暗殺ギルドのリザレクター

心絵マシテ

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女神転移計画

歪みの聖女 1

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 目の前に信じ難い光景があった。
 僕がラムゼイスケイルのメンバーを蘇生したことには誰も目をくれず、皆で少女に手を合わせていたのだ。
 まるで、神でも崇拝するような人々の行動は常軌を逸している。

 彼女の正体は、パラボードでも確認できない。
 が、同職のクレリックであることは間違いない。
 聖職者専用装備である、ホーリースタッフを手に天使のローブをまとっているのが何よりの証拠だ。

 少女の取り巻き者たちが口々に「これは、聖女様の奇跡である」と喧伝しまくっている。
 妙な熱気が彼らの中で渦巻いていた。
 ラムゼイスケイルのメンバーを蘇生したのは、彼女だということに改変されてしまっている。

「関わるな、あの女はマホリックの手下だ」

 半分、口を開きかけたところでナインセルに肩を叩かれた。
 この砦の街に滞在している彼は、その辺り事情に精通しているようだ。

「マホリックって? それにあの娘が聖女様って、本当なのか?」

 小声で耳打ちをするとナインセルは、人だかりを無視して歩きだした。
 数歩進み、振り向くと「着いて来い、リースにいくんだろう?」
 そう言いながら、道脇にある建屋を指さした。
 屋上から氷柱を垂らした三階建ての宿屋は、この街でも二番目に大きい宿泊施設だと言う。
 歴史を感じさせる色あせた門がまえ、その先にある板厚の扉を開き僕らは宿屋のロビーへと向かった。

「いらっしゃいませ、お客様。当、ホテルをご利用ですか?」

「チェックインは必要ない。この少年も闇ギルドのメンバーだ」

「左様でございますか。では、ゆっくりとおくつろぎ下さい」

 入るなり、フロントマンがやってきて驚いた。
 砦の街に、ここまでしっかりとしたホテルがあるなんて思ってみなかった。
 というよりも、簡単に素性を明かしても大丈夫なのか、心臓がバクバクいっている。

 ナインセルに指示されるとフロントマンの男性は静かにお辞儀をして受付の方へと戻っていく。
 一連の流れから、ここの従業員たちも闇ギルドと何らかのカタチで繋がりを持っていると思って間違いないようだ。

 ロビーの間取りは広く、人気も少ないので室内でも肌寒さを感じる。
 身体をプルプルさせる僕。
 その様を眺めながら、ナインセルは暖炉の近くのソファーにもたれかかった。

「僕らの他に、少数しか人がいませんね。なんか貸し切りのようだ」

「まぁ、座ってくれ。作戦会議といこうじゃないか」

「ここで? 僕らの会話がだだ漏れじゃないか」

 僕が真面目に伝えているのに、ナインセルは勝手に呼び出しベルを鳴らし始めていた。
 急いで駆け寄ってくる、ホテルの従業員に「ホットワインを二つ頼む」とオーダーを出していた。

「少年は堅苦しいんだよ。さっきも言っただろう、メンド―なことは無しだ」

 脚組みしながら答えてくれるが、そんな話をした覚えはない。
 大雑把過ぎるのも程度がある。

「鈍いな……」鼻の下を指でさすりながら、ナインセルはニヒルに笑う。
 なんの事か存じ上げないが、言われた以上は言い返すしかない。

「鈍って悪かったですね。それで、作戦会議でしたっけ?
ロビンはどこにいるんですか?」

「熊公は使えないから偵察に出している。
我々のターゲットは、さきほどの女のボスにあたる人物だ」

「マホ―――、あの集団の……」

 かじかんだ手を暖炉側に向けて暖を取りながら、僕は尋ねた。
 アンゾから聞いた情報では、ターゲットは国軍の一員としてアストライ砦に派遣されたお偉いさんらしい。
 スパイとされる、その人物を暗殺するのが、今回、ナインセルとロビンに下された指令である。

 ヒーラーである僕の出番はなさそうだが、砦の警備は厳格だと思われる。
 暗殺者二人でどうこうできるような案件ではないはずだ。

「ははぁーん。お前、あっしらが失敗すると見ているな」

「否定はしません。状況がこれだ、砦の内部に侵入しない限りターゲットは仕留められない」

「果たしてどうかな? スパイは、すでに突き止めているんだ。
あっしたち暗殺者からすれば、いつだって狙える」

 ホテルのスタッフが持ってきたティーカップを受け取りながら、ナインセルは鼻で笑っていた。
 ブラフなどではなく本気でそう言い切ってきた。

「暗殺など耳かきするのと大差ない。ただ、どうしても邪魔な障害がある」

「ラムゼイスケイル……」

「そうだ。奴らは国軍幹部の護衛の任を受けている。
 奴らを出し抜くことはできても、我々の仕業だとバレてしまえば暗殺の意味がない」

 出されたホットワインに口をつけてみた。
 確かに冷えた身体は温まるが、口の中はエグミが残る。
 慣れない物を無理して飲むものじゃない、ケホケホとむせてしまった。

「で……どうするんです? このままでは任務が完了しませんよ」

「ん? どうもしないさ。お前が来たことで流れが変わったからな」

 その言葉をどこまで信用すれば良いのか分からない。
 何も考えていないとしか思えないが、僕を疑念を潰すように彼は言葉を付け足した。

「聖女の嘘を暴く。その為には犠牲となる物が必要だ」
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