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五十一話 アニキ、ヒーローを越えろ
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思わず、目を閉じてしまいそうなほどの閃光が飛び散った。
AIであるドブさんが、身をていしてボクを庇ってくれることなど想像すらしたことがなかった。
聞いても「これも勝利の為だよ~」と素っ気なく答えるに違いない。
だとしても、この行動は打算的であるドブさんらしくない。
何かが、ボクらの中で変わろうとしている?
それは表面的なものではなく、内面で煌めくモノ……。
未だ、はっきりとしない微弱な変化だけど、とにかくボクはドブさんに助けて貰った。
それだけは覆ることのない事実なんだ。
「ド、ドブさん!!」
閃光とともに立ち込める白煙の中から、ムニーの頭部が帰ってきた。
角は砕け頭部に亀裂が生じている。
ブルジョアレッドの攻撃を何とか受け止められたけど、破損が酷い。
「大丈夫なの!?」
「吾輩のことなら気にするな!! 次の攻撃が来る前に―――――」
「うん、ドブデバイスセット! 来いぃぃ!! ガゥライザー!」
『ガゥライザー転送開始します! ピュアコスモブレード射出!!』
ガゥを発進シークエンスに持っていたものの、その間にブルジョアレッドが山で拾ったブレード?を振り回してきた。
「チュゥィィィ――――!! シュバババァアア―――――!!!」
SE(サウンドエフェクト)がないので奴自身が口ずさんでいた。
まるで、子供が玩具の剣を片手にチャンバラしているようだ。
構えもクソもない、ただただ気の向くままにビームソードをぶん回しているだけ……。
なのに強い! 単調でぎこちない動きなのに、どうしてか反撃を躊躇ってしまう。
「アラアラアラアラハェェェェッ!! どうしたのよ? 避けてばかりじゃ勝負にならないわよ」
どうかしているのはレッドの方だ。何故、お姉口調になっている……。
とはいえ……たしかにこのままではボクの体力が持ちそうにない。
「ショートストライク!」脇腹に隙がある、そこへと渾身のワンインチパンチを見舞う。
途端、レッドの身体が視界から消えた。
当然ながら空振りのパンチ。
体勢を崩したボクの頭上には宙返りする紅いタイツが見える。
そうだ! 戦隊ヒーローの連中はこの意味があるのかも怪しいアクロバティックな動きが得意だった。
とにかく、宙を飛んでいないと落ち着かないらしい。
生憎とボクは重量オーバーで地鳴りするからヤメロと仲間たちから止められていた。
いわくつきの、ジェットストリームみたいなアタック。
「キャンユーセレブレーター、セットレディ――――!!」
ヤバイ!! 銃火器を持ち出してきた。
どこにセレブレーション感があるのか知らないけれど、色か!? その驚きの白さがオメデタイということか!
「コイツで終わりだ。エグゼクティブ・ブレイブバスタァッァアアア―――!!」
また無駄に銃身が発光している……正義の超兵器はカッコイイだけで済ましてくれない。
確実に敵を葬り去ることを想定して造られた殺戮兵器だ。
これで、よく今までフレンドリィファイヤーしなかったものだと今更ながら、吃驚させられる。
サークレットフェアリーのバトルコスチュームにどれだけの防御力があるのか定かではない。
多分、性能に期待してもあの一撃を直接受ければ、一瞬で蒸発してしまう。
「チャージ恩んんんんん!! フル……ファイヤァッ――――」
どこぞのアイドルじゃないんだから、気取って発音するのはいい加減、止めて欲しい。
キモさだけが三割増しになる。
格納庫全体を照らす、爆炎その中から消滅の光が突き抜けてくる。
アホなのか、レッドの奴は……このままだと格納庫ごと炎の海に包まれてしまうではないか!
『転送完了! ピュアコスモブレイドを装着しますか?』
「します! 急ぎでお願い」
すぐさま、両手首にコスモブレードが装着される。
こうなたら一か八かだ。どうなるのかは、知ったことではない。
まずはキャンユーセレブレーターを破壊しないと。
「ファイナルフィニッシャー、エスカレーションスマッシュ!!」
折り畳み式のショートブレードが手首から垂直に広がる。
魔力を宿した刀身が虹色の光を灯し眩く、世界を照らす。
嗚呼……皆、光り物が大好きなんだ。
どうして発光するのかなんて、考えるだけ邪道だった。
何故なら人は煌めきの中に価値を見出すのだから。輝くことは正義の証、夢や希望、未来への象徴。
雲一つない空が綺麗だと思うように、光は人の心に活力を与えてくれる。
だけど、ブルジョアレッドの輝きは怨嗟から生まれるもの。
煌めきに価値がある以上、無価値も混在している。
それは美しく彩りながらも、見るに耐えない醜さを秘めていた。
セレブレーターの破壊力とコスモブレードの魔力が激突する。
どちらに軍配が上がるのかなんてシンプルに力が上回る方に決まっている。
競り負けるつもりなんて最初からない! ガゥのコスモブレードに斬れないモノなどないのだから―――
「ふっ……やるねぇ―――! 俺のエグゼクティブな奴を消し飛ばすとは、対消滅って奴?」
「何を言っているんだ? まさか、互角だったと?」
床下の一部が大きく抉れたその対面に、ボクとレッドは立っていた。
換気ダクトにより粉塵や砂ぼこりが吸引されてゆく。
ボクはレッドの手元を指さした。
「なん、なんじゃこりゃあああああああ!!!」
真っ二つに斬れているセレブレーターを見て変態は激しく怒号していた。
AIであるドブさんが、身をていしてボクを庇ってくれることなど想像すらしたことがなかった。
聞いても「これも勝利の為だよ~」と素っ気なく答えるに違いない。
だとしても、この行動は打算的であるドブさんらしくない。
何かが、ボクらの中で変わろうとしている?
それは表面的なものではなく、内面で煌めくモノ……。
未だ、はっきりとしない微弱な変化だけど、とにかくボクはドブさんに助けて貰った。
それだけは覆ることのない事実なんだ。
「ド、ドブさん!!」
閃光とともに立ち込める白煙の中から、ムニーの頭部が帰ってきた。
角は砕け頭部に亀裂が生じている。
ブルジョアレッドの攻撃を何とか受け止められたけど、破損が酷い。
「大丈夫なの!?」
「吾輩のことなら気にするな!! 次の攻撃が来る前に―――――」
「うん、ドブデバイスセット! 来いぃぃ!! ガゥライザー!」
『ガゥライザー転送開始します! ピュアコスモブレード射出!!』
ガゥを発進シークエンスに持っていたものの、その間にブルジョアレッドが山で拾ったブレード?を振り回してきた。
「チュゥィィィ――――!! シュバババァアア―――――!!!」
SE(サウンドエフェクト)がないので奴自身が口ずさんでいた。
まるで、子供が玩具の剣を片手にチャンバラしているようだ。
構えもクソもない、ただただ気の向くままにビームソードをぶん回しているだけ……。
なのに強い! 単調でぎこちない動きなのに、どうしてか反撃を躊躇ってしまう。
「アラアラアラアラハェェェェッ!! どうしたのよ? 避けてばかりじゃ勝負にならないわよ」
どうかしているのはレッドの方だ。何故、お姉口調になっている……。
とはいえ……たしかにこのままではボクの体力が持ちそうにない。
「ショートストライク!」脇腹に隙がある、そこへと渾身のワンインチパンチを見舞う。
途端、レッドの身体が視界から消えた。
当然ながら空振りのパンチ。
体勢を崩したボクの頭上には宙返りする紅いタイツが見える。
そうだ! 戦隊ヒーローの連中はこの意味があるのかも怪しいアクロバティックな動きが得意だった。
とにかく、宙を飛んでいないと落ち着かないらしい。
生憎とボクは重量オーバーで地鳴りするからヤメロと仲間たちから止められていた。
いわくつきの、ジェットストリームみたいなアタック。
「キャンユーセレブレーター、セットレディ――――!!」
ヤバイ!! 銃火器を持ち出してきた。
どこにセレブレーション感があるのか知らないけれど、色か!? その驚きの白さがオメデタイということか!
「コイツで終わりだ。エグゼクティブ・ブレイブバスタァッァアアア―――!!」
また無駄に銃身が発光している……正義の超兵器はカッコイイだけで済ましてくれない。
確実に敵を葬り去ることを想定して造られた殺戮兵器だ。
これで、よく今までフレンドリィファイヤーしなかったものだと今更ながら、吃驚させられる。
サークレットフェアリーのバトルコスチュームにどれだけの防御力があるのか定かではない。
多分、性能に期待してもあの一撃を直接受ければ、一瞬で蒸発してしまう。
「チャージ恩んんんんん!! フル……ファイヤァッ――――」
どこぞのアイドルじゃないんだから、気取って発音するのはいい加減、止めて欲しい。
キモさだけが三割増しになる。
格納庫全体を照らす、爆炎その中から消滅の光が突き抜けてくる。
アホなのか、レッドの奴は……このままだと格納庫ごと炎の海に包まれてしまうではないか!
『転送完了! ピュアコスモブレイドを装着しますか?』
「します! 急ぎでお願い」
すぐさま、両手首にコスモブレードが装着される。
こうなたら一か八かだ。どうなるのかは、知ったことではない。
まずはキャンユーセレブレーターを破壊しないと。
「ファイナルフィニッシャー、エスカレーションスマッシュ!!」
折り畳み式のショートブレードが手首から垂直に広がる。
魔力を宿した刀身が虹色の光を灯し眩く、世界を照らす。
嗚呼……皆、光り物が大好きなんだ。
どうして発光するのかなんて、考えるだけ邪道だった。
何故なら人は煌めきの中に価値を見出すのだから。輝くことは正義の証、夢や希望、未来への象徴。
雲一つない空が綺麗だと思うように、光は人の心に活力を与えてくれる。
だけど、ブルジョアレッドの輝きは怨嗟から生まれるもの。
煌めきに価値がある以上、無価値も混在している。
それは美しく彩りながらも、見るに耐えない醜さを秘めていた。
セレブレーターの破壊力とコスモブレードの魔力が激突する。
どちらに軍配が上がるのかなんてシンプルに力が上回る方に決まっている。
競り負けるつもりなんて最初からない! ガゥのコスモブレードに斬れないモノなどないのだから―――
「ふっ……やるねぇ―――! 俺のエグゼクティブな奴を消し飛ばすとは、対消滅って奴?」
「何を言っているんだ? まさか、互角だったと?」
床下の一部が大きく抉れたその対面に、ボクとレッドは立っていた。
換気ダクトにより粉塵や砂ぼこりが吸引されてゆく。
ボクはレッドの手元を指さした。
「なん、なんじゃこりゃあああああああ!!!」
真っ二つに斬れているセレブレーターを見て変態は激しく怒号していた。
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