私、推しVに認知してもらう為にロボに乗って戦います!

TEKKON

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第26話 ねいね、行きます!!

「さぁ。この俺を楽しませろよ!」

 カイエンは、追放天使が隠れていると思われる、障害物エリアに突っ込んでいく。

「出てこい!」

 構えた大太刀からグイイイイン!と音が鳴りだした。
 山本は慌てて叫ぶ。

「ねいねさん真後ろに下がって!」

 障害物はカイエンの大太刀であっさりと切られてしまう。

「怖っ!何よこれ反則だよー!」

「そのまま自動車タワーの方に逃げてください!」
「まったくどれだけチートだよアレは!」

 思わず渡辺も大声を出してしまう。

 知奈は指示通りローラーダッシュを使い、自動車が積み重なっているタワー群に移動しようとする。
 しかし、スタビライザーが無い事により、傍から見てもわかるくらい姿勢が不安定だ。

「もう少し後ろに重心を……ハッ!」
「ここまでだな! ねーねちゃん!」

 高槻は一気に距離を詰めた後、大太刀で追放天使を吹っ飛ばした。

「キャアァッ!」
「ねいねちゃん!」

 その光景を見てついにみぅは泣き出してしまう。

「ねいねちゃん! ねいねちゃんっ! もういい! ギブアッ……」

 その時、みぅのスマホから着信音が鳴った。

「えっ……? 店長!?」

 店長は仕事日以外は電話をかけてこない。こんな時に電話してくるなんて、何か緊急な事があったんだ。
 みぅは試合が気になりながらも急いで電話を取る。

「はい。どうしました店長? ……えっ!?」
「みぅ! 急いでねいねに伝えてくれ!」

 * * *

「ハァッ……! ハァッ……!」

 急いで知奈は呼吸を整える。何とかカイエンをまく事は出来たが、残り時間は3分弱だ。いよいよ後が無い。

 (そろそろ覚悟をする時なのかな)

 流石の知奈でも、ここまで追いつめられると弱気になってしまう。

「会長。もう私は……」

 と言いかけた時、みぅの声が無線から聞こえてきた。

「ねいねちゃん!」
「みぅ!?」

「今から配信の音を繋ぐね!」
「……えっ?」

 少しの間、ガサゴソとマイクが擦れる音がした後、聞きなれた男性の声が聞こえてきた。

『ねいねさん、頑張れ!』

「ほづみ君!?」
『サンプルの皆さんも応援して下さい! ねいねさんは奇跡を起こせる人なんです!』

 間違いない。ほづみ君は最後の配信中にも関わらず、ロボバト決勝戦の実況配信をしている。

「な、何で……!」

 知奈はあまりもの驚きでバトルの事を忘れそうになる。しかし次の瞬間、配信の音が消えて渡辺会長が強めの声で集中を促す。

「ねいね! 今は試合中だ! もうすぐ奴が来るぞ!」

 知奈はハッとした顔で辺りを見渡した。

 (そうだ。まだ戦いは終わっていない。終わっていないんだ)


「そっか。諦めてなんかいられない。私はまだ戦えるんだから……!」

 ねいねは少しの間だけ目を閉じて、全ての覚悟を決める。

「……太一さん」
「なんだ?」

「1分。私は1分で全てを出し切ります。体力も集中力も出し尽くすし、モーターや駆動系もきっと最後まで持たないでしょう。もしこれでダメなら…… 潔く諦めてくださいね」

 会長はそれを聞くとニヤリと口角を上げて、とても嬉しそうに答える。

「クククッ。この展開、最高じゃないか!」
「ねいねさん!」
「ねいねちゃん!」

 同好会チーム全員が声を出して知奈を鼓舞する。

「……ありがとうございます。ねいね、行きます!!」

 知奈はその言葉を最後に無線を切り、追放天使はローラーダッシュを全開にしてカイエンに突進していった。

 * * *

「なんだと!?」

 追放天使が隠れているであろう場所に、一気に突撃しようとしていた高槻は完全に不意を突かれた。
 そして、逃げてばかりいた相手が一転して突っ込んで来た事、そして今までとは比べようがない猛スピードに驚愕していた。

「速い! 速過ぎる!」
 
 これは同好会チームも同様だった。

「いくら軽量化されたとはいえ、スタビライザーが無いのにどうやってあそこまで……!」

 山本ですら今の状況を理解しきれない。

「くそっ!」

 急速に接近する追放天使に対して、カイエンはどうにか大太刀を振るう。
 しかし、追放天使は滑り込みでそれをかわし、通り過ぎる際にペイント弾を連射してカイエンの視界を確実に奪っていく。

「ぐわぁっ!」

 そして、そのまま追放天使は障害物の壁を飛び越え、カイエンの視界から消えていった。

『!?』

 普通では飛び越えられない高さを、追放天使があっさり飛び越えた事に、会場にいた全員が驚愕している。

『あ、あれはウォールランだ!?』
『ロボットがパルクールしてるぞオイ!』
『マジかよ!』

 追放天使はウォールランやヴォルト、クライムアップ、PKロール等のパルクールの技を使う。
 更に追放天使のローラーダッシュやワイヤー&ウインチも併用してロボットとは思えない三次元な動きを見せつけていた。

「一体どうなっているんだよおおお!!!」

 ただでさえ視界の大部分を奪われた上に、予想出来ない相手の動きで高槻はパニックに陥った。

「こ、このアマがぁぁ! 女の癖にロボットに乗って粋がるなよ!!」

 カイエンは大太刀を振り回しながら、何も考えずただ追放天使を追いかけ続ける。

「こ、これは……!」
「ぬふふ。完全に風向き変わったな!」

 満面の笑みを見せる渡辺と山本の前を追放天使は横切り、そのまま反転してカイエンに突っ込んでいく。

「来た! これで終わらせてやるぅ!」

 大太刀を構え、渾身の一撃を繰り出そうとするカイエン。
 しかし、追放天使は直前でパルクール、ダッシュ、ワイヤーを駆使した大ジャンプでカイエンを飛び越える。

「ふっ、ふざけるなあああああぁ!」

 今度こそいける! と確信していた分、カイエンは大きくバランスを崩してしまう。
 追放天使はそのまま突っ走り、何かを取る態勢になった。

「あっ! あれは!」

 山本はねいねの狙いを理解した。
 追放天使は足元にある分離したスタビライザーを両手で持つと、全力で振り回してカイエンの足首に向けて叩きつけた。

「うわああああああああああああぁ!」

 ただでさえバランスが崩れていた上に、カイエンの弱点である足首を狙われて遂に転倒してしまう。

「ちょ、ちょっと待っ……ぐわっ!」

 即座に追放天使はカイエンにワイヤーを絡めていく。

「決まりましたね!」
「ねいねちゃーん!」
「ウワーッハハハハハ!!」

 渡辺会長が過去最高の高笑いを見せる中、バトル終了のサイレンが会場に鳴り響く。
 いつもなら歓声を上げる筈の観客も、衝撃的な光景に呆然としたり、驚愕したりと様々な反応を見せている。

「……はぁっ!」

 そして、今まで一言も言葉を発さず、厳しい表情を見せていた知奈は、一度深呼吸をした後、笑顔を見せて歓喜の声を上げる。

 知奈が最初に発した言葉。それは当然決まっている。

「やったよ! 私、勝ったよ! 私の戦い、見てくれたかな!? ほづみ君!ほづみ君!ほづみくーんっ!」

 いつもより静かな試合後の会場に、知奈の歓喜の声が響き渡った。

 * * *

「あ、ありえない! こんなバカな事あるもんか!」

 勝てた試合を棒に振った上に、醜態を晒し続ける高槻を見ながら、無言で首を振るホソダチーム。

「何と優雅な…… まさに天使! 私の最高のライバルですわ!」

 想像を遥かに超えた追放天使の戦いぶりに、改めて心を奪われる伊集院まりぃ。

 そして、初出場で初優勝という快挙を成し遂げて、それぞれ喜びの声を上げる同好会メンバーがそこにいた。

「我が世の春が来たぁ!」
「まったくロボバトは最高ですね!」
「まさか本当に優勝するなんて……!」
「ねいねちゃんやったね! おめでとう!」

 その同好会メンバーの声と、観衆に改めて知奈は答える。

「みんな! 本当にありがとう!」

 こうして、決勝戦は死闘の末、水道橋大学ロボットアニメ同好会の大勝利で幕を閉じる。


――ロボバト大会が始まって以来、見た事のない激闘であった

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