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心絵マシテ

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心のティアラ

79話 第二の襲撃者

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「マイトよ……悪いことは言わん。さっさと、そ奴を処せ! さもなくば、我が処す」
 どこかの独裁者みたいなことを言い出す魔王。
 実に魔王らしいと言えば、そうだが……ササブリの怒り大半は、エクスサイズに身体を乗っ取られたことが原因だと思われる。

「そんな! ご無体な……私とて長き封印が解けてようやく自由を得た身、ここで消されてしまったら何の為に生まれてきたのか? わかりませんわ!」

 コイツもコイツだ。
 敗者であることを盾に、何故か強気で主張してくる。
 もっとも、俺たちにはエクスサイズの都合なんてオッパッピィだ。
 それこそ、海岸で花火が打ち上げられたと聞いて、漂流してきたのかと勘違いするぐらい不適切だ。

「どうしようかな。ふへへへっ……!」
 だらしない顔をしたルーカスが男優みたいなこと呟きながら割り込んできた……。
 そういえば、火事騒ぎ時、この叔父はどこにいたのか?
 一度も姿をみなかった。
 タイミング的にエクスサイズがハンティング勝負を持ち掛けて一旦、村を出た辺りで消息が分からなくなった。
 まさか、独りだけ追いてかれて気づかないまま、俺を探していたとでもいうのか?

 俺の考えが杞憂であればいいのだが……やはり気になる。

「なぁ、ルーカス叔父よ。どうしてそんなに水浸しなんだ?」

「そりゃ、あのレインの中でオマエを探していたんだ! 濡れ場なのは当たり前だろ」

「濡れ場か、どうかは知らんが頭に海藻かいそうついてんぞ……」

「FU〇KIN……ジーザス!!」

 全米仕込みの驚き方に、俺の方がビックリした。
 雨でいその香を消しても、頭に草を生やしていたら言い訳できない。
 ルーカスは、俺を見つけ出すのではなく隙をみて海岸の方へと出かけていたのだ。

「海で何をしていたんだ? 答えろ! ルーカス!」

「ルーカス、ルーカス、そう言えば俺ちゃんが始末した奴が、そんな名前だったかもねぇ~」

 突然、叔父の口調が変わった。
 気さくで適当なことばかり言っていた男が、とうとう世間との摩擦に耐えきれず壊れた。
 一瞬、そう疑ったが同時にコイツを信じたことは一度もないという俺自身の気持ちに気づいてしまった。

「フフッ……まだわk「ラードか! アンタ、海で出会ったドミネーションズだろっ!?」

 ルーカスに偽装した顔が半分解けかけたままの状態で、正解を言い当ててしまった。
 俺たちの間で気不味い空気が流れた。

「ち……違うわい!」何を血迷ったのか? ラードは全否定してきた。
 もはや、誰の顔なのかも分からない状態になっている。
 奴の顔をコーティングしているのは、飴のように伸びる半練り状の物体だった。
 間違いない奴はワックスマスターだ!

「違う! 俺ちゃんのスキルブック、ポップンパーティーはあめを操る能力だってのー!」

「ポメオ(仮)! そいつは本物のルーカスじゃないのナラ! 我々はスキルブックを捨てて冒険者をやめた。現地人ネイティアだからな、スキルを持っているはずがないのだ!!」

 離れた場所からクロスケが叫んでいた。
 見ると、ヨミコや村の住民とともに、ならず者たちに包囲されている。
 ラードの手下であろう悪漢たちが武器を片手に密林の奥からゾロゾロと湧き出してくる。
 いくら、こちらに魔王が二人いようとも状況は圧倒的に不利だった。

 人質を取られては安易に抵抗するのはかえって危険だ。
 それにランサーも含め村人たちはスキルブックを所持していない。
 およそ三十人程度の村人対し、倍以上のならず者がこの場に集結している。

 ラードの統率力が無駄に高いせいで、活路が見いだせない。
 張り詰めた空気に耐え兼ねて狼狽える村人が出てきた。
 家族同士、互いを護るように身を寄せ合い怯えている。

 どうする? 俺がラード抑えているうちにササブリに手下どもを一掃してもらうべきなのか?
 いや、加減が難しい……全滅させるのなら一瞬で終わるが、村人だけ救えと指示すればササブリでも、すぐには動けない。
 どうしても確認した上での行動しないといけない。

「そんな心配そうな顔すんなってボーイ。俺ちゃんたちの目的は魔王の回収と、そこにいる聖女だ! なんせ、あのヘルシィ兄を倒した女だ。結構な額の懸賞金がかかっているから、な! つーわけで、大人しく捕まえられれば現地人には手を出さないと約束しよう」

「へっ? ヘルシィを倒したの俺だけど?」

「ん? んん??」

 改ざんされた事実に、俺とラードは顔を見合わせたまま固まった。
 それはそうだろう。もう一人、賞金首が増えるかもしれないとなれば慎重にもなる。
 シンギュラの取り決めでは、無実を人間を賞金首として捕まえるのはタブー視されている。
 どういう訳か、ラードの口ぶりからして俺は手配書に乗っていないようだ。 
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