私、推しVに認知してもらう為にロボに乗って戦います!

TEKKON

文字の大きさ
9 / 28

第8話 柔よく剛を制すって奴ね!

 こうしてバトルが開始された。ルールは以下の通りである。

-----------
・バトル時間は10分1ラウンド。
・ダウンは一発KO、行動不能でもKO。
・場外10カウントで失格。
・10分経過しても勝敗が決しない場合は、3人のレフリーによる判定で決まる。
-----------

『先手必勝! うおおおお!』と聞こえそうな勢いで、激打丸は腕を振り回しながら一直線に追放天使に突っ込んでくる。

 それを見て知奈は当初の予定通りに車が積み上がった障害エリアに身を隠し、右手の親指と中指をマウスのダブルクリックのようにリズム良く2回タッチする。
 するとカチッと天使の右手から何かの作動音が聞こえてきた。

 そこに山本からの無線が入る。

「奴は体当たりして一気に車を崩す筈です。こちらからの指示に合わせて離れてください」
「了解」

 チームとパイロットは、このように逐次やり取りしながら戦況や戦術を確認する。

「来ます。右にかわして!」と内海からの指示を聞き、激打丸が車タワーにぶつかる直前に知奈はヒョイっとかわしていく。

 当然、激打丸は急に止まれる訳もなく車タワーにぶつかり、一瞬動きが止まってしまう。
 その隙に後ろに回り込み、今度は右手でデコピンするような動きを見せて、天使の手の平を激打丸の背中に向ける。

「えーと。後ろのカメラはここか。……当たれっ!」

 そのまま指をデコピンさせると、手の平から何かの弾が発射された。着弾すると弾は破裂して、中に入っている特殊ペイントが広範囲に飛び散った。

 これで、後方のセンサーカメラは使用不能になった。

-----------------
 追放天使の操作方法は基本的にパワードスーツと同じ「人機一体タイプ」である。
 全身トラッキングや各種センサー、ワイヤーによる複合的な情報も合わせる事により、人間の動きに忠実に反応する事が出来るのだ。

 更に追放天使の特徴的な機能として【ハンドクリック】と呼ばれるモノがある。
 基本指もモーションキャプチャーの対象だが、特有のパターンのみ反映させず、その代わり様々なスイッチとして機能させている。
 先程の親指と中指ダブルクリックはペイント弾の発射モード起動。デコピンは実際の発射だ。

 こういった特殊な入力方法を導入する事により、操作レバーや外部スイッチを使わずとも、様々な事が出来るようになっていた。
------------------

 その光景を見て観客は「おおっ!」と歓声を上げ、知奈はそのまま別の障害物へ身を隠した。
 隠れた所は相手チームからも見えない死角。更にペイント弾に気を取られた隙の移動だ。おそらく何処にいるかわからないだろう。

「よし、相手は天使をロストしてるな。おそらくアレを使ってくるぞ。こちらも準備しようか。次で決めるぞ」

 渡辺会長の無線を聞いた知奈は、深く腰を落として体勢を取る。
 激打丸は追報天使の隠れている場所を上から探そうと、搭載しているドローンを飛ばしたその瞬間だった。

「行けっ!」
「はいっ!」

 知奈は両手をノブを回すように2回動かすと、両足に付いていたローラーが高速に回り出し、それに合わせてバランスを取る為のスタビライザーが羽根のように大きく開いた。
 そして、そのまま猛烈なダッシュで追放天使は一気に激打丸に突っ込んでいく。

「は、速い!」
「まるでローラーダッシュだ!」
「かっけえ!」
「うおおおおっ!」

 まるでアニメの1シーンのような光景に、観客の興奮は最高潮になっている。
 知奈は激打丸に接近して、ぶつかる直前にジャンプしてそのまま飛びつき、パイロット用のバーを掴み完全に取りつく事に成功した。

「パイロットが本体の操縦を止めてドローンの操縦するなんて自殺行為。本当に脳筋のおバカさんだ」

 その光景を見て渡辺会長はほくそ笑んだ。

 追放天使はは激打丸のコックピットまで辿り着くと、ペイント弾を有視界用のガラスやフロントカメラに叩き込む。これにより、激打丸は完全に「眼」を潰されてしまった。
 焦った激打丸は天使を振りほどこうと左右に動くが、隣にある柱にぶつかってしまう。

 「そのまま決める!」

 知奈は小指と親指をダブルクリックしてシステムを起動させ、同じく小指デコピンで今度はワイヤーを発射した。
 ワイヤーは激打丸の肩に引っかかり、知奈はそれを確認した後に激打丸から離れる。

 そしてそのまま柱にワイヤーを巻き付け、再度ダブルクリックしてワイヤーを手から切断した。

「このワイヤーはコンテナも吊るせる超高剛性ワイヤー。専用工具でも無い限り普通のロボには切れないよ?」

 追放天使はワイヤーを巧みに使いながら激打丸を縛っていく。
 その光景を見ながら山本は満面の笑みを浮かべた。


……
………

 そして数十秒後、激打丸は完全に動きが取れなくなり、その横で知奈は「柔よく剛を制すって奴ね。イェイッ!」と天使のVサインを観客に見せた。

「まさかだろ……」
「ゲームかよ」
「捕縛オチなんてあるのかよ!?」
「俺達は何を見せられたんだ」
「すっげええぇ!」

 興奮を見せる観客と対照的に、大徳寺工業は茫然自失だ。
 そしてその空気を破るかのように終了のサイレンが鳴り響く。 
 歓声に溢れる会場とロボットアニメ同好会。

――こうして追放天使のデビュー戦は、完勝という形で幕を閉じた。
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

マカロニ
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。