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新世界での冒険
煤塗れの寒村 2
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しくった……敵に背を向けたまま無防備な状態だ。
背後からドスドスと地を鳴り響かせてくる青いトカゲ、その名は一瞬だったがパラボードに表示された。
敵名:ナンマンダー
種族:爬虫類
能力:フリーズブレス
ステータス:HP 293 MP 165
ドロップアイテム:ナンマンダーの肉 青い鱗
サラマンダーならぬ、ナンマンダーという。
ぶっちゃけ、これを思いついた開発スタッフは仕事のしすぎで相当病んでいったのだろう……。
笑いのポイントがズレている。
青トカゲは通常とは異なるユニークモンスターと呼ばれる類のものだ。
だからってダジャレにしろとは誰もいっていない。
一ミリたりとも、僕には刺さらないし笑いどころが分からない。
ドスン! という衝撃が身体中に走ると、僕は宙に浮いた。
ゲームだから、死亡しても最初に戻るだけ。
オレガシーマの設定を知っているからこそ、早々に逃走を諦めリスタートを待とうとした。
……ふざけた考えが容認されるほど、このゲームは甘くはなかった。
青トカゲは、僕が即死しない程度の絶妙な力加減で脇腹を蹴り飛ばしてきた。
それは、野生の肉食生物の習性だと捉えるべきなのだろう。
すぐには仕留めず、じわじわと獲物を弱らせてから狩りをする。
なんともエグイ仕打ちをしてくれる。
「ガハッ! ゴホッゴホッ……クソォ、咳込みまでもリアルに再現しなくてもいいのに……」
青トカゲは、なおも僕を痛めつけることに専念していた。
アバターが受けるダメージは明確な痛みこそないが、衝撃までも無効化できるようにはなっていない。
だから麻痺や不快感というカタチで身体に異常をきたす。
「このままじゃ、ダメだ…………まだ冒険序盤なんだからモンスターだって大して強くないはず、こんな所で苦戦しているわけにはいかないんだ」
魔物のサンドバッグになりつつある自分に喝を入れた。
オレガシーマの臨場感が凄すぎて、戦いもせずについ弱腰になっていた。
今の自分はゲームのキャラクターでもあるんだ。
貧弱な僕でも、ここでは冒険者の端くれ。
雑魚モンスター相手なら、それなりに応戦できるはず……。
悪戦苦闘しながら、僕は地面の砂をつかみ取るとナンマンダーの顔面に叩きつけてやった。
「ギャヒィィーーーー」と品のない鳴き声をあげて砂を振り払いながら後退してゆく。
その隙に太めの木の枝を拾うと、頭部を狙って力いっぱい叩きこんだ。
「やられてばかりじゃないぞ!」
ビシッと亀裂が走ると枝が粉々に砕け散っていた。
しっかりと殴りつけた感触はあったが、青トカゲにダメージが入ったようには思えない。
弱らせるどころか、逆上して見境なく尻尾を振り回している。
今、奴に近づくのは危険だ。
一度、距離をとって遠くから攻撃しないと……。
無理にでも身体を動かし僕は敵との距離を稼いだ。
全身が悲鳴を上げている……すでに、SPの半分が消耗していた。
筋肉痛になった時のようなダルさと重さを感じる。
それでも耐えながら、石ころを拾い集めていた。
僕にできる遠距離攻撃は投石しかない。
腕力がない分、遠くまで飛ばすことはできないけれど、その分は数で補えばアイツを怯ませられるはずだ。
手に収まるほどのサイズの石を握りしめ、早速投げてみた。
そして驚くべき事実が判明した……。
十発ほど投げて命中したのはたった二発、脅威のノーコンっぷりを発揮してしまった。
しかも、それだけで息が上がっている。
アバター化によって身体能力が強化されたはずなのに、クレリックとなったせいで無駄に偏りが酷い。
持久力であるSPが乏しいくせに、HPだけは無駄に高い。
なんにせよ、この状態では戦って勝てる気がしない。
そもそも、自分がヒーラーであることを忘れていた。
八方塞がりとはこのことだろう、戦略的撤退は待ったなしなのに……麻痺状態のせいで足腰に力が入らない。
そこへ二足立ちになったナンマンダーが重量ある前脚で殴りかかってきた。
防御する意味もなく、地面を転がってゆく。
今の一撃は、かなりヤバイ。
HPの八割が減少してしまっている。
もう、一発食らえば全滅コース直行だ。
こんな時こそ回復のエリートであるクレリックの本領発揮だ。
いくらなんでも初歩の回復魔法ぐらい覚えているはずだ。
「mEq、回復魔法の使い方を教えてくれ」
パラボードを展開し女神に質問する。
ファンタジー世界の王道たる魔術、集中し呪文を詠唱すれば魔法が発動する……などはいかない。
『魔法を使用する場合は、パラボードで選択操作してください。
習得魔法一覧から使用するモノを選び、三枠あるスキルスロットのどれかにセットすることで魔法が扱えるようになります。
なお、ボードを使用せずにショートカットする場合は、アクション連動になりますので登録が必須となります』
mEqの説明を簡略化すると、魔法を使用する方法は主に二つ。
パラボードを操作し発動させる方法とプレイヤーが指定した特定のアクションによるショートカット発動だ。
一度の戦闘で使える魔法の種類は三種類。
また一旦戦闘に入ると設定はできなくなるため、事前にセットしないといけない。
早速、習得魔法一覧をチェックすると有難いことにヒーリングの魔法がセットされていた。
ヒーラーといえば、この魔法が定番だ。
迷わず、ヒーリングを選択し発動するように念じた。
背後からドスドスと地を鳴り響かせてくる青いトカゲ、その名は一瞬だったがパラボードに表示された。
敵名:ナンマンダー
種族:爬虫類
能力:フリーズブレス
ステータス:HP 293 MP 165
ドロップアイテム:ナンマンダーの肉 青い鱗
サラマンダーならぬ、ナンマンダーという。
ぶっちゃけ、これを思いついた開発スタッフは仕事のしすぎで相当病んでいったのだろう……。
笑いのポイントがズレている。
青トカゲは通常とは異なるユニークモンスターと呼ばれる類のものだ。
だからってダジャレにしろとは誰もいっていない。
一ミリたりとも、僕には刺さらないし笑いどころが分からない。
ドスン! という衝撃が身体中に走ると、僕は宙に浮いた。
ゲームだから、死亡しても最初に戻るだけ。
オレガシーマの設定を知っているからこそ、早々に逃走を諦めリスタートを待とうとした。
……ふざけた考えが容認されるほど、このゲームは甘くはなかった。
青トカゲは、僕が即死しない程度の絶妙な力加減で脇腹を蹴り飛ばしてきた。
それは、野生の肉食生物の習性だと捉えるべきなのだろう。
すぐには仕留めず、じわじわと獲物を弱らせてから狩りをする。
なんともエグイ仕打ちをしてくれる。
「ガハッ! ゴホッゴホッ……クソォ、咳込みまでもリアルに再現しなくてもいいのに……」
青トカゲは、なおも僕を痛めつけることに専念していた。
アバターが受けるダメージは明確な痛みこそないが、衝撃までも無効化できるようにはなっていない。
だから麻痺や不快感というカタチで身体に異常をきたす。
「このままじゃ、ダメだ…………まだ冒険序盤なんだからモンスターだって大して強くないはず、こんな所で苦戦しているわけにはいかないんだ」
魔物のサンドバッグになりつつある自分に喝を入れた。
オレガシーマの臨場感が凄すぎて、戦いもせずについ弱腰になっていた。
今の自分はゲームのキャラクターでもあるんだ。
貧弱な僕でも、ここでは冒険者の端くれ。
雑魚モンスター相手なら、それなりに応戦できるはず……。
悪戦苦闘しながら、僕は地面の砂をつかみ取るとナンマンダーの顔面に叩きつけてやった。
「ギャヒィィーーーー」と品のない鳴き声をあげて砂を振り払いながら後退してゆく。
その隙に太めの木の枝を拾うと、頭部を狙って力いっぱい叩きこんだ。
「やられてばかりじゃないぞ!」
ビシッと亀裂が走ると枝が粉々に砕け散っていた。
しっかりと殴りつけた感触はあったが、青トカゲにダメージが入ったようには思えない。
弱らせるどころか、逆上して見境なく尻尾を振り回している。
今、奴に近づくのは危険だ。
一度、距離をとって遠くから攻撃しないと……。
無理にでも身体を動かし僕は敵との距離を稼いだ。
全身が悲鳴を上げている……すでに、SPの半分が消耗していた。
筋肉痛になった時のようなダルさと重さを感じる。
それでも耐えながら、石ころを拾い集めていた。
僕にできる遠距離攻撃は投石しかない。
腕力がない分、遠くまで飛ばすことはできないけれど、その分は数で補えばアイツを怯ませられるはずだ。
手に収まるほどのサイズの石を握りしめ、早速投げてみた。
そして驚くべき事実が判明した……。
十発ほど投げて命中したのはたった二発、脅威のノーコンっぷりを発揮してしまった。
しかも、それだけで息が上がっている。
アバター化によって身体能力が強化されたはずなのに、クレリックとなったせいで無駄に偏りが酷い。
持久力であるSPが乏しいくせに、HPだけは無駄に高い。
なんにせよ、この状態では戦って勝てる気がしない。
そもそも、自分がヒーラーであることを忘れていた。
八方塞がりとはこのことだろう、戦略的撤退は待ったなしなのに……麻痺状態のせいで足腰に力が入らない。
そこへ二足立ちになったナンマンダーが重量ある前脚で殴りかかってきた。
防御する意味もなく、地面を転がってゆく。
今の一撃は、かなりヤバイ。
HPの八割が減少してしまっている。
もう、一発食らえば全滅コース直行だ。
こんな時こそ回復のエリートであるクレリックの本領発揮だ。
いくらなんでも初歩の回復魔法ぐらい覚えているはずだ。
「mEq、回復魔法の使い方を教えてくれ」
パラボードを展開し女神に質問する。
ファンタジー世界の王道たる魔術、集中し呪文を詠唱すれば魔法が発動する……などはいかない。
『魔法を使用する場合は、パラボードで選択操作してください。
習得魔法一覧から使用するモノを選び、三枠あるスキルスロットのどれかにセットすることで魔法が扱えるようになります。
なお、ボードを使用せずにショートカットする場合は、アクション連動になりますので登録が必須となります』
mEqの説明を簡略化すると、魔法を使用する方法は主に二つ。
パラボードを操作し発動させる方法とプレイヤーが指定した特定のアクションによるショートカット発動だ。
一度の戦闘で使える魔法の種類は三種類。
また一旦戦闘に入ると設定はできなくなるため、事前にセットしないといけない。
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