問答無用!でランキングブレイカー!! ースキル、グラビアこそ最強最高ですー

心絵マシテ

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ぼっちの魔王

41話 ハウスキーパーにメイド服を着させて何が悪い!?

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 激震する力の奔流。
 怒り任せの拳が円弧を描き振り子のごとく飛んでくる。

「ササブリ、いい加減しろ!! そっちがその気なら、俺だって容赦しないぞ!」
   
 言葉が虚しく響き渡る。
 やはり、彼女の耳には俺の声が届いていない。
 だったら、スキルを強制解除するかない!

「乗れぃぃぃ!! 小童ども」

 背後の塔から、エレベーターが突如として降りてきた。
 鉄箱の扉が開くと同時に猛る男の声がした。
 次の瞬間、俺たちは箱の中へと放り込まれていた。
 一瞬、一瞬、が早送りのように進んでいる感覚に吐き気を覚えた。

 ドガガガア――ガガガアアァア―――ン!!!

 耳を塞がずにはいられない爆破音が地の底で鳴り響いていた。
 エレベーターが自動的に上昇している。
 薄暗い箱の中、リンは膝を抱え座っていた。
 俺も彼女に習って隣に腰を下ろした。

「ごめん……アタイのせいだ」

 沈黙を破り、リンが謝罪してきた。
 力なく項垂れる彼女に、気止めの言葉などかけられるはずもなかった。

 ――悪いのは俺も同じ、そう言うのは簡単だ。
 事実、コントロールできないササブリを使役してしまったのは俺だ。
 リンが悪いわけじゃない。
 けれど、そのことを彼女に伝えれば、余計に自身の行いを責めるだけだろう。
 リンは、いつもそうだ。
 人一倍責任感が強い、そのことを周りに隠すように「どうでもいい」と連呼している。
 それが、とても苦しそうに見えてしまう。

「リン、口を開けろ。ほら!」

「マイト? こ、こう……ん! ゲホゲホッ!! ちょっと、なにすんのよ!」

 余った豆をリンの口の中に突っ込んでやった。
 不意打ちを喰らい咳き込む彼女は、涙目で文句を垂れていた。

「凹んだ罰だ。これで、お前の中の邪悪は駆除された。嘆くのは万年底辺ランカーである俺の役目だ! リンにまで嘆かれたら、俺の仕事がなくるだろっ?」

「アンタって、ホント……最低ね! じゃあ、アタイはどうすれば良いわけさ」

「ササブリと仲直りしろ。それだけは何を置いても変わらない。俺も手伝うからさ、まずはそこから始めようぜ!」

 少しは気が晴れたのか? リンは穏やかな表情でうなづいた。

 同時にチン! と音をたてエレベーターが停止した。
 どうやら最上階に到着したようだ。扉が開いた先は、一面、金色に輝いていた。

 一目瞭然で分かるが、どうやらここは、あの悪趣味な宮殿内部のようだ。
 俺たちが、行き着いた場所は大きく開けた大広間パーティーホールだった。
 一度に五百人は余裕で入れそうなほどの広い空間を有している。
 石材から成る床には、職人によって描かれた色艶やかな絵画が余すところなく描かれている。
 聖典に書かれていた、星団船の全容をモチーフにしたモノだろう。

 広大な宇宙を航行する惑星サイズの巨大船。
 その風貌は航宙船ではなく、海上に浮かぶ帆船となっている。
 船体の端々には帰路キロと呼ばれる鎖の路があり、先端には俺たちが住まう小惑星コミュニティがある。

 誰が俺たちを、ここに招きいれたのか?
 おそらくは、あの声の主だ。
 おかげでピンチからは救われた。
 でも、このままで良いはずがない。依然、魔王は放置したままだ、スキルを強制終了しなければ……。

「それは、止めておいた方が宜しいかと……」

「うわっ!! ビックリした! アンタ、どこから出てきたんだ?」

 気配もなく、俺のすぐ隣にメイド服を着用した女性が立っていた。
 慌てて口を塞いでも、もう遅い。また、呪いのせいで、いらぬことを口ずさんでしまった。

「アンタ、ここの人? いきなりで悪いんだけど、助けもらってありがとっ……」

「いいえ、滅相もございません。すべては、我らが主上しゅじょうの考えのもと……申し遅れました。ワタクシ、宮殿守護者ハウスキーパーのメイビスと申します。以後、お見知りおきを」

「ど、どーも。リンです、彼はマイトっていいます。不躾なことを聞くけど、ここは聖殿にある本殿なの?」

「いえ……ですが、本殿はこの宮殿の近くに建立こんりゅうされています。詳しくは主上が詳しいのでお聞き下さい」

 ハウスキーパーさんの礼儀正しさには、ガサツなリンも委縮し畏まっていた。
 彼女を一目見た瞬間から、俺には分かっていた。
 ハウスキーパーを名乗っておきながらも、ちゃんと主人の言いつけ通り、メイド服に袖を通す、このサービス精神。
 彼女のプロ意識高さは、もはや罪作りなレベルだ。

 くわえて、ここの御仁のメイドに対する深い造詣と強いこだわりには感服するしかない。
 衣装良し! 顔良し! 匂い良し! 三拍子揃ったパーフェクトリィ。
 この美の結晶は、荒んだ野郎ばかり見てきた俺の眼には眩し過ぎる。

 クッソ、いいーなぁ。俺の欲しいぜ、自分だけのメイドすぁん~。
 まっ、男の八割ぐらいは、その願望を抱きながら過呼吸になってわけいるだが……う~ん。

「どうかなさいましたか?」

「いや、ハウスキーパーとメイドってどう違うのかな? と思いまして」

「死人が出るか、出ないかですかね」

 あれ? あれれ? なんか、想像と違う……なんかヘンな部分をノックしてしまったぞ。
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