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三百九十九話
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大元の裏切り、クドの願望。
互いの事情が複雑に絡み合い、状況はより悪化し混沌を極めていた。
騒乱の真相を究明し、黒幕を取り押さえる。
ついでにクドも大人しくさせて連れて帰る。
などと単純に済ませられるわけもなかった。
頭でいくら考えようが、心の内の葛藤が鎮まることはない。
現れたクドを視認するなり、ギデオンの右拳から蒼白い炎が上がっていた。
ガントレット越しから噴き出てくる爆炎は、以前とは比べ物にならないほどの凄まじく燃え盛っていた。
まさしくギデオンの怒り、そのものを表したかのような火の勢いだ。
「ギデオン?」
ランドルフが制止しようとするも、すでに遅かった。
極天(天属性)の拳がクドの顔面を撃ち抜こうとしていた。
とっさに両腕を交差させるクドだが、ガードの体勢を崩され床上を転がる羽目になった。
ギデオンの正拳突きの破壊力は彼の想像の範疇を上回っていた。
ガードした腕はミシミシと音を嫌な音を鳴らしていた。
「クド! お前たちのせいで、どれほどの人間が犠牲になったと思うんだ!?」
「だりぃーな、ギデオン。気に食わないのは、犠牲になった仲間のことだけだろう?
本当は赤の他人のことなんぞ、どうでもいいはずだ。
お前は、昔からそういう奴だった……聖歌隊の奴らも変に仲間意識が高くてダメだ!」
「お前だって同じだろう! チルルやヒューズと共に行動していただろう」
「チガウな、根本的に異なる。俺にとって仲間とはバトンをつなぐ走者だ。
分かるか、ギデオン? 手をつないで靴音を揃えるのとはわけが違うんだ。
それぞれが与えられた役割を果たすために協力しあっているにすぎない」
クドの見え透いた嘘にギデオンはギリッと歯を鳴らした。
そんな、薄っぺらい関係であるはずがない。
すべては今までのクド自身の行動が証明していた。
必死で仲間を守ろうとしていた……仲間が傷つけられれば殺意を放ち敵を排除していた。
なにより、アーデル・ヴァイスのメンバーは誰一人としてクドを見捨てるような動きを見せなかった。
仲間に信頼され必要とされている証である。
いくら否定しても彼らをクドを支えようとしていた。
そう思わせるほどの事をこの男はやってきたのだ。
「ふぅ――、ケンカなら他所でやってくれないか? ギデ君たちも、そこの赤頭の君も私を止めにきたんだろう?
先に言っておくけど、戦うだけ無駄だよ。君たち程度に手を焼く私ではない」
挑発とも取れる一言に、ギデオンたちの怒りの矛先が切り替わった。
バカにされたのも癪だが、なにより一括りにされたのが気に入らない。
「「コイツと一緒にするな」」
ギデオンとクド、双方が互いを指差し合いながら言い争っていた。
「貴様ら、いい加減にしろ!! 優劣を決めている場合ではないだろう。目的を見失うな!」
激怒したランドルフに叱られ、ようやく二人のいがみ合いが終わった。
和解など期待するだけ無駄な話だ。クドはやり過ぎた、過ちを正す道はとうに閉ざされていた。
今は一時的、互いの利害が一致しているだけだ。
「カナッペにかけた呪いは必ず解いて貰うぞ」
「奴を始末したら考えてやる。せいぜい、急ぐことだな……こうしている内にも、あの女の生命力は弱まる一方だ」
「見くびるんなよ。だったら、すぐに終わらせてやる」
依然として大元は棒立ちしていた。
神威からの極天蒼炎鸞が闇を払う。
闘気の炎をまといし魔銃ガルムにより開戦一撃が撃ち込まれようとしていた。
「惑わされるな、アイツは大元導士ではない」
震える指先が銃の引き金を引くのを躊躇っていた。
いつになっても、攻撃しようとしないギデオンにクドの舌打ちが響く。
「出来ないのなら退いていろ!」
ギデオンを脇腹を蹴り飛ばし偽装練功したクドが、大元を斬り裂く。
空を斬る干将莫邪の刃が大元の身体に受け止められ進まなくなっていた。
「だから言ったろ、君たちじゃ相手にならないって」
回避でも防御でもない……そのまま斬られていた。
にもかかわらず、先に悲鳴を上げたのは闘気の剣の方だった。
「練功、星垂」
大元の周囲に小さな闘気の灯火が浮遊していた。
一つだけではない。
飴玉サイズの物が何百個も出現し、瞬く間にクドごと周囲を覆っていった。
大元が念じれば無造作に動き出した星垂たちがぶつかり合い弾け飛んでゆく。
その領域にある物すべてが、弾丸と化した闘気の餌食にされてしまう。
数の暴力が止んだ後にあるのは、無惨に散った原形なき残骸のみ。
「スティールストレージ!」
えげつない能力を発揮する星垂。
暴れ狂う闘気を、瞬時に奪取することでクドは危機を脱した。
互いの事情が複雑に絡み合い、状況はより悪化し混沌を極めていた。
騒乱の真相を究明し、黒幕を取り押さえる。
ついでにクドも大人しくさせて連れて帰る。
などと単純に済ませられるわけもなかった。
頭でいくら考えようが、心の内の葛藤が鎮まることはない。
現れたクドを視認するなり、ギデオンの右拳から蒼白い炎が上がっていた。
ガントレット越しから噴き出てくる爆炎は、以前とは比べ物にならないほどの凄まじく燃え盛っていた。
まさしくギデオンの怒り、そのものを表したかのような火の勢いだ。
「ギデオン?」
ランドルフが制止しようとするも、すでに遅かった。
極天(天属性)の拳がクドの顔面を撃ち抜こうとしていた。
とっさに両腕を交差させるクドだが、ガードの体勢を崩され床上を転がる羽目になった。
ギデオンの正拳突きの破壊力は彼の想像の範疇を上回っていた。
ガードした腕はミシミシと音を嫌な音を鳴らしていた。
「クド! お前たちのせいで、どれほどの人間が犠牲になったと思うんだ!?」
「だりぃーな、ギデオン。気に食わないのは、犠牲になった仲間のことだけだろう?
本当は赤の他人のことなんぞ、どうでもいいはずだ。
お前は、昔からそういう奴だった……聖歌隊の奴らも変に仲間意識が高くてダメだ!」
「お前だって同じだろう! チルルやヒューズと共に行動していただろう」
「チガウな、根本的に異なる。俺にとって仲間とはバトンをつなぐ走者だ。
分かるか、ギデオン? 手をつないで靴音を揃えるのとはわけが違うんだ。
それぞれが与えられた役割を果たすために協力しあっているにすぎない」
クドの見え透いた嘘にギデオンはギリッと歯を鳴らした。
そんな、薄っぺらい関係であるはずがない。
すべては今までのクド自身の行動が証明していた。
必死で仲間を守ろうとしていた……仲間が傷つけられれば殺意を放ち敵を排除していた。
なにより、アーデル・ヴァイスのメンバーは誰一人としてクドを見捨てるような動きを見せなかった。
仲間に信頼され必要とされている証である。
いくら否定しても彼らをクドを支えようとしていた。
そう思わせるほどの事をこの男はやってきたのだ。
「ふぅ――、ケンカなら他所でやってくれないか? ギデ君たちも、そこの赤頭の君も私を止めにきたんだろう?
先に言っておくけど、戦うだけ無駄だよ。君たち程度に手を焼く私ではない」
挑発とも取れる一言に、ギデオンたちの怒りの矛先が切り替わった。
バカにされたのも癪だが、なにより一括りにされたのが気に入らない。
「「コイツと一緒にするな」」
ギデオンとクド、双方が互いを指差し合いながら言い争っていた。
「貴様ら、いい加減にしろ!! 優劣を決めている場合ではないだろう。目的を見失うな!」
激怒したランドルフに叱られ、ようやく二人のいがみ合いが終わった。
和解など期待するだけ無駄な話だ。クドはやり過ぎた、過ちを正す道はとうに閉ざされていた。
今は一時的、互いの利害が一致しているだけだ。
「カナッペにかけた呪いは必ず解いて貰うぞ」
「奴を始末したら考えてやる。せいぜい、急ぐことだな……こうしている内にも、あの女の生命力は弱まる一方だ」
「見くびるんなよ。だったら、すぐに終わらせてやる」
依然として大元は棒立ちしていた。
神威からの極天蒼炎鸞が闇を払う。
闘気の炎をまといし魔銃ガルムにより開戦一撃が撃ち込まれようとしていた。
「惑わされるな、アイツは大元導士ではない」
震える指先が銃の引き金を引くのを躊躇っていた。
いつになっても、攻撃しようとしないギデオンにクドの舌打ちが響く。
「出来ないのなら退いていろ!」
ギデオンを脇腹を蹴り飛ばし偽装練功したクドが、大元を斬り裂く。
空を斬る干将莫邪の刃が大元の身体に受け止められ進まなくなっていた。
「だから言ったろ、君たちじゃ相手にならないって」
回避でも防御でもない……そのまま斬られていた。
にもかかわらず、先に悲鳴を上げたのは闘気の剣の方だった。
「練功、星垂」
大元の周囲に小さな闘気の灯火が浮遊していた。
一つだけではない。
飴玉サイズの物が何百個も出現し、瞬く間にクドごと周囲を覆っていった。
大元が念じれば無造作に動き出した星垂たちがぶつかり合い弾け飛んでゆく。
その領域にある物すべてが、弾丸と化した闘気の餌食にされてしまう。
数の暴力が止んだ後にあるのは、無惨に散った原形なき残骸のみ。
「スティールストレージ!」
えげつない能力を発揮する星垂。
暴れ狂う闘気を、瞬時に奪取することでクドは危機を脱した。
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