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二十一話
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晴れて冒険者となったギデこと、ギデオン。
その門出は湿度が高く蒸し暑いジャングルから始まった。
前回の夜の砂漠といい、どういうわけか? また同じ過ちを繰り返している。
「くっ、何だ、ここは? ムシムシするし、ジメジメしていて不快だ。おまけに地面もぬかるんでいる……これがジャングル……というものか」
大自然について無頓着な彼は事前に下調べもせず、現地入りするタイプの人間だった。
高確率で遭難する才能を持つ彼だが、同時にマタギという天性職を手に入れたおかげで、事なきを得ている。
元より、聖騎士を心指していた者として、地形学や生態学について詳しく学ぶ機会が無かったと言えばそうなる。
悪路と格闘しながらもジャングルの奥を目指すギデオン。
当然ながら、何の目的なくこの場所に立ち入ったのではない。
彼には明確な目的が二つある。
まず、冒険者としてのランク上げ兼、報酬稼ぎ。
これまでの経緯が経緯なだけに、彼は綺麗さっぱり文無しになってしまっていた。
その辺りは神である歩帝斗に頼めば、どうとでもなりそうだが彼にもプライドというモノがある。
いくら、下級とはいえ貴族としての暮らしが身体に染みついている。
つまり、無償で他者から施しを受けるのを良しとはしない。
彼が言っていた通り、両者の関係はギブアンドテイクだ。
条件が対等でなければならない。
ともあれ、これから冒険をしていく上で稼ぎは必須。
そこで彼は、ギルドの受付け嬢から説明を受けた通り後報酬目当てで、三ツ星クラスの依頼をこなそうと目論んでいた。
手渡された依頼書の中にいくつか、三つ星のモノが紛れ込んでいたのを彼は見逃さなかった。
今回は魔物討伐が目的ではない。
むしろ討伐はついでだ。
採取系のクエスト、黄金の茶葉を見つけ出し入手する。
それが狙いだ。
茶葉自体がどういう品なのかは、以前に市場で見かけた事がある。
だからこそ、この依頼を選んだ。
二つ目は、聖域だ。
歩帝斗は島にある聖域の場所もおおよそ特定済みだった。
彼の話によれば、この密林の最奥に建てられているという。
その道中は難所が多く、密林の狩人達が仕掛けた罠も張り巡らされているらしい。
なので、少しでも多くの情報を得る為、今回は視察に来たわけだ。
獣と鳥と昆虫の奏でる音。
おおい茂る草木の間で混成される大合唱に早くも冒険者ギデは苦戦を強いられていた。
とりわけ、虫の羽音は彼にとって脅威だった。
幼少の頃からギデオンは虫が大の苦手で触れるのは勿論のこと、見ただけで卒倒しそうになる有り様だった。
成長した今、さすがに倒れるとはいかないも、やはり苦手な物は苦手だ。
それでいてよく、砂漠の蠍と交戦できたなと思うが、彼の中ではアレはザリガニの類という認識がなされている。
苦痛の三重奏に気を取られていると前方から、テクテクと全長1メートルほどのキノコが近づいてきた。
マッスルマイコニド、菌肉類の魔物だ。
見た目だけでは普通のマイコニドと変わらないインナーマッスルの魔物は、時として自身を砲弾にして人間を襲う。
冒険者たちからは、見た目だけで侮ってはいけないと評されている大敵だ。
しかし、噂は所詮噂である。
ギデオンの姿を見るなり筋肉キノコはそそくさと踵を返していた。
彼というより、彼の背で唸る魔獣の気配を察知したのだろう。
逃げきる事に必死だ。
「おい! 待て! 速いな……。スコル、あのキノコを追ってくれ」
ギデオンが呼び掛けると猟銃が彼の身体を離れて、人の倍近くはある巨大な獣の姿に変化した。
彼がスコルと命名した魔獣は、彼に従いすぐさまマイコニドを追走する。
五分後、スコルが彼の元へと戻ってきた。
その口には、しっかりと草臥れたキノコがくわえられていた。
「デカいな……取り敢えず、そうだな。こんな感じでいいだろう」
身近にあった植物の蔓で器用に縄を作り、マイコニドに巻き付けるとギデオンは肩に担いだ。
早々に手荷物が増えることは好ましいとは言えないが、冒険初心者である彼にとって初めての収穫だ。
放置するなどという考えは微塵もない。
「戻れ、スコル」
再度、猟銃に変わった魔獣を空いた方の肩に乗せる。
因みに、銃の皮ベルトは彼がスコルの為に手作りした首輪となっている。
気止め程度でしかないが、不足の事態に備えてのギデオンなりの配慮だろう。
野生の魔獣ではないと他者に証明する為の物としてスコルに与えた。
倒木の架け橋を渡り、更に奥へと進む。
その間「シネシネシネシネシネ」と虫が鳴き喚くので射殺していく。
虫に対して彼は容赦しない、次から次へ引き金をひいてゆく。
その発砲音に警戒したのか、他の魔物は一向に姿を見せようとしない。
「こいつは、しくったな……」
そう呟いた、矢先――周囲から獣の咆哮が飛び交う。
恐れ慄き飛び立つ密林の鳥たちを皮切りに、ジャングル全体が慌ただしくなってきた。
声の大きさからして魔獣は大型なモノと想定された。
「結構、近いな」
ギデオンは真っ先に声の主を捜した。
その門出は湿度が高く蒸し暑いジャングルから始まった。
前回の夜の砂漠といい、どういうわけか? また同じ過ちを繰り返している。
「くっ、何だ、ここは? ムシムシするし、ジメジメしていて不快だ。おまけに地面もぬかるんでいる……これがジャングル……というものか」
大自然について無頓着な彼は事前に下調べもせず、現地入りするタイプの人間だった。
高確率で遭難する才能を持つ彼だが、同時にマタギという天性職を手に入れたおかげで、事なきを得ている。
元より、聖騎士を心指していた者として、地形学や生態学について詳しく学ぶ機会が無かったと言えばそうなる。
悪路と格闘しながらもジャングルの奥を目指すギデオン。
当然ながら、何の目的なくこの場所に立ち入ったのではない。
彼には明確な目的が二つある。
まず、冒険者としてのランク上げ兼、報酬稼ぎ。
これまでの経緯が経緯なだけに、彼は綺麗さっぱり文無しになってしまっていた。
その辺りは神である歩帝斗に頼めば、どうとでもなりそうだが彼にもプライドというモノがある。
いくら、下級とはいえ貴族としての暮らしが身体に染みついている。
つまり、無償で他者から施しを受けるのを良しとはしない。
彼が言っていた通り、両者の関係はギブアンドテイクだ。
条件が対等でなければならない。
ともあれ、これから冒険をしていく上で稼ぎは必須。
そこで彼は、ギルドの受付け嬢から説明を受けた通り後報酬目当てで、三ツ星クラスの依頼をこなそうと目論んでいた。
手渡された依頼書の中にいくつか、三つ星のモノが紛れ込んでいたのを彼は見逃さなかった。
今回は魔物討伐が目的ではない。
むしろ討伐はついでだ。
採取系のクエスト、黄金の茶葉を見つけ出し入手する。
それが狙いだ。
茶葉自体がどういう品なのかは、以前に市場で見かけた事がある。
だからこそ、この依頼を選んだ。
二つ目は、聖域だ。
歩帝斗は島にある聖域の場所もおおよそ特定済みだった。
彼の話によれば、この密林の最奥に建てられているという。
その道中は難所が多く、密林の狩人達が仕掛けた罠も張り巡らされているらしい。
なので、少しでも多くの情報を得る為、今回は視察に来たわけだ。
獣と鳥と昆虫の奏でる音。
おおい茂る草木の間で混成される大合唱に早くも冒険者ギデは苦戦を強いられていた。
とりわけ、虫の羽音は彼にとって脅威だった。
幼少の頃からギデオンは虫が大の苦手で触れるのは勿論のこと、見ただけで卒倒しそうになる有り様だった。
成長した今、さすがに倒れるとはいかないも、やはり苦手な物は苦手だ。
それでいてよく、砂漠の蠍と交戦できたなと思うが、彼の中ではアレはザリガニの類という認識がなされている。
苦痛の三重奏に気を取られていると前方から、テクテクと全長1メートルほどのキノコが近づいてきた。
マッスルマイコニド、菌肉類の魔物だ。
見た目だけでは普通のマイコニドと変わらないインナーマッスルの魔物は、時として自身を砲弾にして人間を襲う。
冒険者たちからは、見た目だけで侮ってはいけないと評されている大敵だ。
しかし、噂は所詮噂である。
ギデオンの姿を見るなり筋肉キノコはそそくさと踵を返していた。
彼というより、彼の背で唸る魔獣の気配を察知したのだろう。
逃げきる事に必死だ。
「おい! 待て! 速いな……。スコル、あのキノコを追ってくれ」
ギデオンが呼び掛けると猟銃が彼の身体を離れて、人の倍近くはある巨大な獣の姿に変化した。
彼がスコルと命名した魔獣は、彼に従いすぐさまマイコニドを追走する。
五分後、スコルが彼の元へと戻ってきた。
その口には、しっかりと草臥れたキノコがくわえられていた。
「デカいな……取り敢えず、そうだな。こんな感じでいいだろう」
身近にあった植物の蔓で器用に縄を作り、マイコニドに巻き付けるとギデオンは肩に担いだ。
早々に手荷物が増えることは好ましいとは言えないが、冒険初心者である彼にとって初めての収穫だ。
放置するなどという考えは微塵もない。
「戻れ、スコル」
再度、猟銃に変わった魔獣を空いた方の肩に乗せる。
因みに、銃の皮ベルトは彼がスコルの為に手作りした首輪となっている。
気止め程度でしかないが、不足の事態に備えてのギデオンなりの配慮だろう。
野生の魔獣ではないと他者に証明する為の物としてスコルに与えた。
倒木の架け橋を渡り、更に奥へと進む。
その間「シネシネシネシネシネ」と虫が鳴き喚くので射殺していく。
虫に対して彼は容赦しない、次から次へ引き金をひいてゆく。
その発砲音に警戒したのか、他の魔物は一向に姿を見せようとしない。
「こいつは、しくったな……」
そう呟いた、矢先――周囲から獣の咆哮が飛び交う。
恐れ慄き飛び立つ密林の鳥たちを皮切りに、ジャングル全体が慌ただしくなってきた。
声の大きさからして魔獣は大型なモノと想定された。
「結構、近いな」
ギデオンは真っ先に声の主を捜した。
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