問答無用!でランキングブレイカー!! ースキル、グラビアこそ最強最高ですー

心絵マシテ

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全てを知る者

105話 黒い居城

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「シャッァ――!! ジェットエンジン全開でいくぜ!」

 俺たちを乗せ、ファルコンXが地の底から浮上する。
 機体の昇降台はネジ山状となっているセンターシャフトによって上下する。
 なので、俺たちは絶えず回転し続ければならない。
 痔主に悪い振動と、絶妙な酔いが回ってくる。
 さらにキツイのは回転寿司を想起した途端、ヨシユキの顔を思い浮かべてしまったことだ。

 夕焼けに染まる空の下。
 清閑な墓地をバックグランドに、新緑の衣を羽織るスタジアム球場が黄昏ていた。
 ひっそりと佇む、この巨大な建造物を誰が建設しようと提案したのか知らんが、里の娯楽としては規模が逝きすぎている。
 土地ばかりあって、設備はショボイ。
 スポーツグランドとして盛り上げようとしていたみたいだが、球場である限りどう考えてもテニスや卓球をプレイするのには不向きだ。
 せいぜいホームレスが根城に使うぐらいだろう。
 使用頻度が低いせいで、辺りは一帯雑草にまみれていた。
 手入れをする手間から、誰も管理したがない物件の証だ。

 時の流れとともに人々の記憶から忘れ去られしまった球場に希望の翼が突如として舞い込んだ。
 ネクストバッターサークル辺りに出現したファルコンXがバッターボックスに入る。
 テイクオフまでの短い待機時間、と書かれた危うい看板のせいで一瞬、錯覚に陥る。
 スタジアムではなく酪農所かと疑念を抱くが、牛が放し飼いにされているだけで、中は至って普通の廃墟だ。

 飼葉置き場となったピッチャーマウンドが弓なりに上昇しカタパルトデッキに変わった。
 何でこんな場所からランディングしなければいけないのか?
 平常時の俺なら確実にモヤるだろうが、この時ばかりはジョイスティックの感触に冷めやらぬ興奮を覚えていた。
 もはや細かいことは気にもせず、ただ一心に大空に抱かれたいと願う。

「ゴメン、ボールはトモダチでもお前はトモダチじゃないや……」

 願った瞬間、空から拒絶の文言が聞こえたようなきがした……それと同時に雲行きも怪しくなってきた。
 暗雲が立ち込め遠方でカミナリが鳴り響く。
 まさか……俺の願いを聞き入れてくれる。ほっそ長ぁ~い奴が出てくるというのか……。

 しょうもない期待を機体が打ち消してくれる。
 セミオートで可動していたファルコンXは車輪でカタパルトを蹴り上げ、空へと急浮上した。
 このまま進めば、酷い雨脚に直面する。
 外にいるササブリがずぶ濡れになってしまう……なんてことはまかり間違ってもない。
 アイツの完全防水機能は、並外れている。
 よくよく考えれば、デスブリンガーは嵐をつかさどる魔王なのだから平気なのは当然だ。

 コンコンコン! ササブリがキャノピーをノックしてきた……というか、素手でこじ開けようとしている。

「馬鹿馬鹿あぁぁぁ――――! 止めろ!! 俺が風で飛ばされちまう」

「なぬ? そうなのか。ところで、この船はどこに向かっておるのじゃ? 飛び立ったはよいものの、行き先が分からないままでは、気になってしまうぞ」

 行き先……斬新なフレーズに俺は言葉を失った。
 空を飛ぶ乗り物は、天空が目的地であり現段階ではすでに達成されている。
 あとは、そこいらを飛び回り、適当な場所で着陸するのが王道だ。

 これ以上、何を求めるというのだ? この、いやしん坊は……。

「そのズボンのチャックが閉まらないような顔は、何も考えていなかった時の顔だな」

「いや、どういう顔!?」

「マイトよ。さきほど、マーダの手下の話をしていたな」

「どちらか言えば、はい」

「手下が、この里にいるということは奴も近くにおる。感じるぞ! この空の向こうから彼奴の波動が伝わってくる!」

 魔王は雨雲を睨みつけるように眺めていた。
 その視線の先端には敵の大将マーダの居城があると見て間違いないだろう。

 何事もなくファルコンに座っているササブリだが、マッハによる推進力でさえもコイツの頑強さの前では歯が立たない。自慢の長いツインテールでさえもゆったりと風になびいている程度だ。
 魔王の周囲だけ鈍行列車並みの速度レベルだ……

「これから、マーダの城へと突入するぞ。準備はよいか? できているな!? では行こうぞ!」

「そういうの独り善がりって言うんだけどなぁ~」

「ぬかせ、主もかつての仲間を説得して魔から救い出そうとしているではないか!?」

「あばっばばばあばあ、説得ぅぅう~」
 枯葉てた大地の中で懸命に咲き誇る一輪の花を発見した時のような感動が俺の心に押し寄せてくる。
 まったくもってサトランの処遇など気にも留めていなかった。
 捕まえたら里の連中に引き渡してやろうとしか考えていなかった。

 あんなハズレメタルを、こともあろうか魔王が気にかけていた……。
 今の言葉をサトランの奴が聞いたら、荒獅子のごとく狂喜乱舞し、テクノ―――昇天しまうだろう。 
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