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女神転移計画
ギルド、ラムゼイスケイル 2
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ようやく、姿を見せたブリザードイーターたちは、花芯の部分(花の中心部)がワニの顎と化していた。
厳密に言えば、植物に肉食獣の口元が生えている。
小動物なら一気に丸飲みできそうな大口と何者も噛み砕くという鋭い牙。
冒険初心者なら、恐怖して萎縮してしまうだろう。
大顎の周りは、レンズのような透明色の花弁により着飾られていた。
揺れる炎にあえぐブリザーブドイーターを直視し、攻略方法を思案する。
ここからが本番だ。
ファイヤーボルトに組み合わせる、もう一つの魔法。
それは、この光属性魔法【ライトシャワー】だ。
ファイヤーボルトと同様、下位魔光ではあるが使い勝手は悪くない。
ライトシャワーは、強烈な閃光を放つ魔法だ。
暗闇を照らす灯り代わりとして購入したものだが、別の用途で早速、役立ちそうだ。
僕は目蓋を閉じ腕で目元をかばった。
しばらく経って、目を開くと白みを帯びた世界の中からぼやけた輪郭が見えてきた。
三体のブリザードイーターのうち二体は炎に包まれて活動を停止していた。
そこだけ雪が消滅し、水一滴さえ残っていない。
ライトシャワーとファイアボルトが合わさり強力な炎熱魔光へと進化した結果だ。
さしずめ、クリムゾンフレアとでも呼ぶべきか。
残る一体は、再度地中へと隠れてしまった。
パラボードで追跡すると僕から徐々に離れて逃げだしている。
スノーマン・ピラーはというと……
僕は辺りを見渡した。
眼の前に広がる雪原の風景に息を吞む。
パラボードからスノーマン・ピラーの位置を特定できる信号が途絶えてしまった。
燃え盛るブリザードイーターの姿に恐怖し、逃走したのなら問題はない。
さきほどまで表示されていた信号には、そんな素振りはちっとも見受けられなかったが……。
耳を澄ませば不吉な音が流れてくる。
空を裂くのような音とともに、上空から転がり落ちてきたのは僕の身体の三倍はある特大の雪ダルマだった。
「クソォォォォ――――!! 火が怖いんじゃなかったのかよ」
素早く、ファイヤーボルトのスクロールを取り出し身構える。
スノーマン・ピラーたちが射程内に入るまで待たないといけない。
ブリザードイーターのように、何かが飛んでくれば攻撃をしかけてくるタイプには思えない。
二つの雪ダルマはそれぞれ左右に迂回しながら僕を挟撃しようとしている。
おそらく、スクロールを放っても避けられてしまう。
待つのは良しとして……問題は奴らの移動速度と巨大化だ。
近場でファイヤーボルトを放射したとしよう。
果たして、あのサイズの雪ダルマたちが即座に止まってくれるのだろうか。
しかも、転がる度に地表の雪を吸収して大きく育っていく。
奴からすれば初級魔光の炎なんて、マッチの火と変わらない。
あんな物に轢かれたら即死コースである。
となれば――――
「……逃げるしかない」
自身にリザレクションをかけて、僕は猛ダッシュでその場を後にした。
『アイテムを入手しました。蔦の鞭×1 エーデルワイス×1』
非常事態に関わらず、mEqさんは平常運転である。
わざとやられてリバイブするという手もあるが、それは最終手段だ。
自動蘇生には、一日一度しか使用できないという縛りがある。
その上、みすみす死に急げるほど僕は怖いもの知らずではない。
やはり、生存できるのなら生きる方を選ぶ。
「んもぉ! しつこいぞ」
牛のような声を出して、尚も追跡してくる雪ダルマから逃れようとする。
一定の距離はキープできているが、引き離さないと意味がない。
三分後には、バフ効果が切れてしまう。
身動きが取れなくなる自分を想像するとゾッとしない。
「しめた、砦が見えてきたぞ!」
遠方に薄っすらとした影が見える。
黒ゴマほど程度の大きさしかないが、パラボードのマップにはアストライ砦の表記がされている。
なんとしても、あそこまで辿り着かないとならない。
砦さえ入ればコイツらも追ってはこれまい。
歯を食いしばって、さらに走るピッチを上げた。
息が続かず眩暈を覚える。
それでも、ゴールは近いという事実が僕の心の支えとなっ―――――
思わず思考が途切れた。
急な段差に足をとられ、僕は転倒してしまった。
顔面を雪の中に埋めたまま、うつ伏せ状態となる。
すぐに飛び起きたくとも、SP が枯渇状態だ。
SPポーションか、食事を摂って回復させないとならない。
言うまでもなく、そんな余裕はどこにもない。
走りながら回復する以前に、今すぐ補給しないと立ち上がるのも困難だ。
完全に管理ミスだ。
逃走することを事前に計算していれば、こうはならなかった。
不服だが、ここは潔くリバイブに頼るしかない。
敗北を覚悟しながらジッとしていたが、スノーマン・ピラーたちがやってくる気配は一向にない。
アイテムボックスからSPポーションを取り出してコルク栓を抜く。
90秒でエネルギーチャージができる小瓶に入ったの優れものだ。
雪塗れになった身体をゆっくりと起こし屈んだ状態で段差の上を覗いた。
停止したスノーマン・ピラーたちが回転しながら、吸収したはずの雪を周囲に放出している。
限界を迎えたのは向こうも同じようだ。
自重が増えすぎて苦しくなったのだろう。
雪を吐き出して元のサイズへと戻ろうとしている。
とにかく、今がチャンスだ。
奴らに気づかれないように早歩きでその場を脱した。
厳密に言えば、植物に肉食獣の口元が生えている。
小動物なら一気に丸飲みできそうな大口と何者も噛み砕くという鋭い牙。
冒険初心者なら、恐怖して萎縮してしまうだろう。
大顎の周りは、レンズのような透明色の花弁により着飾られていた。
揺れる炎にあえぐブリザーブドイーターを直視し、攻略方法を思案する。
ここからが本番だ。
ファイヤーボルトに組み合わせる、もう一つの魔法。
それは、この光属性魔法【ライトシャワー】だ。
ファイヤーボルトと同様、下位魔光ではあるが使い勝手は悪くない。
ライトシャワーは、強烈な閃光を放つ魔法だ。
暗闇を照らす灯り代わりとして購入したものだが、別の用途で早速、役立ちそうだ。
僕は目蓋を閉じ腕で目元をかばった。
しばらく経って、目を開くと白みを帯びた世界の中からぼやけた輪郭が見えてきた。
三体のブリザードイーターのうち二体は炎に包まれて活動を停止していた。
そこだけ雪が消滅し、水一滴さえ残っていない。
ライトシャワーとファイアボルトが合わさり強力な炎熱魔光へと進化した結果だ。
さしずめ、クリムゾンフレアとでも呼ぶべきか。
残る一体は、再度地中へと隠れてしまった。
パラボードで追跡すると僕から徐々に離れて逃げだしている。
スノーマン・ピラーはというと……
僕は辺りを見渡した。
眼の前に広がる雪原の風景に息を吞む。
パラボードからスノーマン・ピラーの位置を特定できる信号が途絶えてしまった。
燃え盛るブリザードイーターの姿に恐怖し、逃走したのなら問題はない。
さきほどまで表示されていた信号には、そんな素振りはちっとも見受けられなかったが……。
耳を澄ませば不吉な音が流れてくる。
空を裂くのような音とともに、上空から転がり落ちてきたのは僕の身体の三倍はある特大の雪ダルマだった。
「クソォォォォ――――!! 火が怖いんじゃなかったのかよ」
素早く、ファイヤーボルトのスクロールを取り出し身構える。
スノーマン・ピラーたちが射程内に入るまで待たないといけない。
ブリザードイーターのように、何かが飛んでくれば攻撃をしかけてくるタイプには思えない。
二つの雪ダルマはそれぞれ左右に迂回しながら僕を挟撃しようとしている。
おそらく、スクロールを放っても避けられてしまう。
待つのは良しとして……問題は奴らの移動速度と巨大化だ。
近場でファイヤーボルトを放射したとしよう。
果たして、あのサイズの雪ダルマたちが即座に止まってくれるのだろうか。
しかも、転がる度に地表の雪を吸収して大きく育っていく。
奴からすれば初級魔光の炎なんて、マッチの火と変わらない。
あんな物に轢かれたら即死コースである。
となれば――――
「……逃げるしかない」
自身にリザレクションをかけて、僕は猛ダッシュでその場を後にした。
『アイテムを入手しました。蔦の鞭×1 エーデルワイス×1』
非常事態に関わらず、mEqさんは平常運転である。
わざとやられてリバイブするという手もあるが、それは最終手段だ。
自動蘇生には、一日一度しか使用できないという縛りがある。
その上、みすみす死に急げるほど僕は怖いもの知らずではない。
やはり、生存できるのなら生きる方を選ぶ。
「んもぉ! しつこいぞ」
牛のような声を出して、尚も追跡してくる雪ダルマから逃れようとする。
一定の距離はキープできているが、引き離さないと意味がない。
三分後には、バフ効果が切れてしまう。
身動きが取れなくなる自分を想像するとゾッとしない。
「しめた、砦が見えてきたぞ!」
遠方に薄っすらとした影が見える。
黒ゴマほど程度の大きさしかないが、パラボードのマップにはアストライ砦の表記がされている。
なんとしても、あそこまで辿り着かないとならない。
砦さえ入ればコイツらも追ってはこれまい。
歯を食いしばって、さらに走るピッチを上げた。
息が続かず眩暈を覚える。
それでも、ゴールは近いという事実が僕の心の支えとなっ―――――
思わず思考が途切れた。
急な段差に足をとられ、僕は転倒してしまった。
顔面を雪の中に埋めたまま、うつ伏せ状態となる。
すぐに飛び起きたくとも、SP が枯渇状態だ。
SPポーションか、食事を摂って回復させないとならない。
言うまでもなく、そんな余裕はどこにもない。
走りながら回復する以前に、今すぐ補給しないと立ち上がるのも困難だ。
完全に管理ミスだ。
逃走することを事前に計算していれば、こうはならなかった。
不服だが、ここは潔くリバイブに頼るしかない。
敗北を覚悟しながらジッとしていたが、スノーマン・ピラーたちがやってくる気配は一向にない。
アイテムボックスからSPポーションを取り出してコルク栓を抜く。
90秒でエネルギーチャージができる小瓶に入ったの優れものだ。
雪塗れになった身体をゆっくりと起こし屈んだ状態で段差の上を覗いた。
停止したスノーマン・ピラーたちが回転しながら、吸収したはずの雪を周囲に放出している。
限界を迎えたのは向こうも同じようだ。
自重が増えすぎて苦しくなったのだろう。
雪を吐き出して元のサイズへと戻ろうとしている。
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奴らに気づかれないように早歩きでその場を脱した。
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