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第15話 何であの人は私と戦いたかったんだろう?
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「そ、そんな……!」
両腕と足一本を失い、ボロボロになったパラスアテナを見て知奈はショックを受けていた。
「決勝戦で戦うカイエンは見ての通り別次元の化け物です。どうしたら勝てるのかを考えなければいけませんね」
山本は笑顔のままそう言うものの、内心では勝てないというオーラが漏れている。
「戦う前から負ける事を考えてどうするっ! 今のバトルを見ただろ?付け入る隙はある!」
渡辺会長は強がりでは無く本心からそう言っている。その変な自信はどこからくるんだろう? と知奈は思いつつも、少しだけ羨ましくもなる。
パラスアテナは攻守バランスの取れた非常に強力なロボットだった。昨年だったら間違いなく優勝していただろう。
更にパイロットの伊集院まりぃは、初実戦とは思えない天才的な操縦をしていた。買収前のグリフォンチームパイロットが、弱すぎて可哀そうになるレベルだ。
しかし、それでもカイエンには勝てなかった。おまけに序盤の決定的チャンスを一度見逃している。もしそれが無かったらカイエンの完全勝利だったのだ。
「うぅぅ……」
「ねいねちゃん」
思わず暗い顔になる知奈とみぅ。
そこに試合が終わってコックピットから降りたばかりの伊集院まりぃが声をかけてきた。
「まったく。天使さんは何そんな顔しているのよ!」
「まりぃさん……!」
まりぃはいつも通りの表情で知奈を見る。
「ご覧の通り残念ながら私の惨敗です。カイエンはやはり強かったし化け物でした」
「はい……」
「しかし、決して無駄死にではありません。私からのプレゼント、ちゃんと受け取りましたよね?」
特定の動作中、足首のホールドが弱くバランスを崩しやすい事、パイロットの未熟さ、その他色々なモノを見せてくれた。
伊集院まりぃは試合前に言った事を実際に実行したのだ。
「は、はいっ!」
「私が出来る事はここまで。あとはあなた達次第です。決勝戦で仇を取ってくれる事を期待していますわ」
まりぃはそれだけ言って、待たせている記者やインタビュアーの所へ戻ろうとしたが、山本はそれを呼び止めた。
「まりぃさん」
「何よ?」
山本は笑顔かつ真剣な表情をまりぃに向ける。
「あなたの戦いっぷり最高でした。正直見くびってました。 そんなに強かったんですね」
「……フンッ!」
まりぃはそのまま行ってしまった。
「ここまで善戦するとは思いませんでした。もしあなたと戦っていたら、私達は間違いなく負けていましたよ」
まりぃの後姿を見ながら、山本は最大級の称賛の言葉を送った。
「まりぃさん、もしかして泣いてた……?」
同じく知奈も彼女を見送りながらつぶやく。
「私でもわかるくらい凄い気迫だったもんね。あの人は本当に決勝戦でねいねちゃんと戦いたかったんだよ」
「うん。 そうなんだろうね。 でも……」
「うん」
「何であの人は私と戦いたかったんだろう」
「えっ!?」
みうは思わず大きな声を出した。
「だっていきなりお店にやって来て、勝手にライバルだと言い出してさ」
「…………」
みぅは開いた口が塞がらない。
「まっ。落ち着いたら本人に聞けばいっか!」
(あ。ダメだ。なんだろう。変にムカついてきたよ)
みぅは少しずつ不機嫌になり、それが顔に現れてきた。
「みぅ?」
「今日買い物頼まれたの忘れてたから、私、先に帰るね!」
みぅはいきなりそう言うと、会場の出口に向かって歩いていった。
「みぅ、どうしたんだろ」
知奈は不思議そうな顔をしながら、帰っていくみぅを見送った。
…
……
………
* * *
みぅは自分でもわからないくらいイラついていた。
(前々から思ってたけど、ねいねちゃんは人の気持ちに鈍感過ぎ! あそこまで好意を見せてるのに、全然それに気づかないなんて、流石にあの人がかわいそうだよ!)
「でも…… それは私もなのかな?」
無性に悲しくなったみぅは、寄り道せずにそのまま家に帰った。
* * *
こうして準決勝は終了した。
「ふぅっ。今日は色々あって流石に疲れたよ……」
知奈も会場から直で家に帰ってきた。勝った筈なのに表情は沈んでいた。決勝の相手がチート過ぎて勝てる気が欠片もしないと痛感させられたからだ。
「これは私の戦いもここまでかな? それでも、今日のまりぃさんみたいに善戦して、ほづみ君に良いトコ見せなくちゃね」
知奈はパソコンの電源を入れて、いつも通りのネットチェックを始める。
(色々あったけどようやくいつもの日常に戻れる)
知奈はそう思っていたが、今日はいつもと様子が違っていた。
「……へっ? これ、何?」
パソコンの画面に映っているのは、毎日欠かさず見ているほづみのTwitterアカウント。
そして、そこには「大事なお知らせ」とデカデカと書かれている、配信用のサムネ画像であった。
両腕と足一本を失い、ボロボロになったパラスアテナを見て知奈はショックを受けていた。
「決勝戦で戦うカイエンは見ての通り別次元の化け物です。どうしたら勝てるのかを考えなければいけませんね」
山本は笑顔のままそう言うものの、内心では勝てないというオーラが漏れている。
「戦う前から負ける事を考えてどうするっ! 今のバトルを見ただろ?付け入る隙はある!」
渡辺会長は強がりでは無く本心からそう言っている。その変な自信はどこからくるんだろう? と知奈は思いつつも、少しだけ羨ましくもなる。
パラスアテナは攻守バランスの取れた非常に強力なロボットだった。昨年だったら間違いなく優勝していただろう。
更にパイロットの伊集院まりぃは、初実戦とは思えない天才的な操縦をしていた。買収前のグリフォンチームパイロットが、弱すぎて可哀そうになるレベルだ。
しかし、それでもカイエンには勝てなかった。おまけに序盤の決定的チャンスを一度見逃している。もしそれが無かったらカイエンの完全勝利だったのだ。
「うぅぅ……」
「ねいねちゃん」
思わず暗い顔になる知奈とみぅ。
そこに試合が終わってコックピットから降りたばかりの伊集院まりぃが声をかけてきた。
「まったく。天使さんは何そんな顔しているのよ!」
「まりぃさん……!」
まりぃはいつも通りの表情で知奈を見る。
「ご覧の通り残念ながら私の惨敗です。カイエンはやはり強かったし化け物でした」
「はい……」
「しかし、決して無駄死にではありません。私からのプレゼント、ちゃんと受け取りましたよね?」
特定の動作中、足首のホールドが弱くバランスを崩しやすい事、パイロットの未熟さ、その他色々なモノを見せてくれた。
伊集院まりぃは試合前に言った事を実際に実行したのだ。
「は、はいっ!」
「私が出来る事はここまで。あとはあなた達次第です。決勝戦で仇を取ってくれる事を期待していますわ」
まりぃはそれだけ言って、待たせている記者やインタビュアーの所へ戻ろうとしたが、山本はそれを呼び止めた。
「まりぃさん」
「何よ?」
山本は笑顔かつ真剣な表情をまりぃに向ける。
「あなたの戦いっぷり最高でした。正直見くびってました。 そんなに強かったんですね」
「……フンッ!」
まりぃはそのまま行ってしまった。
「ここまで善戦するとは思いませんでした。もしあなたと戦っていたら、私達は間違いなく負けていましたよ」
まりぃの後姿を見ながら、山本は最大級の称賛の言葉を送った。
「まりぃさん、もしかして泣いてた……?」
同じく知奈も彼女を見送りながらつぶやく。
「私でもわかるくらい凄い気迫だったもんね。あの人は本当に決勝戦でねいねちゃんと戦いたかったんだよ」
「うん。 そうなんだろうね。 でも……」
「うん」
「何であの人は私と戦いたかったんだろう」
「えっ!?」
みうは思わず大きな声を出した。
「だっていきなりお店にやって来て、勝手にライバルだと言い出してさ」
「…………」
みぅは開いた口が塞がらない。
「まっ。落ち着いたら本人に聞けばいっか!」
(あ。ダメだ。なんだろう。変にムカついてきたよ)
みぅは少しずつ不機嫌になり、それが顔に現れてきた。
「みぅ?」
「今日買い物頼まれたの忘れてたから、私、先に帰るね!」
みぅはいきなりそう言うと、会場の出口に向かって歩いていった。
「みぅ、どうしたんだろ」
知奈は不思議そうな顔をしながら、帰っていくみぅを見送った。
…
……
………
* * *
みぅは自分でもわからないくらいイラついていた。
(前々から思ってたけど、ねいねちゃんは人の気持ちに鈍感過ぎ! あそこまで好意を見せてるのに、全然それに気づかないなんて、流石にあの人がかわいそうだよ!)
「でも…… それは私もなのかな?」
無性に悲しくなったみぅは、寄り道せずにそのまま家に帰った。
* * *
こうして準決勝は終了した。
「ふぅっ。今日は色々あって流石に疲れたよ……」
知奈も会場から直で家に帰ってきた。勝った筈なのに表情は沈んでいた。決勝の相手がチート過ぎて勝てる気が欠片もしないと痛感させられたからだ。
「これは私の戦いもここまでかな? それでも、今日のまりぃさんみたいに善戦して、ほづみ君に良いトコ見せなくちゃね」
知奈はパソコンの電源を入れて、いつも通りのネットチェックを始める。
(色々あったけどようやくいつもの日常に戻れる)
知奈はそう思っていたが、今日はいつもと様子が違っていた。
「……へっ? これ、何?」
パソコンの画面に映っているのは、毎日欠かさず見ているほづみのTwitterアカウント。
そして、そこには「大事なお知らせ」とデカデカと書かれている、配信用のサムネ画像であった。
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