最後の魔女

砂鳥 ケイ

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最後の魔女19 暗殺計画

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 今夜は、宿屋ではなく教会のVIP専用の宿泊施設を使わせてもらえることになった。
 勿論使えるのは、聖女様であるサーシャだけで、私たちお供は、昨日同様に宿屋で夜を明かすことになった。
 サーシャは既に寝室に入っている。
 護衛に聖地アグヌスから連れてきた優秀な騎士の人がついている。

 私は夜中に王都内を徘徊していた。
 痴呆老人的な意味ではなく、ちゃんと目的があって駄猫と一緒に夜の街を徘徊している。

「ほとんどの家に、何かを象った像が飾ってあったにゃ」
「やっぱりね」

 今朝の話の中にあった聖神体というのが気になって、人さまの家を勝手ながら物色させて頂いた結果から、女性が両の手を握り合わせて祈るポーズを取っている像が、確認した中でほぼ全ての家で確認出来た。これが聖神体で間違いないだろう。一体これをいくらで売っているのか。
 中には2体や3体飾っている家まであった。飾っていると言うか、祀っているというか⋯。
 たまたま透明化状態で物色中に、その像に向かって「どうか、明日一日も家族全員健康でいられますように」と手を合わせて祈っていた。

 私も一応魔女の端くれとして、その像に本当に不思議なパワーが宿っているのか直に手に取って確認してみたけど、生憎と何も感じることは出来なかった。
 聖女様が使う聖力も私は微弱ながら感じ取ることが出来る。その私が何も感じないのだから、やっぱりこれは何の変哲もないただの像だという事が判明した。
 本当は叩き壊して中を確認したいのだけど、さすがにそんな真似は私でもやらない。仮にやるとすれば、これらが売られる前の教会内にあるもので試してみよう。

「どうするにゃ?」
「調査はもう充分」
「はぁ、やっと寝れるにゃ」
「何勘違いしてるの。次は教会に潜入する」
「まじかにゃ! でももう深夜にゃ⋯」
「働かざる猫生きてる資格なし」

 駄猫がブツブツと喋っているがいつも通りの無視を決め込む。

 透明化状態のまま教会へと忍び込む。

「何処に向かうのにゃ?」
「マリア様のとこ」

 午前中に話をした時に、トレースの魔法をかけていた。これは、対象の現在の居場所を把握する事が出来る魔法。今日実際に会って話をしてみたけど、あの人は怪しいと思う。教会の闇というものが存在するなら、元締めとまではいかないしてもそれに近しい人物だと私の第六感が告げている。
 化けの皮を剥いでやる。

「ご主人様またにゃんか悪い顔してるにゃ」

 ギロリと冷たい視線を駄猫へと送る。
 その小さな肢体がビクッと震えていた。失礼しちゃう。少し見ただけなのにね。

 深夜というのも相まって、すれ違う人はいない。
 だけど、私がトレースしているマリア様はまだ起きている。だって今も尚、動きがあるから。

(ここからは念話でいく)
(にゃにゃ)

 どうやらこの部屋の中に居るみたいね。

(流石に扉を開けるとバレるにゃ)
(誰かと話してる⋯ん、聞こえない⋯壁抜けを使う)

《壁抜け》

 声が出せれないので、口パクで詠唱していく。
 詠唱が完了すると、私の体が薄ぼんやりと光り出していた。
 駄猫を抱きかかえる。
 しゃくだけど、そうしないと駄猫にも壁抜けの効果が適応されないから。
 でも、駄猫の触り心地は最高。モフモフ感がたまらない。調子に乗るから絶対に口には出さないけど。

 そのまま目の前の壁を何もないかのようにすり抜け、部屋の中へと忍び入る。
 予想通り、部屋の中にいたのはマリア様と見たことのない人が喋っていた。
 マリア様も午前中に見た時のような聖母の微笑みとは微塵も感じられない酷い顔をしていた。恐らく、こっちが彼女の素の本性なのだろう。表裏のある女の人って怖いよね。その点私には、表も裏もないんだけど。

「彼女、絶対私たちの裏事情を知ってるわよ。いくらなんでもタイミングが良すぎるもの」
「いやだが、だとしてもだ。我々には彼女に手を出すことは出来んぞ」
「でも、どうして教会が極秘裏に進めているあの計画がバレてるのよ⋯」
「いや、まだバレたとは限らないぞ。たまたま本当に巡礼目的なのかもしれん」

 マリア様は暫く考える素振りをする。

「私はね、相手の考えてることがある程度分かるの。あの聖女の目を見た時に、絶対何かを勘ぐってる感じだったわ」

 ほぉ、どうやらあのマリア様は中々に鋭い観察眼をお持ちのようだ。
 だけど、あの計画とは一体何の事なんだろう。

「だが、仮にバレていたとしても、彼女に何か出来るとは思えんがな」
「ダメよ。何かをされる前に消すわ」
「何を言ってる! 他の国の聖女を消そうなど、あの方の命令でもなければそんな事許されるはずがない」
「あなたこそ何を言ってるの? 私は、あの方の全権代理を任されてるのよ? すなわち私の言葉は、あの方の言葉だと思いなさい」

 また調べなければならない単語が出てきた。
 あの方か。後でレイランにでも聞いてみる必要がありそう。

「作戦決行は明日の正午よ。流石に教会の中での襲撃は、こちらの警備体制を疑われるわ。だから、教会から外に出た時を襲う」

 確かサーシャの明日の予定は、午後からこの王都の子供たちが通う学校の視察だったはず。
 聖女様のサーシャの侍女である私に抜かりはない。彼女の予定は全て把握しているのだから。
 それにしても、まさかサーシャを消そうとしてくるとは思わなかった。きっとそれだけサーシャが自分たちにとって脅威となる存在だと感じとったのだろう。
 確かにそうだけど。敵ながら、その判断の速さには敬服する。
 だけど、同時に残念ね。私がサーシャの側にいる以上、例え暗殺者を何百人、何千人連れてこようがサーシャには指一本触れさせないよ。絶対に。

 詳しい作戦は、明日決めるという事で、そのまま2人ともこの部屋を出て行った。

(どんぴしゃなタイミングでいい話が聞けたにゃ)
(ええそうね。帰るわよ)
(にゃー、やっとこれで寝れるにゃ⋯)

 そのまま私は宿屋へと戻ってきた。
 しかし、戻った私を待ち受けていたのは私が予想していない出来事だった。

「一体、こんな時間まで何処に行っていたの?」

 現在、私は同室であるキャシーさんに絶賛怒られ中である。

 私とした事が、失念していた。
 キャシーさんが私と同室だった事を。

 その後たっぷりこってりと朝まで絞られたのは言うまでもない。当然、駄猫も道連れ。
 私は王都に入る前から、サーシャにもしもの事があっても大丈夫なように優秀な護衛をつけていた。
 対物理防御膜を張ったのでは、相手にもバレバレなので、それとなくバレないように彼女に害を為す者、可能性を秘密裏に排除してくれる護衛。
 ぶっちゃけると、あの子がいれば私は不要なんだけどね。だからこそ、安心してサーシャを任せられる。

 朝になり、サーシャと合流する。
 その際、念話にて昨晩の出来事を説明しておいた。
 当然、正午過ぎにサーシャを狙って刺客が放たれる事も。本当は朝一からマリア様たちの作戦内容を聞きに行くつもりだったんだけど、キャシーさんに「こんな朝早くから何処に行くの? 」と捕まってしまった。正直に話す訳にもいかず、結果聞けずじまいだった。

 何処からどうやってサーシャを亡き者にするのかは分からない。現状分かっているのは大まかな時間だけ。

(極力私もサーシャからは目を離さないつもり。だけど、もしもの時はお願いね。頼りにしてるから。シャル)
(任せてちょうだいリアちゃん。それと暗殺者だった場合は、躊躇なく殺すよ?)
(うん、それでいい。でもそれとなく周りに悟られないようにやってね。それくらい余裕でしょ)
(おっけー! 任せといて! )

 私の念話の相手は、サーシャの護衛を頼んでいる私の眷属《シャナリオーゼ》の1人。見た目は可愛らしい妖精さん。
 だけども、戦闘に特化した魔法を保有してる。隠密能力に長けていて、本当は暗殺とかが得意なんだけど、現状最も信頼の置ける眷属でもある。

 名前はシャル。
 少し、私と違って言動が怖いところがあるけれど、それは彼女が根っからの暗殺者だから致し方ない。
 というよりも、私が眷属召喚の儀の際にそんなイメージで呼び出してしまったからなのだけど。

 ちなみに、私のもう1匹の眷属は、今レイランの元に使いを出してる。
 現状知り得た情報の伝達と、あの方の正体について知ってる情報がないかどうかをね。

 午前中は、昨日同様に王都の聖女様たちの治癒のお手伝い。
 そして、教会の食堂でご飯を食べた後に、学校の視察に向けて出発した。
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