47 / 55
女神転移計画
歪みの聖女 1
しおりを挟む
目の前に信じ難い光景があった。
僕がラムゼイスケイルのメンバーを蘇生したことには誰も目をくれず、皆で少女に手を合わせていたのだ。
まるで、神でも崇拝するような人々の行動は常軌を逸している。
彼女の正体は、パラボードでも確認できない。
が、同職のクレリックであることは間違いない。
聖職者専用装備である、ホーリースタッフを手に天使のローブをまとっているのが何よりの証拠だ。
少女の取り巻き者たちが口々に「これは、聖女様の奇跡である」と喧伝しまくっている。
妙な熱気が彼らの中で渦巻いていた。
ラムゼイスケイルのメンバーを蘇生したのは、彼女だということに改変されてしまっている。
「関わるな、あの女はマホリックの手下だ」
半分、口を開きかけたところでナインセルに肩を叩かれた。
この砦の街に滞在している彼は、その辺り事情に精通しているようだ。
「マホリックって? それにあの娘が聖女様って、本当なのか?」
小声で耳打ちをするとナインセルは、人だかりを無視して歩きだした。
数歩進み、振り向くと「着いて来い、リースにいくんだろう?」
そう言いながら、道脇にある建屋を指さした。
屋上から氷柱を垂らした三階建ての宿屋は、この街でも二番目に大きい宿泊施設だと言う。
歴史を感じさせる色あせた門がまえ、その先にある板厚の扉を開き僕らは宿屋のロビーへと向かった。
「いらっしゃいませ、お客様。当、ホテルをご利用ですか?」
「チェックインは必要ない。この少年も闇ギルドのメンバーだ」
「左様でございますか。では、ゆっくりとおくつろぎ下さい」
入るなり、フロントマンがやってきて驚いた。
砦の街に、ここまでしっかりとしたホテルがあるなんて思ってみなかった。
というよりも、簡単に素性を明かしても大丈夫なのか、心臓がバクバクいっている。
ナインセルに指示されるとフロントマンの男性は静かにお辞儀をして受付の方へと戻っていく。
一連の流れから、ここの従業員たちも闇ギルドと何らかのカタチで繋がりを持っていると思って間違いないようだ。
ロビーの間取りは広く、人気も少ないので室内でも肌寒さを感じる。
身体をプルプルさせる僕。
その様を眺めながら、ナインセルは暖炉の近くのソファーにもたれかかった。
「僕らの他に、少数しか人がいませんね。なんか貸し切りのようだ」
「まぁ、座ってくれ。作戦会議といこうじゃないか」
「ここで? 僕らの会話がだだ漏れじゃないか」
僕が真面目に伝えているのに、ナインセルは勝手に呼び出しベルを鳴らし始めていた。
急いで駆け寄ってくる、ホテルの従業員に「ホットワインを二つ頼む」とオーダーを出していた。
「少年は堅苦しいんだよ。さっきも言っただろう、メンド―なことは無しだ」
脚組みしながら答えてくれるが、そんな話をした覚えはない。
大雑把過ぎるのも程度がある。
「鈍いな……」鼻の下を指でさすりながら、ナインセルはニヒルに笑う。
なんの事か存じ上げないが、言われた以上は言い返すしかない。
「鈍って悪かったですね。それで、作戦会議でしたっけ?
ロビンはどこにいるんですか?」
「熊公は使えないから偵察に出している。
我々のターゲットは、さきほどの女のボスにあたる人物だ」
「マホ―――、あの集団の……」
かじかんだ手を暖炉側に向けて暖を取りながら、僕は尋ねた。
アンゾから聞いた情報では、ターゲットは国軍の一員としてアストライ砦に派遣されたお偉いさんらしい。
スパイとされる、その人物を暗殺するのが、今回、ナインセルとロビンに下された指令である。
ヒーラーである僕の出番はなさそうだが、砦の警備は厳格だと思われる。
暗殺者二人でどうこうできるような案件ではないはずだ。
「ははぁーん。お前、あっしらが失敗すると見ているな」
「否定はしません。状況がこれだ、砦の内部に侵入しない限りターゲットは仕留められない」
「果たしてどうかな? スパイは、すでに突き止めているんだ。
あっしたち暗殺者からすれば、いつだって狙える」
ホテルのスタッフが持ってきたティーカップを受け取りながら、ナインセルは鼻で笑っていた。
ブラフなどではなく本気でそう言い切ってきた。
「暗殺など耳かきするのと大差ない。ただ、どうしても邪魔な障害がある」
「ラムゼイスケイル……」
「そうだ。奴らは国軍幹部の護衛の任を受けている。
奴らを出し抜くことはできても、我々の仕業だとバレてしまえば暗殺の意味がない」
出されたホットワインに口をつけてみた。
確かに冷えた身体は温まるが、口の中はエグミが残る。
慣れない物を無理して飲むものじゃない、ケホケホとむせてしまった。
「で……どうするんです? このままでは任務が完了しませんよ」
「ん? どうもしないさ。お前が来たことで流れが変わったからな」
その言葉をどこまで信用すれば良いのか分からない。
何も考えていないとしか思えないが、僕を疑念を潰すように彼は言葉を付け足した。
「聖女の嘘を暴く。その為には犠牲となる物が必要だ」
僕がラムゼイスケイルのメンバーを蘇生したことには誰も目をくれず、皆で少女に手を合わせていたのだ。
まるで、神でも崇拝するような人々の行動は常軌を逸している。
彼女の正体は、パラボードでも確認できない。
が、同職のクレリックであることは間違いない。
聖職者専用装備である、ホーリースタッフを手に天使のローブをまとっているのが何よりの証拠だ。
少女の取り巻き者たちが口々に「これは、聖女様の奇跡である」と喧伝しまくっている。
妙な熱気が彼らの中で渦巻いていた。
ラムゼイスケイルのメンバーを蘇生したのは、彼女だということに改変されてしまっている。
「関わるな、あの女はマホリックの手下だ」
半分、口を開きかけたところでナインセルに肩を叩かれた。
この砦の街に滞在している彼は、その辺り事情に精通しているようだ。
「マホリックって? それにあの娘が聖女様って、本当なのか?」
小声で耳打ちをするとナインセルは、人だかりを無視して歩きだした。
数歩進み、振り向くと「着いて来い、リースにいくんだろう?」
そう言いながら、道脇にある建屋を指さした。
屋上から氷柱を垂らした三階建ての宿屋は、この街でも二番目に大きい宿泊施設だと言う。
歴史を感じさせる色あせた門がまえ、その先にある板厚の扉を開き僕らは宿屋のロビーへと向かった。
「いらっしゃいませ、お客様。当、ホテルをご利用ですか?」
「チェックインは必要ない。この少年も闇ギルドのメンバーだ」
「左様でございますか。では、ゆっくりとおくつろぎ下さい」
入るなり、フロントマンがやってきて驚いた。
砦の街に、ここまでしっかりとしたホテルがあるなんて思ってみなかった。
というよりも、簡単に素性を明かしても大丈夫なのか、心臓がバクバクいっている。
ナインセルに指示されるとフロントマンの男性は静かにお辞儀をして受付の方へと戻っていく。
一連の流れから、ここの従業員たちも闇ギルドと何らかのカタチで繋がりを持っていると思って間違いないようだ。
ロビーの間取りは広く、人気も少ないので室内でも肌寒さを感じる。
身体をプルプルさせる僕。
その様を眺めながら、ナインセルは暖炉の近くのソファーにもたれかかった。
「僕らの他に、少数しか人がいませんね。なんか貸し切りのようだ」
「まぁ、座ってくれ。作戦会議といこうじゃないか」
「ここで? 僕らの会話がだだ漏れじゃないか」
僕が真面目に伝えているのに、ナインセルは勝手に呼び出しベルを鳴らし始めていた。
急いで駆け寄ってくる、ホテルの従業員に「ホットワインを二つ頼む」とオーダーを出していた。
「少年は堅苦しいんだよ。さっきも言っただろう、メンド―なことは無しだ」
脚組みしながら答えてくれるが、そんな話をした覚えはない。
大雑把過ぎるのも程度がある。
「鈍いな……」鼻の下を指でさすりながら、ナインセルはニヒルに笑う。
なんの事か存じ上げないが、言われた以上は言い返すしかない。
「鈍って悪かったですね。それで、作戦会議でしたっけ?
ロビンはどこにいるんですか?」
「熊公は使えないから偵察に出している。
我々のターゲットは、さきほどの女のボスにあたる人物だ」
「マホ―――、あの集団の……」
かじかんだ手を暖炉側に向けて暖を取りながら、僕は尋ねた。
アンゾから聞いた情報では、ターゲットは国軍の一員としてアストライ砦に派遣されたお偉いさんらしい。
スパイとされる、その人物を暗殺するのが、今回、ナインセルとロビンに下された指令である。
ヒーラーである僕の出番はなさそうだが、砦の警備は厳格だと思われる。
暗殺者二人でどうこうできるような案件ではないはずだ。
「ははぁーん。お前、あっしらが失敗すると見ているな」
「否定はしません。状況がこれだ、砦の内部に侵入しない限りターゲットは仕留められない」
「果たしてどうかな? スパイは、すでに突き止めているんだ。
あっしたち暗殺者からすれば、いつだって狙える」
ホテルのスタッフが持ってきたティーカップを受け取りながら、ナインセルは鼻で笑っていた。
ブラフなどではなく本気でそう言い切ってきた。
「暗殺など耳かきするのと大差ない。ただ、どうしても邪魔な障害がある」
「ラムゼイスケイル……」
「そうだ。奴らは国軍幹部の護衛の任を受けている。
奴らを出し抜くことはできても、我々の仕業だとバレてしまえば暗殺の意味がない」
出されたホットワインに口をつけてみた。
確かに冷えた身体は温まるが、口の中はエグミが残る。
慣れない物を無理して飲むものじゃない、ケホケホとむせてしまった。
「で……どうするんです? このままでは任務が完了しませんよ」
「ん? どうもしないさ。お前が来たことで流れが変わったからな」
その言葉をどこまで信用すれば良いのか分からない。
何も考えていないとしか思えないが、僕を疑念を潰すように彼は言葉を付け足した。
「聖女の嘘を暴く。その為には犠牲となる物が必要だ」
0
あなたにおすすめの小説
シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした
黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
前世の記憶しかない元侯爵令嬢は、訳あり大公殿下のお気に入り。(注:期間限定)
miy
恋愛
(※長編なため、少しネタバレを含みます)
ある日目覚めたら、そこは見たことも聞いたこともない…異国でした。
ここは、どうやら転生後の人生。
私は大貴族の令嬢レティシア17歳…らしいのですが…全く記憶にございません。
有り難いことに言葉は理解できるし、読み書きも問題なし。
でも、見知らぬ世界で貴族生活?いやいや…私は平凡な日本人のようですよ?…無理です。
“前世の記憶”として目覚めた私は、現世の“レティシアの身体”で…静かな庶民生活を始める。
そんな私の前に、一人の貴族男性が現れた。
ちょっと?訳ありな彼が、私を…自分の『唯一の女性』であると誤解してしまったことから、庶民生活が一変してしまう。
高い身分の彼に関わってしまった私は、元いた国を飛び出して魔法の国で暮らすことになるのです。
大公殿下、大魔術師、聖女や神獣…等など…いろんな人との出会いを経て『レティシア』が自分らしく生きていく。
という、少々…長いお話です。
鈍感なレティシアが、大公殿下からの熱い眼差しに気付くのはいつなのでしょうか…?
※安定のご都合主義、独自の世界観です。お許し下さい。
※ストーリーの進度は遅めかと思われます。
※現在、不定期にて公開中です。よろしくお願い致します。
公開予定日を最新話に記載しておりますが、長期休載の場合はこちらでもお知らせをさせて頂きます。
※ド素人の書いた3作目です。まだまだ優しい目で見て頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。
※初公開から2年が過ぎました。少しでも良い作品に、読みやすく…と、時間があれば順次手直し(改稿)をしていく予定でおります。(現在、146話辺りまで手直し作業中)
※章の区切りを変更致しました。(9/22更新)
ここは少女マンガの世界みたいだけど、そんなこと知ったこっちゃない
ゆーぞー
ファンタジー
気がつけば昔読んだ少女マンガの世界だった。マンガの通りなら決して幸せにはなれない。そんなわけにはいかない。自分が幸せになるためにやれることをやっていこう。
職業『お飾りの妻』は自由に過ごしたい
LinK.
恋愛
勝手に決められた婚約者との初めての顔合わせ。
相手に契約だと言われ、もう後がないサマンサは愛のない形だけの契約結婚に同意した。
何事にも従順に従って生きてきたサマンサ。
相手の求める通りに動く彼女は、都合のいいお飾りの妻だった。
契約中は立派な妻を演じましょう。必要ない時は自由に過ごしても良いですよね?
社会の底辺に落ちたオレが、国王に転生した異世界で、経済の知識を活かして富国強兵する、冒険コメディ
のらねこま(駒田 朗)
ファンタジー
リーマンショックで会社が倒産し、コンビニのバイトでなんとか今まで生きながらえてきた俺。いつものように眠りについた俺が目覚めた場所は異世界だった。俺は中世時代の若き国王アルフレッドとして目が覚めたのだ。ここは斜陽国家のアルカナ王国。産業は衰退し、国家財政は火の車。国外では敵対国家による侵略の危機にさらされ、国内では政権転覆を企む貴族から命を狙われる。
目覚めてすぐに俺の目の前に現れたのは、金髪美少女の妹姫キャサリン。天使のような姿に反して、実はとんでもなく騒がしいS属性の妹だった。やがて脳筋女戦士のレイラ、エルフ、すけべなドワーフも登場。そんな連中とバカ騒ぎしつつも、俺は魔法を習得し、内政を立て直し、徐々に無双国家への道を突き進むのだった。
虐げられた人生に疲れたので本物の悪女に私はなります
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
伯爵家である私の家には両親を亡くして一緒に暮らす同い年の従妹のカサンドラがいる。当主である父はカサンドラばかりを溺愛し、何故か実の娘である私を虐げる。その為に母も、使用人も、屋敷に出入りする人達までもが皆私を馬鹿にし、時には罠を這って陥れ、その度に私は叱責される。どんなに自分の仕業では無いと訴えても、謝罪しても許されないなら、いっそ本当の悪女になることにした。その矢先に私の婚約者候補を名乗る人物が現れて、話は思わぬ方向へ・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる