おーばー!2〜弱小女子野球部の監督に元最強選手の男子高校生が就任してハーレムになった件〜【明鈴高校女子野球部一年生後編】

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苦悩と歓喜 合宿一回戦

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 ワンアウト満塁。
 絶好のチャンスに陽依は焦らない。

「ボール!」

 二球と際どい球を見極め、カウントはツーボール。
 ただ、陽依はフォアボールを狙っていない。どんなカウントからでも打っていこうという姿勢は、初球から変わらなかった。

 もし、光がいなければ一番センターはこの陽依の定位置となっていただろう。
 陽依の守備力はチーム随一。守備に特化している鈴里と煌を除けば、一番の守備力を誇る。
 それでも守備に安心を持てるのは、どのポジションも高水準で同じレベルで守れる。
 極端な話をすれば、光陵の琥珀はさらに上をいくが、高校生ナンバーワン選手と比べても意味はないため置いておく。

 メインポジションがない。……強いて言えばレフトだが、数値化できたとしても、恐らく微々たる差しかないのがこの陽依だった。

 現時点でも文句なしの陽依。
 しかし、一つだけ上のレベルを目指して欲しいと思うのは……、

「ライト!」

 バッティングだ。

 巧はそんなことを考えていると、陽依の放った打球は右中間を破り、フェンスまで到達している。
 そんな打球で二塁から本塁まで到達するのは、セカンドランナーの鈴里にとっては容易なことだ。

 満塁からのタイムリーツーベースヒット。
 これで同点どころか一気に逆転し、なおもワンアウトランナーは二、三塁。

 意外と満塁からの得点は難しいと言われている。
 それは本塁でフォースアウトとなる可能性があるからだが、そう考えると今の二、三塁というのは期待値が高い状況だ。

 それでいて、サードランナーは煌、セカンドランナーは陽依と、足の期待値も高い。

 そして続くバッターは二番で起用している白雪だ。
 しかし、巧はここで動いた。

「代打だ。亜澄、頼んだ」

 白雪に期待をしていないというわけではない。
 むしろ現状を考えれば、白雪の期待値の方が高いまである。

 ただ、ここで亜澄を起用するのは、こういったチャンスの場面で回ってくるのが、四番として期待している亜澄なのだ。
 このところ不調が続いている亜澄にチャンスの場面で打席を回したい。

 それは元々考えていた。
 しかし、この場面で陽依の一打で逆転していなければ代打は考えていなかっただろう。

 勝つだけがこの試合の目的ではないが、勝てる試合に勝ち、勝つということに慣れたい気持ちは大きい。
 これからこんな絶好のチャンスが訪れるか不透明な状況のため、確実にチャンスの場面で亜澄に回すにはこのタイミングだと考えた結果の代打だった。

「悪いな白雪。次の試合も頼むぞ」

「もっと出たかったなー。……でも、しょうがないよね。試合も短いし。亜澄さんの方が打てるから」

 理由は勘違いしており不満を漏らしつつも白雪は引いてくれた。

 この試合……だけではなく、この合宿での数試合。そこが亜澄が明鈴の主砲として鎮座できるのか、その試練の一つだった。



 迎えた亜澄の打席。
 初球から亜澄はいきなり手を出した。

「ストライク!」

 ただのストレートに空振り。振っている位置が全く違う。
 完全にスランプに陥っている。

 二球目は外れたボール球に手を出さなかったが、危うく手を出しそうだった。
 亜澄は一発が魅力的なのだ。三振を恐れて、凡打を恐れて、四番という主砲のプレッシャーで全く自分のバッティングができていない。

 何とか復調してもらわないと困るのだ。

 しかし三球目の微妙な球に亜澄は手を出した。

「ファースト!」

 辛うじて当てたというバッティング。
 打球こそそれなりに強いものの、しっかりと打ったゴロではなく、当てて転がした打球だ。

 ――亜澄にこんなバッティングは求めていない。

 平凡な、やや強めにファーストゴロ。

 そんな打球を、鳳凰のファーストを守る七草露のミットがは弾いた。

「走れ!」

 そもそもだ。
 それぞれが本来の守備位置ではレベルの高い守備をできていたとしても、勝手が違う別のポジション……しかも普段とは違う動きで常に考えなければいけないこの状況。
 単純なミスが起こった。

 巧の声に反応し、煌と陽依は次の塁に向かう。
 そのことでさらに焦った露は、あろうことか本塁に送球した。
 ――確実にアウトを一つ取っておけばいいものを。

「セーフ! セーフ!」

 焦った送球は逸れ、キャッチャーの九条院紗枝は辛うじて捕球したもののタッチは間に合わなかった。

 不幸中の幸いと言えるのか。
 ただのファーストゴロが二つのエラーで、アウトカウントが増えずに得点へと繋がった。
 鳳凰の監督を務める琉華はため息を吐いている。

 そして巧も落胆し、ため息を吐いていた。
 結果オーライだが、このままの亜澄は使えない。
 そう考えてしまった。



 続く三番は伊澄。

 相手ピッチャーはエラーで失点したのが効いたのか動揺しており、あまりストライクが入らない。
 いや、ストライクは入っているものの、伊澄は際どい球をことごとくファウルにし、ボール球を見送った。

 その結果、九球を投げさせて伊澄はフォアボールで出塁した。

 そして打席を迎えるのは、四番に座る司だ。
 調子の良い司の打席に期待はできる。

 巧はそんなことを考えていると、司は打撃をしなかった。

 ――期待以上だったのだ。

 動揺したピッチャーに畳み掛けるように、初球を一振り。

 打球はライト方向へ。
 難なく柵を越えていった。
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