私、推しVに認知してもらう為にロボに乗って戦います!

TEKKON

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第12話 行ってらっしゃい!もう戻ってこないでね!

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ブオオオオオォ!

「このっ……!」

 知奈は突っ込んでくるロボをギリギリまで引きつけ、ぺインド弾を発射するが、コックピットの真ん中に当てられない。視界を完全に奪えたらかなり有利になるが、相手のスピードが速すぎて接近出来ないのだ。

 準決勝第一試合が始まって5分。
 しかし、追放天使は今までの試合とは違い、攻めあぐねて時間を無駄に消費していた。
 準決勝の相手は老舗重機メーカーの小枡製作所。通称「コマス」
 そして彼らが持ち込んできたのは【DAN-GAN ZZ】という比較的小柄なロボだ。

 名前の通りの直線番長で、2本の腕はあるものの実用性に乏しい。
 ”ブルドーザーのドラッグレース仕様”というのが一番適切な例えかもしれない。

 DAN-GANは正面からぶつかってて倒したり足をすくったりして一気に勝負を決めてくる。前のヤーマン同様、重機タイプは厄介なのだ。
 単純かつ単調な攻撃だが、それだけに相手のペースに飲み込まれたら危険な事になってしまう。
 旋回性や制動力、加速こそ悪いものの最高速度自体は追放天使を上回っていた。

 対する追放天使の立ち位置は前回が”モンスターハンター”なら今回は”闘牛士”といえよう。

「残りペイント弾は?」
「右腕弾切れ、左腕4発!」

 その報告を聞いて山本は決断する。

「……そろそろ頃合いですね。始めましょう。例のポイントまで行けますか?」
「了解」

 追放天使は少しずつ会場の端に移動し、DAN-GANは狙いをつけるようにゆっくり旋回する。

「さぁ、ついてきてね……!」

 知奈は腰を落としてローラーダッシュの姿勢を取ろうとしたが、バランスを崩したか尻餅をついてしまう。

「しまった!」

 それを見たDAN-GANはチャンスと見て、エンジン全開で一直線に突っ込んでくる。

 急速に接近する2機のロボットを見て、予想外の展開に会場は騒めいている。
 しかし、その光景を渡辺会長は楽しそうに見ていた。

「クククッ……食いついた!」

「今!ワイヤー!ウィンチ!」
「はいっ!」

 知奈は柱にワイヤーを打ち込んだ。
 そしてワイヤーが引っかかった瞬間ウインチを使い、高速移動しつつ即座に立ち上がる事に成功する。

「!?」

 最高速までスピードの乗ったDAN-GANは急旋回も急制動も出来やしない。
 天使にかわされた闘牛はそのまま柱の間を突っ切ってしまう。

 その瞬間、会場からブザー音が鳴り響く。
 このブザーは場外に出た時の警告音。10カウントでエリア内に戻らないと負けになってしまう。

「行ってらっしゃい!もう戻ってこないでね!」
「しまった! 奴らこれが狙いか!」

 追放天使はローラーダッシュで広範囲の柱にワイヤーを打ち込み、ワイヤーを巻きつけてエリア内に入れないようにする。これは同好会チームが当初から考えていたDAN-GAN対策の一つである。

 そう。時間切れで失格させる作戦だ。

「急げええぇっ!」

 焦ったDAN-GANはその場で旋回して近くのワイヤーを切ろうとするが、スピードが足りず弾かれてしまう。
 そして、もうDAN-GANには2回目の切断チャレンジをする時間は残っていない。

「やはり相手はミスりました。スピードを殺さず大きく旋回すれば切断のワンチャンあったのですがねぇ」

 山本は笑いながら決着がついた事を確信した。

 そのまま10カウントとなり試合終了のサイレンが鳴り響く。
 会場は大歓声で包まれた。

「ふぅ~っ」

 知奈は安堵で胸をなでおろす。
 勝てたとはいえ、まともに攻める事が出来ず、もし時間切れで判定になっていたら危なかっただろう。

 (他に戦い方はないものかしら……)

 そう考えてしまう知奈だが、それでも無事に勝つ事が出来たのだから今はこれで良しとしておこう。

…………

 追放天使から降りてひと休みしている所に、インタビュアーや記者がやってきた。

「ねいねさん。決勝進出おめでとうございます!」
「ありがとうございます」
「過去試合と比べて苦戦していたようですが、相手のロボはどうでしたか?」
「とても迫力があって、闘牛士になった気分で戦いました」
「なるほど、闘牛士は良い例えですね!」

 知奈はインターハイの経験もあり、3度目ともなるとリラックスして質問に答えていく。

 しかし、それも途中までだった。

「それではカメラを通してほづみさんに一言!」
「イィッ!?」

 予想外の単語に知奈は思わず変な声をだしてしまう。

「あ、いえ……ははは」

 困ったような愛想笑いを見せて、何とかはぐらかす知奈。
 
 (まさかあの声がマイクで拾われていたなんて……)

 後日それに気づいた時は夜中に大声をだして親に怒られてしまった。
 案の定、ネットでは「ほづみとは誰だ!」と一部の特定厨が動いていたらしい。
 当然ほづみ・パトラクシェは候補の一人に入ってしまったものの、とりあえず未確定という事になっている。
 
 (このチャンスにファンアピールしたい気持ちもあるけれど、今はこのまま戦う私を見てもらうだけでいい……)

 そう考えている知奈であった。

 * * *

 記者達も去り、ようやく自由時間になった。

「それじゃ、第二試合の観戦にいくぞ!」
「あ、そっか。今回は見れるんだね」

 今までの試合は後半出場だった事もあり、直接見る事は出来なかったのだ。

「勝った方が我々の敵となるのだ、しっかり2機の動きを見ておけよ」
「は、はい!」

 知奈は思わず少し声が上ずってしまった。今まではほぼ動画でしか見ていなかったが、直接次戦相手の観戦をするのは流石に緊張してしまう。

…………

 現在、会場ではエキシビションマッチを行っている。
 大徳寺工業とヤーマンが戦っているが、予想通り悲惨な事になっていた。

「ぅぁ……」

 と、みぅは思わず声を出していた。
 必殺の大徳寺デンプシーロールを繰り出そうとしても、リーチがあまりにも違い過ぎて中には入れず、クレブスの右フック一発で吹っ飛ばされる。
 スピードも特別速くはない激打丸3号に打つ手は無い。このまま一方的に殴られて終わるか、時間切れで判定負けしか残されていない。

「見ろ。あれが昨年までのロボバトだ。忌々しい!」

 渡辺会長は吐き捨てるように言い、知奈はなるほどと思った。
 創意工夫が無い力押しの戦いばっかなのは”ワクワク感”が無いのだと気づいたからだ。

 そう考えながら歩いていると前から一人のメイドが歩いてきた。

「あっ」

「ねいね様。決勝進出おめでとうございます」

「フィフネルガールズじゃないか。いいのか? こんな所で油を売って」

 メイド長は会長の言葉には反応せず、そのまま知奈に伝える。

「まりぃ様がねいね様をお呼びです。よろしければお越しいただけますか?」
「へ?」

「試合まで時間もあるしいいじゃないか。折角だし色々敵情視察するといい」

「は、はぁ。なら行ってきます。みぅ、また後でね」
「うん! ねいねちゃん行ってらっしゃい」

 知奈とメイドは、そのままフィフネルチームのピットに向かって歩いていった。
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