かのんちゃんはからかいたい!〜「勘違いしないでね?」と言う学校一の美少女がからかってくる〜

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第一章 高校二年生編

第54話 井上若葉は納得できない!

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「なんでこうなるのさ!」

 序盤の職業決め。
 そこからゲームはスタートするのだが、若葉だけはことごとく職業が決まらない。

「現実を見ろ。これが若葉の運命だ」

「ぐぬぬ……」

 俺は医者、虎徹はゲーム会社、花音はアイドルと俺以外イメージに沿った職業に決まる。
 しかし同じ職業になれるのはサラリーマンだけのルールのため、順番が最後だった若葉は俺たちと同じマスを二度も踏み、職業が決まらずに職業決めのゾーンを抜けてフリーターとなってしまう。

「いや、別にフリーターを否定するわけじゃないよ? でもさ、運悪すぎない?」

「選り好みをしすぎた結果なんだろ、多分。そういう設定でいこう」

 理想が高すぎる故に就職ができなかったという設定を勝手に付け加えられた若葉は、悔しそうにしてルーレットを回す。

「でも、専業主婦とかあるし、大丈夫だよ?」

「このゲームにそんなルールないよ! 何より成績が一番悪い颯太が医者なのはなんでさ! 私に職業をよこせー!」

「無免許医師だぞ! 反対!」

 しょうもないやり取りをしながらもそれぞれが結婚マスに進む。
 ここは共通のマスのため、全員が結婚することとなった。
 ……ゲームにツッコんでしまったらおしまいだが、一生独身の人もいればある程度の歳になってから初婚の人もいるため、このルールは不思議だ。

 それぞれが結婚し、マスの進み具合は虎徹が一歩リードしている。
 ただ、競うのは最後の所持金額のため、先にゴールしたから勝ちというわけではない。
 先にゴールすればボーナスとして賞金がもらえるため、全く関係ないわけでもないが。

 花音、虎徹、俺、若葉と順番に回っており、俺の番。
 ルーレットを回してマスを進めると、子供が産まれたマスに止まった。

「おっ、お祝いで一万ドルだ」

 合計三万ドルを手にし、所持金が潤う。

「この歳で子持ちかぁ……」

「ゲームだからな?」

 そんなことを言う若葉だが、今度は若葉も同じマスを踏む。

「……できちゃった」

 言い方がいやらしい。
 なんならお腹をさすっている。

「ちなみに同じマスに止まったから追突で罰金な」

「えぇ!?」

 ルール上そうなので仕方がない。
 お祝いと同額の一万ドルのため、俺の所持金は変わらない。

 そして順調にマスを進めると、職業の給料が高いことと子供が多くできたため、所持金は俺が大きくリードしている。
 続いて花音が若干リードして虎徹とほぼ同じくらい。若葉は圧倒的に最下位だ。

 マスは依然として虎徹が大きくリードし、俺たちは抜きつつ抜かれつつとなっている。

「颯太……、子供七人とか頑張りすぎだろ」

「ゲームだからね?」

 六人しか乗らない車の形をしたコマには、本人と結婚相手以外は四人分の空きしかない。
 ことごとく出産マスを踏んだ俺は、むりやり乗せている。

「てか逆に虎徹は頑張らなさすぎだろ」

「マス踏まねぇんだもん」

 虎徹は子供がいない。
 若葉は二人、花音は一人と普通に遊んでいればできるくらいのペースで子供ができている。
 俺が異常なだけである。

「まあ、奥さんと二人っていうのもありっちゃありだよな」

 そんなことを口走る虎徹に反応したのは若葉だ。

「虎徹って子供欲しいとかないの?」

「……まだ高校生だぞ? 想像もつかん」

 虎徹の言っていることはもっともだ。イメージは人それぞれだが、俺の理想の家庭は子供が二人くらい。
 二人兄妹だからかもしれないが、幸せな家庭はそんなイメージだ。
 ただ、確かに奥さんと二人というのも悪くはない。

「颯太とかのんちゃんは子供欲しいとかある?」

 唐突な飛び火だが、イメージしていた時だったためすぐに答えられた。

「まあ、二人兄妹だし、二人かなぁ……。虎徹が言うようにまだ想像はつかないけど」

「うーん。私も想像つかない。子供育てるのって大変って聞くし、一人は欲しいなって思うけど、今はそんな覚悟はないかなぁ」

 現実的に考える花音と、大雑把にイメージする俺。対照的な答えだ。
 ゲームは進めながらも、そんな話を続ける。

「ちなみに私は……私も二人くらいかなぁ? 自分の家がそうだからっていうのもあるけど」

「それなら颯太と相性いいな」

「んー……まあそうなのかなぁ? きのこたけのこもそうだったし」

 唐突な爆弾発言だが、若葉は華麗に流す。
 そう見てみると、意外に俺と若葉は共通点が多かった。

「じゃあ、結婚願望とかはある?」

 むしろ話のレベルが下がった気がしなくもないが、まだこちらの方が現実味はあるだろう。
 来年には法的に結婚できる年齢となり、女子に至ってはすでに結婚できる年齢なのだ。

「まあ、俺は結婚したいかな。親ほど早くじゃなくてもいいけど、そこそこ若いうちに」

「虎徹はそうなんだ。私も願望はあるけど、いつとかはないかなぁ」

 結婚したいかどうかならまだしも、いつ頃結婚したいというのはまだ考えもつかない。
 俺は一応考えてみる。

「二人はどうなの?」

 流れとして当然話を振られ、考え中の俺は黙って花音の回答を聞いた。

「うーん……、そんなにないかな? って言うより、『この人とならしたい!』って思える人ならしたいけど、私って好きな人すらできたことないから、それだけ信頼できる人がいいかな」

 先ほどの話題で『子供が一人は欲しい』と言っていたため、『そんなにない』という答えにはツッコミたくなるが、花音らしいと言えば花音らしい。
 友達に裏切られた過去があることを考えると、信頼できる人がそもそもできるのかという問題なのだ。

 暗くなりそうな雰囲気だと感じ、俺は考えがまとまっていないまま口を開く。

「俺も早いうちにしたいかなーって。ずっと一緒にいる相手だから慎重に決めたい気もするけど、長い時間を一緒に過ごしたいな、と。……あっ」 

 結婚願望を語りながらも、俺は思わず声を漏らした。
 ゲームの方の状況が一転したのだ。

「失業した」

 第二の職業決めゾーンに入る直前にある、失業マスを踏んでしまった。
 医者から一転、フリーターとなった。

「まあ、金はあるからいいか」

「それ、めちゃくちゃ悪い人のセリフに聞こえるんだけど……」

 花音にボソッとツッコまれる。
 ただの成金のセリフだ。

「あ、私は医者になったよ」

 俺が医者を失業したことによって、医者の枠が空いた。
 そこに俺の番の直後の若葉が滑り込んだのだ。

「絶対裏工作したじゃん……」

「してないし!」

「フリーター、医者を失脚させる」

 ゲーム開始直後に若葉が医者を狙っていたことを考えると、虎徹の指摘もあながち間違えではなかった。
 ……もちろんゲーム内の話だが。

「逆転するぞー」

 いつの間にか話は終わっており、気付けば再びゲームに集中し始める。
 そして終盤を迎え、ゲームはクライマックスに突入していった。



「罰ゲーム、何にしよっか?」

 美少女がミニスカサンタに迫られているこの図は、ミニスカでなければ人身売買でも行われそうな絵面だった。

 結局、最終的に追い上げた若葉が一位。
 正確に言うとそれぞれが罰金マスを多く踏み、多く減らすことがなかった若葉が繰り上がった形だ。
 ゴール順は一位は虎徹。
 その後に若葉、花音、俺と続いた。

 若葉が勝てたのも、俺が最下位でのゴールでゴールボーナスが少なかったことや、後半に失業したことが原因だ。
 ただ、元々は高給料の医者だったことや子供がたくさんできたことのお祝い金などもあったため、三千ドルの差という僅差での二位だった。

 虎徹は最初にゴールしたものの、罰金の繰り返しで三位に滑り込んだ。
 ゴールが二番目以降であれば最下位は確実だっただろう。
 そして最下位に沈んだのは花音。
 花音は職業がランクアップしてアイドルからスーパーアイドルになったものの、罰金マスと着順によって千ドルという本当に僅差での最下位だった。

 ノリノリで罰ゲームを指示しようとする若葉は、どこか嬉しそうだ。
 恐らく、ミニスカサンタにさせられたため、ここぞとばかりに攻めたいのだろう。

「罰ゲームなんて聞いてないんだけど……」

「言ってないけど、ミニスカサンタこれって罰ゲームのつもりだったんでしょ? せっかくだし罰ゲームしよっかなって」

 若葉の言うことは後出しジャンケンではあるが、どこかしらのタイミングで罰ゲームをしようと考えていたのは花音だ。
 午前中のゲームではしなかったため、罰ゲームのタイミングとなればこの運命ゲームの時くらいだ。

「そうだなぁ……。そろそろ私の服も乾いてるし、着てもらおっかな? ミニスカサンタこれ

 悪い顔をしている若葉。
 ただ、花音が「うぅ……」と恥ずかしがって俯いている隙に、俺や虎徹にアイコンタクトを送る。
 目的は理解した。
 ……多少の私怨はありそうだが。

 その目的を達成するために、俺たちも援護射撃を送る。

「あ、あー、本宮サンタ見たいなー」

「そうだなー、花音なら何でも似合いそうだし」

 あまりにも酷い演技。
 俳優や声優が聞いたら卒倒しそうなレベルだ。
 しかし、それが聞いたのか花音は「……わかった」と恥ずかしがりながらも頷いた。



 先に若葉が着替え直し、洗濯したて、乾燥したての藤川家の匂いとなった私服に戻った。
 そして入れ替わりに花音が着替えに行くと、俺たちは早速準備に取り掛かる。
 着替えまでの数分が勝負だ。

 すぐに花音は着替え終わり、脱衣所の扉が開閉する音が聞こえる。
 ――ただ、準備は完了している。

 真っ暗な部屋。
 僅かな灯火。
 そしてリビングのドアが開いた瞬間だ。
 俺たちはクラッカーを鳴らした。
 中の紙テープが弾け飛び、音に驚いたのか光景に驚いたのか固まっている花音に降りかかる。
 僅かな火薬の香りがするが、それもそれでご愛嬌だ。
 真っ先に口を開いたのは若葉。……ではなく俺だった。

「誕生日おめでとう」

 それに続いて二人も「おめでとー!」「おめでとう」と祝福する。

 十二月二十五日。
 クリスマス。

 それは花音の誕生日でもあった。
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