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第9話 決めたわ。あなたは今から私のライバルよ!
「うわっはっはっは!」
「はっはっは!」
会長と店長の笑い声が店内に響く。 追放天使のデビュー戦より数日が過ぎ、ここエンジェルハイロゥは大賑わいだ。
理由は勿論先日のねいねである。
「いやーここまで大成功するとは思ってなかったよ! ねいねのスポンサーになってよかった!」
「言ったでしょ店長。ねいねちゃんはとっても凄いんだから!」
「ローラーダッシュの切り抜き動画がバズったのが大きかった! まるでアニメの1シーンだった」
「その後の肉弾戦なんてロボバト初でしょう。とてもセンセーショナルでしたね!」
周りが盛り上がる中、山本だけが冷静な判断をしていた。
「今回、理想的な対戦相手で良かったです。これで最低限の目標は達成出来ましたよ」
一見、謙遜にも聞こえるが、実際の所その通りなのだ。追放天使はルールと主流派の隙をついた言わば"一発ネタ"みたいなものだ。
そして、今大会のルールでは大会途中での改造は認められていない。それが追放天使に大きなアドバンテージになっている。
もし、改造可能だったら対策を取られて2回戦で敗北必至だったであろう。それくらい相性が重要になるロボットが追放天使なのだ。
「それでは2回戦は勝てないと?」
「そうは言っていませんが、次は少し厄介です」
山本は店長の質問に答える。次の相手も想定内ではあるが規格外。誇張抜きに"モンスターハンター"をしないといけない相手なのだ。
「やはり勝利の鍵を握るのはねいねです。追放天使はパイロット次第でどこまでも強くなれるのです」
「そういえばねいねちゃんは?」
みぅが店内を見渡すと、知奈はカウンターの端でスマホ見ながらニヤニヤしていた。
「あ。まただ。」
先日のバトルが放映されてから、知奈はずっとこの調子なのだ。
* * *
「ねぇ、みぅ聞いて聞いて! ほづみ君が私を”可愛い”と言ってくれたの!」
今まで見た事無いようなニヤケ顔をしながら知奈はみぅに話しかける。
どうやら昨夜の配信でロボバトの話題になったらしい。
『あの開会式パフォーマンスは正直少し引いたけど、実際のバトルを見て興奮しちゃったよ!』
『口だけではなく実際に打ち勝ってくれたし、あんな可愛い女の子が縦横無尽に戦うなんてアニメみたいだった。本当に最高だった。早く第二回戦も見たいな!』
とか言ってたらしく、それから知奈は何度もそのシーンを見返している。
「ほづみ君。ほづみ君。私、次も頑張るから! どんな相手でも勝ってみせるから!」
(……まぁ、モチベーションが上がるのは良い事だし、楽しそうなねいねちゃんを見ると私も嬉しい)
みぅはそう思い、知奈に話しかける。
「うん。次も頑張ってね。私も応援するから!」
「ありがとうみぅ!私、頑張る!」
『おーっ!』
………
……
…
そして今に至る。
(推しにそう言われて幸せなのは良くわかるけど、仕事にも支障出てるしそろそろ落ち着いて欲しいな……)
ついため息をついてしまうみぅだが、その瞬間カランカランッと入口から心地良い音が聞こえてきた。
「はい。おかえりなさ、い……っ!?」
みぅは入ってきた客を見た瞬間、思わず大声を出してしまう。
「ん?一体なんだ……おぉっ!」
近くにいた客も同様に驚いている。
「ふぅん。この安っぽい雰囲気といい何もかわっておりませんね」
見るからに高級で、着こなしの難しいロリータドレスをサラッと着こなす女性はすぐに店中の注目になった。
「い、伊集院まりぃ!?」
キッチンから出てきた店長はその女性を見ると大声をあげた。
「あら。お久しぶりね店長さん」
「な、何しに来たんだお前……!」
どうやら昔に何かあったのだろうか。店長は明らかに嫌そうな顔を見せている。そして、もう一人女性に反応した男がいた。
「おや、珍しい人が来ましたね。このお店は大嫌いじゃなかったのですか?」
「げっ。山本までいやがりましたか。来るタイミング間違えたかしら」
いきなり口が悪い。何か色々いわくつきな女性らしい。
みぅは事情を知っている店長に聞いた。
「店長、この人どういう人なんですか?」
「あぁ。こいつは伊集院まりぃ。ここに1日だけ体験入店した疫病神だ」
「あらご挨拶ねー。私がお店で働くという事がどれだけ光栄な事かわからないのですか?」
名家である伊集院家の末っ子であり、山本に負けず劣らずの「御令嬢」らしい。
「で、最近オープンさせたメイドバーでしたっけ? 評判らしいけど売れ行きはどうですか?」
「おかげさまで繁盛してるわ。こんな店なんて人材から設備、備品まで全てを1流で揃えた私の店の敵じゃない……筈だったわ」
わずかに表情を曇らせる伊集院まりぃ。
「だった?」
山本は一瞬だけ見せた彼女の珍しい表情に少し驚いていた。
「……ところでっ!あの娘はどこにいるのかしら?」
「あの娘とは?」
「あの娘はあの娘よ!あの追放天使とかいう変な名前の!」
「ねいねちゃん? ねいねちゃんは向こうに……」
みぅが指さした先には、相変わらずスマホ見てニヤニヤしている知奈がいた。
「…………へっ?」
まりぃはそのねいねの姿を見て呆然としていた。
「まさかこんなちんちくりんがあの天使なの!?」
まりぃは苛ついた感じでカウンターの中にズカズカと入り込み、知奈の前に立ち塞がった。
知奈がその気配に気づいて顔を上げると、凄い美人が目の前に立っている。
(い、一体何がどうなってるの!?)
知奈はその状況が掴めないで戸惑っていた。
「は……はい?」
「はじめまして天使さん。私は伊集院まりぃ。あなたに会いにわざわざ来てあげたわ」
「い、いえ私は天使じゃなくて……」
「この前の試合を見たけど中々やるじゃない」
ダメだこの人、全然人の話を聞かない渡辺さんタイプだ。
「しかし私に挑もうとは10年早いわね」
「……」
「一つ聞いていいかしら? あなたは何故あんなロボに乗って戦うの?」
「え……? それはロボバト好きの推しに私を見て貰いたくて……」
「は?何言っているの??」
まりぃはその発言を聞いて更に険しい顔になった。
「あなたはスターになりたくないの!? あんな凄いパフォーマンスをしてるのに、そんなちっぽけな夢でいいの!?」
「…………」
駄目だ。何言ってるから全然わからない。また変な事に巻き込まれている。
「決めたわ。あなたは今から私のライバルよ!」
勝手にライバル認定されても困るんですが……
「ちょっとばかし可愛い顔しているからって、私が本気になったらあなたなんて雑魚よ!」
「可愛い…… 可愛い!?」
(駄目だ。今その単語聞くと表情がニヘラと緩んでしまう……!)
ニ ヘ ラ
「な、何よそのふざけた表情! 許せない! 目に物見せてあげるわ! 覚えておきなさいよ!」
まりぃは怒りながら店から出て行ってしまった。
(……何なの?)
「あーあ。厄介な奴に目をつけられちゃいましたね」
山本は苦笑いしながらねいねに言った。
「え? 私は何もしてませんが!?」
「彼女は性格以外は凄い人ですからねぇ。きっと何かしかけてくると思いますよ?」
えぇぇ……
「良き。全く良き! この燃える展開もロマン!」
渡辺会長も横で勝手に闘志を燃やしている。
「な、何でこうなるのー!!!」
エンジェル・ハイロゥの店内に知奈の声が響き渡った。
「はっはっは!」
会長と店長の笑い声が店内に響く。 追放天使のデビュー戦より数日が過ぎ、ここエンジェルハイロゥは大賑わいだ。
理由は勿論先日のねいねである。
「いやーここまで大成功するとは思ってなかったよ! ねいねのスポンサーになってよかった!」
「言ったでしょ店長。ねいねちゃんはとっても凄いんだから!」
「ローラーダッシュの切り抜き動画がバズったのが大きかった! まるでアニメの1シーンだった」
「その後の肉弾戦なんてロボバト初でしょう。とてもセンセーショナルでしたね!」
周りが盛り上がる中、山本だけが冷静な判断をしていた。
「今回、理想的な対戦相手で良かったです。これで最低限の目標は達成出来ましたよ」
一見、謙遜にも聞こえるが、実際の所その通りなのだ。追放天使はルールと主流派の隙をついた言わば"一発ネタ"みたいなものだ。
そして、今大会のルールでは大会途中での改造は認められていない。それが追放天使に大きなアドバンテージになっている。
もし、改造可能だったら対策を取られて2回戦で敗北必至だったであろう。それくらい相性が重要になるロボットが追放天使なのだ。
「それでは2回戦は勝てないと?」
「そうは言っていませんが、次は少し厄介です」
山本は店長の質問に答える。次の相手も想定内ではあるが規格外。誇張抜きに"モンスターハンター"をしないといけない相手なのだ。
「やはり勝利の鍵を握るのはねいねです。追放天使はパイロット次第でどこまでも強くなれるのです」
「そういえばねいねちゃんは?」
みぅが店内を見渡すと、知奈はカウンターの端でスマホ見ながらニヤニヤしていた。
「あ。まただ。」
先日のバトルが放映されてから、知奈はずっとこの調子なのだ。
* * *
「ねぇ、みぅ聞いて聞いて! ほづみ君が私を”可愛い”と言ってくれたの!」
今まで見た事無いようなニヤケ顔をしながら知奈はみぅに話しかける。
どうやら昨夜の配信でロボバトの話題になったらしい。
『あの開会式パフォーマンスは正直少し引いたけど、実際のバトルを見て興奮しちゃったよ!』
『口だけではなく実際に打ち勝ってくれたし、あんな可愛い女の子が縦横無尽に戦うなんてアニメみたいだった。本当に最高だった。早く第二回戦も見たいな!』
とか言ってたらしく、それから知奈は何度もそのシーンを見返している。
「ほづみ君。ほづみ君。私、次も頑張るから! どんな相手でも勝ってみせるから!」
(……まぁ、モチベーションが上がるのは良い事だし、楽しそうなねいねちゃんを見ると私も嬉しい)
みぅはそう思い、知奈に話しかける。
「うん。次も頑張ってね。私も応援するから!」
「ありがとうみぅ!私、頑張る!」
『おーっ!』
………
……
…
そして今に至る。
(推しにそう言われて幸せなのは良くわかるけど、仕事にも支障出てるしそろそろ落ち着いて欲しいな……)
ついため息をついてしまうみぅだが、その瞬間カランカランッと入口から心地良い音が聞こえてきた。
「はい。おかえりなさ、い……っ!?」
みぅは入ってきた客を見た瞬間、思わず大声を出してしまう。
「ん?一体なんだ……おぉっ!」
近くにいた客も同様に驚いている。
「ふぅん。この安っぽい雰囲気といい何もかわっておりませんね」
見るからに高級で、着こなしの難しいロリータドレスをサラッと着こなす女性はすぐに店中の注目になった。
「い、伊集院まりぃ!?」
キッチンから出てきた店長はその女性を見ると大声をあげた。
「あら。お久しぶりね店長さん」
「な、何しに来たんだお前……!」
どうやら昔に何かあったのだろうか。店長は明らかに嫌そうな顔を見せている。そして、もう一人女性に反応した男がいた。
「おや、珍しい人が来ましたね。このお店は大嫌いじゃなかったのですか?」
「げっ。山本までいやがりましたか。来るタイミング間違えたかしら」
いきなり口が悪い。何か色々いわくつきな女性らしい。
みぅは事情を知っている店長に聞いた。
「店長、この人どういう人なんですか?」
「あぁ。こいつは伊集院まりぃ。ここに1日だけ体験入店した疫病神だ」
「あらご挨拶ねー。私がお店で働くという事がどれだけ光栄な事かわからないのですか?」
名家である伊集院家の末っ子であり、山本に負けず劣らずの「御令嬢」らしい。
「で、最近オープンさせたメイドバーでしたっけ? 評判らしいけど売れ行きはどうですか?」
「おかげさまで繁盛してるわ。こんな店なんて人材から設備、備品まで全てを1流で揃えた私の店の敵じゃない……筈だったわ」
わずかに表情を曇らせる伊集院まりぃ。
「だった?」
山本は一瞬だけ見せた彼女の珍しい表情に少し驚いていた。
「……ところでっ!あの娘はどこにいるのかしら?」
「あの娘とは?」
「あの娘はあの娘よ!あの追放天使とかいう変な名前の!」
「ねいねちゃん? ねいねちゃんは向こうに……」
みぅが指さした先には、相変わらずスマホ見てニヤニヤしている知奈がいた。
「…………へっ?」
まりぃはそのねいねの姿を見て呆然としていた。
「まさかこんなちんちくりんがあの天使なの!?」
まりぃは苛ついた感じでカウンターの中にズカズカと入り込み、知奈の前に立ち塞がった。
知奈がその気配に気づいて顔を上げると、凄い美人が目の前に立っている。
(い、一体何がどうなってるの!?)
知奈はその状況が掴めないで戸惑っていた。
「は……はい?」
「はじめまして天使さん。私は伊集院まりぃ。あなたに会いにわざわざ来てあげたわ」
「い、いえ私は天使じゃなくて……」
「この前の試合を見たけど中々やるじゃない」
ダメだこの人、全然人の話を聞かない渡辺さんタイプだ。
「しかし私に挑もうとは10年早いわね」
「……」
「一つ聞いていいかしら? あなたは何故あんなロボに乗って戦うの?」
「え……? それはロボバト好きの推しに私を見て貰いたくて……」
「は?何言っているの??」
まりぃはその発言を聞いて更に険しい顔になった。
「あなたはスターになりたくないの!? あんな凄いパフォーマンスをしてるのに、そんなちっぽけな夢でいいの!?」
「…………」
駄目だ。何言ってるから全然わからない。また変な事に巻き込まれている。
「決めたわ。あなたは今から私のライバルよ!」
勝手にライバル認定されても困るんですが……
「ちょっとばかし可愛い顔しているからって、私が本気になったらあなたなんて雑魚よ!」
「可愛い…… 可愛い!?」
(駄目だ。今その単語聞くと表情がニヘラと緩んでしまう……!)
ニ ヘ ラ
「な、何よそのふざけた表情! 許せない! 目に物見せてあげるわ! 覚えておきなさいよ!」
まりぃは怒りながら店から出て行ってしまった。
(……何なの?)
「あーあ。厄介な奴に目をつけられちゃいましたね」
山本は苦笑いしながらねいねに言った。
「え? 私は何もしてませんが!?」
「彼女は性格以外は凄い人ですからねぇ。きっと何かしかけてくると思いますよ?」
えぇぇ……
「良き。全く良き! この燃える展開もロマン!」
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