ツンデレヒロインの逆襲

朽木昴

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第5話 真剣な話には笑いがつきもの

真剣な話には笑いがつきもの 9ページ目

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「リアコン王子が反対する理由は何かな?」

「僕たちは教わる立場なんですから、生徒が教師を処罰するなんて、おかしいに決まってるじゃないですか」

「なるほど、リアコン王子という名前は認めるのね」

「い、いえ、そういうことではなく──」

「この学園の方針に『より良い学び舎』というのがあるでしょ? つまりね、その方針に反する教師がいてはならないのよ。だって、教師のための生徒じゃなく、生徒のための教師であるべきだからね」

「そ、それはそうですけど、で、でもっ」

「ふぅー、それなら逆にリアコン王子に質問です。教師とは、生徒たちの人生に責任を持っているのですか? すべての教師がそうとは言えないけど、中には自分の私利私欲のため、教師という立場を悪用する人もいるんじゃないですかっ? パワハラは、生徒に対してもあってはならないのですよっ」

 決まった──華麗な名言が今ここに誕生しました。自分で言っときながらなんですけど、この言葉はカッコよすぎます。これは今年の流行語大賞を狙えますね。

 あぁ、ずっとこの余韻に浸っていたいよ。なんだかやり遂げた感満載で、思わず笑顔がこぼれちゃいそう。

「あの、西園寺会長、どうしてニヤニヤしてるんでしょうか?」

「何を言ってるのよ、このリアコン王子。私がニヤニヤしてるだなんて──」

「サキも、朱音会長がニヤニヤしてるように見えるのだー」

「なるほどー、ツンデレ会長は自己陶酔するタイプなんですね。これは大スクープだよ」

「どうせ、カッコイイこと言っちゃった、とか思ってるだけかとー」

 はうっ、奈乃ちゃんに心を読まれてるし。

 ということは、ニヤニヤしてるのも事実ってことなのねぇぇぇぇぇぇ。

 不覚──顔に出てしまうだなんて、一生の不覚なんだからっ。なんとかして、この場を誤魔化さないと……。

「こ、これはわざとよ、わざとニヤニヤしたんだからっ。別にカッコイイこと言ったとか、そんなことは微塵も思ってないもの。で、でも、ほんの少しだけ、自分に酔ってただけ、だよ」

 ふふふ、見てよ、この完璧な誤魔化し具合。

 これで私の面目は保たれたはず──なんだけど、みんなの顔が少し変だよ。

 口元に手を当てながら、私に向ける視線はどこか温かさを感じるし、そっか、そういうことね。これは、幼子が無邪気に遊ぶ姿を微笑ましく見守るような──。

「って、なんで、みんな笑っているんですかぁぁあぁぁぁ」

「朱音先輩があまりにも可愛すぎるからですー。これは写真に撮れば高値で売れそうですねー」

「こんな会長の一面もあっただなんて、ボクは尊死しちゃうよ」

「なのちゃん、写真撮ったら、こっそりサキに売って欲しいのだー」

「さ、西園寺会長の、ぷぷ、言いたいことは、ぷっ、わかりまし──」

「リアコン王子のくせに、笑いながら喋るなぁぁぁぁぁぁぁ」

「ぐはっ」

「きゃー、私の陽琥君がー」

 ──はぁ、はぁ。

 つい、特大のビンタをお見舞いしちゃったよ。
 でも私は悪くないもん。笑った管君がいけないんだもんっ。

 まったく、なんで笑うのよ、ばかっ。
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