かのんちゃんはからかいたい!〜「勘違いしないでね?」と言う学校一の美少女がからかってくる〜

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第二章 高校三年生編

第118話 綾瀬碧は負けず嫌い!

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「青木くん青木くん。あそこ行かない?」

 指差す方向に視線を向けると、そこはバッティングコーナーだ。

「いいよ。綾瀬ってバッティングセンターとか行くの?」

「まったく。色々と試してみたいなって思って」

 綾瀬はそう言い、ケージの中に入ってバットを手に取る。
 ケージの中にある機械のボタンを押すと、マシンは起動する。

「とりゃ!」

 綾瀬は掛け声とともにバットを振るが、上手く当たらない。
 三十球出るためまぐれ当たりはあったが、そのほとんどはかすっただけか空振りだった。



 お盆前。
 この時期になると親戚などの集まりもあってなかなか大人数では予定が合わなくなる。そのため、花音、虎徹、若葉との勉強会は一時中断していた。

 青木家は両親ともに働いていることもあって、十三日は家族四人で過ごし、十四日と十五日の二日間は両親の実家に帰省するという流れになっていた。

 今日は十二日。
 まだお盆と言うには早いかもしれない。
 綾瀬と連絡を取っていると、今日は二人とも空いているということがわかった。
 そのため遊ぼうという話になり、俺たちは運動やゲームができるレジャー施設に来ていた。

 ここはボウリングやカラオケも併設されているが、それなら別の場所でもできることもあって、今日はあくまでもレジャー施設の方がメインだ。

「うう……、なかなかうまくいかない」

「まあ、野球って細いバットに小さいボールを当てないといけないからな」

「青木くんって、野球できる人?」

「どうだろ……。普通?」

 小学生の頃、放課後の校庭で友達同士が集まって野球をすることがあった。俺もそれに混ざったことがあるくらいで、ほとんど経験はない。
 体育の授業でソフトボールをすることがあるくらいだ。

「青木くんもやってみてよっ!」

「そうだな。せっかくだし、やるか」

 俺は綾瀬が入っていたケージに入る。

 球速は90キロ。
 確か高校野球とかは速い人で150キロとか投げているはずだ。
 そう考えるとあまり速くはないが、慣れていない俺にとっては90キロも速く感じる。

 しかし……、

「おっ、当たった」

 最初から当てることはできたため、そのスイングを思い出して確かめるように二球、三球と続ける。
 序盤は空振ったり、前に飛ばなかったりしたが、何度か続けていくうちにそこそこ打てるようになっていく。

 そして終盤にもなると、ホームランの的には届かないが、バッティングマシンの奥くらいまでは届くようになっていた。

「すごいねー」

 俺がバッティングを終えると、綾瀬は拍手をしている。

「思ったよりは上手くいったけど、どうなんだろ?」

「いやいや、上手いと思うよ? 青木くんって運動神経良いんだね」

「最近たまに軽くだけど体動かしてるし、その甲斐もあったのかな」

「へー、運動してるんだ。走ったりとか?」

「いや、近場の公園でバスケしてるくらい」

 ――部活の差というやつだろうか?

 軽く体を動かすというと、俺はバスケを想像するが、綾瀬はランニングを想像していた。
 いや、一般的に考えれば走る方を想像する方が自然ではある。

「よし、私ももう一回やるよっ! 一カ月前までは現役だったんだから!」

 綾瀬は意気揚々と、再びケージに入っていった。



「青木くん上手すぎー!」

「いやいや、綾瀬も相当上手いよ」

「そんなこと言って、私負けっぱなしじゃん!」

 バッティングが終わった後も、卓球やバスケ、テニスなどを楽しんだ。

 こういう時は適度に力を抜く方が良いのかもしれないが、運動部だった綾瀬はどの競技もセンスがあり、俺もつい熱くなってしまっていた。
 綾瀬も綾瀬でヒートアップしていたため、負けず嫌いな気持ちが勝ってしまった。

 ビリアードやダーツもやってみたが、俺は極稀に虎徹や若葉……最近では花音とも行くこともあるため、まったくできないわけではない。
 初心者に毛が生えた程度だが、完全初心者の綾瀬に圧勝してしまった。

「何か青木くんに勝てるものはないかなぁ……」

 綾瀬はそうぼやいているが、この施設の中にあるものは四人でやったことがあるものばかり。それどころか来たこともあるため、お互いにフェアな勝負もできない。
 ゲームなんかはいつも虎徹や花音のように、慣れている人を相手にしているのだ。

「……あ、それなら」

「ん?」

 俺が思い出したように声を上げると、綾瀬は不思議そうな表情を浮かべていた。

「カラオケとかはどう?」

 普通に歌うだけではなく、採点機能を使えばお互いに良い勝負ができると俺は考えた。
 綾瀬もたまに友達とカラオケに行くという話は以前聞いていたため、少なくとも今までのようにはならないだろう。

 ――もっとも、いつの間に勝負になったのかはわからないが。

「いいね! カラオケ行こっ!」

 綾瀬も賛成したため、俺たちはカラオケのコーナーに向かう。
 こういうところはカラオケ店よりもやや設備が良くないが、カラオケを取り扱っているというだけあって部屋が小さめという意外は設備は整っていた。

「じゃあ、一曲目は青木くんからどうぞっ!」

 綾瀬は採点機能を入れると、俺にマイクを渡してくる。

「いいの?」

「まずは様子見だからさ」

 俺の点数によって、綾瀬は自信がある曲を入れてくるつもりなのだろう。
 まずはジャブ程度に考え、俺は有名な曲から入れていく。
 アニソンの方が知っているが、普段歌っているため俺も様子見だ。特にアニメ好きでなくても知っている曲なんかは、クラスなどで行く時のことを考えて歌いこんであるのだ。

 俺が歌い終えると、続けて綾瀬が曲を入れる。
 綾瀬が入れたのは、女子に人気のラブソングだ。

「いくよー!」

 そう意気込んで綾瀬は歌い始める。

 綾瀬は感動するほど上手い。……と言うわけではない。
 しかし、透き通るようなその声は聞いていて心地よかった。

「どうかな?」

 歌い終わった綾瀬は、それはもうすっきりとした表情を浮かべている。

「上手いな」

「やった!」

 そう喜ぶ綾瀬。

 しかし、採点の方は俺が88点で綾瀬が87点と、僅差ながら俺の勝ちだ。
 その後も何とか勝ちたい綾瀬は曲を入れ続け、92点と高得点を叩き出し、ようやく綾瀬の気が済んだのだった。
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