私、推しVに認知してもらう為にロボに乗って戦います!

TEKKON

文字の大きさ
14 / 28

第13話 終わったら二人で乾杯しましょ!

しおりを挟む
 フィフネルチームのピットに向かって歩いていく二人を見ながらみぅは思う。

 (あの人、そこまでねいねちゃんを……)

…………

 関係者しか入れないチーム待機場に入る二人。

「うわっ。何よこれ」

 知奈はフィフネルピット前の人だかりを見て驚く。

「ピット作業は完了しておりますので、只今一般開放いたしております」
「えっ。マジ!?」

 (私達チームは試合直前までドタバタしているのに……)

 と知奈は思った。会場にもフィフネル出店しているし、一体どれだけの人を動員してるのだろうか。
 そのままピットの中に入り、人が集まっている所に”それ”は鎮座していた。

「あ。あれが……!」
「はい。私達のロボ、パラスアテナでございます」

――パラスアテナ

 知恵、芸術、工芸、戦略を司るギリシア神話の女神。その名に相応しい機体がそこにあった。

「綺麗……近くで見ていいですか?」
「まりぃ様から問題無いと仰せつかっております。どうぞご自由にご覧くださいませ」

 知奈は小走りでパラスアテナの近づき、美しさに目を奪われる。

「本当に凄い。芸術品みたいだわ」

 前に見たイメージCGとは全く違う。近づけば近づく程、この機体の凄さを思い知らされる。

 ルールで途中でのロボの改造や加工は許されていない。だから形状自体は前チームの”グリフォン”とまったく変わっていない筈なのに、カラーリングと塗装だけで全く違ったロボになっている。
 特に塗装は素人の知奈でも違いがわかるレベルだ。まるで陶器や工芸品のような色の深みがある。これは接触や格闘をする前提の物にする塗装では決して無い。それでも構わずしてくるのがフィフネルなのだろう。

 本当なら武装とか機能的なモノを調べないといけない筈なのに、高貴な女神の前ではその事さえ忘れさせてしまう。
 少なくとも外見では歴代最高のロボだ。追放天使なんて足元にも及ばない。

「……」

「ねいね様?もうよろしいでしょうか」
「は、はいっ!」
「まりぃ様は向こうの部屋でお待ちです」
 
 賑やかなピットから少し離れた一角の部屋に案内されると、そこには持ち込みしたであろう高級な椅子に座り、紅茶を飲んでいる伊集院まりぃがいた。

「よく来てくれたわ。ありがとう天使さん」
「い、いえ……」

 知奈は少し戸惑っていた。
 いきなり呼ばれた事もあるが、それよりこの静かで穏やかな空気感にである。
 少なくとも今からバトルを始める雰囲気ではない。

「決勝進出おめでとう。勝利のお祝いにシャンパンでも飲む? 飲めるでしょ?」
「いえ。すみませんが……」
「あら残念。かなり良い物を持ってきたのに」

「それよりまりぃさんと同じ紅茶が飲みたいですね。とても美味しそうです」

 それを聞いて少し嬉しくなったのか。まりぃは表情を緩めた。

「ええ。この紅茶も美味しいわよ」


……
………

「天使さん私の店で働く気はない? 給料はあんな所とは比べ物にならないわよ」
「いえ。私には務まらないし、多分気疲れで次の日動けなくなっちゃいますよぉ」

 それから10分くらい経過しただろうか、二人はロボバトとは関係のない普通の雑談をしていた。ここの雰囲気が思いのほか気持ちが良く、何故私はここに呼ばれたのかという疑問さえ、どうでも良いとさえ思い始めていた。

 しかし、不意にまりぃは知奈に問いかけた。

「ところで、天使さんは私の次の相手の事知ってる?」
「え? 一応画像は見たし、他の人から”やばい”とは聞いてるけれど、詳しくは……」
「そう。私は先週詳しく調べてみたんだけど……」

 まりぃは真剣な目で知奈をジッと見ながら言った。

「アレは”化け物”です」
「化け物……」

「アレは今までのロボバトとは全く違った存在。チートと言ってもよいわ。あなた達とは違うタイプのね」

 まりぃは知奈から目をそらし、話し続ける。

「勿論私は勝つつもりだし、勝てない相手では無いと思ってる」
「……」

「しかし万が一、いえ億が一負けるような事になったとしても、私は相手の性能を全て引き出して、弱点も見つけてあげる」

 まりぃは優しい笑みを向けて知奈に言った。

「だから、その時は天使さんが仇を取ってくださいね」
「まりぃさん……」

 その時、試合がそろそろ始まるとの連絡が入った。

「それじゃ、そろそろ行こうかしらね。天使さん。本当にありがとう。お話出来て嬉しかったわ」
「……まりぃさん!」
「ん?」

「私は決勝はあなたと戦いたいですし、私は約束を守りました。だからまりぃさんもこの試合必ず勝ってくださいね」

「天使さん……」
「そして終わったら二人で乾杯しましょ! かなり良いシャンパンなんでしょ? 最高な勝利の美酒になると思うから!」

 満面の笑顔を見せるねいね。
 その顔を見てまりぃも不敵な顔を見せて宣言する。

「勿論よ! とくと見ておきなさい。この私がどれだけ凄いかを!」

 二人は同時に右手を差し出し、ガッシリと固い握手を交わした。


……
………

 フィフネルのピットから離れて、知奈は同好会メンバーがいる所に戻った。

「あ。ねいねちゃんおかえりー!」
「随分と遅かったですね」
「どうだ?敵の弱点とか見つけてきたか!?」
「えーと、とても綺麗なロボでしたよ」

 と笑いながら話すねいねを見て、みぅは向こうで十分楽しんできたのだと理解した。

 (ねいねちゃんは誰とでも仲良くなれる人だから、こううなるのは予想していたけど……)

「ちょっと羨ましくなっちゃうな」
 
 誰にも聞こえない声でみぅはそっと呟いた。

…………

 そして会場を大音量な音楽が包む。いよいよ準決勝の第二回戦が始まるのだ。

 音楽に合わせてパラスアテナが入場してくる。様々な色のライトに照らされた深い藍色とパールカラーのパラスアテナは、ピットで見た時より遥かに高貴で美しかった。

「あれは本当に凄いな……」

 渡辺会長も思わず称賛の声をあげる。
 そして反対側からも対戦相手のロボが入ってくると山本は知奈に言った。

「よく見ててください。あれが決勝戦の相手になります」

 その言葉に対して知奈は何も答えない。
 伊集院まりぃという人を知り、皆の予想を覆す可能性がある事を知奈は理解しているからだ。

「それにしても、実物を見ると改めて思います」

 山本の言葉に皆は頷く。


『あれはどうみてもアニメだ』
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。 だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。 「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」 ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。 だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。 その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!? 仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、 「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」 「中の人、彼氏か?」 視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!? しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して―― 同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!? 「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」 代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!

【完結】年収三百万円台のアラサー社畜と総資産三億円以上の仮想通貨「億り人」JKが湾岸タワーマンションで同棲したら

瀬々良木 清
ライト文芸
主人公・宮本剛は、都内で働くごく普通の営業系サラリーマン。いわゆる社畜。  タワーマンションの聖地・豊洲にあるオフィスへ通勤しながらも、自分の給料では絶対に買えない高級マンションたちを見上げながら、夢のない毎日を送っていた。  しかしある日、会社の近所で苦しそうにうずくまる女子高生・常磐理瀬と出会う。理瀬は女子高生ながら仮想通貨への投資で『億り人』となった天才少女だった。  剛の何百倍もの資産を持ち、しかし心はまだ未完成な女子高生である理瀬と、日に日に心が枯れてゆくと感じるアラサー社畜剛が織りなす、ちぐはぐなラブコメディ。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

処理中です...