問答無用!でランキングブレイカー!! ースキル、グラビアこそ最強最高ですー

心絵マシテ

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恋するコペルニクス

31話 君の自由

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 ――――騙されたのか?

 その一言は言葉にならなかった。
 重苦しい風が一帯を激震させていた。
 視界から、ササブリの姿がドンドン引き離されてゆく。
 彼女が移動しているのではない……俺が宙を飛んでいるからだ。

 砕けた石の残片が風に舞う。
 生き物のように一ヶ所に集まるとスキルブックからほとばしる光がそれらを照らした。
 クラクラとする輝きに目を細めながら状況を探る。
 光の中で、人と酷似するシルエットが浮かんでいる。

 翼とクチバシを持った石像の悪魔――ガーゴイルが顕現けんげんした。
 ガッツが足りない俺は、風のに乗って部屋の天上近くまで浮上してしまった。
 同じ景色を眺める者同士、視線が合うとガーゴイルは意気投合したかのように俺に迫ってくる。
 強引なのはちょっと……勘弁、願いたい。
 言葉が通じれれば意思の疎通もできただろう。
 だが、相手は石像……何を言っても通じないし、罵倒ばとうしても精神的な苦痛を与えられることはない。

 持参した悪魔の槍を構え、俺を串刺しにしようとしている。
 いっそのこと、イチキュッパで買えそうな、あの安槍を虫取り網に変えてやりたい。

 空中では思うように身動きがとれず、俺は必死で手足をバタつかせる。
 こんだけバタバタしたのは、キンダーガトゥーン時代以来だ。
 あの頃は、親にお菓子を買って貰いたい一心で、よくスーパーの床を転げ回ったっけ。
 おかげで、掃除の手間がはぶけるって、清掃のオバちゃんが喜んでいたなぁ~。
 邪悪なババアだったから、菓子は、くんなかったけど。

 しまったぁあああ……また、やってしまった。
 いささか不謹慎なことを考えてしまうのは悪い癖だ。
 やはり、俺は戦闘にむいていない。
 基本、緊張感が足りていない。ボス戦の最中、不敵な笑みを浮かべているのは遊び人か、俺ぐらいだ。
 キャタピラースライムの時だってそうだ。
 皆が見ている手前、平静を装っていたがスライムが水饅頭にしか見えてなかった。
 凍らせたら、食べれるんじゃないか考察していた。

 例え、今のように槍を投擲されても平気だ。
 手持ちのバックラーシールドをフリスビーのように投げつけてやればいい。
 飛んできた槍を打ち返すぐらい、俺にだってできる。

「低ランカーをなめんなよ。こちとら、これでずっと食ってきたんだ。生まれたての赤子ような悪魔に楽々のされてたまるかよ!」

「よくぞ、言った! それでこそ、我の主じゃ」

 ガントレットごと肥大化した腕がガーゴイルを襲う。
 バキバキに肢体を壊されながら、壁に打ちつけられる。
 その時点で、もう機能していないは一目瞭然だ。

 ササブリの攻撃を見せつられると自身がいかにちっぽけな生き物か……実感してしまう。
 百の努力も一の才能には敵わない。
 そう、悟ってしまうとやるせない気持ちで一杯だ。

「そら、乗るが良い」

 大きな、手のひらが俺をすくってくれた。
 しょせん、俺は釈迦でなく魔王の手のひらで踊る、猿にすぎない。
 乾いた笑いでダンディズムを気取ろうじゃないか……。

「なにしておる。主の出番はここからじゃろ!? はよっ、抜剣しろ!」

 魔王が神に思えた。
 ここに来て「出番」というジョーカーを引いてくるとはさすがだ。
 俄然、やる気が出てきた……かもしれない。

 ガーゴイルの全身が修復し始めていた。
 恒例の再生タイムだ。
 壱に再生、弐に再生、再生再生再生―――さあ、逝けぃ。

 魔王の手を走り抜けた俺は、剣を引き抜き、そのままガーゴイルの頭部に突き立てた。

「のわっ!!」瞬間、電撃が刀身を駆け巡った。
 即座に手放したおかげで、ことなきを得た。
 けれど、今のヤバかった。少しでもタイミングが遅れていれば、丸焦げになっていたかもしれない。
 なんであろうと、トドメを刺す時は油断してはならない。
 そう肝に命じた。

『入手ポイント700が入りました』

 仕様とはいえ、無機質に喋るスキルブックが怖くなってきた。
 とは言え、明るく元気な妹仕様にしたら、いたたまれなくなるのは俺だけなのか?
 欲しいのはマインドだけではなく、実体だ。
 心も大事だけど、いずれ現物が欲しくなる。
 だって、僕らは欲求不満の申し子だから。

「おい! 起きろ。いつまで寝ておるんじゃ」

 勝利の余韻に浸っていると、ササブリが吟遊詩人にチョッカイをかけていた。
 脇腹を何度か蹴っているが、死出の旅路に行ってしまわないか不安だ。

「そんな、奴はほっとけ。それよりも、俺は賞金首に連れ去られた仲間の安否が心配だ。早く、後を追わないと!」

「我としては、どうしてコヤツが石化しておったのか気になるんじゃが……そう、急くでない。我の力であれば、その賞金首とやらも首だけにすることも可能じゃぞ」

 ずいぶん、物騒なことを言いやがる。
 俺的には、あの二人を取り返せれば充分なんだが……。

「う~ん……クビ。乳首! お願いデス、見せてクダサイ」

「……俺、男だけど? そういうのが好きなの?」

「WAAAAWOOOOOO――――!! TKO……」

 いきなり、目覚めたと思ったら、また失神しやがった。
 てぃけぃおぅ? テクニカルノックアウトを知っているという事はコイツも転生した口か?
 様々な疑問を抱きつつ、俺は部屋を後にした。
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