ツンデレヒロインの逆襲

朽木昴

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第6話 復讐は密のように甘かった

復讐は蜂蜜のように甘かった 11ページ目

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 去年の私は、それどころじゃなかったですけど……。

「西園寺、ここでは理事長が絶対なんだぞ。理事長が壁の色は黒と言えば、たとえ白だったとしてもも黒と答える。これが一般常識なんだ」

「そんなの横暴ですっ! だいたい、学園の方針にも生徒の自立とあるじゃないですかっ」

「それはそうなんじゃが、まさか、こんな校則を作るのは想定外だったものでのぉ。全生徒の前では仕方なく了承したフリをしたがのぉ。それに、生徒の自立だったか、あんなのは建前に決まっておろぉ」

 この人たちの心は腐りきってるよ。

 ホントなんなの、想定外とか言ったり、理事長の言葉が絶対だとか、私の理解を超えて意味わからなすぎだよっ。

「そんなこと許されるわけないですよっ」

「ばかだなぁ、西園寺は。理事長の言葉は絶対だって言っただろ? ツンデレ貧乳には難しすぎて理解できなかったか?」

 クズよ、この人たちは人間のクズだよ。

 世の中って、こんな人たちでも教師になれるというの。

 そんなのおかしいよ……絶対に間違ってるんだからっ。

 でも、このまま怒りをぶつけたところで、こちら側が不利なのは火を見るより明らかね。

 この絶望的状況をどうにかしてひっくり返さないと……。

「他に言うことはあるかのぉ? こう見えてワシは忙しいのじゃ。用がすんだらさっさと失せるがよい」

「あのー、ひとつ質問いいですかー?」

「仕方ないのぉ、最後くらい質問に答えてあげようぞ」

 奈乃ちゃんは何を言うつもりなのかな。

 いくら腹黒系悪女でも、この悪魔の化身には勝てないと思うよ。どんなことを聞くのかは気になるけど。

 それにしても、大人ってこんなにずるい存在だとは知らなかったよ。

「理事長にとって、私たち生徒はどういう存在でしょうか?」

「そんなことか、どうせお主らは退学にするから、冥土の土産に本心を言ってやるかのぉ。金づるじゃよ、それ以上でもそれ以下でもないのぉ」

「そうですかー。朱音先輩、聞いた通りどうせ退学らしいので、この際言いたいことをハッキリ言うといいですよー」

 それってどういうことよ、奈乃ちゃん。

 確かに言いたいことなんて山ほどあるけど、どうせここで言ったところで誰も聞いて──。

 えっ、まさか、わかったよ、奈乃ちゃんが私に届けたメッセージはちゃんと伝わったよ。

 私は信じるから、だって奈乃ちゃんは、私を助けてくれた最初の友だちなんだから。

「理事長にとって生徒たちは金づる、でしたよね。私の十万円も、そのひとつだったんですね。そう、私はそのお金を絞り出すため、推しグッズまでガマンしたんだからっ。でも、その被害者って私だけじゃないですよね? ずっと前からカモを探して、お金を巻き上げて、問題になりそうだったら退学させて。その繰り返しだったのではないですか?」

 そう、きっと被害者は私だけじゃないはず。

 退学という手法で、学園から追放された人たちの中には、きっと理事長の被害者がいるはずよ。ここで私が負けちゃったら、散っていった同志たちに申し訳ないもの。
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