最後の魔女

砂鳥 ケイ

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最後の魔女70 強者との対峙

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この心を内側から締め付けるような、打ち付けるような、この感情はなんなの⋯。

 この人族の顔⋯何処かで、何処かで見たことがある。
 でも、どうしても思い出せない。
 それに思い出そうとすると、無性に頭が痛くなる。

 うう⋯。

 じゅ、十二星⋯何よそれ。あぁ、頭が割れそうに痛い。痛いよ⋯

 目を瞑ったまま頭を抱えていたリグを見て、魔女ナイルローズが聖女ユリアーナを引っ張る。

 このチャンスに逃げ出そうとしていたのだ。
 しかし、ユリアーナは首を振り動かない。

 暗殺者のジェイクが、フラフラしながらも短剣を握り締め、隙だらけのリグへと迫る。
 そのジェイクを止めたのは、勇者アレクシスだった。

 その顔からは多量の血を流し、今にも倒れそうだった。

「何故止めるんだアレク」
「すまない。だけど、そんな卑怯な真似は私には出来ない」

 この勇者と聖女、馬鹿なの?
 この気に乗じて逃げればいいのに。それに不意打ち程度じゃ私は倒せないよ。

 はぁ、少しだけ頭痛は治ったかしら。気が失せたわ。

「見逃してあげるから、逃げるといいわ。それと、もうここには来ないでちょうだい」

 そのままリグは踵を返し奥の部屋へと入っていった。

 次の日の朝。

「何でまだいるのよ」

 そこにいたのは、聖女ユリアーナだった。私の姿を見るなりパァーッと笑顔を見せ、抱きついて来る。

 あの後、仲間たちを説得して自分一人がこの場に残ったと言う。

 その理由は⋯

「貴女のことが気になったので」
「意味分からない!」

 それからも彼女は何度かリグのいる古城を訪れた。
 最初の頃はリグも軽快していたが、何度か話をする内に段々と彼女のことが気になりだし、いつしか友と呼べる間柄となった。
 それは時にたわいない世間話から恋話など、様々だった。

「聞いてよ。こないだアレクったら、ドラゴン退治を引き受けたのに間違えて巨大トカゲを討伐してドヤ顔で報告してきたのよ。もうみんな大笑いでね」
「それは、何というかやっぱりアイツ変わってるわね⋯」
「そうなのよ。でもそんな所が放って置けないのよね」

 急にユリアーナがリグの手を握る。

「どしたの?」

 表情もいつもとは違い、何処か真剣なそれへと変わっていた。

「ねぇリグレッド。私たちと一緒に冒険しない?」

 冒険って、外の世界を旅することだよね。
 うん、今まで私が一人でしてたやつだよね。それをユリアーナたちと一緒にかぁ。
 一つの場所に留まるよりかは退屈はしないのだろうけどさ。

「嬉しいけど、それは無理かな」
「どうして?」
「それは⋯」

 言葉に出そうとして口籠る。
 うん、別に言っても問題ないか⋯。

「それはね、私とユリアーナが悪魔と人族だからだよ。敵同士の私たちは、基本的に仲良くしたら駄目なの」
「そんなのあんまりだよ。だって私たちもう友達でしょ? 種族の違いなんて些細なことだよ」

 それと理由はもう一つある。

「私の中に流れている悪魔の血がね、時々訴えてくるんだ。人族や他種族を根絶やしにしろってね。私が暴走したら、貴女たちじゃ私を止められないでしょ? 暴走した私より強いならまだしもね」
「それは⋯」
「だから、この話はおしまいだよ」

 そうして、いつものようにユリアーナと別れた。
 この時の私は、また明日も会えると思っていた。

 一日が経過し、二日が経過した。

 毎日会いに来てたのに、やっぱり酷いこと言ったから嫌われちゃったかな。まぁでもそれがいいよ。私たちは悪魔と人族。決して合い入れないのだから。それにこんなことしてるのが他の悪魔にバレちゃったら、ただでは済まないからね。

 その時、私の中の何かが反応した。

 微かに聞こえる声。
 いや、実際には聞こえないくらい遠い場所にいるはずなのに確かに聞こえる。
 これは、もしかして念話テレパシー

 "助けて"って。

 理屈は分からない。だけど、何故だかこの思念を飛ばしてきた相手の場所が分かる気がした。それは勘なのかも知れない。でも他に頼るものはない。急がないと取り返しのつかない事態になる気がする。その勘を頼りに声の主を探した。

 次第次第に人里離れ、気が付けばゴツゴツとした岩場が広がる採掘場跡へと辿り着いた。
 こんなところで一体何をしてるんだか。
 気配察知を使うと、この近くに5人の反応があった。

 どうやらこの先みたいね。

 こっそり顔だけだし、様子を伺う。

 その先に広がっていた光景は、激しく戦闘が行われていたのだろう戦闘痕と、大量のモンスターの残骸。それに見覚えのある人族が血を流し、倒れていた。

 え、あれってあのおバカ勇者一行じゃん。

 じゃあ、念話テレパシーを飛ばして来たのはユリアーナ?

 戦況は芳しくない。

 勇者と魔女が倒され、暗殺者が一人で戦ってる。その補佐をユリアーナがやっていた。
 一体誰と戦って⋯⋯って、あれもしかして魔族?
 しかも、めちゃくちゃ強そうじゃない?

 私と戦った時以上に簡単にあしらわれてない?

 うむむ。このままだときっとみんな死んじゃうね。
 私の時のように見逃してくれるとは到底思えない。
 全く、アイツらなんで勝てない相手に戦いを挑むかなぁ。やっぱり馬鹿なの?
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