意志をつぐ者

タクナ

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混沌の始まり

第二十四話 伝説のヒト? もう一人登場!

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 「鷲目 忍。 遊軍大将であり、伝説のヒトだ」

 「自分で言ったよ…………」

 自信たっぷりに言った忍の自己紹介に、軽く戦慄を覚えるワタルと誠二の二人。
 なぜかというと、このあと模擬試合に発展するかもと恐れたためである。
 実際には、忍はそれほど好戦的な性格ではないので、そんなことは滅多に怒らないのだが、それを二人が知る由はない。

 「えぇーと、鷲目さん。 失礼ですが、伝説のヒトってことですけど、今はおいくつで?」

 ワタルが興味本位でそう聞く。
 伝説のヒトとは、5年前の大戦で活躍したヒト達の呼称のはずだ。
 ワタルがそう聞くのも無理はないことで、ホークは見た目的には自分たちと同じくらいか、少し上ぐらいに見えるのだ。
 しかも、軍隊のような恰好をしているので、実年齢よりも年上に見えるはずなのにすごく若いのだ。
 それを考慮すると、大戦時には若くて12歳かそこらだ。
 もし、その年で伝説のヒトと呼ばれるなら、マサルよりも潜在的なチカラは上だと思ったのだろう。

 「俺か? 俺は今年で23だぞ」

 「「23!? ホントですかっ!?」」

 忍が不思議そうに年齢を教えたのに対し、ワタルと誠二が素っ頓狂な声を上げて驚く。
 そりゃあ、そうだろう。
 なんせ、自分たちとタメくらいにしか見えないんだから。
 だが、事情を知っているコータがそこで溜息と共に忍に言う。

 「忍さん。 ちゃんと説明してあげてくださいよ。 彼らは僕のチームメイトなんですから」

 「そうなのか。 じゃあ、説明しよう!! 君たちの前にいるこの鷲目 忍はドラゴンを倒せし者である!!」

 「まぁ、すなわち、ドラゴンスレイヤーってトコだな」

 「オイ、マサルっ!! それ、俺のセリフだろっ!!」

 「あぁ、ゴメンゴメン」

 もったいつけた忍の言葉に、端的な説明を加えるマサル。
 非難めいた声で言う忍に、全く悪いとも思っていなさそうな声でマサル。
 そんな二人の話を聞いていたワタルと誠二が、本日二度目の素っ頓狂な声を上げる。

 「「ドラゴンスレイヤー!!?」」

 「あのドラゴンを倒した……?」

 ミツルも、珍しく驚いた声を上げており、奇妙なものを見るような目で忍を見ながら言う。
 ドラゴンというのは、もちろんあの神話などに出てくる存在だ。
 しかし、実際は伝承よりもさらに強く、神でさえも消滅せしうる存在としてこの世界に存在している。
 ただ、絶対数がこの上なく少ないうえに、世界の均衡を保つ管理者(遠い昔に、神々との戦いに勝利して世界の覇権を獲得した)としての立場にあるため、姿を見るものなどほとんどいない。
 元々は、他の世界の住人だったらしく、そこでは神も龍もヒトも共存していたとか、していなかったとか。
 そんな龍(ドラゴン)を、見たどころか、まして倒したなどと言う人間がいることに驚くのは当たり前である。

 「ドラゴンスレイヤーって、ホントにか?」

 「あぁ、そうだよ。 実際はそんな大層なモンじゃないんだけどな」

 「それって、どういう意味…………?」

 「龍との戦いは、単に殺し合いをすればいいってワケじゃないってこと」

 「…………? でも、龍を殺さなきゃ、その力は手に入らないんでしょ?」

 確認するように言うワタルに、遠い目をしながら答える忍。
 ワタルの疑問ももっともで、ドラゴンスレイヤーの伝承によると、『龍を倒せし者は、その総(すべ)ての力を受け継ぐことができる』と書いてあるのだ。
 つまり、殺せばその力が手に入ると誤解するのも無理はない。

 「殺すんじゃなくて、倒すんだよ。 それに、世界龍と呼ばれる最高位の龍は不死だから、死なないし」

 「…………どういう意味だ?」

 「そのうち……わかるようになるよ」

 意味深に呟く忍の言葉に、首をかしげるワタルだったが、多くは語らない忍を見て、それ以上の詮索をやめる。
 代わりに、ミツルが珍しく自分から言葉をかける。

 「忍さん、さっきの魔法は一体、誰から教わったんですか」

 「あー、その前にさぁ……その忍さんていうの止めてくれないかな。 なんかムズかゆいんだよねぇ。 マサルみたいにホークって呼んでくれていいよ」

 「わかった、ホーク。 それで、誰から教えてもらったんだ?」

 「魔法自体は、あるきっかけがあってから使えるようになった。 今の魔法は、龍と一緒になって創った魔法だ」

 「なるほど。 よく考えられている」

 「ほう、わかるか?」

 「あぁ。 魔力の流れをあえて保たないことにより、無駄な魔力消費を抑えているな。 それに、指向性のある魔力を外側に配置することにより、内側の純粋な魔力を上手く誘導するようになっている。 現代の銃火器の弾薬のようにライフル状にすることにより、発射速度と物理的な威力を向上させている。 科学と魔導の融合とは、よく考えたものだ」

 非常に珍しく饒舌になったミツルを見て、付き合いの長いコータ、ワタル、誠二の3人は目を丸くしたまま固まる。
 魔法が大好きで、周りがちょっと(どころか、かなり)引くほどの魔法ヲタクなのは知っているが、こんなになったのは久しぶりだ。
 昨日会ったばかりのマサルも、あまり喋らないと思っていたミツルがこんなに長広舌だったので、少しばかり驚いている。
 ただ、今、会ったばかりのホークだけは、そんな驚きはなく、自分と龍が考えて考えて創り出した魔法のすごさをわかってくれたのに、純粋に嬉しかったみたいで目を輝かせている。

 「たった一度目にしただけでそこまで看破するとはっ!! 君、スゴイねっ!! 俺の下で働かないか!?」

 「お断りします」

 「そこをなんとかっ!! 俺の下に来れば、俺の魔法も惜しげもなく伝授するからさ!!」

 「ぐっ…………それは実に魅力的な…………」

 「オイオイ、なに揺らいでんだよっ!?」

 「そうだぜ、ミツル!!」

 「ミツルの人生なんだから口出ししないの」

 ホークがマシンガンのように捲し立てミツルを勧誘するが、誠二とワタルが止めに入る。
 しかし、ミツルに選択を委ねたコータを、ミツルはまじまじと見てから、小さく微笑みを漏らす。
 そんなミツルの、またしても珍しい行動を見て目を丸くするコータたちだったが、そんなコータたちを尻目にミツルは言葉を発する。

 「いや……やっぱり、やめておこう。 ホークさん、申し出は嬉しいが、遠慮しておきます」

 「いいのか?」

 「はい」

 「そうかぁ~、それなら仕方ないなぁ。 いい副官を得たかと思ったんだけどなぁ」

 そう言って、ホークは笑いながらマサルと共に勝利に沸いている本陣(自分たちは何もしてないのに)のほうへと歩いていく。
 そんな二人を見送り、声が届かないであろう距離まで二人が離れてから、コータはミツルに聞いた。

 「なんで、さっきの話受けなかったのさ?」

 「……俺は、コータに恩があるからな。 それを返すまではこのチームにいることに決めたんだ」

 「恩? コータがなにかしたのか?」

 「あはは、昔の話だよ」

 不思議そうに聞いたコータに、ミツルは少し考えてから、コータをしっかりと見つめながら言う。
 誠二が首を傾げて当事者に聞いたが、コータは恥ずかしそうに笑って誤魔化す。

 「オイオイ、俺も知らないぞ、そんなこと? 俺らが出会う前の話かぁ~?」

 「ワタルも知らないのか? オイオイ、水くさいコトするなよなぁ~」

 「お前らには話さん」

 「ミツルがそう言うなら、僕の口からは言えないね」

 誠二とワタルがミツルに迫るが、きっぱりと断るミツル。
 コータは、二人に聞かれる前に、矢継ぎ早に言う。
 残念そうにする二人だが、ミツルが自分の過去を話したがらないのは周知の事実なので、しつこく追及することはしない。

 「あの俺みたいな美青年君は、過去になんかあったのかい?」

 「ん~? あぁ、ミツルのことか? つーか、自分で美青年って言うなよ」

 「まぁ、事実だからな」

 「はいはい。 最初の質問の答えは、本人が言いたくないみたいだから言わないケド、ホーク、おまえと同じような境遇だったんだよ」

 「……………………あぁ、なるほど。 それで……か……」

 「そういうコト」

 コータは聞こえないだろうと思って話していたが、二人のその驚異的な五感の前には、全て聞こえていた。
 ホークがミツルのことをどこか含むような声音でマサルに聞いたが、マサルは真剣な声で答えた。
 それを聞いたホークは、しばらく考えてから、納得したように呟く。

 (だから、あの少年の目の奥に、俺と同じような闇があったのか…………この先、呑まれなければいいけどな)

 ホークは、昔の自分を思い出しながらあの少年の顔を思い浮かべながら心で呟く。
 あの、忌々しいほどに弱かった自分の姿を思い出し、それを未だに許すことのできない自分に苛立ちながら。

 そんなホークの横で、親友であるマサルは、過去を思い出し、自分でも知らないうちに厳しい顔になっているホークを横目で眺める。
 この先、戦いが激しくなれば、こんな風な顔をするヤツが大勢現れるんだろうな、と考えながら。
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