おーばー!2〜弱小女子野球部の監督に元最強選手の男子高校生が就任してハーレムになった件〜【明鈴高校女子野球部一年生後編】

文字の大きさ
38 / 40

期待と結果 合宿一回戦

しおりを挟む
 伊奈梨のホームランによって二点の先制を許したものの、その後の五番の北条はしっかりと打ち取ることに成功した。

 悪い結果かもしれないが、巧としてはまだ納得のいく内容だ。
 二番の夜狐と四番の伊奈梨からは打たれてしまったものの、一番の紗枝からは三振を奪い、三番の楓も当たり自体は打ち取ったものだった。五番の北条も打ち取っている。
 今日が初めての登板ということを考えると、決して責められる結果ではない。

「お疲れ様」

 戻ってくる選手たちに、巧は声をかける。
 もう一イニング終わったのだ、あと二回しかない攻撃で二点を取り返さなければいけない。そのことに選手たちは重苦しい雰囲気だ。

 ただ巧は、そこまで難しくは考えていなかった。

「この回から夜狐は代わる。追いつけばこっちのものだ」

 今回の特別ルールである、メインポジションがピッチャーの選手は三イニング中、一イニングだけしか登板できないというルールを考えると、あとは初めてピッチャーをやる選手しか出てこない。
 対して明鈴はあと一イニングは煌に引っ張ってもらうが、ラストはピッチャーメインの選手で締めることができる。

 そしてマウンドに上がったのは、セカンドに入っていた早川雅だ。夜狐はそのまま交代でセカンドに入る。

「夜狐、楓、白坂さんは上手いからミスも多くはないだろう。ポジションに不慣れなことを考えるなら、まずは外野に飛ばすことを意識していこう」

 相手の弱点を狙っていくというのは気分が良いものではないが、この試合はそういうものだ。弱点を突かれてもどうやって対処していくのか学ぶという意味もある試合だ。
 そして鳳凰もこちらの弱点を狙っているだろう。
 互いに練習のために、弱点を突き合うことがこの試合に意味を持たせるのだ。

「この回とにかく一点。それだけを考えていこう」

 俺はベンチの選手たちにそう声をかけると、選手たちは一斉に返事をした。



 五番の瑞歩が打席に入る。
 現状の瑞歩では五番は荷が重い。そう巧は考えている。長打はあるがあまり当たらないため、下位打線に置けば相手にとって怖いバッターだろう。

 しかし、夜空や珠姫が抜けた穴は大きい。現状は下位互換とはいえ、光は由真の穴を十分に埋めてくれている。ここは順当に成長さえすれば、三年時には同等くらいの戦力で考えられる。
 ただ、夜空と珠姫の代わりになる選手はいないのだ。
 長打力という点では亜澄を置いているが、二人には到底及ばなければ、元々レギュラーだったため代わりというわけでもない。
 司も成長しているが、どちらかと言えばアベレージ型……ヒットを量産して打率を残すタイプだ。そんな司に、無理に長打を狙わせても打線が繋がらずに終わるだけだろう。ヒットの延長線上での長打や、成長して自然と長打が増えてくれば良いと考えているため、これ以上の注文は負担が大きいだろう。

 そうなると期待がかかるのは、元々長打に長けている瑞歩だった。
 珠姫や夜空のように安定した打率で長打を打てなくてもいい。極端な話、打率二割でホームランを量産するか、打率二割五分でホームランがたまに出て長打が打てる選手が欲しいのだ。

 だからこそ、ではなく、選手として、今回瑞歩を起用した。

 そしてその瑞歩は見事期待に応えた。

「ライト!」

 二球目の外角へ甘く入った球を弾き返す。右中間を破る大きな打球は、すぐにフェンスまで到達する。当然相手の守備は打球に追いつけない。
 瑞歩が一塁を回った時に相手ライトはようやく打球に追いつき、二塁に到達して少ししてから送球が二塁に届く。

「ナイバッチ!」

 長打を……と考えてはいたが、引っ張り方向ではなく流す方向への強い当たり。巧が今一番求めていた長打だ。
 打った瑞歩は二塁上で小さくガッツポーズをしている。先ほどの守備、ミスと言えるほどでもなかったが、今までセカンドを守っていた夜空や鈴里であれば追いつけるような打球に瑞歩は手も足も出なかった。
 その悔しさを力に変え、瑞歩はバットを振った。そして悔しさがあるからこそ、喜びを抑えた控えめなガッツポーズだった。

 相手がメインでピッチャーをしていない選手とはいえ試合中で打てたのは、今後に繋がっていくだろう。
 打てるというイメージが大切なのだ。

 そして続くのは六番に入る黒絵だ。
 黒絵にも長打の期待はでき、破壊力だけであれば瑞歩以上と言える。
 ただ、ピッチャーとしての期待が大きい分、バッティングは二の次だと考えていた。現状の『一発がある』というだけでも、下位打線に置いておく分には十分だからだ。

 今日はファーストだが、それはピッチャーと外野をメインでしているため、左利きの黒絵を使えるポジションが限られていたからだ。伊奈梨のように内野を守る器用さもない。
 そうでなくとも、元々黒絵をファーストで起用するというプランはあった。
 ピッチャーとしての負担が大きく、それでも黒絵の長打を期待したオーダーを組むことがあるかもしれない。その強肩は魅力的だが、外野という広い守備範囲を任せるのには練習することが多すぎる。
 高校野球である以上、ピッチャーでもバッティングはほぼ必須項目となってくる。黒絵にバッティングでこれ以上の期待をかけるわけではないが、さらに外野守備となれば期待するピッチャーでさえも中途半端になりかねない。
 普通の練習だけで外野守備が上手くなればこの上ないが、ファーストをすることによって負担を軽減できるのであれば、黒絵にとっては最適だと巧は考えている。

 ただ、現状はまずバッティングだ。今はあくまでも黒絵の長打に程度の考えだが、もし結果を残すのであれば
 それを見極めるための一つの機会。

 ワンボールワンストライクからの三球目。黒絵のバットは快音を響かせる。

「レフト!」

 甘く入った球を仕留めにいったという打球。大きく上がったその打球は、軽々とフェンスを越えていった。
 ……しかし、打球はファウルゾーンだ。

「ファウル! ファウル!」

 あわやホームランという打球を放つものの、結果としてはファウル。
 飛距離を出せるということは参考にはなるが、タイミングが合っていないということにもなるため判断に難しい。

 その後、大きなファウルによって警戒した相手バッテリーは際どいコースを攻め、フォアボールとなった。
 球は見れていると考えられるが、正直なところ黒絵以上に選球眼の良い選手は多いため、参考にならない打席となってしまった。

「とりあえず保留かな……」

 貴重な試合。変則で相手ピッチャーはピッチャーとしての練習をしていないということはあるが、試合形式で打てるかどうかというところを見極めることができる。

 選手にとっては経験になるが、巧にとっても選手の使い方を考える良い機会なのだ。

 上位打線の陽依、白雪、伊澄、司に関してはレギュラーほぼ確定と言っていいほど巧は信頼をしている。
 白雪は目立ったところはないが、安定した守備があるだけでも十分に信頼ができ、守備負担の大きいショートにも関わらずバットコントロールは部内でもトップクラスだ。あとはパワーがあればポジションの違いはあれど、バッティングとしては夜空に代わる選手と言ってもいいだろう。

 ただ、レギュラー確定だった選手でも他の選手次第では考え直さなければいけない選手もいた。
 それが打席に入ろうとする、七番に入っている七海だ。

 七海はバットコントロールと選球眼を評価しており、夏の大会では上位打線やクリーンナップを任せることも多かった。
 しかし、その夏の大会ではあまり結果を残せていない。正確に言えば打てる時もあるが、今までの成績を考えると物足りない。
 成長している他の選手と比較して、七海……そしてレギュラーメンバーとして四番を任せる亜澄は停滞気味だった。

 しばらくすれば秋の大会もやってくる。
 レギュラーの立ち位置を盤石なものとするため、この合宿で一つ、何かを掴んで欲しい。
 巧はそう思っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

小学生をもう一度

廣瀬純七
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...