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自由へのゴング
16話 出会い
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いつからだろう……。
ここまで、俺たちが落ちぶれてしまったのは。
野菜を刻みながら思いを馳せる。
涙と鼻水を垂らしながら、満ち足りた過去を振り返る。
*
旅立ちのコミュニティ、シンギュラ。
そこが俺たちデュアル・ゴースティングの活動拠点になっている。
世界最大最難関のダンジョン、星団船を中心にこうしたコミュニティは、いくつか点在しているらしい。
コミュニティとは街のようなモノ。
そこで暮らす人間の大半が冒険者だ。
デュアル・ゴースティングに加入する前の俺は、野草採りで生計を立てていた。
言うまでなく、ランキング18039位の奴をパーティーに加えようなんて酔狂な輩はいなかったからだ。
ダンジョンも初級者向けの近所にあるショボい洞窟だ。
それでも、クソ雑魚のモンスターからサンドバッグにされる始末。
エンカウントする度に、逃走するしかなかった。
おかげで、危険察知とスピードランニングだけは得意になった。
今じゃネイティブ顔負けよ。
どれが食べられる草で、どれが薬草か三メートル先からでも見分ける自信がある。
そんな感じで日々、過ごしてきたわけだ。
マジで刺激もなく退屈そのもの。食事はカス粥ばかりの侘しいモノ。
けれど、それら以外は苦ではない。
前世の記憶がある俺にとって、のんびり気ままに過ごせるのは何にも代え難い贅沢だ。
時間に追われる必要がない、それだけで幸福な暮らしだと感じていた。
ある日、ギルドの募集板に新人募集の張り紙が出されていた。
別にどうこうするつもりもなかったから、軽く目を通してみた。
初心者にとっては破格の報酬だったが、フィールドワークをする場所が星団船内とかなりぶっ飛んだ内容だ。
おそらく何人かは、金目当てで応じるだろう。
しかし、初心者なんかを上級者向けのダンジョンに連れていってなんの得があるのだというのか?
依頼主の意図が汲めず、俺は小首をかしげた。
「サンキュー、ジョニー!」
数日後、お目当ての新人が見つかったらしい。
公募を出した冒険者グループがギルドに顔を出してきた。
神官服を着た巨乳の美女と、肌の露出が多い小柄な少女。
その二人を両脇にはべらせながら、不敵な笑みを浮かべる若い男。
魔導師なのか? 男は高価そうなローブを見にまとっている。
自分こそ成功者だと見せつけるようにギルド内を闊歩する彼の様に、他の冒険者たちは悔しさと恨めしさを顔に滲ませていた。
この短期間で、ここまで多くの冒険者からヘイトをかう奴は今まで見たこともない。
あの金髪、七三は只者ではない俺の直感がそう告げていた。
彼らが採用したのは、死体漁りのジョニーだった。
新人とは名ばかり、以前からギルドに入り浸っている常連だ。
ジョニーはギルドでも悪評高い男だった。
ダンジョン内で息絶えた冒険者から金品をくすねて来るのが彼のやり方だ。
それが以外は何もしない……その点では、新人と変わりない。
俺と歳変わらぬ金髪、七三。
彼を見て別段、羨ましいとは思わなかった。ただ、住む世界が違うとは感じていた。
そもそも、あのパーティーと俺は無関係だし、加入できる要素もない。
俺は新人ではない。
ランキングこそ上がらない底辺冒険者だが、場数は踏んでいる。
知識と技術だけなら他の冒険者と比べてなんら見劣りしないはずだ。
とにもかくにも、そう自負しているんだ。せいぜい、草取りに精を出すさ。
翌日、ジョニーが死体になって帰ってきた。
ミイラ取りがミイラになるように、死体漁りが死体になってしまった。
冒険者がダンジョン内で命を落とすことは、決して少なくはない。
ただ、今回に限っては初心者を最上級のダンジョンに連れていったことが問題視され、色々と物議を醸し出していた。
前例がない上に、基本は自己責任。
この問題をどう取り扱うか、ギルドのお偉方は頭を抱えているようだった。
「はっ? ジョニーがセメタリー送りになったのは運命だよ。僕たちの責任じゃない。それに責任を問うのなら僕たちを引き止めようとしなかった君たちも同罪じゃないかな?」
他の冒険者たちから詰め寄られているにも関わらず、当事者である彼らはこの有様だ。
侘びを入れることもなく、完全に開き直っている。
「野郎……大人しく聞いていれば、つけ上がりやがって」
どこそこから怒りの声が上がった。
大顰蹙をかっても眉一つ動かさない魔術師の男は俺から見ても異常な奴だった。
「どけ! 俺が行く」
とうとう、冒険者の中から彼を痛めつけようとする者が現れた。
止める者は誰もいない。
「おや、いいのかい? 冒険者同士の喧嘩はご法度じゃないのかな~?」
「喧嘩はな。だが、事故なら話は別だ!」
「なるほど、そういう訳か……」
ここまで、俺たちが落ちぶれてしまったのは。
野菜を刻みながら思いを馳せる。
涙と鼻水を垂らしながら、満ち足りた過去を振り返る。
*
旅立ちのコミュニティ、シンギュラ。
そこが俺たちデュアル・ゴースティングの活動拠点になっている。
世界最大最難関のダンジョン、星団船を中心にこうしたコミュニティは、いくつか点在しているらしい。
コミュニティとは街のようなモノ。
そこで暮らす人間の大半が冒険者だ。
デュアル・ゴースティングに加入する前の俺は、野草採りで生計を立てていた。
言うまでなく、ランキング18039位の奴をパーティーに加えようなんて酔狂な輩はいなかったからだ。
ダンジョンも初級者向けの近所にあるショボい洞窟だ。
それでも、クソ雑魚のモンスターからサンドバッグにされる始末。
エンカウントする度に、逃走するしかなかった。
おかげで、危険察知とスピードランニングだけは得意になった。
今じゃネイティブ顔負けよ。
どれが食べられる草で、どれが薬草か三メートル先からでも見分ける自信がある。
そんな感じで日々、過ごしてきたわけだ。
マジで刺激もなく退屈そのもの。食事はカス粥ばかりの侘しいモノ。
けれど、それら以外は苦ではない。
前世の記憶がある俺にとって、のんびり気ままに過ごせるのは何にも代え難い贅沢だ。
時間に追われる必要がない、それだけで幸福な暮らしだと感じていた。
ある日、ギルドの募集板に新人募集の張り紙が出されていた。
別にどうこうするつもりもなかったから、軽く目を通してみた。
初心者にとっては破格の報酬だったが、フィールドワークをする場所が星団船内とかなりぶっ飛んだ内容だ。
おそらく何人かは、金目当てで応じるだろう。
しかし、初心者なんかを上級者向けのダンジョンに連れていってなんの得があるのだというのか?
依頼主の意図が汲めず、俺は小首をかしげた。
「サンキュー、ジョニー!」
数日後、お目当ての新人が見つかったらしい。
公募を出した冒険者グループがギルドに顔を出してきた。
神官服を着た巨乳の美女と、肌の露出が多い小柄な少女。
その二人を両脇にはべらせながら、不敵な笑みを浮かべる若い男。
魔導師なのか? 男は高価そうなローブを見にまとっている。
自分こそ成功者だと見せつけるようにギルド内を闊歩する彼の様に、他の冒険者たちは悔しさと恨めしさを顔に滲ませていた。
この短期間で、ここまで多くの冒険者からヘイトをかう奴は今まで見たこともない。
あの金髪、七三は只者ではない俺の直感がそう告げていた。
彼らが採用したのは、死体漁りのジョニーだった。
新人とは名ばかり、以前からギルドに入り浸っている常連だ。
ジョニーはギルドでも悪評高い男だった。
ダンジョン内で息絶えた冒険者から金品をくすねて来るのが彼のやり方だ。
それが以外は何もしない……その点では、新人と変わりない。
俺と歳変わらぬ金髪、七三。
彼を見て別段、羨ましいとは思わなかった。ただ、住む世界が違うとは感じていた。
そもそも、あのパーティーと俺は無関係だし、加入できる要素もない。
俺は新人ではない。
ランキングこそ上がらない底辺冒険者だが、場数は踏んでいる。
知識と技術だけなら他の冒険者と比べてなんら見劣りしないはずだ。
とにもかくにも、そう自負しているんだ。せいぜい、草取りに精を出すさ。
翌日、ジョニーが死体になって帰ってきた。
ミイラ取りがミイラになるように、死体漁りが死体になってしまった。
冒険者がダンジョン内で命を落とすことは、決して少なくはない。
ただ、今回に限っては初心者を最上級のダンジョンに連れていったことが問題視され、色々と物議を醸し出していた。
前例がない上に、基本は自己責任。
この問題をどう取り扱うか、ギルドのお偉方は頭を抱えているようだった。
「はっ? ジョニーがセメタリー送りになったのは運命だよ。僕たちの責任じゃない。それに責任を問うのなら僕たちを引き止めようとしなかった君たちも同罪じゃないかな?」
他の冒険者たちから詰め寄られているにも関わらず、当事者である彼らはこの有様だ。
侘びを入れることもなく、完全に開き直っている。
「野郎……大人しく聞いていれば、つけ上がりやがって」
どこそこから怒りの声が上がった。
大顰蹙をかっても眉一つ動かさない魔術師の男は俺から見ても異常な奴だった。
「どけ! 俺が行く」
とうとう、冒険者の中から彼を痛めつけようとする者が現れた。
止める者は誰もいない。
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