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混沌の始まり
第二十二話 戦闘開始
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「まっさか、敵さんはもう主力を出してくるとはねぇ。 まったく、面倒なコトだよ、ホントに」
『ホントだよなぁ、全く。 つーか、俺がそっちに着く前に敵を全部倒すなよな。 カッコよく登場したいんだから』
マサルが、敵の姿を確認し、オークとゴブリンというこの世界にはいない怪物たちの軍勢の中に、一人だけ中世の貴族のような恰好をした美青年の姿を見つけボヤく。
そして、その言葉に連絡伝達魔法でマサルの頭の中に、低く耳に残るバリトンの声が響く。
「ホークか。 今まで、どこにいた?」
『ちょっと、敵の襲撃を受けていた。 もう殲滅したけどな、向かってくる敵は』
「もしかして、目の前のコイツらはおまえが逃がしたヤツらか?」
『いや、違う。 あんな距離を一瞬で移動できるわけがないし、なによりさっきの軍勢にゴブリンはいなかったしな』
「なるほど。 というか、見えてるのか? どこにいる?」
『えぇーと、上にいる』
「うえ~?」
そう言い、上を見上げるマサル。
目を凝らすと、黒い点みたいなのがはるか上空に浮かんでいる。
魔法を使って拡大すると、どこぞの軍隊のような黒い半そでTシャツに、迷彩柄のズボンを穿いて手を振っているホークが見えた。
「テメェ、下に降りてこいっての」
『今、降りたらカッコよくないだろ?』
「イヤ、あの魔人が上位魔人とかだったら俺でも厳しいぞ?」
『そりゃ、本気出さない前提だろ?』
「そりゃあ、そうだ。 俺が本気だしたら地形変わるからな」
『まぁ、確かに』
そう見えないところで会話をするマサルとホーク。
だが、もちろん敵には気付かれていないので、敵はお構いなしに攻撃態勢へと移行する。
突撃準備を終えたゴブリンたちが、列になって前進し始める。
そして、その後ろには巨大な体躯のオークが続く。
『おい、敵さんがやってきたぞ』
「わかってるって。 危なくなったら、援護頼むぞ。 というか、共闘してくれよ」
『任せておけ。 派手な魔法で雑魚を蹴散らしながら出ていくから』
「ははは、わかった」
楽しそうに笑う、たったひとり立ち塞がるマサルに、軍勢は一瞬足を止めたが、雄叫びをあげながら進軍を再開する。
ゴブリンの持つ粗悪な刀と、バックラ―。
オークが持つ簡素な槍が地面をたたきながら近づいてくる。
野に響くそれらの音は、マサルには心地よく耳に残る。
「やっぱり、この程度の怪物達じゃあ、力量差は測れないかぁ。 今すぐに地獄を見るだろうに、なんとも健気だねぇ」
オークを相手にした時のホークと似たようなコトを言いながら、嬉しそうに、残酷な笑みを漏らすマサル。
もう敵はすぐ近くに迫っており、10秒と経たず剣の間合いに入るぐらいだったが、余裕の表情でマサルは刀を抜いた。
そして、刀を抜いた瞬間、視認できないほどの速度で剣を払い、眼前に迫っていたゴブリンを5体同時に屠る。
驚いた周りのゴブリンたちは足を止めたが、後続が雪崩れ込むように走ってきたので、パニックになる前衛部隊。
マサルはそこに躍り込み一刀の下に何体ものゴブリンを屠っていく。
「あのヒト、最初は敵の大将しか興味ないとか言ってなかったっけ?」
「仕方ない、マサルはいつもあんなだから。 敵が前にいると倒さずにはいれないヒトだから」
「なるほどねぇ、やっぱり俺ら出番ないよな?」
「……仕方ないよ」
マサルの後方100mほどで、戦闘準備を済ませたコータ隊が、そんな会話をする。
といっても、ミツルはもちろん、誠二まで興味がないようで眠そうにあくびなどをかいているが。
普通なら、100mくらいなら戦闘をしていてもおかしくはないのに、マサル一人で何千もある軍勢を押しとどめている。
それどころか、敵がじわじわと後退までしている。
第二陣として到着したオーク達まで関係なしに剣を振るい、死体を量産していく。
「手応えがねぇなぁっ!! こんなんじゃあ、大将も雑魚かぁ!!?」
マサルが、意図的に大声を出しながら敵を殲滅していく。
煽っているようだが、周囲から見たら、マサルがゴブリンとオークをただ虐殺しているようにしか見えず、明らかに悪役なのはマサルだった。
一人ずつ相手をするのが面倒になったのか、後ろに飛び退るマサル。
「これでも、喰らえやぁ! 炎よ!!」
そう言い、手に炎を出現させ前方にいたゴブリンとオークを片っ端から炭化させていく。
上級魔法並みの威力があったが、ちゃんとした呪文詠唱どころか、短縮呪文すら唱えずに発動させる。
「わお、すげぇ」
「なんだ、あの力」
「あそこまでとは……」
「衰えてないなぁ」
後方にいたコータたちのトコロまで熱気が漂ってきて、生き物が焼ける特有の匂いが鼻をつく。
しかし、そんなことよりも、眼前の光景がすごく、ワタルが感嘆の声を漏らし、誠二とミツルが驚いたように言う。
コータは、どこか諦めたような声音だったが、実力のあるコータたちだからこその反応だったと言えるだろう。
さらに後方で布陣している本隊のほうでは、明らかに尊敬を畏怖を込めた眼差しで前の光景に釘付けになっている者ばかりだった。
確かに、魔法一つで敵軍の実に4分の1を消し去ったのだから、当然と言えば当然だろうが。
だが、そんなマサルに抗議を声を上げるものが味方に一人。
『オイ、そんな派手な攻撃するんじゃねぇよ!! 俺の登場が霞むだろうが!!』
「いやぁ~、スマン、スマン。 なかなか敵の大将が出てこなかったからさ」
『その大将なんだけどよ、敵本陣のほうで笑ってるぞ。 しかも、すごく楽しそうに』
「マジで? それ、やっぱりヤバいやつじゃないか?」
ホークの非難めいた声に、軽く言い訳をするマサル(眼前の敵を葬ったばっかりなので、敵がいないので話せる)だが、その次のホークの言葉に眉を顰める。
『…………俺にも、とっくに気付いてやがるし。 そろそろ降りようかな』
「おまえに気付いた上に、笑っているのかよ。 それって、いきなりラスボス級の登場じゃないか?」
『確かに。 あれだけゆったり構えられてたら、勝てないかも。 それに、前回の偵察でこっちの戦力は知られているけど、こっちは敵を知らないからな』
驚きを隠せない声音でホークは呟き、その言葉に物憂げな声音でマサル。
マサルの言葉を否定せずに、しっかりと現実を見据えるホーク。
このことを、後ろにいる本隊は知らないのだ。
なので、魔法で伝えようとするホーク。
しかし、そのホークに敵の大将である美青年の魔人から雷系の最上級並みの魔法攻撃がくる。
「クソッ、攻撃してくるかっ!!」
そう言って、自らの魔力を体中に張り巡らし、シールドに頼らない防御方法で攻撃を防ぐホーク。
この方法は、とても高度な魔法技術を持つ者にしかできないのだが、ホークはそれを一瞬でやってのける。
あのミツルでさえもできないものをだ。
ただの魔力のシールドに比べ、指向性を持たないので全方位からの攻撃に対応でき、かつ使用者の魔力がそのまま反映されるので、強大な魔力を持つ者ほど強くなる。
そもそも、一定以上の魔力がないとこの方法を使うことすらできないのだが。
「ほう、これを防ぐのか。 楽しませてくれる」
魔法で拡大されたわけではないが、やけに静かな声がホークやマサルの耳に届く。
この声を聴いた本人たちは、内心驚いていたが、そんなことはおくびにも出さず、ほぼ同時に声を発する。
「フン、それはこっちのセリフだ」
「そっちこそ、どこまでやれるかな?」
ただ普通に声を発していただけなので、聞こえているとは思わなかったが、ホークの視界に腹を抱えて笑う魔人青年の姿が映る。
(なんで、魔人って、美形ばかりなんだろうな……)
前回進行してきた魔人たちの顔を頭に浮かべながら疑問に思うホーク。
『ホントだよなぁ、全く。 つーか、俺がそっちに着く前に敵を全部倒すなよな。 カッコよく登場したいんだから』
マサルが、敵の姿を確認し、オークとゴブリンというこの世界にはいない怪物たちの軍勢の中に、一人だけ中世の貴族のような恰好をした美青年の姿を見つけボヤく。
そして、その言葉に連絡伝達魔法でマサルの頭の中に、低く耳に残るバリトンの声が響く。
「ホークか。 今まで、どこにいた?」
『ちょっと、敵の襲撃を受けていた。 もう殲滅したけどな、向かってくる敵は』
「もしかして、目の前のコイツらはおまえが逃がしたヤツらか?」
『いや、違う。 あんな距離を一瞬で移動できるわけがないし、なによりさっきの軍勢にゴブリンはいなかったしな』
「なるほど。 というか、見えてるのか? どこにいる?」
『えぇーと、上にいる』
「うえ~?」
そう言い、上を見上げるマサル。
目を凝らすと、黒い点みたいなのがはるか上空に浮かんでいる。
魔法を使って拡大すると、どこぞの軍隊のような黒い半そでTシャツに、迷彩柄のズボンを穿いて手を振っているホークが見えた。
「テメェ、下に降りてこいっての」
『今、降りたらカッコよくないだろ?』
「イヤ、あの魔人が上位魔人とかだったら俺でも厳しいぞ?」
『そりゃ、本気出さない前提だろ?』
「そりゃあ、そうだ。 俺が本気だしたら地形変わるからな」
『まぁ、確かに』
そう見えないところで会話をするマサルとホーク。
だが、もちろん敵には気付かれていないので、敵はお構いなしに攻撃態勢へと移行する。
突撃準備を終えたゴブリンたちが、列になって前進し始める。
そして、その後ろには巨大な体躯のオークが続く。
『おい、敵さんがやってきたぞ』
「わかってるって。 危なくなったら、援護頼むぞ。 というか、共闘してくれよ」
『任せておけ。 派手な魔法で雑魚を蹴散らしながら出ていくから』
「ははは、わかった」
楽しそうに笑う、たったひとり立ち塞がるマサルに、軍勢は一瞬足を止めたが、雄叫びをあげながら進軍を再開する。
ゴブリンの持つ粗悪な刀と、バックラ―。
オークが持つ簡素な槍が地面をたたきながら近づいてくる。
野に響くそれらの音は、マサルには心地よく耳に残る。
「やっぱり、この程度の怪物達じゃあ、力量差は測れないかぁ。 今すぐに地獄を見るだろうに、なんとも健気だねぇ」
オークを相手にした時のホークと似たようなコトを言いながら、嬉しそうに、残酷な笑みを漏らすマサル。
もう敵はすぐ近くに迫っており、10秒と経たず剣の間合いに入るぐらいだったが、余裕の表情でマサルは刀を抜いた。
そして、刀を抜いた瞬間、視認できないほどの速度で剣を払い、眼前に迫っていたゴブリンを5体同時に屠る。
驚いた周りのゴブリンたちは足を止めたが、後続が雪崩れ込むように走ってきたので、パニックになる前衛部隊。
マサルはそこに躍り込み一刀の下に何体ものゴブリンを屠っていく。
「あのヒト、最初は敵の大将しか興味ないとか言ってなかったっけ?」
「仕方ない、マサルはいつもあんなだから。 敵が前にいると倒さずにはいれないヒトだから」
「なるほどねぇ、やっぱり俺ら出番ないよな?」
「……仕方ないよ」
マサルの後方100mほどで、戦闘準備を済ませたコータ隊が、そんな会話をする。
といっても、ミツルはもちろん、誠二まで興味がないようで眠そうにあくびなどをかいているが。
普通なら、100mくらいなら戦闘をしていてもおかしくはないのに、マサル一人で何千もある軍勢を押しとどめている。
それどころか、敵がじわじわと後退までしている。
第二陣として到着したオーク達まで関係なしに剣を振るい、死体を量産していく。
「手応えがねぇなぁっ!! こんなんじゃあ、大将も雑魚かぁ!!?」
マサルが、意図的に大声を出しながら敵を殲滅していく。
煽っているようだが、周囲から見たら、マサルがゴブリンとオークをただ虐殺しているようにしか見えず、明らかに悪役なのはマサルだった。
一人ずつ相手をするのが面倒になったのか、後ろに飛び退るマサル。
「これでも、喰らえやぁ! 炎よ!!」
そう言い、手に炎を出現させ前方にいたゴブリンとオークを片っ端から炭化させていく。
上級魔法並みの威力があったが、ちゃんとした呪文詠唱どころか、短縮呪文すら唱えずに発動させる。
「わお、すげぇ」
「なんだ、あの力」
「あそこまでとは……」
「衰えてないなぁ」
後方にいたコータたちのトコロまで熱気が漂ってきて、生き物が焼ける特有の匂いが鼻をつく。
しかし、そんなことよりも、眼前の光景がすごく、ワタルが感嘆の声を漏らし、誠二とミツルが驚いたように言う。
コータは、どこか諦めたような声音だったが、実力のあるコータたちだからこその反応だったと言えるだろう。
さらに後方で布陣している本隊のほうでは、明らかに尊敬を畏怖を込めた眼差しで前の光景に釘付けになっている者ばかりだった。
確かに、魔法一つで敵軍の実に4分の1を消し去ったのだから、当然と言えば当然だろうが。
だが、そんなマサルに抗議を声を上げるものが味方に一人。
『オイ、そんな派手な攻撃するんじゃねぇよ!! 俺の登場が霞むだろうが!!』
「いやぁ~、スマン、スマン。 なかなか敵の大将が出てこなかったからさ」
『その大将なんだけどよ、敵本陣のほうで笑ってるぞ。 しかも、すごく楽しそうに』
「マジで? それ、やっぱりヤバいやつじゃないか?」
ホークの非難めいた声に、軽く言い訳をするマサル(眼前の敵を葬ったばっかりなので、敵がいないので話せる)だが、その次のホークの言葉に眉を顰める。
『…………俺にも、とっくに気付いてやがるし。 そろそろ降りようかな』
「おまえに気付いた上に、笑っているのかよ。 それって、いきなりラスボス級の登場じゃないか?」
『確かに。 あれだけゆったり構えられてたら、勝てないかも。 それに、前回の偵察でこっちの戦力は知られているけど、こっちは敵を知らないからな』
驚きを隠せない声音でホークは呟き、その言葉に物憂げな声音でマサル。
マサルの言葉を否定せずに、しっかりと現実を見据えるホーク。
このことを、後ろにいる本隊は知らないのだ。
なので、魔法で伝えようとするホーク。
しかし、そのホークに敵の大将である美青年の魔人から雷系の最上級並みの魔法攻撃がくる。
「クソッ、攻撃してくるかっ!!」
そう言って、自らの魔力を体中に張り巡らし、シールドに頼らない防御方法で攻撃を防ぐホーク。
この方法は、とても高度な魔法技術を持つ者にしかできないのだが、ホークはそれを一瞬でやってのける。
あのミツルでさえもできないものをだ。
ただの魔力のシールドに比べ、指向性を持たないので全方位からの攻撃に対応でき、かつ使用者の魔力がそのまま反映されるので、強大な魔力を持つ者ほど強くなる。
そもそも、一定以上の魔力がないとこの方法を使うことすらできないのだが。
「ほう、これを防ぐのか。 楽しませてくれる」
魔法で拡大されたわけではないが、やけに静かな声がホークやマサルの耳に届く。
この声を聴いた本人たちは、内心驚いていたが、そんなことはおくびにも出さず、ほぼ同時に声を発する。
「フン、それはこっちのセリフだ」
「そっちこそ、どこまでやれるかな?」
ただ普通に声を発していただけなので、聞こえているとは思わなかったが、ホークの視界に腹を抱えて笑う魔人青年の姿が映る。
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