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孤島の花嫁
62話 泳げ! アナゴ君
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大海原を進むこと、二時間。
俺を乗せたバナナボートはみごとなまでに漂流物となった。
二時間と言ったがあれは嘘だ、願望だ。
ぶっちゃけ、このセカイに時間を正確に計れるモノなど、スキルブックでも使用しない限り作れやしないだろう。
はっきり言おう。俺は自分の体力なさを舐めていた。
ちょっとでも、ボートを漕いでゆけば島が見えてくるだろうと楽観視していた。
頼みの綱の魔王は、腹が満たされたからか? スキルブックの中で爆睡している。
何とか、陽があるうちに陸に上がりたいと思っていたが……よくよく考えてみよう。
ここはダンジョンの中だ。
日照時間なんざ、あるわけもねえ……。
あまりの過酷さに頭がクラクラする。ここは、まだ船底層の三階。
魔王以外のザコモンスターも依然より強くなっているはずだ。
ここまで来て、俺は自分の愚かさに打ちのめされていた。
こんな頼りないボートで海を渡ろうとした不用心さもそうだが……。
何より、ここが逃げ場のない海上であることを分かっておきながら、それに対する認識の甘さがモロに出てしまっていることに悔しさを感じる。
「こんな所で、魔物の襲撃にでもあえば一巻の終わりだな」
などと、フラグを建てつつも、本当の敵は持て余した時間だった。
定期的にボートを漕いではいるものの、風が吹かない分、進みも遅い。
すぐに飽きて、ヒマつぶしにグラビアを熟読することとした。
我ながら、こんな時に役立つとは思ってもみなかった。
グゼンには、散々にまで芋スキル扱いを受けたが、やはりどこの世界にいても男の癒し、目の保養は必要不可欠だ。
若干、興奮気味になってきたが、それを分かち合うスケベがいない。
ホロモンの宮殿で離ればなれになったリンたちや、聖殿に置いてきた野郎共は無事なのだろうか?
柄にもなく、他者の心配をする俺……最近、活躍できるようになって余裕? って奴が生まれたんだと思う。
「まっ、ランキングが上がらないのは一向に変わらないだけどな~アッハハハ!」
「へィ! そこのボーイ。何が、そうファニーなんだい?」
「んへっ?」俺たち以外、誰もいないはずの海で、人の声がした。
人恋しさに耐え兼ねて、ついに気でも触れてしまったのかと焦った。
けれど、どうも違う。
「オオッ! 何だ? 水面がメッチャ揺れているんですけど!?」
何の前触れもなく、海面がボコボコと泡立っていた。
ジェットバスのように噴き出している様をジッと見詰めていると急に海水の色が濃くなり、海が隆起した。
一瞬、津波の襲われたかと思った……。
あわや、転覆しそうなボートを巧みなパドルさばきによって、荒波を乗り越えうねる水上から脱出する。
こちとら、伊達に海人の祖父を持っていたわけではない。
マリンスポーツなど、飽きるほどにやったわ。
「ブラボー! どこの馬の骨か、知らないけれど、よく俺ちゃんのシーサーペントの動きを見切ったな!」
侮辱だか、感心だか知らんが、不要な拍手を打ち鳴らす野郎を睨みつけてやった。
金玉が縮むかと思った……海面から長い首をした巨大な水棲類のモンスターがコンニチワしていた。
その邪悪な眼光に、生物としての格差を見せつけられたような気がした。
所詮、ワイは小チンピラや……。
討伐推奨ランキング5000位のシーサーペント君。
備考欄にアナゴって書いてあるのが気になるけど……早速、購入ポイントで手に入れた新スキルが役立った。
2000ポイントの購入特典、スキャニング。
ワカモトさんの使用するアナライズと比較すると、どれだけ性能差があるのかは分からない。
が、しかし肉眼で見た相手のランキングが即座に分かるというのは、非常に有難い。
これから、強敵に出くわした時に迅速に逃亡を謀れるだろう。
「俺ちゃんの名はラード! そしてこのシーサーペントはウナギ君。まさか、我々以外にも海を自力で渡ろうとする冒険者がいるとはな。感心、感心……うっ! ごぼぼっぼぼぼ!!」
いや、ソイツはアナゴなんですがね……。
ツッコミたい気持ちよりも、ツッコミどころが多すぎて指摘するのも嫌になってしまった。
巨大なアナゴの背に乗っていたのは、怒髪天をついたようなモヒカン頭のオッサンだった。
オッサンは溺れていたらしく、耳や口から海水を吐き出していた。
けれど、自身がどんなに水浸しなろうとも、彼の毛髪は重力に逆らって天に向かって立っていた。
その様は、まさにキャンドルと言えよう……と言うよりソレにしか見えない。
「少年よ。君の名は……?」
因みに、このローソクのランキングは15018位だ。
俺を乗せたバナナボートはみごとなまでに漂流物となった。
二時間と言ったがあれは嘘だ、願望だ。
ぶっちゃけ、このセカイに時間を正確に計れるモノなど、スキルブックでも使用しない限り作れやしないだろう。
はっきり言おう。俺は自分の体力なさを舐めていた。
ちょっとでも、ボートを漕いでゆけば島が見えてくるだろうと楽観視していた。
頼みの綱の魔王は、腹が満たされたからか? スキルブックの中で爆睡している。
何とか、陽があるうちに陸に上がりたいと思っていたが……よくよく考えてみよう。
ここはダンジョンの中だ。
日照時間なんざ、あるわけもねえ……。
あまりの過酷さに頭がクラクラする。ここは、まだ船底層の三階。
魔王以外のザコモンスターも依然より強くなっているはずだ。
ここまで来て、俺は自分の愚かさに打ちのめされていた。
こんな頼りないボートで海を渡ろうとした不用心さもそうだが……。
何より、ここが逃げ場のない海上であることを分かっておきながら、それに対する認識の甘さがモロに出てしまっていることに悔しさを感じる。
「こんな所で、魔物の襲撃にでもあえば一巻の終わりだな」
などと、フラグを建てつつも、本当の敵は持て余した時間だった。
定期的にボートを漕いではいるものの、風が吹かない分、進みも遅い。
すぐに飽きて、ヒマつぶしにグラビアを熟読することとした。
我ながら、こんな時に役立つとは思ってもみなかった。
グゼンには、散々にまで芋スキル扱いを受けたが、やはりどこの世界にいても男の癒し、目の保養は必要不可欠だ。
若干、興奮気味になってきたが、それを分かち合うスケベがいない。
ホロモンの宮殿で離ればなれになったリンたちや、聖殿に置いてきた野郎共は無事なのだろうか?
柄にもなく、他者の心配をする俺……最近、活躍できるようになって余裕? って奴が生まれたんだと思う。
「まっ、ランキングが上がらないのは一向に変わらないだけどな~アッハハハ!」
「へィ! そこのボーイ。何が、そうファニーなんだい?」
「んへっ?」俺たち以外、誰もいないはずの海で、人の声がした。
人恋しさに耐え兼ねて、ついに気でも触れてしまったのかと焦った。
けれど、どうも違う。
「オオッ! 何だ? 水面がメッチャ揺れているんですけど!?」
何の前触れもなく、海面がボコボコと泡立っていた。
ジェットバスのように噴き出している様をジッと見詰めていると急に海水の色が濃くなり、海が隆起した。
一瞬、津波の襲われたかと思った……。
あわや、転覆しそうなボートを巧みなパドルさばきによって、荒波を乗り越えうねる水上から脱出する。
こちとら、伊達に海人の祖父を持っていたわけではない。
マリンスポーツなど、飽きるほどにやったわ。
「ブラボー! どこの馬の骨か、知らないけれど、よく俺ちゃんのシーサーペントの動きを見切ったな!」
侮辱だか、感心だか知らんが、不要な拍手を打ち鳴らす野郎を睨みつけてやった。
金玉が縮むかと思った……海面から長い首をした巨大な水棲類のモンスターがコンニチワしていた。
その邪悪な眼光に、生物としての格差を見せつけられたような気がした。
所詮、ワイは小チンピラや……。
討伐推奨ランキング5000位のシーサーペント君。
備考欄にアナゴって書いてあるのが気になるけど……早速、購入ポイントで手に入れた新スキルが役立った。
2000ポイントの購入特典、スキャニング。
ワカモトさんの使用するアナライズと比較すると、どれだけ性能差があるのかは分からない。
が、しかし肉眼で見た相手のランキングが即座に分かるというのは、非常に有難い。
これから、強敵に出くわした時に迅速に逃亡を謀れるだろう。
「俺ちゃんの名はラード! そしてこのシーサーペントはウナギ君。まさか、我々以外にも海を自力で渡ろうとする冒険者がいるとはな。感心、感心……うっ! ごぼぼっぼぼぼ!!」
いや、ソイツはアナゴなんですがね……。
ツッコミたい気持ちよりも、ツッコミどころが多すぎて指摘するのも嫌になってしまった。
巨大なアナゴの背に乗っていたのは、怒髪天をついたようなモヒカン頭のオッサンだった。
オッサンは溺れていたらしく、耳や口から海水を吐き出していた。
けれど、自身がどんなに水浸しなろうとも、彼の毛髪は重力に逆らって天に向かって立っていた。
その様は、まさにキャンドルと言えよう……と言うよりソレにしか見えない。
「少年よ。君の名は……?」
因みに、このローソクのランキングは15018位だ。
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