意志をつぐ者

タクナ

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混沌の始まり

第十四話 模擬戦闘開始!!

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 「アレ~? 皆で集まって何してるの?」

 「カオリか。 これから、マサルさんとアキさんと模擬戦闘するんだよ。 コータのせいで、コータのせいでっ!」

 コータ、ミツル、ワタル、誠二の4人はアパートの部屋を先に出て、訓練所のほぼ中央にある|闘技場<コロシアム>へと向かっている途中で、前から来たカオリに声をかけられる。
 そのカオリに、誠二がボヤくように説明をし、コータを恨めしそうな目で見ながら言う。

 「いいだろう、別に! 面倒くさがりの二人が戦ってくれるなんて貴重な機会なんだから、こういう時にしっかりと経験を積んでおかないと!」

 「とか言って、今の訓練所で1位、2位を争う俺たちがチームで戦うんだから、いくらなんでも負けないでしょ?」

 コータがもったいないとでも言わんばかりに言う。
 そのコータの負け勘定に入れているような物言いに誠二が軽々しく聞く。
 だが、その言葉を聞いたコータはまるでこの世のモノではないような物を見る目でたっぷりと3秒は固まってから、そして、誠二を見ながら言葉を続ける。

 「………………何言ってるの?  アキ|姉<ねぇ>ですら僕が全力で戦っても、片手で負けるんだよ? それにただの一回も勝ち星を上げたコトがないんだよ?」

 「………………マジで?」
 「………………嘘だろ?」
 「……つまらない冗談だな?」

 たっぷりと3秒も固まってから言うワタルと誠二に、珍しく言葉を発するまで少し間が空いたミツル。

 なんせ、コータは、今のこの訓練所では近接戦闘に関しては負けなしなのだ。
 訓練所で年に何度かある武闘会では、近接部門1位を何年も連続で取っているのだ。
 魔法が使用可能の総合部門では、1位はミツルだが、それでも5位以内にはいつも入っている。
 
 そんなコータが勝ったコトがない相手など、3人は見たコトがない。
 蓮とは毎回いい勝負をしているが、それでも、コータが毎度競り勝つので、ホントにただの一度も見たコトがない。

 「僕が嘘ついてるように見える? コレで相手がどれだけ強いかわかったでしょ?」

 「………………おまえがあれだけ強くて天狗にならない理由を垣間見た気がする」
 
 「それな~」
 「うむ」

 真剣な声で自分に言い聞かせるように言うコータに、誠二が畏れを含んだ声でコータに声をかける。
 その言葉に二もなく頷きながら肯定するワタルとミツル。

 「へぇ~、まぁ、頑張りなさいよ」

 「アレ? カオリはてっきり野次馬根性で見にくるかと思ったのに~」

 「…………生憎、あたしもそんなにヒマじゃないわよ」

 「そうかぁ、そうだよなぁ~」

 珍しく静かに聞いていたカオリが、コータの話しが終わったと見計らい、この場を去ろうとする。
 そのカオリにワタルが、からかうように言うが、睨みながら返すカオリ。
 ワタルはどこか含んだように納得したが、カオリは何も言わずにそのまま立ち去る。
 カオリも昔から訓練所にいるので、マサルの強さは十分に知っているので、コータ達が勝てるとは思っていないのだろう。

 「流石は、伝説の中のヒトってコトか」

 「なにか、言ったかコータ?」

 「いいや、なんでもない」

 全てを悟ったような声で独白したコータだが、それに気付いて声をかけてきた誠二には、知られないように首を振って否定した。
 戦う前から、班長が弱気では勝てるものも勝てなくなってしまう。
 そうして、弱い気持ちを吐きだし、両頬を思い切り勢いよくパチンと叩く。
 何事かとコータを見る誠二とワタルには何も言わずに前だけを見る。

 「よし、行こうか」

 「「おう?」」
 「ふむ」
 
 気を引き締めるように言うコータだったが、いきなりで困惑したワタルと誠二は思わず疑問形で応える。
 ミツルはいつも通り、無表情で応える。



 闘技場に着き、マサルとアキの二人を前にして、これから戦おうかという時なのだが、コータ達は唖然としている。
 もちろん、ミツルは除くが。

 「…………なぜ、こうなった?」

 「僕たち、こんな人数集めてないよね?」

 「考えても仕方ないと思うなぁ~」

 「どうせ、カオリだろう」

 「「「あぁ(納得)」」」

 まず最初に口を開いたのは誠二で、ひたすらわからないと言う風に言い、それにコータも追従する。
 すでにどこか諦めたように俯瞰するワタルに、ミツルが正解を告げるクイズ番組の司会者みたいに揺るがない声音で告げる。
 その言葉に、驚きもせずに納得する一同。

  4人がこの会話を交わしているのにも理由がある。
 その理由とは、闘技場コロシアムの周囲にある客席が訓練生と、いつの間に到着したのか、斉藤少将率いる遊軍の応援部隊と訓練所で生活しているサテュロス(上半身が人間で、下半身がヤギで頭に角が生えており、怪物であるが訓練生を守護する立場である)で埋められているのだ。
 しかも、斉藤なんかは最前列に陣取っており、目が合うとちゃっかりこちらに手など振ってきた。
  コータは溜め息を付いて視線をズラすとちょうどそこにはユキがいて、こちらに微笑みながら声には出さずに口で『頑張れ』と言ってくれた。
 俄然、ヤル気が湧いてきたコータであった。
 隣で見ていたワタルはやれやれと首を振る。

 「なんか、勝てそうな気がしてきたぜ」
 
 嬉しさで口調が変わったコータを悩ましげに見ながら、誠二の視界に入らないように配慮するワタル。
 もし、視界に入ったなら、戦う前に誠二が退場するのは目に見えているので。

 自分もミホを見つけてブンブンと手を振ったりしているのだが、誠二は気付かないフリをしてくれているのをワタルは知らない。
 誠二自身は、この怒りを眼前の敵、もとい仲間ではなく、マサルとアキにぶつける気なので、自分の堪忍袋が切れる前に始めて欲しいと願っている。

 「はいはーい、それでは、今から模擬戦闘を開始しまーすっ!!」

 「おおおおおぉぉぉぉ!!!!」

 聞き覚えのある声が闘技場に出てきて、会場が沸くが、当事者達がもっと沸いていた。

 「オイ、テメェェェェェ!!!!」
 「どんな顔して出て来やがった!」
 「よくもまあ、こんなお祭り騒ぎにしてくれて…………」
 「うるさい」

 嬉々として闘技場のリングの上に上がって来たカオリに、誠二とワタルが怒鳴りつけ、コータが悲しそうに呟く。
 ミツルは大声を発した誠二とワタルに遠慮なく言葉をぶつける。

 「「オイ、ミツル! おまえはどっちの味方だっ!?」」

 「どっちにしろ、勝てばいい話しだ」

 「へぇ、言うねぇ。 ミツル君だったっけ? 世の中はそんなに甘くないコトを教えてあげるよ」

 ミツルに対し、見事にハモり、ケンカ腰で言う誠二とワタルにミツルは眉ひとつ動かさず返す。
 そんなミツルに、対戦相手であるマサルが不敵にニヤッと笑いながら、さながら宣告するように言う。

 「ふん、やれるもんならやってみろ」

 珍しく不敵に笑いながら言うミツル。
 そんな姿に、客席にいる訓練生の女子や、遊軍の女性隊員達が頬を朱に染めたが、本人は意識せずにやっているので、審判であるカオリに催促する。
 
 「早く始めよう」

 「アンタがそれを言うの? まぁ、イイけど。 それでは、これより、コータ率いるチームとマサルとアキのコンビの試合を始めます!」

 感情の感じられない声音で言うミツルに、呆れたように返すカオリだったが、試合を始めるべく、音頭をとる。
 今にも、始まろうかという時に、コータ達の頭の中にミツルからコミュニケーションラインで連絡が飛んだ。

 『始まったらすぐに俺のそばに飛べ』

 『なんで?』

 『魔法攻撃が来る。 大規模なのが』

 『ゲッ、マジかよ!』
 『イヤだなぁ』

 『つべこべ言うな。 シールド張らねぇぞ』

 『従わせてもらいます!』
 『文句言ってすみませんでした!』

 忠告したミツルに理由を尋ねたコータだが、その答えにボヤく誠二とワタル。
 しかし、ミツルの脅しにより素直に従う。

 そして、その瞬間、審判の手が下される。

 「試合開始ーー!!!」

 「シールドっ!!」

 瞬時にミツルの方へと飛ぶコータチーム。
 全員が入ったのを魔力で感知したミツルが、自分が一度に発動できる限界である13枚のシールドを瞬時にドーム状に貼る。
 そして、張り終わった瞬間にアキの範囲攻撃魔法が炸裂する。

 「ヴェストーム・グランザイア!!」

 放たれた強力な闇魔法にシールドが包まれ、辺りは砂塵に覆われる。
 客席と審判にはシールドが貼られており、無傷だが、リングの上は全くわからない。
 そして、客席が今か今かと待ちわびている中、晴れてきた砂塵の中で立っていたのは…………。

 「おおっーと、コータチーム、全くの無傷だァァァ!!」

 「試合はこれからだぜ」

 熱狂的な解説者よろしく、絶叫口調で言うカオリの言葉に応えるように普段はクールなミツルが獰猛に言う。
 そのミツルの言葉に会場が沸く。
 (特に女性達が)
 チームメイトのコータ達からすれば、見せ場を取られ複雑な気持ちだったが、目の前の敵に集中するため緊張する。
 しかし、今の攻撃はかなり危なかった。

 (俺のシールドが残り1枚だけとはな。 向こうが手加減してくれなきゃ、今ので全滅だった)

 そう心の中で思うミツルだったが、コータ達も気付いていた。
 だが、何も言わずにあらかじめ決めておいた作戦通りに動く。

 「行くぞ、みんなっ!!」
 
 コータの声に、力強い返事を返しいよいよ本格的な戦闘に入る。
 マサルとアキは不敵に笑いながら待ち受ける。
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