『「まりあの方舟」はカルト宗教団体?極悪女子レスラー「万石デンジャラスまりあ」のクリスマスの奇跡』

M‐赤井翼

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「プロローグ 「まりあの方舟」の家宅捜索」

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「プロローグ 「まりあの方舟」の家宅捜索」

 12月18日午後1時、大阪ニコニコプロレスの2階にある食堂で皆が揃っての昼食の時間となった。食堂にある32インチの液晶テレビでは昼のワイドショー番組がかかっている。
「おっ、この香りは夏子と陽菜の「スペシャルスパイシーカレー」やな!この間のタンドリーチキンカレーはめっちゃ旨かったよな!今日の具材は何なんかいな?」
と大阪ニコニコプロレスの代表でかつ人気「極悪ヒールレスラー」役の「デンジャラスまりあ」こと「万石まりあまんごく・まりあ」が最後に大きなライスの保温ジャー2つと各席の前に皿とスプーンと水のグラスが置かれたテーブル席に着いた。

 「全員、揃いましたかー?今日は金沢のソウルフード「ハントンライス」オマージュで「ハントンカレー」ですよー!三朗兄さんがマグロの赤身と立派なエビを差し入れてくれはったんですよー!カレーの中にはエビの「頭」と「腹」と「殻」をミキサーにかけたやつを隠し味に使ってるから、海の香り満載の激ウマカレーやから、みんなでたっぷりとおかわりしてや!」
 厨房の奥から大阪ニコニコプロレス研修生扱いの「坂川夏子さかがわ・なつこの声がすると大きな皿に大きく盛られた「マグロ」と「バナメイエビ」のフライを2組に分けてテーブルに配膳した。
 自称「Cカップ」で実際には83センチのAに近いBカップの夏子がお盆に載せて持ってきた山盛りの海鮮フライに大きなどよめきが湧いた。

 「サブちゃん、こんなに食材入れてもらってよかったんか?マグロもエビも「向日葵寿司」の主力商品やろ。こんなに入れてもらったらサブちゃんの寿司屋つぶれてしまうんとちゃうか?」
とまりあが少し心配そうな顔をして、向かいの席に座っている、同じ門真市駅東商店街にある「向日葵寿司」三代目の「長井三朗ながい・さぶろう」に尋ねた。
「気にしないでください。14日を境に、全然、お客さん来なくなっちゃって…。昨日も宴会のキャンセルが入っちゃいまして、寿司ネタとして冷蔵で2日、その後、鍋用にチルド保存してたんですけど、さすがに生食材は4日が限度ですね。
 痛ませて廃棄するくらいなら皆に食べてもらう方が、食材も喜びますので稀世さんに相談して、なっちゃんと陽菜ちゃんに急遽メニュー変更してもらったんです。」

 笑顔で答える三朗の横で大阪ニコニコプロレスのスーパーエースでWWEにも参戦した事がある実力者の「安稀世やす・きよ」がバスト100センチのGカップの胸をテーブルの上に乗せて三朗の腕に抱き着いて会話に割って入った。
「サブちゃんの店がな…、そりゃ大変なんよ。14日にSNSで「向日葵寿司の大将は「まりあの方舟」の女性信者を食いまくってる悪魔や!」、「カルト教団の影のスポンサーの資金源やから潰さなあかん!」っていわれのない書き込みがあって、飲食店検索サイトでも「ある事無い事」書き込まれまくってお客さんが来えへんようになってしもたんよ。
 せやから、みんなに少しでも元気出してもろたらってお店の食材を寄付してくれたんよ。世界で一番優しいサブちゃんの気持ちをみんなで味わったってな。」
 稀世は三朗に微笑みかけると、三朗は照れくさそうに「そんな、大したことじゃないですよ。」と真っ赤になって呟いた。

 厨房の奥から「じゃあ、カレーも出しますねー!大鍋で持っていくんで置き場の確保お願いしまーす!」と夏子と同じく研修生の「仲田陽菜なかた・ひな」の声が響いた。
 食堂に良い香りが一段強まると大きな寸胴鍋を両手でかかえて陽菜が出て来た。
「はーい、超お待たせー!三朗兄さんからのスペシャルプレゼントのシーフードカレーやで!私となっちゃんオリジナルブレンドの30種のスパイスと特別ゲストの甘エビ、モンゴウイカ、アオリイカ、トリ貝、石垣貝入りの超豪華版や!お店で食べたら3000円は下らへんでー!」
とどや顔で出て来た陽菜が、食堂に入った瞬間急に真っ青な顔になり立ち止まると同時に、寸胴鍋を床に落とした。鍋に入ったカレーが一気に床にこぼれだし、慌てて立ち上がった稀世が倒れた鍋を起こしたが、スペシャルカレーの3分の2は床の上で湯気を立てていた。

 「あぁーっ、おかわりし放題のはずが、みんな小盛一杯ずつになってしもた…。陽菜ちゃん、火傷してへんか?顔色悪いけどいったいどないしたんや?」
と稀世がこぼれたカレーから意識を切り替えて、陽菜の様子を心配して声をかけた。
 「あ、あれって「ニコニコプロレス道場ここ」やんなぁ…。「まもなく家宅捜索」って出てるで…。」
 陽菜は、小刻みに震えながら食堂のテレビを指さし。呟いた。
 皆がテレビの画面に注目すると、昼のワイドショー番組のタレント司会者がカメラに向かって「差し入れメモあんちょこ」を読み上げた。
「先日から当番組でも取り上げてきました大阪府門真市のカルト宗教団体「まりあの方舟」にまもなく大阪府警が「拉致・監禁」、「未成年略取」の容疑で家宅捜索に入るようです。現場のカメラを見ますと、30名を超える大阪府警の捜査員が「まりあの方舟」の前後を完全に固めています。
 「拉致・監禁」され「洗脳」されているという多数の信者は無事なのでしょうか?また「未成年略取」で施設内に居るという子供たちは大丈夫なのでしょうか!
 現地からの情報ですと午後1時15分突入開始との事ですので、時間が迫りましたらカメラを切り替えます。」

 カメラは門真市駅東商店街「通称ニコニコ商店街」の駅側の道路から望遠レンズで狙っていた「ニコニコプロレス道場」の正面入り口を映し出していた。
 「まもなく大阪府警捜査員突入!」とテロップが出て5秒後、カメラは現場画像から、その状況を大型モニターに映し出すスタジオに切り替わった。
「いやー、悪の教団にいよいよ警察のメスが入りますね。元信者と思われるSNSの書き込みや匿名を条件に当社が行ったインタビューによると20名近い「信者」が施設内で「軟禁」もしくは「監禁」されているそうですから、この不意打ちの家宅捜索では動かぬ証拠が出てくるんでしょうねぇ!」
と鼻息を荒くして、解説者席に座るコメンテーターがマイクを握った。
 MCがコメンテーターに対し、「拉致・監禁」と「未成年略取」の罪について尋ねた。弁護士資格を持つコメンテーターは、まず「誘拐」と「略取」の違いから解説に入った。
 身体の自由を奪い「拉致」する事と、だまして施設内に呼び入れ「拉致」する違いを例え話で説明した。
「簡単に例を上げるならばですね、学校帰りの子供を強引に車に押し込み施設内に連れ込めば「誘拐」ですね。嫌がろうと暴れようと身体の自由を奪い「拉致」すると「誘拐」となります。
 それに対し、「お母さんが事故に遭いました。病院に行きますので、すぐに車に乗ってください。」と嘘をついて子供が自主的に車に乗れば「略取」になります。」

 「おいおい、このおっさん何言うてんねん!そもそも「ニコニコプロレス」は「駆け込み寺」って言われることはあっても「誘拐」も「拉致」もあれへん!「まりあの方舟」って名前かて、うちらが言いだしたんやなくて、周りが勝手に言うてるだけで何をもって「カルト宗教団体」って言われなあかんねん!この解説者、今すぐ「しばき」に行ったろか!」
 夏子は床にこぼれたカレーを雑巾で処理しながらテレビに向かって叫んだ。食卓に着いたメンバーの中には不安な表情を浮かべるものも居たので、稀世が心配そうな表情のメンバーにカラ元気を出して声をかけた。
「みんな大丈夫やで!私らはなんもやましい事はしてへん!まりあさんかて「教祖」やないし、うちらも「信者」なんかじゃない。まりあさんがきちんと警察に説明すればわかってもらえるはずや!とりあえず、こんな蹴ったくそ悪いテレビの言う事なんか気にせんと先に「ハントンカレー」食べてしまおうな!」

 テレビは消されることなく、皆で皿に盛られたご飯とマグロとエビのカツの上に残ったカレーを分け合ってかけると、まりあの「いただきます」の声に合わせ、皆も「いただきます」をして皿にスプーンを入れた。
 そして迎えた午後1時14分、テレビカメラはニコニコプロレス道場の入り口のインターフォンの前に立つスーツ姿の男が映し出された。「あれ、門真署の坂井刑事と載田刑事やん。」と夏子が呟くとまりあは黙って頷いた。
「ピンポーン」食堂にあるインターホンのモニター画面が点灯し呼び出し音が鳴った。先日、顔を合わせた刑事の顔がインターホンモニターに映し出された。

  まりあは先に「御馳走様」を済ますと、席を立ち、インターホンの受信ボタンを押した。「はい。」と応えると「門真署刑事課の坂井です。「万石まりあ」さんおよび「大阪ニコニコプロレス」に対し家宅捜索令状が出ています。ただいまより立ち入り捜査を行いますのでご協力願います。」と食堂内の皆にも聞こえるよう受信モニターのスピーカーから刑事の声が響いた。
  大阪ニコニコプロレス道場2階の食堂に緊張感が走った。

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