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黄昏る命
孤高の狩人 1
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先の見えない闇の中を歩いていた。
周囲には何もない。
けど、不安や迷いはなく呆然しながら僕は漂流していた。
やがて、視界に一点のオレンジ色が飛び込んできた。
なぜだろう?
自然と足はその方向へと向いていた――――
「んはっ! こ……ここは?」
状況を整理するまで時間を要した。
辺りはすっかり日が落ちていた。
目の前にはパチパチは音を立てて火の粉を散らす、焚火の炎が揺れていた。
「目覚めたようだな、大丈夫か?」
焚火の傍に人影があった。
火の灯りに照らされる、目鼻立ちがくっきりとした、その顔には覚えがある。
僕を助けながらも最後は一人で逃走した弓使いだ。
「え――っと」
「ロビンアームだ。お前さんもβテスターだろ?
運が良かったな。俺は普段ソロで活動しているから、あまり他のプレイヤーとは関わらない。
丁度、お前さんが気を失って倒れていたから、ここまで運んできたのさ」
「はぁ……そうなんですか。助かりました、どーもです」
頭をポリポリと掻きながら思考を巡らす。
どうも、僕はこの男に救助されたらしい。
原因はおそらく魔力の枯渇だ。
SPが0になると気を失ってしまう仕様になっているようだ。
まさか、バーチャルリアリティーの世界で意識が飛ぶとは思わなかった。
限りなく現実に近いVRUだからこそ起こりうる症状なのだろう。
「そういえば! クレイド…………僕の乗っていたゴーレムはどうなりましたか?」
01のことを思い出すなり、問わずにはいられなかった。
あの時以降の記憶がないから当然、気になる。
「あれな。そのままじゃないのか? お前さんが気を失うなり即停止していたぞ。
むしろ、話を聞きたいのは俺の方さ。
ありゃ、何だい? どこで手に入れたんだ」
ロビンアームは、焚火の中から燃え盛る火の塊を金バサミで拾い上げると、即席のかまどにそれを放り込んだ。
その上に鉄鍋を置くとすぐに何かを炒め始めた。
空きっ腹の僕には、見ているのが辛い光景だった。
ちゃんとした調理器具を持っているなんて、うらやましいかぎりだ。
「なんだ? 悪いが分けられないぞ。こっちとて少ない食料なんだ。
たく、キノコと野草と木の実だけだなんて腹の足しにもならねぇ」
「そうだ、これを調理することってできます?」
アイテムボックスを開くと、僕はトカゲの肉を取り出した。
突如、転送され出てきた肉の塊に、それまで愚痴をこぼしていたロビンも急に静かになる。
「すんげぇ―――! 二人でも一食じゃ食いきれない量じゃないか。
トカゲだか何だか知らんけど、贅沢なんて言ってられねぇ。
毒がないか【目利き】してやるから少し待っていろ。
…………大丈夫みたいだな、よしっ!」
話しあった末、食材を提供するかわりにロビンから夕食を分けてもらうことなった。
調味料がない分、味は保証できないと彼は言っていたが本当に食材だけの味しかしない。
ナンマンダの肉は、脂身がすくなく鶏胸肉のようにサッパリとしている。
わりと素朴な味わいだが、空腹時には関係ない。
むしろ、思っていた以上に抵抗もなく食べられ、アッという間に完食してしまった。
「いあや、食った食った。これぐらいのボリューム感がないとな。
でも調理キットも持っていないとは、お前さんも大変だな」
夕食を終えるとロビンアームは満足気に腹をさすっていた。
気持ちはよく分かる。僕も命拾いした気分だ。
聞いたところによると、調理キットはゲーム開始時からアイテムボックスに支給されていたものだそうだ。
ランダムという可能性も捨てきれないが、CLAYDやカズキの件もある手前、彼にも聞いてみた。
「ん? このゲームを始めて何か、おかしいと思う部分はないかって?
俺自身は特に異変は感じないかな……まぁ、強いて感じるのならアレだな」
腕を水平に伸ばし、ロビンアームは城塞跡地の奥を指差していた。
完全に崩壊し瓦礫の山となっている、この場所とは対照的に、奥側はまだ外観を維持している。
「あそこからモンスターがわんさか出てくるんだよ。
探索しようにも俺一人じゃ到底不可能なぐらいにな。
なのに、どうして奴らはここまでやって来ないんだ?
俺が思うに、あそこにはお宝が眠っている。
モンスター共は、それを守るために城塞を離れられないんだ」
「確証がないのなら、わざわざリスクを背負ってまで探索にでる必要はないかと……。
モンスターが襲って来ないのだって偶然かもしれませんし」
期待していた情報は得られなかった。
例え、あそこにお宝があったとしても今は近づくべきじゃない。
ドレッドフード以上に手強いモンスターは間違いなく城塞内に潜んでいる。
RPGならではのお約束という奴だ。
「そういうわけで、明朝になったらお前さんのゴーレムを使って遺跡内のモンスターを討伐しようと思う」
「はぁ?」思わず耳を疑いたくなる発言が彼の口から出てきた。
どういうわけだか知らないけれど、なぜか僕が手伝いをする流れになっている。
そこで、ようやく理解した。
ロビンアームが僕を助けたのは善意ではないということに。
周囲には何もない。
けど、不安や迷いはなく呆然しながら僕は漂流していた。
やがて、視界に一点のオレンジ色が飛び込んできた。
なぜだろう?
自然と足はその方向へと向いていた――――
「んはっ! こ……ここは?」
状況を整理するまで時間を要した。
辺りはすっかり日が落ちていた。
目の前にはパチパチは音を立てて火の粉を散らす、焚火の炎が揺れていた。
「目覚めたようだな、大丈夫か?」
焚火の傍に人影があった。
火の灯りに照らされる、目鼻立ちがくっきりとした、その顔には覚えがある。
僕を助けながらも最後は一人で逃走した弓使いだ。
「え――っと」
「ロビンアームだ。お前さんもβテスターだろ?
運が良かったな。俺は普段ソロで活動しているから、あまり他のプレイヤーとは関わらない。
丁度、お前さんが気を失って倒れていたから、ここまで運んできたのさ」
「はぁ……そうなんですか。助かりました、どーもです」
頭をポリポリと掻きながら思考を巡らす。
どうも、僕はこの男に救助されたらしい。
原因はおそらく魔力の枯渇だ。
SPが0になると気を失ってしまう仕様になっているようだ。
まさか、バーチャルリアリティーの世界で意識が飛ぶとは思わなかった。
限りなく現実に近いVRUだからこそ起こりうる症状なのだろう。
「そういえば! クレイド…………僕の乗っていたゴーレムはどうなりましたか?」
01のことを思い出すなり、問わずにはいられなかった。
あの時以降の記憶がないから当然、気になる。
「あれな。そのままじゃないのか? お前さんが気を失うなり即停止していたぞ。
むしろ、話を聞きたいのは俺の方さ。
ありゃ、何だい? どこで手に入れたんだ」
ロビンアームは、焚火の中から燃え盛る火の塊を金バサミで拾い上げると、即席のかまどにそれを放り込んだ。
その上に鉄鍋を置くとすぐに何かを炒め始めた。
空きっ腹の僕には、見ているのが辛い光景だった。
ちゃんとした調理器具を持っているなんて、うらやましいかぎりだ。
「なんだ? 悪いが分けられないぞ。こっちとて少ない食料なんだ。
たく、キノコと野草と木の実だけだなんて腹の足しにもならねぇ」
「そうだ、これを調理することってできます?」
アイテムボックスを開くと、僕はトカゲの肉を取り出した。
突如、転送され出てきた肉の塊に、それまで愚痴をこぼしていたロビンも急に静かになる。
「すんげぇ―――! 二人でも一食じゃ食いきれない量じゃないか。
トカゲだか何だか知らんけど、贅沢なんて言ってられねぇ。
毒がないか【目利き】してやるから少し待っていろ。
…………大丈夫みたいだな、よしっ!」
話しあった末、食材を提供するかわりにロビンから夕食を分けてもらうことなった。
調味料がない分、味は保証できないと彼は言っていたが本当に食材だけの味しかしない。
ナンマンダの肉は、脂身がすくなく鶏胸肉のようにサッパリとしている。
わりと素朴な味わいだが、空腹時には関係ない。
むしろ、思っていた以上に抵抗もなく食べられ、アッという間に完食してしまった。
「いあや、食った食った。これぐらいのボリューム感がないとな。
でも調理キットも持っていないとは、お前さんも大変だな」
夕食を終えるとロビンアームは満足気に腹をさすっていた。
気持ちはよく分かる。僕も命拾いした気分だ。
聞いたところによると、調理キットはゲーム開始時からアイテムボックスに支給されていたものだそうだ。
ランダムという可能性も捨てきれないが、CLAYDやカズキの件もある手前、彼にも聞いてみた。
「ん? このゲームを始めて何か、おかしいと思う部分はないかって?
俺自身は特に異変は感じないかな……まぁ、強いて感じるのならアレだな」
腕を水平に伸ばし、ロビンアームは城塞跡地の奥を指差していた。
完全に崩壊し瓦礫の山となっている、この場所とは対照的に、奥側はまだ外観を維持している。
「あそこからモンスターがわんさか出てくるんだよ。
探索しようにも俺一人じゃ到底不可能なぐらいにな。
なのに、どうして奴らはここまでやって来ないんだ?
俺が思うに、あそこにはお宝が眠っている。
モンスター共は、それを守るために城塞を離れられないんだ」
「確証がないのなら、わざわざリスクを背負ってまで探索にでる必要はないかと……。
モンスターが襲って来ないのだって偶然かもしれませんし」
期待していた情報は得られなかった。
例え、あそこにお宝があったとしても今は近づくべきじゃない。
ドレッドフード以上に手強いモンスターは間違いなく城塞内に潜んでいる。
RPGならではのお約束という奴だ。
「そういうわけで、明朝になったらお前さんのゴーレムを使って遺跡内のモンスターを討伐しようと思う」
「はぁ?」思わず耳を疑いたくなる発言が彼の口から出てきた。
どういうわけだか知らないけれど、なぜか僕が手伝いをする流れになっている。
そこで、ようやく理解した。
ロビンアームが僕を助けたのは善意ではないということに。
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