23 / 41
「3日後、向日葵寿司」
しおりを挟む
「3日後、向日葵寿司」
「魂の解放」教団の火災事故は翌日の朝のワイドショーのトップニュースとして取り上げられた。その中で大阪の放送局制作の早朝のワイドショーだけが教団の闇についても公開したことが一気にネット界を賑わせた。地域住民によるスマホ撮影の動画に入る「タカカカカ」という音がカラシニコフAK―47であることや、爆発音が手りゅう弾の破裂音だったことがそれまでの教団水面下の武装化を表面化させ近所の人たちを驚かせた。
メディアプロダクトの智は事件後、事情聴取を免除してもらい徹夜でテレビ番組用に映像データの編集に追われた。今朝の時点では、警察の調査がまだ終わっていないため、施設内の監視カメラ映像等は使えていないし、銃器製造・保管、大麻栽培・販売、信者の売春あっせん・ビデオ配信等があったことはまだ伏せられている。
やろうぜ会の活躍も当然のごとくトップシークレットであるが、助かった信者の証言で避難誘導に尽力した民間人が複数いたことは知られている。
門真市総合病院の待合室のテレビでワイドショーを見ている女の子が二人いた。
「なっちゃん、いざあの火災を外から見たらえらいことになってたんやな。あれだけの火事で亡くなったんが教祖一人で済んだんは奇跡やな。まあ、大きいケガしたんも司祭と稀世姉さんに手首折られた組長くらいで済んだんも、良太郎の最初の作戦で子供や信者を先に逃がす方法を取ったんが良かったんやろな。」
「陽菜ちゃん、何言うてんねん。横に大けがした「美少女」が一人おるやろ!稀世姉さんの見積もりやと左腕骨折に多分肋骨5本亀裂骨折!耳たぶちぎれて、美貌の頬に銃弾による擦過傷やで!前回は陽菜ちゃんが撃たれて大変やったけど、今回は、みんなのケガを私が一人で受けたってなもんやでなぁ。」
「うーん、自分で「美少女」って言うてるだけまだ余裕あるな。まあ、頬の傷は軽くてよかったし、耳も整形で見た目にはわからんようになるっていう事で良かったやん。まあ、最後にお漏らししたことはみんなには内緒にしといたるから安心してな!」
「もう、声が大きいよ!あいたたた。もう、声を上げるだけでも、肋骨に響くんやから怒らせたり笑わせたりせんとって―や。」
「坂川さーん、坂川夏子さーん。」
顔なじみの看護師の奥村みゆきの呼び出しがかかった。
「昨日の宗教施設の事件って夏子さん達が絡んでたんだって?稀世さんや直さんもでしょ。ほんと、門真の平和のために頑張ってくれるわねぇ…。さっき、問診票見させてもらったけど、普通の女の子がするケガじゃないわよ。まあ、うちのドクターもライフル銃で撃たれたって読んでびっくりしてたわよ。」
レントゲン室に向かう廊下を歩きながら、みゆきが夏子に話しかけた。すると後ろについて歩いていた陽菜がみゆきに大げさに解説を加えた。
「いやー、そりゃ獅子奮迅の戦い方やったんですよ。12人のやくざのいる施設に乗り込んで、ライフル銃を持った教団幹部にたった一人で挑んで最後は燃え盛る教団本部の3階の窓から脱出ジャーンプ!
なっちゃんが飛び降りて5分後には教団本部はガラガラドッシャーン!ほんと危機一髪やったんですよ!」
レントゲンを撮り、医師の診断を受け左腕のギブスを巻き直し、胴回りのコルセットを巻いた。稀世の見積もり通りの負傷だった。耳たぶと頬は消毒だけで治療は終わった。
「さあ、門真署に行こか。どっぷりと調書とられるんやろなぁ…。「かつ丼喰うか?」、「お前の故郷の山が呼んでるなぁ。」とか言われてな。」
「って、なんで私が犯人役やねん!あいたたた。」
陽菜がハンドルを握ったワゴンRは門真市総合病院の駐車場を出て門真署に向かった。その車中で陽菜が夏子に尋ねた。
「なっちゃん、昨日の現場での話やねんけど、同時通話アプリ入れてたから聞くとも無しになっちゃんと弘道の会話を聞いてしもてんな…。決して興味本位とかじゃないからごめんやで。良太郎は弘道がなっちゃんの事を好きやって知ってたんやけど、私は初めて知ったから…。どうなん、なっちゃんの気持ちは?
昨日は弘道にキスを求められて、なっちゃんは「余裕があったら処女あげた」とか「あの世で最後までしよな」って言うてたけど、これから弘道と付き合うん?満君や大樹さんはどないすんの?」
夏子は(あー、あの恥ずかしい話、全部聞かれとったんか!しくったよな…。当然大樹にも聞かれてるわけやし…。確かに、あの時、弘道告白されてその気になったんは事実やし…、ただ、大樹も事件が終わったら私に話があるって言うてたし…。状況も説明せんといきなり3階の窓から私を放り投げるようなデリカシーの無い弘道よりは、年上で落ち着いてる妹思いの優しい大樹かなぁ…?うーん、ここはお茶を濁しておくか…)少し考えこんで
「まあ、吊り橋効果っていうやつとちゃう?映画の「タイタニック」や「スピード」みたいに非日常の命の危機になると遺伝子保存のためにその場にいた人に告白したくなるって…。弘道も今日、顔を合わせえたら「ケロッ」としてるか、「まずいこと言ってしもた」って思ってるんとちゃうかな?まあ、3階から放り投げられた時は、まさか稀世姉さんや陽菜ちゃんが教団の幌付きトラックの屋根で受け止める準備してるなんて思ってなかったからほんまに死んだと思ったんやで!あっ、あの時、私「おしっこ漏れたー」って叫んだんも大樹や満君に聞かれてるんか!あちゃー、こりゃもうあかんかもしれへんな…。くすん。」
夏子は黙り込んでしまい、会話が途切れたまま車は門真署に到着した。
事情聴取は5時間にわたり、陽菜と二人セットで担当刑事と書記役の4人で続けられた。事前にメディアクリエイトが事件の全貌をレポートとして提出していたため、花音の救出事件と昨日のことに特化しての聴取となった。良太郎と二人で行った、盗聴器や盗撮カメラの設置や、ハッキングも正直に話したがメディアクリエイトからの依頼だったという流れになっていたようでお咎めは無かった。司祭は今も意識不明の重体で教祖は明け方に地下室で焼死体で見つかったとのことだった。
午後4時、門真署を出ると通常業務のパトロール巡回を終えたバイクの弘道と顔を合わせた。
「なっちゃん、ケガの具合はどないや?耳はともかく、頬の傷は浅くてよかったな。腕や肋骨の骨折でしばらく不自由やろうけど無茶せんようにな。陽菜ちゃん、しっかり見張っといたってな。じゃあまたな。」
といつもと変わらない調子だったので、少し気が抜けた。
スマホの電源を入れると、大樹からラインが入っていた。彩雲が勤める大阪警察病院の精神科で花音は薬物中毒の検査を受けているという事だった。現在、中毒症状が出ることはなく、もう二日間入院して禁断症状の有無を確認する各種検査結果を待ち、退院しての経過観察になるだろうという花音の容態の報告と夏子のケガを心配する内容だった。「よかったね。ゆっくり休んでな。私は大丈夫。これからは不死身のなっちゃんって呼んでな(笑)!」のメッセージと「OK」のスタンプを送った。
「なっちゃん、良太郎と満君は夕方からの聴取やから入れ違いやし、どうせ智は今日も徹夜やろ。彩雲も今日は当直って言うてたから、稀世姉さんと直さんに昨日のお礼言いに行っておこか?」
「せやな、昨日、稀世姉さんと直さんの援軍が無かったらどないなってたかわからへんもんな。お礼のお菓子くらい手土産に向日葵寿司に顔だそか。」
と二人で話すと稀世に「あと15分程で顔出します。」とラインを入れ、車を走らせた。
まだ暖簾の出ていない向日葵寿司の引き戸を開けると「おっ、昨日はお疲れさん!なっちゃん、大丈夫なんか?」とカウンターの中で三朗が声をかけた。カウンター席で瓶ビールを飲んでいた直が
「まあ、人前で小便漏らすくらいの元気があったら大丈夫やろ。カラカラカラ。」
と夏子をおちょくった。稀世も二階から降りてくると
「なっちゃん、陽菜ちゃんお疲れさん!私と直さんはあの場に居れへんかったことになってるから事情聴取あれへんかったけど二人は当事者やからみっちり聞かれて大変やったやろ。なっちゃんは骨折してるからビールよりお茶の方がええかな?」
と優しくねぎらってくれた。その返事を待たずに直が
「三朗、ビール二本出したって!これはわしからの二人へのご褒美や。骨折なんか、毛虫に刺されたみたいなもんや。一日たってたらもう飲めるわい。まあ、夏子に対しては、慰めの一本でもあるけどな。カラカラカラ。」
意味深な一言が気になったが、せっかくなので冷えたビールで乾杯して夏子と陽菜は稀世と直に「その節は、応援ありがとうございました。」と頭を下げた。
陽菜がジャストなタイミングでの登場の裏側について尋ねた。時は少し遡り、弘道が夏子と喧嘩した翌日になるが、昼の巡回の際にランチタイムで向日葵寿司に来ていた直と稀世に弘道はありのままを二人に話していたとのことだった。ライフル銃を製造するような団体に「やろうぜ会」だけで敵うはずもないが、今の夏子にそれを言っても話にならないので「いざ」というときは陰で支えてほしいと土下座までしたという。
その後も、弘道は花音奪還作戦の進捗状況を満から日々連絡を受け、良太郎、智とも連絡を取り合っていたという。智の会社での情報収集で銃器準備集合または大麻所持および栽培の確固たる証拠がつかめれば府警でも動けると陰で連絡を密にしていて、警察が動ける予定に合わせてXデイが設定されていた。
突入作戦の日にイレギュラーがあった際のシミュレーションも夏子と陽菜の知らぬところで稀世と直も参加していたことが明らかにされた。
直には知り合いに頼まれていた家族の脱会が花音救出を目的としている夏子たちの行動とリンクしていたことが意味深に付け加えられた。
「まあ、お前らに便乗して、わしも古くからの知り合いの頼まれごとを解決できたんやからお互い様やけどな。カラカラカラ。」
直がご機嫌に陽菜にビールのおかわりを注ぐと「ご苦労さん」とねぎらい、夏子のグラスに注ぎ足すと「まあ、捨てる神ありゃ拾う神ありや。お疲れさん。」と声をかけた。(ん、なんかさっきから直さんの言葉が引っかかるんやけど…。まあ、気にすることでもあれへんのかな?)と思っていると、智からラインが入った。
「明後日の午後2時に府警の記者会見決定。当日朝に、地上波民放各局(テレビ大阪除く)に今回のスクープ映像を公開予定。思いのほか「社長賞」の金額が大きかったので、お疲れさん会は「サイゼ」から「向日葵寿司」に変更しようと思ってる。向日葵寿司さん1時スタートでいいか確認とっておいてな!」
「稀世姉さん、三朗兄さん、智からのラインやったんやけど今回の事件の記者会見が明後日の午後2時からテレビ放送あるみたいやから、やろうぜ会のお疲れさん会を1時からここでさせてもろていいですか?予算は智のもらった「社長賞」からやからパーッとやらせてもらえると嬉しいな。」
「せやな、サイゼやったらテレビあれへんけど、ここやったら記者会見を見ながらできるもんな。毎度そうやけど、私らの知らんところで凄い事件の裏があるのが府警の記者会見やし、今回もサプライズがあるかもしれへんな。直さんも呼んだるで!」
と陽菜と夏子が声をかけると三朗からは
「「門真の守護神」に使ってもらえるなんて光栄やな。もちろんオッケーやで。」
と気持ちよく了承してもらい、直からは
「ありがたくお呼ばれさせてもらうわな。たくさん「ハンカチ」持ってこなあかんな。」
とこれまた、意味深な言葉が付いた。
グループラインで連絡を回すと弘道からは「俺はその記者会見に出席予定。みんなよろしくやってくれ。」ときたが、それ以外は大樹、花音兄妹も含めて出席オッケーの返事が来た。
二日後、午後1時。ランチタイムのピークが過ぎた向日葵寿司に弘道を除く今回の事件の当事者が全員揃った。花音は中毒症状、禁断症状も出ず、当日朝の尿検査でも薬物は検出されなかったので、無事に退院してきたという。大樹と花音に中年の男性がついてきていて、直と何やら話している。直の「おめでとうさん」と言っている声が夏子の耳に届いた。
テレビの見れる席に全員着いた。中年男性も直の横の席に座っている。いつものランチの寿司下駄に今日は「中トロ」、「いくら」、「ウニ」、「クルマエビ」がのり、「夜の上握り」になっている。更に、尾頭付きの鯛の刺身が2匹出てきた。
「稀世さん、後は僕一人でできますから、もう席についてやってください。」
と三朗に言われ、稀世がエプロンを外し総勢11名の乾杯でお疲れさん会が始まった。
いつもは食べられない高級ネタに舌鼓を打ちながら、全員が笑顔で寿司と刺身をほおばっている。
「あっ、もう1時55分や。記者会見始まるで!」
と智が声を上げた。
皆がテレビに注目すると、右上に「驚異の真実!「魂の解放」教団の闇!大阪府警記者会見2時より!」のテロップの下にいつもの記者会見場が映し出されている。
「あっ、弘道さんや!なんかしゃべらはるんですかねぇ?うーん、いつになくカッコいいですよねー!」
席の端に座った弘道を見つけて満が指さした。夏子も弘道の姿を見て、(やっぱり弘道は向こう側の世界の人間やねんな。制服が弘道にはお似合いやな。)と思った。
「今日は、みんなの知らん情報も入ってるからよお聞いておくんやで。会見が終わり次第、テレビ大阪を除いて全局うちのスクープ連発やからな!」
智がみんなに叫ぶと同時に坂井警部が会場に現れ、フラッシュの嵐が起こり画面が真っ白になった。
「ただいまより、「魂の解放」教団門真本部全焼火災事件につきましての記者会見を行います。質問は会見後に受けつけますのでご静粛にお願いします。」
司会進行係の警察官がマイクを坂井に回すと記者会見が始まった。
最初に3日前の火災事故での唯一の死亡者として、現場の教団施設で炎に飛び込み自死した「魂の解放」教団教祖の天宮城伊織、35歳と発表があった。
「へー、あれ本名やったんや。まあ、死んだ日の教祖はなんか憎まれへんええ奴やったよな…。まあ、あの炎に飛び込んだらしゃあないわな…。」
夏子が呟いた。
続いて負傷者として司祭出雲万呂、本名金田正、頭部強打による脳挫傷で意識不明の重体と発表があった。
「あー、あの変態司祭、まだ意識戻れへんねや。良太郎と弘道が助けてなかったら、あのまま焼け死んでてんから危ないところやったんやな。」
陽菜がうなった。
会見では稀世が右手首を砕いたやくざの組長と夏子の事は伏せられていた。記者会見の内容では信者にケガを負ったものはおらず全員が胸をなでおろした。
坂井の話によると、「教団内部に警察への内部告発を行なった者がいるとして、「魂の解放」教団のホストコンピュータのデータがそのまま転送されていたことになっており、「主犯格である教祖は死亡、司祭は意識不明状態ではあるが火災現場に残された多数のアサルトライフルを含む武器の所有・製造の罪と半焼で発見された大麻製造現場と半製品の所持の罪をもって被疑者死亡及び意識不明の状況での状況証拠による起訴に踏み切る。3日という異例の短期間ではあるが、ホストコンピュータのデータ解析により、十分に起訴できる内容である。」と発表があった。
花音の薬物使用とわいせつビデオの公開については何も語られず、夏子は「ほっ」とした。(これで発表されとったら、デリカシーの無いネット民が晒しに来てしまうところやったもんな。動画の削除は、何処に卸したんかわかってるやろうし難しくないやろ。いざとなったら良太郎にミラー動画も追跡させて消したるからな…。)と夏子は思い、花音を見つめるとかわいらしい笑顔で夏子に会釈した。
ここから先の背景は、予想外のものだった。てっきり隣の国の本部による資金集めの策略と皆が思っていたが、日本の与党議員との関係を国会で追及している野党第一党の大阪の大物議員が絡んでいることが分かった。議員自身は帰化しているものの、本国に帰国した親が本部教団の熱心な信者で、親からの協力依頼と与党への攻撃材料としての教団の悪事を政治利用しようとしていたことが発表された。
当該野党議員と反社の関係も発表され、本物の大麻を使用した、脱法ドラッグの別名称をつけた「大麻グミ」などを教団に製造させ、反社がそれを販売し、その仲介をした野党議員に献金としてその利益の一部が還元されていたことが発表された。
野党議員の支持者を通じて、対戦車ロケット弾のRPG-7や、軍用ドローンの図面も隣の国から手に入れ、教団での製造を意図していたとのことだった。
「魂の解放」教団が文部科学省による解散命令が発布された際には、教団信者によるロケット弾と自爆ドローンで首相を含む与党幹部の暗殺計画までデータベースから見つかったとの報告で坂井の記者会見は終了した。テレビ画面は、出席記者の質問へと切り替わっていた。
「ぎょへー、凄い話やったんやなー。なっちゃん、陽菜ちゃんで首相の命を救ったんはこれで二回目やな。うーん、ふたり、いや「やろうぜ会」のみんなの活躍が公表できへんのが惜しいな!ここは、私が変わって褒めたるわ!とっておきの「純米大吟醸」を出したるわな!」
と言い、稀世がカウンターの奥から幻の酒と言われる岐阜の有名酒蔵の純米大吟醸を持って来てテーブルに置いた。
思いもよらぬ稀世からの振る舞い酒に、お疲れさん会は盛り上がった。適度に酔いも回り、そろそろお開きと言うところで、大樹が立ち上がり
「改めて、皆さん、この度はありがとうございました。この感謝はとても言葉にしきれるものではございません。特に、なっちゃん、もとい夏子さんには、偶然出会っただけの僕に対して、聖母のように大きな愛で接していただきました。私利私欲関係なく、「正義」と「慈愛」の精神を持つ、世界最高の女性である夏子さんに事件解決した暁にはどうしてもお伝えしたいことがありました。」
と言い、夏子の顔をじっと見つめた。
「えっ、確かに事件解決後に話したいことがあるって言ってたけど、こんなみんなの前で言わんでええんとちゃうの…。照れてしまうやん…。私どうしたらええの…。」
真っ赤になる夏子に
「いや、この場やからいいんです。みんなに証人になってもらえますから。」
と大樹はぐいぐい押してくる。(えっ、「証人」ってなに?いきなりここでプロポーズして、みんなはその「証人」ってこと?きゃー、心の準備がまだ…)言葉が出ない夏子に大樹は真剣な視線を向けて言った。
「夏子さん、あなたの大きな「愛」に感銘を受けました。まさに僕にとって夏子さんは聖母マリアです。どうか僕と花音の結婚式では「仲人」役か、僕の父と並んで花音の「母親」の代わりをしてもらえませんか!」
「魂の解放」教団の火災事故は翌日の朝のワイドショーのトップニュースとして取り上げられた。その中で大阪の放送局制作の早朝のワイドショーだけが教団の闇についても公開したことが一気にネット界を賑わせた。地域住民によるスマホ撮影の動画に入る「タカカカカ」という音がカラシニコフAK―47であることや、爆発音が手りゅう弾の破裂音だったことがそれまでの教団水面下の武装化を表面化させ近所の人たちを驚かせた。
メディアプロダクトの智は事件後、事情聴取を免除してもらい徹夜でテレビ番組用に映像データの編集に追われた。今朝の時点では、警察の調査がまだ終わっていないため、施設内の監視カメラ映像等は使えていないし、銃器製造・保管、大麻栽培・販売、信者の売春あっせん・ビデオ配信等があったことはまだ伏せられている。
やろうぜ会の活躍も当然のごとくトップシークレットであるが、助かった信者の証言で避難誘導に尽力した民間人が複数いたことは知られている。
門真市総合病院の待合室のテレビでワイドショーを見ている女の子が二人いた。
「なっちゃん、いざあの火災を外から見たらえらいことになってたんやな。あれだけの火事で亡くなったんが教祖一人で済んだんは奇跡やな。まあ、大きいケガしたんも司祭と稀世姉さんに手首折られた組長くらいで済んだんも、良太郎の最初の作戦で子供や信者を先に逃がす方法を取ったんが良かったんやろな。」
「陽菜ちゃん、何言うてんねん。横に大けがした「美少女」が一人おるやろ!稀世姉さんの見積もりやと左腕骨折に多分肋骨5本亀裂骨折!耳たぶちぎれて、美貌の頬に銃弾による擦過傷やで!前回は陽菜ちゃんが撃たれて大変やったけど、今回は、みんなのケガを私が一人で受けたってなもんやでなぁ。」
「うーん、自分で「美少女」って言うてるだけまだ余裕あるな。まあ、頬の傷は軽くてよかったし、耳も整形で見た目にはわからんようになるっていう事で良かったやん。まあ、最後にお漏らししたことはみんなには内緒にしといたるから安心してな!」
「もう、声が大きいよ!あいたたた。もう、声を上げるだけでも、肋骨に響くんやから怒らせたり笑わせたりせんとって―や。」
「坂川さーん、坂川夏子さーん。」
顔なじみの看護師の奥村みゆきの呼び出しがかかった。
「昨日の宗教施設の事件って夏子さん達が絡んでたんだって?稀世さんや直さんもでしょ。ほんと、門真の平和のために頑張ってくれるわねぇ…。さっき、問診票見させてもらったけど、普通の女の子がするケガじゃないわよ。まあ、うちのドクターもライフル銃で撃たれたって読んでびっくりしてたわよ。」
レントゲン室に向かう廊下を歩きながら、みゆきが夏子に話しかけた。すると後ろについて歩いていた陽菜がみゆきに大げさに解説を加えた。
「いやー、そりゃ獅子奮迅の戦い方やったんですよ。12人のやくざのいる施設に乗り込んで、ライフル銃を持った教団幹部にたった一人で挑んで最後は燃え盛る教団本部の3階の窓から脱出ジャーンプ!
なっちゃんが飛び降りて5分後には教団本部はガラガラドッシャーン!ほんと危機一髪やったんですよ!」
レントゲンを撮り、医師の診断を受け左腕のギブスを巻き直し、胴回りのコルセットを巻いた。稀世の見積もり通りの負傷だった。耳たぶと頬は消毒だけで治療は終わった。
「さあ、門真署に行こか。どっぷりと調書とられるんやろなぁ…。「かつ丼喰うか?」、「お前の故郷の山が呼んでるなぁ。」とか言われてな。」
「って、なんで私が犯人役やねん!あいたたた。」
陽菜がハンドルを握ったワゴンRは門真市総合病院の駐車場を出て門真署に向かった。その車中で陽菜が夏子に尋ねた。
「なっちゃん、昨日の現場での話やねんけど、同時通話アプリ入れてたから聞くとも無しになっちゃんと弘道の会話を聞いてしもてんな…。決して興味本位とかじゃないからごめんやで。良太郎は弘道がなっちゃんの事を好きやって知ってたんやけど、私は初めて知ったから…。どうなん、なっちゃんの気持ちは?
昨日は弘道にキスを求められて、なっちゃんは「余裕があったら処女あげた」とか「あの世で最後までしよな」って言うてたけど、これから弘道と付き合うん?満君や大樹さんはどないすんの?」
夏子は(あー、あの恥ずかしい話、全部聞かれとったんか!しくったよな…。当然大樹にも聞かれてるわけやし…。確かに、あの時、弘道告白されてその気になったんは事実やし…、ただ、大樹も事件が終わったら私に話があるって言うてたし…。状況も説明せんといきなり3階の窓から私を放り投げるようなデリカシーの無い弘道よりは、年上で落ち着いてる妹思いの優しい大樹かなぁ…?うーん、ここはお茶を濁しておくか…)少し考えこんで
「まあ、吊り橋効果っていうやつとちゃう?映画の「タイタニック」や「スピード」みたいに非日常の命の危機になると遺伝子保存のためにその場にいた人に告白したくなるって…。弘道も今日、顔を合わせえたら「ケロッ」としてるか、「まずいこと言ってしもた」って思ってるんとちゃうかな?まあ、3階から放り投げられた時は、まさか稀世姉さんや陽菜ちゃんが教団の幌付きトラックの屋根で受け止める準備してるなんて思ってなかったからほんまに死んだと思ったんやで!あっ、あの時、私「おしっこ漏れたー」って叫んだんも大樹や満君に聞かれてるんか!あちゃー、こりゃもうあかんかもしれへんな…。くすん。」
夏子は黙り込んでしまい、会話が途切れたまま車は門真署に到着した。
事情聴取は5時間にわたり、陽菜と二人セットで担当刑事と書記役の4人で続けられた。事前にメディアクリエイトが事件の全貌をレポートとして提出していたため、花音の救出事件と昨日のことに特化しての聴取となった。良太郎と二人で行った、盗聴器や盗撮カメラの設置や、ハッキングも正直に話したがメディアクリエイトからの依頼だったという流れになっていたようでお咎めは無かった。司祭は今も意識不明の重体で教祖は明け方に地下室で焼死体で見つかったとのことだった。
午後4時、門真署を出ると通常業務のパトロール巡回を終えたバイクの弘道と顔を合わせた。
「なっちゃん、ケガの具合はどないや?耳はともかく、頬の傷は浅くてよかったな。腕や肋骨の骨折でしばらく不自由やろうけど無茶せんようにな。陽菜ちゃん、しっかり見張っといたってな。じゃあまたな。」
といつもと変わらない調子だったので、少し気が抜けた。
スマホの電源を入れると、大樹からラインが入っていた。彩雲が勤める大阪警察病院の精神科で花音は薬物中毒の検査を受けているという事だった。現在、中毒症状が出ることはなく、もう二日間入院して禁断症状の有無を確認する各種検査結果を待ち、退院しての経過観察になるだろうという花音の容態の報告と夏子のケガを心配する内容だった。「よかったね。ゆっくり休んでな。私は大丈夫。これからは不死身のなっちゃんって呼んでな(笑)!」のメッセージと「OK」のスタンプを送った。
「なっちゃん、良太郎と満君は夕方からの聴取やから入れ違いやし、どうせ智は今日も徹夜やろ。彩雲も今日は当直って言うてたから、稀世姉さんと直さんに昨日のお礼言いに行っておこか?」
「せやな、昨日、稀世姉さんと直さんの援軍が無かったらどないなってたかわからへんもんな。お礼のお菓子くらい手土産に向日葵寿司に顔だそか。」
と二人で話すと稀世に「あと15分程で顔出します。」とラインを入れ、車を走らせた。
まだ暖簾の出ていない向日葵寿司の引き戸を開けると「おっ、昨日はお疲れさん!なっちゃん、大丈夫なんか?」とカウンターの中で三朗が声をかけた。カウンター席で瓶ビールを飲んでいた直が
「まあ、人前で小便漏らすくらいの元気があったら大丈夫やろ。カラカラカラ。」
と夏子をおちょくった。稀世も二階から降りてくると
「なっちゃん、陽菜ちゃんお疲れさん!私と直さんはあの場に居れへんかったことになってるから事情聴取あれへんかったけど二人は当事者やからみっちり聞かれて大変やったやろ。なっちゃんは骨折してるからビールよりお茶の方がええかな?」
と優しくねぎらってくれた。その返事を待たずに直が
「三朗、ビール二本出したって!これはわしからの二人へのご褒美や。骨折なんか、毛虫に刺されたみたいなもんや。一日たってたらもう飲めるわい。まあ、夏子に対しては、慰めの一本でもあるけどな。カラカラカラ。」
意味深な一言が気になったが、せっかくなので冷えたビールで乾杯して夏子と陽菜は稀世と直に「その節は、応援ありがとうございました。」と頭を下げた。
陽菜がジャストなタイミングでの登場の裏側について尋ねた。時は少し遡り、弘道が夏子と喧嘩した翌日になるが、昼の巡回の際にランチタイムで向日葵寿司に来ていた直と稀世に弘道はありのままを二人に話していたとのことだった。ライフル銃を製造するような団体に「やろうぜ会」だけで敵うはずもないが、今の夏子にそれを言っても話にならないので「いざ」というときは陰で支えてほしいと土下座までしたという。
その後も、弘道は花音奪還作戦の進捗状況を満から日々連絡を受け、良太郎、智とも連絡を取り合っていたという。智の会社での情報収集で銃器準備集合または大麻所持および栽培の確固たる証拠がつかめれば府警でも動けると陰で連絡を密にしていて、警察が動ける予定に合わせてXデイが設定されていた。
突入作戦の日にイレギュラーがあった際のシミュレーションも夏子と陽菜の知らぬところで稀世と直も参加していたことが明らかにされた。
直には知り合いに頼まれていた家族の脱会が花音救出を目的としている夏子たちの行動とリンクしていたことが意味深に付け加えられた。
「まあ、お前らに便乗して、わしも古くからの知り合いの頼まれごとを解決できたんやからお互い様やけどな。カラカラカラ。」
直がご機嫌に陽菜にビールのおかわりを注ぐと「ご苦労さん」とねぎらい、夏子のグラスに注ぎ足すと「まあ、捨てる神ありゃ拾う神ありや。お疲れさん。」と声をかけた。(ん、なんかさっきから直さんの言葉が引っかかるんやけど…。まあ、気にすることでもあれへんのかな?)と思っていると、智からラインが入った。
「明後日の午後2時に府警の記者会見決定。当日朝に、地上波民放各局(テレビ大阪除く)に今回のスクープ映像を公開予定。思いのほか「社長賞」の金額が大きかったので、お疲れさん会は「サイゼ」から「向日葵寿司」に変更しようと思ってる。向日葵寿司さん1時スタートでいいか確認とっておいてな!」
「稀世姉さん、三朗兄さん、智からのラインやったんやけど今回の事件の記者会見が明後日の午後2時からテレビ放送あるみたいやから、やろうぜ会のお疲れさん会を1時からここでさせてもろていいですか?予算は智のもらった「社長賞」からやからパーッとやらせてもらえると嬉しいな。」
「せやな、サイゼやったらテレビあれへんけど、ここやったら記者会見を見ながらできるもんな。毎度そうやけど、私らの知らんところで凄い事件の裏があるのが府警の記者会見やし、今回もサプライズがあるかもしれへんな。直さんも呼んだるで!」
と陽菜と夏子が声をかけると三朗からは
「「門真の守護神」に使ってもらえるなんて光栄やな。もちろんオッケーやで。」
と気持ちよく了承してもらい、直からは
「ありがたくお呼ばれさせてもらうわな。たくさん「ハンカチ」持ってこなあかんな。」
とこれまた、意味深な言葉が付いた。
グループラインで連絡を回すと弘道からは「俺はその記者会見に出席予定。みんなよろしくやってくれ。」ときたが、それ以外は大樹、花音兄妹も含めて出席オッケーの返事が来た。
二日後、午後1時。ランチタイムのピークが過ぎた向日葵寿司に弘道を除く今回の事件の当事者が全員揃った。花音は中毒症状、禁断症状も出ず、当日朝の尿検査でも薬物は検出されなかったので、無事に退院してきたという。大樹と花音に中年の男性がついてきていて、直と何やら話している。直の「おめでとうさん」と言っている声が夏子の耳に届いた。
テレビの見れる席に全員着いた。中年男性も直の横の席に座っている。いつものランチの寿司下駄に今日は「中トロ」、「いくら」、「ウニ」、「クルマエビ」がのり、「夜の上握り」になっている。更に、尾頭付きの鯛の刺身が2匹出てきた。
「稀世さん、後は僕一人でできますから、もう席についてやってください。」
と三朗に言われ、稀世がエプロンを外し総勢11名の乾杯でお疲れさん会が始まった。
いつもは食べられない高級ネタに舌鼓を打ちながら、全員が笑顔で寿司と刺身をほおばっている。
「あっ、もう1時55分や。記者会見始まるで!」
と智が声を上げた。
皆がテレビに注目すると、右上に「驚異の真実!「魂の解放」教団の闇!大阪府警記者会見2時より!」のテロップの下にいつもの記者会見場が映し出されている。
「あっ、弘道さんや!なんかしゃべらはるんですかねぇ?うーん、いつになくカッコいいですよねー!」
席の端に座った弘道を見つけて満が指さした。夏子も弘道の姿を見て、(やっぱり弘道は向こう側の世界の人間やねんな。制服が弘道にはお似合いやな。)と思った。
「今日は、みんなの知らん情報も入ってるからよお聞いておくんやで。会見が終わり次第、テレビ大阪を除いて全局うちのスクープ連発やからな!」
智がみんなに叫ぶと同時に坂井警部が会場に現れ、フラッシュの嵐が起こり画面が真っ白になった。
「ただいまより、「魂の解放」教団門真本部全焼火災事件につきましての記者会見を行います。質問は会見後に受けつけますのでご静粛にお願いします。」
司会進行係の警察官がマイクを坂井に回すと記者会見が始まった。
最初に3日前の火災事故での唯一の死亡者として、現場の教団施設で炎に飛び込み自死した「魂の解放」教団教祖の天宮城伊織、35歳と発表があった。
「へー、あれ本名やったんや。まあ、死んだ日の教祖はなんか憎まれへんええ奴やったよな…。まあ、あの炎に飛び込んだらしゃあないわな…。」
夏子が呟いた。
続いて負傷者として司祭出雲万呂、本名金田正、頭部強打による脳挫傷で意識不明の重体と発表があった。
「あー、あの変態司祭、まだ意識戻れへんねや。良太郎と弘道が助けてなかったら、あのまま焼け死んでてんから危ないところやったんやな。」
陽菜がうなった。
会見では稀世が右手首を砕いたやくざの組長と夏子の事は伏せられていた。記者会見の内容では信者にケガを負ったものはおらず全員が胸をなでおろした。
坂井の話によると、「教団内部に警察への内部告発を行なった者がいるとして、「魂の解放」教団のホストコンピュータのデータがそのまま転送されていたことになっており、「主犯格である教祖は死亡、司祭は意識不明状態ではあるが火災現場に残された多数のアサルトライフルを含む武器の所有・製造の罪と半焼で発見された大麻製造現場と半製品の所持の罪をもって被疑者死亡及び意識不明の状況での状況証拠による起訴に踏み切る。3日という異例の短期間ではあるが、ホストコンピュータのデータ解析により、十分に起訴できる内容である。」と発表があった。
花音の薬物使用とわいせつビデオの公開については何も語られず、夏子は「ほっ」とした。(これで発表されとったら、デリカシーの無いネット民が晒しに来てしまうところやったもんな。動画の削除は、何処に卸したんかわかってるやろうし難しくないやろ。いざとなったら良太郎にミラー動画も追跡させて消したるからな…。)と夏子は思い、花音を見つめるとかわいらしい笑顔で夏子に会釈した。
ここから先の背景は、予想外のものだった。てっきり隣の国の本部による資金集めの策略と皆が思っていたが、日本の与党議員との関係を国会で追及している野党第一党の大阪の大物議員が絡んでいることが分かった。議員自身は帰化しているものの、本国に帰国した親が本部教団の熱心な信者で、親からの協力依頼と与党への攻撃材料としての教団の悪事を政治利用しようとしていたことが発表された。
当該野党議員と反社の関係も発表され、本物の大麻を使用した、脱法ドラッグの別名称をつけた「大麻グミ」などを教団に製造させ、反社がそれを販売し、その仲介をした野党議員に献金としてその利益の一部が還元されていたことが発表された。
野党議員の支持者を通じて、対戦車ロケット弾のRPG-7や、軍用ドローンの図面も隣の国から手に入れ、教団での製造を意図していたとのことだった。
「魂の解放」教団が文部科学省による解散命令が発布された際には、教団信者によるロケット弾と自爆ドローンで首相を含む与党幹部の暗殺計画までデータベースから見つかったとの報告で坂井の記者会見は終了した。テレビ画面は、出席記者の質問へと切り替わっていた。
「ぎょへー、凄い話やったんやなー。なっちゃん、陽菜ちゃんで首相の命を救ったんはこれで二回目やな。うーん、ふたり、いや「やろうぜ会」のみんなの活躍が公表できへんのが惜しいな!ここは、私が変わって褒めたるわ!とっておきの「純米大吟醸」を出したるわな!」
と言い、稀世がカウンターの奥から幻の酒と言われる岐阜の有名酒蔵の純米大吟醸を持って来てテーブルに置いた。
思いもよらぬ稀世からの振る舞い酒に、お疲れさん会は盛り上がった。適度に酔いも回り、そろそろお開きと言うところで、大樹が立ち上がり
「改めて、皆さん、この度はありがとうございました。この感謝はとても言葉にしきれるものではございません。特に、なっちゃん、もとい夏子さんには、偶然出会っただけの僕に対して、聖母のように大きな愛で接していただきました。私利私欲関係なく、「正義」と「慈愛」の精神を持つ、世界最高の女性である夏子さんに事件解決した暁にはどうしてもお伝えしたいことがありました。」
と言い、夏子の顔をじっと見つめた。
「えっ、確かに事件解決後に話したいことがあるって言ってたけど、こんなみんなの前で言わんでええんとちゃうの…。照れてしまうやん…。私どうしたらええの…。」
真っ赤になる夏子に
「いや、この場やからいいんです。みんなに証人になってもらえますから。」
と大樹はぐいぐい押してくる。(えっ、「証人」ってなに?いきなりここでプロポーズして、みんなはその「証人」ってこと?きゃー、心の準備がまだ…)言葉が出ない夏子に大樹は真剣な視線を向けて言った。
「夏子さん、あなたの大きな「愛」に感銘を受けました。まさに僕にとって夏子さんは聖母マリアです。どうか僕と花音の結婚式では「仲人」役か、僕の父と並んで花音の「母親」の代わりをしてもらえませんか!」
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる