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最後の魔女41 ベラキール王国
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「目が覚めた?」
快適な馬車の荷台で私を含めた3人の少女が寝起きしていた。
と言っても魔女である私自身は睡眠は必要ないのだけど、流石に昨日は疲労困憊だったせいもあり? 目を瞑ると吸い込まれるように眠りに落ちてしまった。
お陰で減っていた魔力も全回復している。
あれ、魔女にも睡眠は必要?
「リアさん、おはようございます」
彼女の名前はニーナ。ニーナ・ベラキール。
元ベラキール王国の第三王女でもある。
元と言うのは、既にこの世界からベラキール王国自体が消えてしまったから。
彼女から話を聞く限りでは、王政に反旗を翻した国民たちによるクーデターが原因で王国は文字通り壊滅してしまった。
クーデターならば、現在の主導者とその関係者を失脚させればそれで終わるはず。なのに、国自体を滅ぼしちゃったら一体何をしているのか意味が分からない。
国家転覆じゃなく国家滅亡。
その土地に住む者ならば誰しもそんな結末を望んでいるはずがない。
その後、国民たちは隣国へと散り散りになっていったらしい。
ニーナ自身も王族の生き残りと言うこともあり、執拗に命を狙われていた。
私との出会いもそんな危機の真っ只中だった。
後一歩でも遅ければニーナの命はなかっただろう。
「貴女の考えを聞かせて」
寝起きの所悪いけど、私は早急に彼女に確認しておく必要があった。
ニーナは私の意思を理解したのか真剣な表情になり、私の顔を凝視する。
恐らく私が尋ねる内容が分かってるんだと思う。
「まだ死にたいと思ってる?」
これ以上、自殺志願者の面倒は見切れない。私だって巻き込まれて一応は死にかけた訳だし。巻き添え食らって一緒になんて運命を誓った相手同士なら文句も言わないのだろうけど、ニーナとは昨日今日出会っただけの間柄だし、同性だし。
「私は⋯こんな私が欲を言っても許されるのなら、家族の⋯みんなの仇を取りたいです」
ん? まだ自殺願望があるのかどうかが聞きたかったんだけど。
私の意外そうな顔色を感じ取ったのか、
「あっ、もう死ぬつもりはありません! やることが見つかりましたから」
生きる為の意味を見つけてくれたのは嬉しいけど、もしかしてそれって。
「親の仇打ち?」
「そうです。偏見かもしれませんが、王政だって間違ったことは一切していなかったはずなんです。あの優しかったお父様やお母様が間違ったことをするはずがないんです。誰かに陥れられたとしか思えなくて⋯」
敵討ち、別に止めはしない。
だけど、到底一人で成し遂げられるものではないはず。
「他に頼れる人は?」
「いません。時々しか国外に出た事がなかったので」
はぁ⋯。
外の世界もあまり知らない、身寄りもない無一文の少女に一体何が出来ると言うの。
いいとこすぐに追っ手に見つかり処刑されるのが落ち。
「近くの町まで送る」
私がしてあげられるのはこの程度しかなかった。
ここは、ラオス領の端にあるヘールムという人口6000人程度の町。
「本当にありがとうございました。このご恩は忘れません」
無一文だったニーナに幾許かの金銭を手渡す。
最初は受け取りを断っていたが、いつか返してくれたら良いからと言う事で半ば強引に手渡した。
「お姉様、これからどうします?」
「ベラキール王国に行く」
「え、でもそこってもう滅んだんじゃ?」
「真相を確かめに行く」
ニーナと話をしていて私は調査のスペシャリストである眷属のミーアをすぐにベラキール王国へと向かわせていた。
ニーナの話ではクーデターを起こしたことによって、連鎖的に滅んでしまったと言う話だったけど、実際はどうやら違うみたい。
ていうか、これはヤバい⋯
うーん、どう説明したものか。
「お姉様?」
私の深い溜息にリグが心配そうな顔をしていた。
「魔族の巣窟と化してる」
「ふぇ?」
そう、邪魔な人間を追い出し、魔族の巣窟となっていた。
まだ全貌の程は分からない。理由も分からない。
いや、理由なら分かる。
人間を討ち亡ぼす為の最初の拠点にするつもりなのだろう。
まさか、ここまで魔族が人間界に侵攻しているとは。
それにしても人間たちはこのことに気付いているの?
只でさえ個々の力では魔族に劣っている人間はその類稀なる知恵と数で圧倒する他ない。
だから魔族に十分な時間を与えてはならない。
まず、この世界の理として魔族に動きがあった場合、神殿に仕える聖女様に女神様から神託が降りるようになっている。
これは、子供でさえ知っている常識。
それは、劣等種たる人間が魔族に対抗する為に逸早く準備を整えられるようにと言われていた。
すぐにサーシャに確認しなければならない。
サーシャには離れていても会話が出来るようにと私お手製の魔導具のブローチを渡してある。
でも今日はもう遅いから、明日の朝一番に連絡を取る事にした。
翌朝、サーシャと連絡を取り、魔族に関する神託が来ていないことを確認した。
真相を説明すると、サーシャは酷く動揺していた。
「どうするにゃご主人」
「考え中」
私が顎に手を当て物思いに耽っている横で何やら邪悪なる視線を感じた。
「お姉様! その猫触ってもいい?」
視線の正体は、リグだった。
まるで獲物を見つけた獣のようにその口元はニヤリと歪んでいた。
別に駄猫がリグに食べられようがまた召喚するだけなので何の問題もない。
でも、その駄猫美味しくないよ?
私は肯定の意味で短く返事をした。
「ん」
後で聞いた話だけど。悪魔であるリグは、その内に秘めたるオーラだか負のエネルギーだかの影響で動物の類に近付こうものなら、すぐに逃げられてしまうのだとか。
「にゃあああ! 痛いにゃ! 頬を引っ張るにゃ!! ヒゲが取れるにゃぁああ!」
駄猫の断末魔の叫びが辺り一帯に響き渡る。
チラリと横に目をやると、リグが縦横無尽にモフモフを楽しんでいる。
魔族が侵攻してくるかもしれないのに平和ね。
(リアちゃん、起きてる? 少し問題発生だよ)
ん、こっそりニーナの護衛を任せていたシュリからの連絡だった。
(結局彼女、昨夜は宿には泊まらずに木陰で野宿でした。寝ている間に途中2回程絡まれそうになったけどそれは排除したよ。で、今乗合馬車の中なんだけど)
(もしかして、ベラキール王国方面?)
(だよ。あっ、と思ったらもう乗っちゃってて)
うーん、今ベラキール王国に近付くのは非常に危険。絶対に阻止しないと。
でも、昨日見た地図によると、ここからベラキール王国までは馬車でも2日は掛かるはず。
「駄猫、すぐに乗合馬車の経路を調べて来て」
リグにモフモフ地獄にあい、何だかやつれているが構うことはない。
逆にリグから開放してあげたんだから感謝して貰わないと。
「⋯にゃぁ、助かったにゃぁ、、了解にゃ」
さて、行動を開始するのは駄猫が戻って来てからとして、ベラキール王国に潜入しているミーアの状況を確認しておく。
(ミーア、調子はどう?)
(あっリアちゃん。王国内部まで侵入出来たはいいけど、流石に城への警備は中々厳重で。城を拠点にしてるみたいね。侵入するにはそれなりに時間を要しそうよ)
(魔族の人数は?)
(城内を除いて、推定500って所かしらね)
魔族500かぁ、結構多いね。
うん、これって結構ヤバいレベルじゃない?
人族詰んだんじゃない?
勝てるのこれ?
(リア! たった今女神様から神託が降りました!)
(詳しく)
私が人族に哀れみを抱いていた時、サーシャから連絡が届いた。
サーシャから聞いた女神様の神託はこうだ。
''重巡たる我が僕(しもべ)たちよ。先程この地へ降り立つ邪悪な気配を察知しました。悪しき者どもの姑息な手により北の国が陥落してしまいました。そこを根城に集結しつつあります。各国総力を挙げて北の大地へ集結し、魔の者を打ち倒して下さい''
神託が少し遅いと思うんだけど。
私は昨晩から気が付いてたし。私が心の中で女神様に対して文句を言っていると駄猫が戻って来た。
「ご主人、分かったにゃ。どうやらベラキール王国手前のダーブルという町が終着点にゃ」
ベラキール王国が目的地なら恐らく一番近い場所まで行くはず。
「追うよ」
「はい! お姉様」
虚空より箒を取り出し、跨る。
リグは背中から普段は隠している真っ黒な翼を出現させ、パタパタと羽ばたかせた。
駄猫は置いて行かれまいと私の肩に慌てて飛び乗る。
馬車は既にマジックバックに回収済み。
あらかたの日用雑貨や食糧は買い貯めたので、当面はこれで安心。
いざ行かん、魔の蔓延る領土へ。
快適な馬車の荷台で私を含めた3人の少女が寝起きしていた。
と言っても魔女である私自身は睡眠は必要ないのだけど、流石に昨日は疲労困憊だったせいもあり? 目を瞑ると吸い込まれるように眠りに落ちてしまった。
お陰で減っていた魔力も全回復している。
あれ、魔女にも睡眠は必要?
「リアさん、おはようございます」
彼女の名前はニーナ。ニーナ・ベラキール。
元ベラキール王国の第三王女でもある。
元と言うのは、既にこの世界からベラキール王国自体が消えてしまったから。
彼女から話を聞く限りでは、王政に反旗を翻した国民たちによるクーデターが原因で王国は文字通り壊滅してしまった。
クーデターならば、現在の主導者とその関係者を失脚させればそれで終わるはず。なのに、国自体を滅ぼしちゃったら一体何をしているのか意味が分からない。
国家転覆じゃなく国家滅亡。
その土地に住む者ならば誰しもそんな結末を望んでいるはずがない。
その後、国民たちは隣国へと散り散りになっていったらしい。
ニーナ自身も王族の生き残りと言うこともあり、執拗に命を狙われていた。
私との出会いもそんな危機の真っ只中だった。
後一歩でも遅ければニーナの命はなかっただろう。
「貴女の考えを聞かせて」
寝起きの所悪いけど、私は早急に彼女に確認しておく必要があった。
ニーナは私の意思を理解したのか真剣な表情になり、私の顔を凝視する。
恐らく私が尋ねる内容が分かってるんだと思う。
「まだ死にたいと思ってる?」
これ以上、自殺志願者の面倒は見切れない。私だって巻き込まれて一応は死にかけた訳だし。巻き添え食らって一緒になんて運命を誓った相手同士なら文句も言わないのだろうけど、ニーナとは昨日今日出会っただけの間柄だし、同性だし。
「私は⋯こんな私が欲を言っても許されるのなら、家族の⋯みんなの仇を取りたいです」
ん? まだ自殺願望があるのかどうかが聞きたかったんだけど。
私の意外そうな顔色を感じ取ったのか、
「あっ、もう死ぬつもりはありません! やることが見つかりましたから」
生きる為の意味を見つけてくれたのは嬉しいけど、もしかしてそれって。
「親の仇打ち?」
「そうです。偏見かもしれませんが、王政だって間違ったことは一切していなかったはずなんです。あの優しかったお父様やお母様が間違ったことをするはずがないんです。誰かに陥れられたとしか思えなくて⋯」
敵討ち、別に止めはしない。
だけど、到底一人で成し遂げられるものではないはず。
「他に頼れる人は?」
「いません。時々しか国外に出た事がなかったので」
はぁ⋯。
外の世界もあまり知らない、身寄りもない無一文の少女に一体何が出来ると言うの。
いいとこすぐに追っ手に見つかり処刑されるのが落ち。
「近くの町まで送る」
私がしてあげられるのはこの程度しかなかった。
ここは、ラオス領の端にあるヘールムという人口6000人程度の町。
「本当にありがとうございました。このご恩は忘れません」
無一文だったニーナに幾許かの金銭を手渡す。
最初は受け取りを断っていたが、いつか返してくれたら良いからと言う事で半ば強引に手渡した。
「お姉様、これからどうします?」
「ベラキール王国に行く」
「え、でもそこってもう滅んだんじゃ?」
「真相を確かめに行く」
ニーナと話をしていて私は調査のスペシャリストである眷属のミーアをすぐにベラキール王国へと向かわせていた。
ニーナの話ではクーデターを起こしたことによって、連鎖的に滅んでしまったと言う話だったけど、実際はどうやら違うみたい。
ていうか、これはヤバい⋯
うーん、どう説明したものか。
「お姉様?」
私の深い溜息にリグが心配そうな顔をしていた。
「魔族の巣窟と化してる」
「ふぇ?」
そう、邪魔な人間を追い出し、魔族の巣窟となっていた。
まだ全貌の程は分からない。理由も分からない。
いや、理由なら分かる。
人間を討ち亡ぼす為の最初の拠点にするつもりなのだろう。
まさか、ここまで魔族が人間界に侵攻しているとは。
それにしても人間たちはこのことに気付いているの?
只でさえ個々の力では魔族に劣っている人間はその類稀なる知恵と数で圧倒する他ない。
だから魔族に十分な時間を与えてはならない。
まず、この世界の理として魔族に動きがあった場合、神殿に仕える聖女様に女神様から神託が降りるようになっている。
これは、子供でさえ知っている常識。
それは、劣等種たる人間が魔族に対抗する為に逸早く準備を整えられるようにと言われていた。
すぐにサーシャに確認しなければならない。
サーシャには離れていても会話が出来るようにと私お手製の魔導具のブローチを渡してある。
でも今日はもう遅いから、明日の朝一番に連絡を取る事にした。
翌朝、サーシャと連絡を取り、魔族に関する神託が来ていないことを確認した。
真相を説明すると、サーシャは酷く動揺していた。
「どうするにゃご主人」
「考え中」
私が顎に手を当て物思いに耽っている横で何やら邪悪なる視線を感じた。
「お姉様! その猫触ってもいい?」
視線の正体は、リグだった。
まるで獲物を見つけた獣のようにその口元はニヤリと歪んでいた。
別に駄猫がリグに食べられようがまた召喚するだけなので何の問題もない。
でも、その駄猫美味しくないよ?
私は肯定の意味で短く返事をした。
「ん」
後で聞いた話だけど。悪魔であるリグは、その内に秘めたるオーラだか負のエネルギーだかの影響で動物の類に近付こうものなら、すぐに逃げられてしまうのだとか。
「にゃあああ! 痛いにゃ! 頬を引っ張るにゃ!! ヒゲが取れるにゃぁああ!」
駄猫の断末魔の叫びが辺り一帯に響き渡る。
チラリと横に目をやると、リグが縦横無尽にモフモフを楽しんでいる。
魔族が侵攻してくるかもしれないのに平和ね。
(リアちゃん、起きてる? 少し問題発生だよ)
ん、こっそりニーナの護衛を任せていたシュリからの連絡だった。
(結局彼女、昨夜は宿には泊まらずに木陰で野宿でした。寝ている間に途中2回程絡まれそうになったけどそれは排除したよ。で、今乗合馬車の中なんだけど)
(もしかして、ベラキール王国方面?)
(だよ。あっ、と思ったらもう乗っちゃってて)
うーん、今ベラキール王国に近付くのは非常に危険。絶対に阻止しないと。
でも、昨日見た地図によると、ここからベラキール王国までは馬車でも2日は掛かるはず。
「駄猫、すぐに乗合馬車の経路を調べて来て」
リグにモフモフ地獄にあい、何だかやつれているが構うことはない。
逆にリグから開放してあげたんだから感謝して貰わないと。
「⋯にゃぁ、助かったにゃぁ、、了解にゃ」
さて、行動を開始するのは駄猫が戻って来てからとして、ベラキール王国に潜入しているミーアの状況を確認しておく。
(ミーア、調子はどう?)
(あっリアちゃん。王国内部まで侵入出来たはいいけど、流石に城への警備は中々厳重で。城を拠点にしてるみたいね。侵入するにはそれなりに時間を要しそうよ)
(魔族の人数は?)
(城内を除いて、推定500って所かしらね)
魔族500かぁ、結構多いね。
うん、これって結構ヤバいレベルじゃない?
人族詰んだんじゃない?
勝てるのこれ?
(リア! たった今女神様から神託が降りました!)
(詳しく)
私が人族に哀れみを抱いていた時、サーシャから連絡が届いた。
サーシャから聞いた女神様の神託はこうだ。
''重巡たる我が僕(しもべ)たちよ。先程この地へ降り立つ邪悪な気配を察知しました。悪しき者どもの姑息な手により北の国が陥落してしまいました。そこを根城に集結しつつあります。各国総力を挙げて北の大地へ集結し、魔の者を打ち倒して下さい''
神託が少し遅いと思うんだけど。
私は昨晩から気が付いてたし。私が心の中で女神様に対して文句を言っていると駄猫が戻って来た。
「ご主人、分かったにゃ。どうやらベラキール王国手前のダーブルという町が終着点にゃ」
ベラキール王国が目的地なら恐らく一番近い場所まで行くはず。
「追うよ」
「はい! お姉様」
虚空より箒を取り出し、跨る。
リグは背中から普段は隠している真っ黒な翼を出現させ、パタパタと羽ばたかせた。
駄猫は置いて行かれまいと私の肩に慌てて飛び乗る。
馬車は既にマジックバックに回収済み。
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いざ行かん、魔の蔓延る領土へ。
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