問答無用！でランキングブレイカー！！ ースキル、グラビアこそ最強最高ですー

最強！ 最高！ さあ、逝こう！！

３話 対立

「お前ら！　勝手に盛り上がるのはいいが、大事な存在を忘れていないか？」

　大剣を地面に突き立てた戦士の孤独な戦いが幕をあけた。
　声を張り上げるグゼンをリーダーが一瞥しただけで、女性メンバーたちは誰も眼を合わせようともしない。
　徹底した格差管理の中で、彼はすでに泥沼にハマっていた。
　まるで、手にできた煩わしいガングリオンのように、邪険に扱われている。

「正直……こんなことを言たくないんだが……オレ、どちらか一方を選ぶだなんて決められねぇーよ！！」

　マジかよ！？　この人……自分の置かれている状況が理解できちゃいねぇ。
　どちらかのパーティーに入る気、マックスだよ。

「ほら、あの皆で冒険した感動を再び、思い出すんだ！！　才能なんて関係ない！　オレが、いくら多才なインフルエンサーだからといって、気兼ねする必要はどこにもないんだぞ！」

　脳筋太郎の恐ろしいまでの自己過大評価に、その場の空気がより一層重くなるのを感じた。
　そろそろ、止めねば誰かが太郎を刺しに行くのではないかと思うと肝がキンキンに冷えてしまう。

「オレも、前の世界では冴えないパチンコ屋の店員だったが、この異世界では才能を遺憾なく発揮するイケオジよ。これから始まる冒険と悠々自適なスローライフに心躍らせるのは皆、同じであったろう？　和解して、もう一度皆でやり直そうじゃないか！？」

　我らがパーティー、デュアル・ゴースティングの料理長こと、戦士グゼンが頼まれてもいない仲裁役を買って出る。
　話の内容から分かるかも知れないが、グゼンは不審者……あっいや、転生者だ。
　彼だけはない。ここにいるメンバーの半数以上が転生して、このセカイに送り込まれた者たちだ。
　無論、その中に俺も含まれている。

　なにが同じなのか知らないが、自己アピールに必至こいているグゼンの姿は辟易へきえきする。
　彼の料理の腕前確かなモノで、俺たち全員の胃袋を掴んででいた。
　掴んでいたが……誰一人としてグゼンを擁護しようとする者いない。
　
　無神経で自己中心的な性格がネックとなり、彼のプラス要素を帳消しにしていた。
　そんな輩が、仲間割れは良くないと独善的に出張ってくれば、誰だってイラッとする。
　それをオマエが言うのか……？　とパーティーメンバー全員、内心は酷評しているはずだ。　
　
　いわゆる、おまいうー。決して、美味しいという表現の丁寧語ではない。
　
　依然として変わらない張り詰めた空気に、グゼンの目が泳ぎだした。
　昔から気の小さい彼は、メンタルが弱く戦士には不向きだ。
　こうして、話しを聞いているだけでも不安に襲われていることが伝わってくる。
　
　リーダーの賢者が舌打ちする。
　同時に占い師の老婆も、硬いスルメを何とか噛み切ろうとする時のような陰惨に満ちた表情を浮かべている。

「グゼン、クドイですよ……アンタ。皆、１４，０００代のアンタに合わせるのはシンドイんで。ホント、これ空気読めないんだよなぁ～」

　毒舌の賢者、サトランは三白眼に整った顔立ちをした十七歳。
　普段も、毒気のある口調だが、ここまで個人を否定する彼を俺は知らない。
　何と言っても、彼はリーダーだ。
　自らパーティーを崩壊させるような軽率なことは起こさない。
　なのに今回の彼は、いつもとは異なり非常に辛辣だ。
　グゼンに対して、ここまで怒りをぶつけてきたのも、これが初めてかもしれない。
　サトランと、あまり相性が良くない俺でもそこは、はっきりと分かる。

　「サトラン、お前……本気で言ってんのか？」

　歯を食いしばりリーダーを睨みつけるグゼン。
　一段と緊迫感が増してゆく中、畳み掛けるように占い師の婆さんが動き出した、その時！
　我々の前でワカモトボンバーが炸裂した。

「熱血漢ぶってるふりして、女のケツばかり追いかけてりゃ、そうもなるわい！　グゼン、スキンシップと称し乙女の柔肌を触ろうとするのはお止め！！　アンタはエロいことを考えていると、すぐに顔に出てくるから分かるのさ。ハッキリ言ってセクハラだよ！　セクハラ！　セッ〇ピースハラスメントだよ！」

「おい、誰か！　このババアを黙らせろ！！」
　戦士グゼンが額に血管を浮き上がらせていた。

　いけない……婆さん、それだけは言っちゃいけない！
　非力な俺たちの力では、なかったことにはできないんだ。

「わ、ワカモトのオバちゃん。セクハラってのは、かくかくしかじか……」

　見かねた女盗賊がセクハラについて説明し始めた。
　リーダーのサトランは子供のように腹を抱えて笑っていた。
　我々は年長者の底力を侮っていた。
　パンドラの箱が無造作に開けられるところを、垣間見てしまったような気さえする。
　
　占い師のワカモトさん、見た目は齢八十ぐらいの婆さんだが、公式では年齢不詳とされている。
　どうして、このパーティーに在籍しているのか？　誰も話さないし、知ろうともしない。
　俺が、このパーティーに加入した時点ですでにメンバーの一員だった。

「分かった？」という女盗賊の問いかけに「ホッホッホッ」と柔らかに笑って済ませる辺りが、どこか憎らしい。
　心のリーダーというのも伊達じゃない。
　さきほどまで、ギスギスしていた空気が、和やかになっていた。