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私を助けて
第十一話 少年の誤算
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※深夜の一人称視点
「…………オイ、なんだその目は?」
ジト目を向ける太一とエアに対して、不機嫌極まりない声で俺は言った。特に、下を向いて頭を振りながら呆れる太一に向けて。だが、当然の如く呆れ声が返ってきた。
「深夜って、意外と抜けてるのね……」
「なぜ、そんな話を聞いていて他の異邦人がいないと思うんだ? 確実にいるだろっ! ていうか、アンタの母親は異邦人だったのか!?」
太一の言葉に、たっぷり5秒ほど固まってから俺は応えた。なぜなら、今まで目の前にエアという存在が来るまで、その事実をすっかり忘れていたのだ。
自分が覚えている限りだが、父親が話してくれた唯一の母親の話だったはずだ。それを全く覚えていなかった。
いくら人間の脳が全てを覚えていられないからといって、こんな重要なことを忘れてしまうものだろうか。
「…………なぜ、俺は忘れていたんだ?」
その声は呟く程度の小さい声だったが、強い意思が隠れていた。
だが、深夜のものとは思えないほど低く冷え切った声で、深夜を知るものからは想像もつかないような声だった。
それに、自分でも驚いていたくらいだ。
「オイ、難しい顔してどうした深夜?」
目敏く俺の微かな変化に気付いた太一が声を掛けてきたが、心配をさせたくないのでなんでもないという風に首を振った。今、この疑問を話すことはやめておこう。自分でもなぜかわからないのだから。
「いいや、なんでもないさ。そういえば思い出したコトがあってな」
「ん? なんだ、それは」
俺は太一を部屋の隅まで引っ張り、エアに聞こえないように耳打ちした。あの驚異的なまでの聴覚を欺くためである。
「俺の家に女性用の服が一着もなくてだな。俺の服をエアに貸したんだが、ちょっとアブナクないか? いろんな意味で」
そう言いきると太一はエアのほうを見て納得したように頷く。そして、渋い顔になりながら言った。
「仮にも追われる身だということを忘れているかのような恰好だな。あんな服じゃ、そこらの男共は全員寄って来るぞ。注目を集めること間違いなしだな」
あんな服というのも、着ているのは深夜が持っているTシャツとジーンズ(深夜はシャツとジーンズしか持っていない)だ。一見すると地味に見えるが、女の子特有の体つきと、抜群のスタイルを持つエアが着ると恐ろしい破壊力を持つ。
自分の顔を見慣れている深夜は、必然的に女性に対して免疫があるが、その深夜ですら色々とやばい。
「…………上にジャケットでも羽織れば大丈夫じゃないか?」
自分は顔さえ隠しておけば地味そのものなので、目立たなくさせるための解決法が全く思いつかない。苦肉の策として出した提案もすぐに太一が首を横に振る。
「どこぞのモデルみたいになるぞ」
にべもなく拒否する太一。言いたいことはすごくわかるし、雑誌の表紙を飾っている姿が容易に想像できる。想像ですらとても似合ってしまうので、これまた質が悪い。
二人揃って同時にエアを見て、これまた同時に溜め息を吐く。
鏡写しのように見事に同時に動いた二人を見て、エアがギョッとしたような表情になり、若干身を引く。だが、悩んでいるというのを悟ったのか、すぐに訝しげな表情に変わった。形の良い眉をキレイに寄せて、実に困っているという様相を呈している。実に可愛い……じゃなくて!
「何よ、二人ともどこか諦めたような顔して」
「「……諦めるしかないよな、やっぱり……」」
二人全く同時に声を発し、全く同時に溜め息をついた。ここまで同時とか、大親友すぎるだろ。
「君たち、なんだかヘンよ? 頭でも打ったの?」
「自覚してないトコロがまた恐いっ!」
「どこぞのモデルよりタチが悪いな」
益々、怪しげな顔になったエアに対し二人は悪態をついた。太一と同じことを考えていたのが、妙にこそばゆい。
エアは訝しげな顔から取って代わり、眉を吊り上げて目を細めるという険しい顔になったので、危機を察した俺が素直に打ち明けた。美人は怒らせると怖いというのは、深夜の経験則によるものだ。
「イヤイヤ、エアが可愛すぎてどうしようかっていう話だよ」
隣の太一を見たら、いつもみたく囃し立てるのではなく真剣に頷いていた。太一も本能的にエアの危険度を察したのかもしれない。
「そうそう、深夜の言う通り」
「エアが可愛すぎてどうしようかっていう話だよ」
深夜の言葉を全面的に肯定した太一と、さっきと同じ言葉を繰り返す深夜。
二人の真剣さが伝わったのか、異性に(しかも、片方は超美少年)に揃って可愛いと言われ一気に顔を赤くするエア。
「え、えーと。なんか誤解してたようでゴメンなさい」
「いやぁ、君が謝るようなコトじゃないさ。俺が貸した服のせいでもあるからね。しっかし、どうしようかなぁ」
「……………………」
赤くなりながら謝るエアが可愛くて、言葉を発する時に少し照れてしまう。
うーむ、誤魔化せたからいいか。いや、それにしても、チョロすぎないか? エアがこの先、ヘンな男に捕まらないか心配だなぁ。などと母親目線で見てしまう。
まぁ、すでに自分たちといる時点で、ヘンな男に捕まっているとも言えなくもないが。
「…………オイ、なんだその目は?」
ジト目を向ける太一とエアに対して、不機嫌極まりない声で俺は言った。特に、下を向いて頭を振りながら呆れる太一に向けて。だが、当然の如く呆れ声が返ってきた。
「深夜って、意外と抜けてるのね……」
「なぜ、そんな話を聞いていて他の異邦人がいないと思うんだ? 確実にいるだろっ! ていうか、アンタの母親は異邦人だったのか!?」
太一の言葉に、たっぷり5秒ほど固まってから俺は応えた。なぜなら、今まで目の前にエアという存在が来るまで、その事実をすっかり忘れていたのだ。
自分が覚えている限りだが、父親が話してくれた唯一の母親の話だったはずだ。それを全く覚えていなかった。
いくら人間の脳が全てを覚えていられないからといって、こんな重要なことを忘れてしまうものだろうか。
「…………なぜ、俺は忘れていたんだ?」
その声は呟く程度の小さい声だったが、強い意思が隠れていた。
だが、深夜のものとは思えないほど低く冷え切った声で、深夜を知るものからは想像もつかないような声だった。
それに、自分でも驚いていたくらいだ。
「オイ、難しい顔してどうした深夜?」
目敏く俺の微かな変化に気付いた太一が声を掛けてきたが、心配をさせたくないのでなんでもないという風に首を振った。今、この疑問を話すことはやめておこう。自分でもなぜかわからないのだから。
「いいや、なんでもないさ。そういえば思い出したコトがあってな」
「ん? なんだ、それは」
俺は太一を部屋の隅まで引っ張り、エアに聞こえないように耳打ちした。あの驚異的なまでの聴覚を欺くためである。
「俺の家に女性用の服が一着もなくてだな。俺の服をエアに貸したんだが、ちょっとアブナクないか? いろんな意味で」
そう言いきると太一はエアのほうを見て納得したように頷く。そして、渋い顔になりながら言った。
「仮にも追われる身だということを忘れているかのような恰好だな。あんな服じゃ、そこらの男共は全員寄って来るぞ。注目を集めること間違いなしだな」
あんな服というのも、着ているのは深夜が持っているTシャツとジーンズ(深夜はシャツとジーンズしか持っていない)だ。一見すると地味に見えるが、女の子特有の体つきと、抜群のスタイルを持つエアが着ると恐ろしい破壊力を持つ。
自分の顔を見慣れている深夜は、必然的に女性に対して免疫があるが、その深夜ですら色々とやばい。
「…………上にジャケットでも羽織れば大丈夫じゃないか?」
自分は顔さえ隠しておけば地味そのものなので、目立たなくさせるための解決法が全く思いつかない。苦肉の策として出した提案もすぐに太一が首を横に振る。
「どこぞのモデルみたいになるぞ」
にべもなく拒否する太一。言いたいことはすごくわかるし、雑誌の表紙を飾っている姿が容易に想像できる。想像ですらとても似合ってしまうので、これまた質が悪い。
二人揃って同時にエアを見て、これまた同時に溜め息を吐く。
鏡写しのように見事に同時に動いた二人を見て、エアがギョッとしたような表情になり、若干身を引く。だが、悩んでいるというのを悟ったのか、すぐに訝しげな表情に変わった。形の良い眉をキレイに寄せて、実に困っているという様相を呈している。実に可愛い……じゃなくて!
「何よ、二人ともどこか諦めたような顔して」
「「……諦めるしかないよな、やっぱり……」」
二人全く同時に声を発し、全く同時に溜め息をついた。ここまで同時とか、大親友すぎるだろ。
「君たち、なんだかヘンよ? 頭でも打ったの?」
「自覚してないトコロがまた恐いっ!」
「どこぞのモデルよりタチが悪いな」
益々、怪しげな顔になったエアに対し二人は悪態をついた。太一と同じことを考えていたのが、妙にこそばゆい。
エアは訝しげな顔から取って代わり、眉を吊り上げて目を細めるという険しい顔になったので、危機を察した俺が素直に打ち明けた。美人は怒らせると怖いというのは、深夜の経験則によるものだ。
「イヤイヤ、エアが可愛すぎてどうしようかっていう話だよ」
隣の太一を見たら、いつもみたく囃し立てるのではなく真剣に頷いていた。太一も本能的にエアの危険度を察したのかもしれない。
「そうそう、深夜の言う通り」
「エアが可愛すぎてどうしようかっていう話だよ」
深夜の言葉を全面的に肯定した太一と、さっきと同じ言葉を繰り返す深夜。
二人の真剣さが伝わったのか、異性に(しかも、片方は超美少年)に揃って可愛いと言われ一気に顔を赤くするエア。
「え、えーと。なんか誤解してたようでゴメンなさい」
「いやぁ、君が謝るようなコトじゃないさ。俺が貸した服のせいでもあるからね。しっかし、どうしようかなぁ」
「……………………」
赤くなりながら謝るエアが可愛くて、言葉を発する時に少し照れてしまう。
うーむ、誤魔化せたからいいか。いや、それにしても、チョロすぎないか? エアがこの先、ヘンな男に捕まらないか心配だなぁ。などと母親目線で見てしまう。
まぁ、すでに自分たちといる時点で、ヘンな男に捕まっているとも言えなくもないが。
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