暗殺ギルドのリザレクター

心絵マシテ

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女神転移計画

宝珠の行方 4

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 その日の午後は最悪の気分だった。
 特に行きたくないレヴィナス山脈行きが決定した上に、期待していたヤイナの同伴が駄目になったからである。
 アンゾ曰く、彼女には他の任につかせるとのこと。
 一応、僕一人にだけに任せて大丈夫なのかと問い詰めてみたら「大丈夫さ」と目を泳がせて答えてきた。
 もとより、少数しかいないギルドだ。
 代わりの補充メンバーがいるわけもない。

 にも関わらず、仕事はキッチリと引き受けてくるギルマスは管理能力がないんじゃないかと疑いたくなる。

「そう怒るなよ、キッド君。
一人で仕事する分、報酬は上乗せしておくからさ~」

 まったく、こういう時だけ調子がいい。
 上乗せと言っても、この世界の通貨価値が分からない僕にとっては、どれほどの額が適切なのか分からない。

 依頼内容で金額が変動するギルドメンバーの報酬は時給制ではなく歩合制だ。
 一つの依頼を成功させれば、だいたい8千~3万カレンツの金額が支払われる。
 普段、僕が飲食代として支払っている金額は一日三食で1500カレンツ前後。
 それを基準にすると決して贅沢はできないが、生憎と金欠にはならない。
 何故なら、例のドロップアイテムで金策できるからだ。

 どうせ、登山をするんだ。
 相応の装備を揃えないといけない。
 かねてより気になっていた市場調査を含めて、ゴレームで馬鹿稼ぎした不要なアイテムを売り捌いてしまおう。
 それで得た収入で装備を整えてもカレンツはかなり余るはずだ。

 などという思惑は絵にかいた餅だった……ここに来るまで浮かれていた自分が悲しくなってくる。
 現実はそれほど甘くはなかった。
 需要と供給のバランスが重要な売買において、売れないレアアイテムなど引き取ってすら貰えない。
 ご丁寧に買い取り個数制限があったり、一桁の代金でなら買い取るというふざけた店もあった。

 期待外れもいいところである。
 安値でレア武具を売り飛ばしたくなかった僕は、結局は消費量の多い安値のアイテムだけを処分するに留まった。
 それでも5万カレンツ以上の稼ぎにはなったので、これを元手に防具などの必要品を揃えることにした。

 レヴィナス山脈があるズベン地方は、このエルンストの街、北方に位置する降雪地帯だそうだ。
 年間を通して雪が降らない日は一ヶ月にも満たない、平時でもマイナス気温となる過酷な環境だ。
 人が暮らすには厳しい極寒の地。
 そんな場所にこれから向かおうというのだ、軽装でいったら一瞬で凍り漬けになってしまう。

「防寒セットも一式そろえたし、アストライ砦に向かうか……」

 一人だと妙に怠さを感じた。
 せっかく買い物にきたのに目ぼしい商品も見当たらない。
 物足りなさを噛み締めつつ、商店通りを出ようとした。

「ちょいと、兄さん。何か用入りで?」

 通りの片隅で不意に声をかけられた。
 後ろ振り向くと、売り物と思われる品物を山積みにしたリアカーがガタガタと音を立てて近づいてきた。
 ガラクタばかりしかなさそうな荷車を引きながらオッサンが手を振ってきた。

 子供ぐらいの背丈せありながら、身体の肉づきが良い彼を一目見てドワーフ族だと気づいた。
 オレガシーマでもRPGの定番である他種族が存在するらしい。
 新たな発見にテンションも爆上りしてくる。
 ドワーフがいれば、エルフや龍族、魔族とだって出会える。
 早く、この目で拝んで見てみたいと思ってしまう。

「いや、買い物は終わったんだけど……売ろうとしたレアアイテムが売れなくてさ」

 この手の輩は、相手にすることはないのだが、この時ばかりは物珍しさが勝っていた。
 僕の話を聞くとドワーフのオッサンは、腕組しながら頷いていた。

「分かるわ。アイテムを売りたいけれど、なかなか売れない。
俺も昔はそんな苦い経験をしてきたものさ。
ヨシッ! ここで出会ったのも何かの縁だ。
おっしゃんが一肌むいてやる」

 変な言い回しをしながらドワーフのオッサンはリアカーの中身を漁り始めた。
 別に頼んでもいないのに、アイテムを取り出して見せてきた。

「暗黒の股引ももひきとキャメルのシャツや。
これさえあれば、財布の中身が寒い時でも、身体はポカポカじゃい!
どうだい、兄さん。アンタの余った武具と交換しないかい?」

 上手いこと言ったつもりかもしれないが、そこまで困窮はしていない。
 オッサンは、物々交換を希望しているが、一応、パラボードで性能を確認してみる。

 同じ種類の防具同士でのトレードとなると僕が出せるのは黒豹の鎧(防御+35)ぐらいだ。
 暗黒の股引(防御+18)は防具としての性能こそ劣るが、特殊効果として凍結確率半減。
 キャメルのシャツは炎耐性が20%増で付与される。

 この先のことを考えれば、決して悪いトレードではない。
 黒豹の鎧は二着しかなかったので一着だけ交換することにした。

「へへっ、毎度―さん」

 取引きが終わると満足気な顔をしながら、オッサンはリアカーを引いて去ってゆく。
 レアアイテムが売れないという根本的な問題は解決していないが、彼のおかげで物々交換という選択肢もあるのだと勉強になった。

 もし、パラボードのステータス表示機能なければ、あの人とは絶対にアイテム交換はしなかったと言い切れる。
 ドワーフのオッサンのクラスは【伝説の売人】だった。
 何が伝説なのか知らないが、とにかく凄い人物なのだろう。
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