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1章 先輩はメイド様
メイドさんとお出かけデート②
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先輩に促されるままに私は、ショッピングモールの衣服売り場に足を運んでいた。
そこからレディーズコーナーへと移動して、先輩と別れて探索することにした。先輩は一直線に水着コーナーに向かっていったが嫌な予感しかしない。とりあえず私は目についた服のところで足を止めた。
「うわぁ。けっこう新しい服出てるんだ」
季節は夏に入った直後なのだが、まだまだ肌寒い日々が続いている。とはいえお店側はしっかりと夏物の服を取り入れて棚にはきれいに陳列されていた。
「ふむふむ、かっこいい女性のクールビズ特集かぁ。確かになかなかいいなぁ。けっこう涼しそうだし……」
置かれている服はすべて夏物。クールビスを謳っている商品ばかりだ。来てみたい気持ちはあるけど、着こなすのはなかなかに厳しそう。
特集の写真のプレートには、モデルさんが上下の女性用ビジネススーツを来ており、『まだまだ新生活の準備はこれから』と見出しがある。
「これってこんなきれいでかっこいい人が着るから似合うからなぁ。私じゃちょっとなぁ。あ、でも先輩ならこれって」
そういって陳列棚に立ちながら水瀬先輩のビジネススーツを想像してしまう。白のシャツから黒のジャケットを身につけて、同じく黒のズボンを着ている。スカートじゃないのが味噌だ。そしてメガネを付けながらこちらを見つめてくる。
「ビジネス姿の、せ、先輩かっこいいなぁ❤」
先輩のそんな姿を妄想し、立ち尽くす私。。周りからは確実に変な目で見られているが先輩の美しい姿の妄想に浸る私には些細なことだ。
「なにがかっこいいのですか?」
「ひゃあ!?」
その時、ぽんと方に手が置かれる感触と先輩の声が聞こえた。当然、驚いて思い切り声を上げてしまう。
「せ、先輩。いきなり後ろからはやめてくださいよ」
「それはそれは失礼しました。ふふ。なにかビジネススーツがどうとか聞こえたので」
「い、いやなんでもないです!!? 私が社会人になったらあんなかっこいいスーツは着れないなぁなんて、はは」
まず後ろからこっそり来たのは絶対意地悪なのだと察したが、それでも先輩の妄想にふけっていたなんて知られたら恥ずかしい。下手くそ芝居でなんとかごまかそうとする。
「いえ、お嬢様に似合わない服などございません。きっとすぐに着こなされると思います。私卒倒してしまうかもしれません」
「ちょ、先輩」
そんな事を言ったら先輩は両手を掴んで私に迫ってくる。顔がすごく必死だ。しかもいつもながら近すぎる。きれいすぎるんですその顔が。私の気持ちを考えてください。
ドキドキしすぎて視線を思わずそらす。すると先輩が持っている小さな店のかごにいくつか服が入っていた。その視線に気がつくと、先輩はその服を私に見せる。
「あぁ、これですか。ふふ、私が見つけた自信作です」
「じ、自信作!?」
先輩は嬉しそうな顔でその服を広げた。いや、衣服ではない。私は思い出したのだ。先輩がはじめに向かっていった場所はどこだったか?
そう水着コーナーだ。先輩の両手にはなんと布がうすそうな黒色の水着が握られていた。
「あ、あの先輩。それは……?」
一応質問する。しかし先輩はキョトンとした顔で至極当然のように答える。
「お嬢様用の水着ですよ」
「わ、私のですか?」
「はい。私がお嬢様以外の服を買うメリット、いえ失礼義務はありませんから」
「いまメリットっていいましたよね。嫌ですよ、はずかしい」
「えっ」
私が着ないと言った瞬間、まるで世界が終わったかのような表情を見せて、手元からかごを落としていた。
「ちょ、先輩!?」
そしてそのまましゃがみこんでしまい、頭を下げて落ち込んでしかも泣いてしまった。
「も、申し訳ありません。こんな情けない姿をお見せして。いえ、私が浮かれていただけでお嬢様が嫌がるとか、もろもろの事情を考えていなかっただけですので。でもなぜか涙が出てしまって」
「せ、先輩!?」
涙を隠すように両手を抑えてうずくまってしまう。なんかすっごく子供っぽく感じてしまう。
なんかメイドになってからの先輩を見てから、学園で見る凛として美しい先輩像とのギャップが激しすぎて戸惑ってしまう。しかし不思議と嫌いにはなれない。いやむしろ先輩のあらゆる一面が見えてちょっとうれしくもある。
とはいえこのまま放置は無理だ。私は覚悟を決めた。
「わ、わかりました先輩。私、水着着ますから」
「ほ、本当ですか?」
「は、はい。着ますから」
そういった瞬間、先程の悲しげな表情が一気に明るいものへと変わった。
「あ、ありがとうございます!!!」
そうするとなんと先輩が私に抱きついてきたのである。
「う、うぇ、水瀬先輩!?」
やっぱり先輩の唐突な行動には戸惑ってばかり。先輩はスキンシップ激しすぎます。そんな気持ちなどわからない先輩はしばらく私にべったりだった。
★★★★★★★★★★★
「あ、あの先輩。なんで試着室に入ってきてるんですか?」
「それはお嬢様のメイドですから」
「り、理由になってませんよ」!?」
数分後、先輩の持ってきていた服、というか水着を試着室で着替えていた。しかしながらその狭い空間にいるのは私だけではなく、なんと先輩も入ってきていたのである。
「理由は十分です。さきほど不甲斐ない姿をお見せしまったので、ここはメイドしてお嬢様に尽くさなければ」
すっかり調子を取り戻した先輩は私の姿をうっとりと見つめながら背中に立っている。やっぱり先輩にはかなわないです。
「やっぱりお嬢様の肌はきれいですね。ぷにぷにで、きれいで」
「はぅ」
先輩は水着の紐を丁寧に縛ってくれているのだが、そこかしこに肌をなぜたりして頬を赤らめさせている。
「せ、先輩。そんなに触らなくても…」
「触れなくては水着が着れませんよ」
微笑みながら、息を当てたり、わざとらしく肌に先輩は触れてくる。先輩と直に触れ合えるので嬉しくはあるのだが。
でも、それでもやはり私にもプライドはある。さっきまであんなに泣いてたのに、態度が変わりすぎだ。しかもスキンシップもやりすぎだ。いや、もっとやってほしいけど、今回はそれはおいておく。
「ではお嬢様、次は下の方を……」
そう言って先輩が言った来た瞬間だ。私はここいらでガツンと意見するために先輩の手を取った。
「あ、あの先輩!!」
「えぇ!?」
「あぁ!!?」
私が急に振り返ったのに驚いたのか、先輩は思わず後ろに飛び上がってしまう。そして私も先輩がいきなり動いたことにより、先輩のメイド服を踏んでしまった。そのせいで私達二人はバランスを崩して試着室内で転んでしまった。
「あいたた」
「お、お嬢様、大丈夫ですか?」
「は、はいなんとか」
派手に転んだせいで、足が痛い。大変なことをしてしまった。先輩の声も聞こえる。私は痛さをこらえながら、ぱっと目を見開いた。
すると
「えぇ!?」
「あぁ!?」
なんと転んだせいで、先輩は仰向けの体勢に、そして私は先輩に覆いかぶさるようになっていた。顔もすごく近くて、思わず口づけができてしまうほどに。
「お、お嬢様、あの、その」
私の緊張は高まり、心臓もバクバク音をたててるのがわかる。先輩もまんざらではない表情をしている気がするし。
いままでの行動からしてもしかして先輩って私のことを好きなのかな。
というかそうでなくてはおかしい行動ばかりである。私の勘違いじゃないよね。揺れ動く感情。そうして私は決意した。
「せ、先輩」
「はい、なんでしょう!?」
ばん!!!!!!!
私は床に手を叩きつけた。音が結構響いたので、先輩は震えるようにびくつく。これはちょっとした仕返しが出来るかも。そんな思いも湧いてきて、手をそのまま先輩の頬にあてる。そうした後に私は先輩に口を近づける。
「お、お嬢様……」
先輩も期待してるのが分かる。でも意地悪したくもある。私は少しほくそ笑むと、口に顔を近づける振りをして耳元まで持っていった。そして先輩がしているようにささやき声で話しかけた。
「試着室で暴れたら危ないですよ。水瀬先輩❤️」
「は、はい。お嬢様……」
先輩の顔はいつも以上に顔がとろけて、そして恥ずかしがっていた。
そこからレディーズコーナーへと移動して、先輩と別れて探索することにした。先輩は一直線に水着コーナーに向かっていったが嫌な予感しかしない。とりあえず私は目についた服のところで足を止めた。
「うわぁ。けっこう新しい服出てるんだ」
季節は夏に入った直後なのだが、まだまだ肌寒い日々が続いている。とはいえお店側はしっかりと夏物の服を取り入れて棚にはきれいに陳列されていた。
「ふむふむ、かっこいい女性のクールビズ特集かぁ。確かになかなかいいなぁ。けっこう涼しそうだし……」
置かれている服はすべて夏物。クールビスを謳っている商品ばかりだ。来てみたい気持ちはあるけど、着こなすのはなかなかに厳しそう。
特集の写真のプレートには、モデルさんが上下の女性用ビジネススーツを来ており、『まだまだ新生活の準備はこれから』と見出しがある。
「これってこんなきれいでかっこいい人が着るから似合うからなぁ。私じゃちょっとなぁ。あ、でも先輩ならこれって」
そういって陳列棚に立ちながら水瀬先輩のビジネススーツを想像してしまう。白のシャツから黒のジャケットを身につけて、同じく黒のズボンを着ている。スカートじゃないのが味噌だ。そしてメガネを付けながらこちらを見つめてくる。
「ビジネス姿の、せ、先輩かっこいいなぁ❤」
先輩のそんな姿を妄想し、立ち尽くす私。。周りからは確実に変な目で見られているが先輩の美しい姿の妄想に浸る私には些細なことだ。
「なにがかっこいいのですか?」
「ひゃあ!?」
その時、ぽんと方に手が置かれる感触と先輩の声が聞こえた。当然、驚いて思い切り声を上げてしまう。
「せ、先輩。いきなり後ろからはやめてくださいよ」
「それはそれは失礼しました。ふふ。なにかビジネススーツがどうとか聞こえたので」
「い、いやなんでもないです!!? 私が社会人になったらあんなかっこいいスーツは着れないなぁなんて、はは」
まず後ろからこっそり来たのは絶対意地悪なのだと察したが、それでも先輩の妄想にふけっていたなんて知られたら恥ずかしい。下手くそ芝居でなんとかごまかそうとする。
「いえ、お嬢様に似合わない服などございません。きっとすぐに着こなされると思います。私卒倒してしまうかもしれません」
「ちょ、先輩」
そんな事を言ったら先輩は両手を掴んで私に迫ってくる。顔がすごく必死だ。しかもいつもながら近すぎる。きれいすぎるんですその顔が。私の気持ちを考えてください。
ドキドキしすぎて視線を思わずそらす。すると先輩が持っている小さな店のかごにいくつか服が入っていた。その視線に気がつくと、先輩はその服を私に見せる。
「あぁ、これですか。ふふ、私が見つけた自信作です」
「じ、自信作!?」
先輩は嬉しそうな顔でその服を広げた。いや、衣服ではない。私は思い出したのだ。先輩がはじめに向かっていった場所はどこだったか?
そう水着コーナーだ。先輩の両手にはなんと布がうすそうな黒色の水着が握られていた。
「あ、あの先輩。それは……?」
一応質問する。しかし先輩はキョトンとした顔で至極当然のように答える。
「お嬢様用の水着ですよ」
「わ、私のですか?」
「はい。私がお嬢様以外の服を買うメリット、いえ失礼義務はありませんから」
「いまメリットっていいましたよね。嫌ですよ、はずかしい」
「えっ」
私が着ないと言った瞬間、まるで世界が終わったかのような表情を見せて、手元からかごを落としていた。
「ちょ、先輩!?」
そしてそのまましゃがみこんでしまい、頭を下げて落ち込んでしかも泣いてしまった。
「も、申し訳ありません。こんな情けない姿をお見せして。いえ、私が浮かれていただけでお嬢様が嫌がるとか、もろもろの事情を考えていなかっただけですので。でもなぜか涙が出てしまって」
「せ、先輩!?」
涙を隠すように両手を抑えてうずくまってしまう。なんかすっごく子供っぽく感じてしまう。
なんかメイドになってからの先輩を見てから、学園で見る凛として美しい先輩像とのギャップが激しすぎて戸惑ってしまう。しかし不思議と嫌いにはなれない。いやむしろ先輩のあらゆる一面が見えてちょっとうれしくもある。
とはいえこのまま放置は無理だ。私は覚悟を決めた。
「わ、わかりました先輩。私、水着着ますから」
「ほ、本当ですか?」
「は、はい。着ますから」
そういった瞬間、先程の悲しげな表情が一気に明るいものへと変わった。
「あ、ありがとうございます!!!」
そうするとなんと先輩が私に抱きついてきたのである。
「う、うぇ、水瀬先輩!?」
やっぱり先輩の唐突な行動には戸惑ってばかり。先輩はスキンシップ激しすぎます。そんな気持ちなどわからない先輩はしばらく私にべったりだった。
★★★★★★★★★★★
「あ、あの先輩。なんで試着室に入ってきてるんですか?」
「それはお嬢様のメイドですから」
「り、理由になってませんよ」!?」
数分後、先輩の持ってきていた服、というか水着を試着室で着替えていた。しかしながらその狭い空間にいるのは私だけではなく、なんと先輩も入ってきていたのである。
「理由は十分です。さきほど不甲斐ない姿をお見せしまったので、ここはメイドしてお嬢様に尽くさなければ」
すっかり調子を取り戻した先輩は私の姿をうっとりと見つめながら背中に立っている。やっぱり先輩にはかなわないです。
「やっぱりお嬢様の肌はきれいですね。ぷにぷにで、きれいで」
「はぅ」
先輩は水着の紐を丁寧に縛ってくれているのだが、そこかしこに肌をなぜたりして頬を赤らめさせている。
「せ、先輩。そんなに触らなくても…」
「触れなくては水着が着れませんよ」
微笑みながら、息を当てたり、わざとらしく肌に先輩は触れてくる。先輩と直に触れ合えるので嬉しくはあるのだが。
でも、それでもやはり私にもプライドはある。さっきまであんなに泣いてたのに、態度が変わりすぎだ。しかもスキンシップもやりすぎだ。いや、もっとやってほしいけど、今回はそれはおいておく。
「ではお嬢様、次は下の方を……」
そう言って先輩が言った来た瞬間だ。私はここいらでガツンと意見するために先輩の手を取った。
「あ、あの先輩!!」
「えぇ!?」
「あぁ!!?」
私が急に振り返ったのに驚いたのか、先輩は思わず後ろに飛び上がってしまう。そして私も先輩がいきなり動いたことにより、先輩のメイド服を踏んでしまった。そのせいで私達二人はバランスを崩して試着室内で転んでしまった。
「あいたた」
「お、お嬢様、大丈夫ですか?」
「は、はいなんとか」
派手に転んだせいで、足が痛い。大変なことをしてしまった。先輩の声も聞こえる。私は痛さをこらえながら、ぱっと目を見開いた。
すると
「えぇ!?」
「あぁ!?」
なんと転んだせいで、先輩は仰向けの体勢に、そして私は先輩に覆いかぶさるようになっていた。顔もすごく近くて、思わず口づけができてしまうほどに。
「お、お嬢様、あの、その」
私の緊張は高まり、心臓もバクバク音をたててるのがわかる。先輩もまんざらではない表情をしている気がするし。
いままでの行動からしてもしかして先輩って私のことを好きなのかな。
というかそうでなくてはおかしい行動ばかりである。私の勘違いじゃないよね。揺れ動く感情。そうして私は決意した。
「せ、先輩」
「はい、なんでしょう!?」
ばん!!!!!!!
私は床に手を叩きつけた。音が結構響いたので、先輩は震えるようにびくつく。これはちょっとした仕返しが出来るかも。そんな思いも湧いてきて、手をそのまま先輩の頬にあてる。そうした後に私は先輩に口を近づける。
「お、お嬢様……」
先輩も期待してるのが分かる。でも意地悪したくもある。私は少しほくそ笑むと、口に顔を近づける振りをして耳元まで持っていった。そして先輩がしているようにささやき声で話しかけた。
「試着室で暴れたら危ないですよ。水瀬先輩❤️」
「は、はい。お嬢様……」
先輩の顔はいつも以上に顔がとろけて、そして恥ずかしがっていた。
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