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女神転移計画
未来をかざす宝瓶宮 1
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目覚めると暗闇の中だった。
前方に手を伸ばすとガタっと何かがズレた音がした。
棺桶のフタだ。
どうやら、時間通りに蘇生したようだ。
できるだけ物音を立てないようにゆっくりとフタを開き、頭だけ出してみた。
遺体安置所であろう、その場所は壁に設置された松明の炎で照らされていた。
周囲を見回すと、僕が入っていた物と同じ柩が列を成して並んでいる。
復活したばかりで、まだカラダが言うことを聞いてくれない。
遺体のカプセルホテルなんかで一夜を明かしたくもない。
早々に立ち去りたい僕は部屋を出た。
問題はその先だ。
地上へと出る階段を上るには、その前で突っ立っている警備兵をどうにかしないとならない。
パラボードを開き、メニュー画面を開くと事前に収納していたマジックバッグを取り出した。
SPポーションで消耗しきっていたスピリットポイントを回復させる。
これで、しばらくはスキルが使用可能になる。
しかし、悲しいかな。手持ちのスキルは回復系しかない。
「おっ! スキルが更新されている」
いつの間にかレベル14に上がっていた。
ここに来て、久々の新スキルである。
有難いとワクワクしながら、スキル一覧をタッチした。
【聖印を獲得しました】
mEqのアナウンスが時間差で流れた。
聖印と書いて、スティグマと読むらしいが用途不明の魔光だ。
概要を見ると生者に印を刻むとしか記載されていない。
この適当さがβ版らしい……ひょっとしたら実装されていない。
などという、使えない子かもしれない。
さて困ったぞ……。
期待していた新スキルは、性能確認しなければ恐ろしくて使えない。
頼みのリバイブも使用してしまった以上、強行突破など無理に等しい。
ふと、遺体安置場の方に目がいった。
ここで死者を蘇生してどさくさに紛れて逃げる……という考えが頭を過った。
『やめておこう……』さすが、それは違う気がする。
命を冒涜するだけではなく、自然の摂理に反することだ。
ここに眠る人の中には、意味のある死を迎えた人だっているはずだ。
美徳感情など僕はない。
ただ、ここで蘇生されたことにより、誰かの人生を狂わせてしまう。
それだけは否定することができない事実だ。
何か他に方法はないかと、アイテム欄を閲覧していた。
すると、この状況を打破できそうな一品を発見した。
【不可視のフード】そういえば、01に搭乗して暴れまくった時にドレッドフードからいくつかドロップしていた。
コイツを羽織れば、姿を消すことができる優れたアイテムだ。
早速、フードを装備し不可視化した僕は、警備兵の隙をついて一階へと上がった。
「想定していたよりも、警備が甘いな」
聖堂の外へと出る回廊を進む、僕の気持ちはすっかり緩んでいた。
「そうかのぅ?」近くから、声が聞こえてきた。
とっさに足を止め身構えるも、辺りに人の気配はない。
不可視のフードでコチラも身を隠していたが、向こうは僕を察知できている。
先手を取っておきたいところだが、闇夜の中では相手の位置すら特定できない。
「ヘェヘェヘェッ! そう簡単に、ここを通すと思うのかぁ?
いや、通さないから来たのだかな」
道端で変質者に出会ってしまった気分とは、こういう感じなのだろう。
望んでもいないのに、向こうから勝手にやってきた。
「悪いが聖女に憑いていた爺と遊んでいる暇はない。また、今度な」
「なっ! よくぞ、我が招待を見破った。やるではないか、小僧」
せっかく、逃走したというに、あの全裸爺は、いまだ教会内をうろついていた。
まさか、その場に残っているとは誰も思わないだろう。
ある意味、ここが爺にとって一番安全な場所だとも言える。
「で? 何か用か。僕は急いでいるんだけど」
「色々と考えたのじゃが、やはり聖女たんの所に戻ろうかと思う……」
何の決意? 思わず聞き返してしまいそうなった。
驚くことに、この変態は懲りずにまた聖女に憑りつく気だ。
それは犯罪だと理解できる倫理観がコイツにはないようだ……。
「戻りたければ、一人でどうにかしろ。
僕は手伝わないからな……なんて、澄んだ瞳をしているんだ―――」
僕を騙す気、全開で爺が演技しだした。
少年ような眼差しを向けているが、その動機は不純である。
これで騙される馬鹿がいるのなら、是非みたいものだ。
とにかく、変態は無視して僕は教会の敷地から脱出しようとした。
「青いのぅ、隙ありだぁぁ!」
奇声を発しながら、奴が背後からしがみついてきた。
「なにすんだ? 離れろ! 気色悪い」
「ヌワハハハハァァッ――!
油断したなぁ。取り憑けるのは何も聖女だけとは限らんぞ」
迂闊だった。
コイツは憑りつく人間を探していたんだ。
ただの変態だと侮ってたのが間違いだった。
このままでは肉体を乗っ取られてしまう。
それ即ちオーキッドが、このゲーム【オレガシーマ】にて黒歴史を刻むこととなる。
前方に手を伸ばすとガタっと何かがズレた音がした。
棺桶のフタだ。
どうやら、時間通りに蘇生したようだ。
できるだけ物音を立てないようにゆっくりとフタを開き、頭だけ出してみた。
遺体安置所であろう、その場所は壁に設置された松明の炎で照らされていた。
周囲を見回すと、僕が入っていた物と同じ柩が列を成して並んでいる。
復活したばかりで、まだカラダが言うことを聞いてくれない。
遺体のカプセルホテルなんかで一夜を明かしたくもない。
早々に立ち去りたい僕は部屋を出た。
問題はその先だ。
地上へと出る階段を上るには、その前で突っ立っている警備兵をどうにかしないとならない。
パラボードを開き、メニュー画面を開くと事前に収納していたマジックバッグを取り出した。
SPポーションで消耗しきっていたスピリットポイントを回復させる。
これで、しばらくはスキルが使用可能になる。
しかし、悲しいかな。手持ちのスキルは回復系しかない。
「おっ! スキルが更新されている」
いつの間にかレベル14に上がっていた。
ここに来て、久々の新スキルである。
有難いとワクワクしながら、スキル一覧をタッチした。
【聖印を獲得しました】
mEqのアナウンスが時間差で流れた。
聖印と書いて、スティグマと読むらしいが用途不明の魔光だ。
概要を見ると生者に印を刻むとしか記載されていない。
この適当さがβ版らしい……ひょっとしたら実装されていない。
などという、使えない子かもしれない。
さて困ったぞ……。
期待していた新スキルは、性能確認しなければ恐ろしくて使えない。
頼みのリバイブも使用してしまった以上、強行突破など無理に等しい。
ふと、遺体安置場の方に目がいった。
ここで死者を蘇生してどさくさに紛れて逃げる……という考えが頭を過った。
『やめておこう……』さすが、それは違う気がする。
命を冒涜するだけではなく、自然の摂理に反することだ。
ここに眠る人の中には、意味のある死を迎えた人だっているはずだ。
美徳感情など僕はない。
ただ、ここで蘇生されたことにより、誰かの人生を狂わせてしまう。
それだけは否定することができない事実だ。
何か他に方法はないかと、アイテム欄を閲覧していた。
すると、この状況を打破できそうな一品を発見した。
【不可視のフード】そういえば、01に搭乗して暴れまくった時にドレッドフードからいくつかドロップしていた。
コイツを羽織れば、姿を消すことができる優れたアイテムだ。
早速、フードを装備し不可視化した僕は、警備兵の隙をついて一階へと上がった。
「想定していたよりも、警備が甘いな」
聖堂の外へと出る回廊を進む、僕の気持ちはすっかり緩んでいた。
「そうかのぅ?」近くから、声が聞こえてきた。
とっさに足を止め身構えるも、辺りに人の気配はない。
不可視のフードでコチラも身を隠していたが、向こうは僕を察知できている。
先手を取っておきたいところだが、闇夜の中では相手の位置すら特定できない。
「ヘェヘェヘェッ! そう簡単に、ここを通すと思うのかぁ?
いや、通さないから来たのだかな」
道端で変質者に出会ってしまった気分とは、こういう感じなのだろう。
望んでもいないのに、向こうから勝手にやってきた。
「悪いが聖女に憑いていた爺と遊んでいる暇はない。また、今度な」
「なっ! よくぞ、我が招待を見破った。やるではないか、小僧」
せっかく、逃走したというに、あの全裸爺は、いまだ教会内をうろついていた。
まさか、その場に残っているとは誰も思わないだろう。
ある意味、ここが爺にとって一番安全な場所だとも言える。
「で? 何か用か。僕は急いでいるんだけど」
「色々と考えたのじゃが、やはり聖女たんの所に戻ろうかと思う……」
何の決意? 思わず聞き返してしまいそうなった。
驚くことに、この変態は懲りずにまた聖女に憑りつく気だ。
それは犯罪だと理解できる倫理観がコイツにはないようだ……。
「戻りたければ、一人でどうにかしろ。
僕は手伝わないからな……なんて、澄んだ瞳をしているんだ―――」
僕を騙す気、全開で爺が演技しだした。
少年ような眼差しを向けているが、その動機は不純である。
これで騙される馬鹿がいるのなら、是非みたいものだ。
とにかく、変態は無視して僕は教会の敷地から脱出しようとした。
「青いのぅ、隙ありだぁぁ!」
奇声を発しながら、奴が背後からしがみついてきた。
「なにすんだ? 離れろ! 気色悪い」
「ヌワハハハハァァッ――!
油断したなぁ。取り憑けるのは何も聖女だけとは限らんぞ」
迂闊だった。
コイツは憑りつく人間を探していたんだ。
ただの変態だと侮ってたのが間違いだった。
このままでは肉体を乗っ取られてしまう。
それ即ちオーキッドが、このゲーム【オレガシーマ】にて黒歴史を刻むこととなる。
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