悲しいなぁ。今度は従順になるよう、しっかり教育してあげるからねぇ」
ダブルスーツを着た肩幅の広い男がニンマリした笑顔をうかべ、戦慄した穂波は恐怖で動けなくなった。すかさず横から跳びかかった男を富岡が蹴とばし、黒服は斜面をゴロゴロ転がっていった。
「相手がイヤがってるの、分かんねぇのか? 」
「なんだね君は? 汚らしい青二才がいっぱしにボディガード気どりかね? 」
白い歯をみせた筋蔵がこちらを向き、笑顔なのに笑っていない瞳の奥が見えた。ざらりとした舌や丸い粒の感触を思い出して穂波は身ぶるいする。
膠着状態で睨みあっていると、車から降りて走ってきた黒服が細長いケースを筋蔵へ渡す。
「てめえっ、それは!? 」
「おやおや君の物かね? 私も趣味でハンターをしていてね、コレの扱いは慣れてるのだよ。あぁ~そうだ、コレが暴発したら君も大変なことになるねぇ」
細長いケースから猟銃が取り出され、弾が装填される。ニヤニヤ笑った筋蔵は銃をかまえた。人へ向けることを何とも思ってもいない様子で、銃口は富岡へ向けられた。
「さあ穂波くん、こっちへ来たまえ」
やや高圧的な口調で筋蔵が命令する。
富岡を犠牲にするわけにいかない、最後に会えただけでも良かった。体の震えを抑えながら穂波は1歩、1歩と足を踏みだす。
「穂波、イヤなら行くんじゃねえ」
手を掴まれて立ち止まった。
「……でも……」
「行くな」
握った手のひらの熱が昨晩の名残をつたえ、視線が交差して見つめあう。その様子にイラついたのか、筋蔵の口調が荒ぶる。
「そんな青二才より私の方が天国を見せてあげられるよ。穂波くん、あの写真をご家族さんが見たらどう思うかな!? 」
「ご執心だな。だいたい『御手つき』は、お前たちにとって天狗さまのものじゃないのかよ? 」
「天狗がなんだというのだ! 村に貢献してる私の方が、天狗より偉いに決まっているだろう! 邪魔な若造め!! 」
引き金へ指が掛かった瞬間。
グルル、グァウ!!
大きな犬が跳びかかり、腹部へ凶弾が命中した。大きな犬――トラの体は吹っとび、地面へ横たわった。
「トラ!? 」
怒りの形相へ変化した富岡が地面を蹴った。筋蔵は頭を狙って再度引き金を引く。銃弾は肩を掠めて衣服を切り裂いたが、尋常ならざる動体視力で避けた富岡は、目にも留まらぬ右ストレートを顔面へ炸裂させた。
筋蔵の顔は拉げ、欠けた歯が飛びちり白目を剥いて倒れた。
「テメエっ、ぶっ殺してやる!! 」
「ダメっ、剛っダメだっ! 」
猟銃をとり戻した富岡は、銃口をひしゃげた顔面へ向ける。こんな男のために彼を殺人犯にするわけにはいかない、穂波は銃を持った腕へ縋った。
「クソがっ、俺が殺す前にさっさとコイツを連れてけ! 」
冷静になった男は銃を下ろした。命令する者がいなくなって烏合の衆と化した黒服たちは、倒れた主人を引きずって車へ乗せる。
「わらひをこんな目に合わせるなんてぇ、覚えておへよ! 貴様ら後悔しゅるがいい!! 」
去りぎわに意識が戻った筋蔵は、血まみれの顔で叫んでいた。
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
世間に秘された名門男子校・平坂学園体育科
空手の名選手であった高尾雄一は、新任教師として赴任する
高潔な人格と鋼のように鍛えられた肉体
それは、学園にとって最高の生贄の候補に他ならなかった
至高の筋肉を持つ、精神を削られ意志をなくした青年を太古の神に捧げるため、“水”、“風”、“土”の信奉者達が暗躍する
意志をなくし筋肉の操り人形と化した“デク”
消える教師
山奥の男子校で繰り広げられるダークファンタジー
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。