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最終回 これからもねいねの事を見ててね!
こうして長いロボバト大会は終わった。
この後、同好会メンバーはお祝いとして飲みに行くらしいが、知奈はもう一つ大イベントが残っている。
それはほづみ・パトラクシェの最後の配信をアーカイブで見る事だ。
皆はその事情を知っているので、片付け等全て他のメンバーで行い、知奈がすぐ帰れるよう手配してくれた。
「よーし、皆集まれ!」
今から帰る知奈を見送ろうと、会長は同好会メンバーを集めた。
「さぁ、ロボットアニメ同好会を優勝に導いた我らが天使に万歳三唱だ!」
『バンザーイ! バンザーイ! バンザーイ!』
「え…… えぇっ!?」
いきなりの万歳三唱に戸惑いながらも、知奈はありがとうございましたと頭を下げた。
鳴り響く拍手の中、山本と渡辺会長が知奈に話しかける。
「本当に最高のロボバトでした。ねいねさんありがとうございました」
「知奈、俺の話を聞いて良かっただろ!」
「は、はいっ!」
色々無理難題を吹っ掛けながらも、なんやかんやでそれを乗り越えていく。この二人はいつもこうなのだ。本当に困った凄い二人だ。
「ところで次回のロボバトは何を作りましょう。前回優勝枠で間違いなく出れますよ?」
「えっ……?」
「そりゃあ、次は合体変形だろ! ロボアニメの鉄板ではないか!」
「飛行ユニット搭載一択でしょ!」
「しかも脳波コントロール出来るサブユニットも、搭載しちゃいましょう!」
「山本さん、それは流石に……」
いつしか知奈の事をそっちのけでロボネタでワイワイ盛り上がる同好会。その光景を見て知奈はほほ笑む。
そう、趣味に全力な彼らだからこそ、私は最後まで頑張る事が出来たんだと知奈は改めて思った。
「それじゃ、私達行きますね。ありがとうございましたー!」
* * *
その後、知奈はみぅと一緒にタクシーに乗り、今日あった事について色々雑談していたが、少しずつほづみ・パトラクシェの事を考えてしまう。
おそらくそれが顔に出ていたのだろう。みぅは知奈の顔覗き込むようにして喋りかけてきた。
「ねいねちゃん……」
「ん?」
「残念だったね。配信が見れなくて」
それを聞いた知奈は首を大きく振った。
「ううん。確かに最後の配信をリアルタイムで見る事は出来なかったけど、ほづみ君からそれ以上のモノを貰えたんだもん。これで文句言ったらバチが当たるよ!」
タクシーは知奈の家の前に止まった。知奈は寂し気な表情で見ているみぅに知奈は話しかける。
「みぅ」
「何?ねいねちゃん」
「今日まで本当にありがとう。みぅが一緒じゃなかったらこのロボバトもつまらなくて途中で辞めたかもしれない。一緒に入れて楽しかったし、とっても嬉しかったよ」
「ねいねちゃ……」
みぅは思わず涙声になってしまう。
「泣かないのっ。またお店でね! その時に店長も一緒にいっぱいおしゃべりしましょう! おやすみなさい!」
「うんっ!おやすみなさい!」
そう言って知奈とみぅは別れた。
…
……
………
* * *
「ただいまー」
知奈は自分の部屋に入ると、真っ先にPCの電源を入れて、ほづみのチャンネルページに飛んだ。これは仕事から帰ったらいつもやっている事。しかし、これも今日で最後なのだ。
今日は配信予定ではなくページ左上にある最新のアーカイブ動画をクリックする。
当然、配信コメントやスパチャを投げる事は出来ないが、その代わり心の中で”ありがとう”という言葉を呟きながら。
「……ん?」
知奈は、待機ムービーがいつもと違う事に気づいた。
いつもの、液体の中で髪を揺らしながら眠り続ける待機ムービではなく、無機質な育成ポッド用の調整画面がモニターに映っている。
CONNEXION…OK
Start system monitor and backup.
Outside air introduction control system.
とても最終回とは思えない新しい何かが動き出すような演出。
「な、なによこれ……」
そして待機ムービーがフェードアウトして、いつものようにほづみ・パトラクシェが登場する。
「こんばんはサンプルさん。今日はここでの最後の配信になるからいっぱい話したいな。よろしくね」
という挨拶の後、更に話は続いた。
「あ、最後に重大告知ムービーがあるから是非見てね。約束だよ」
待機場の特殊ムービーの事もあり、コメント欄がざわつく。
あの待機画面は何だったのか。そして重大告知ムービーとは何なのか。
ただ一つわかる事は、これは”普通の”最後の配信では無い事だ。
(私、ドキドキが止まらないよ)
知奈はネタバレを回避する為に、ネットは完全にシャットアウトしていた。だから、これから起きる事を知らない。
…
……
………
それから20分程経過しているが、配信内容自体はいつもの雑談配信だ。
人にとっては拍子抜けにも、焦らしにも見えるだろうが、知奈にとっては最高の配信だった。
そして、ロボバト決勝戦が始まる頃、ほづみはロボバトの話題を切り出した。
「あ。そろそろロボバト決勝戦が始まるね」
その言葉に反応してコメント欄はロボバト、そしてねいねの事について盛り上がっている。こうやってコメントが流れるのを見て、思わず知奈は赤面してしまう。
「……もし、サンプルさん達が良いのなら、少しだけ決勝戦の実況したいけどいいかな」
これまでの配信、そしてTVでの応援メッセージを通して、ほづみがねいね推しだという事をサンプルはみんな知っている。大多数のサンプルはOKを出した。
ほづみ・パトラクシェが、趣味に全力な人造人間なのを知っているからこその返事なのだろう。
「うそ……ありがとう……」
知奈は半泣きになりながら、みんなにお礼の言葉をつぶやく。
「皆さんありがとう」と言って、ほづみは突発のロボバト実況配信を始めた。
――それからの10分弱、”ねいね”にとって幸せの時間だった。知奈の涙が止まらない。
配信にはTVの画面は音は乗せられない。しかし、ほづみ君の実況や流れるコメントでどのシーンか容易に思い出せる。ピンチになった時の頑張れコール。そして最後の大逆転の時の盛り上がり。
この実況を聞いて改めて全力で頑張った事、そして勝てて良かったと”ねいね”は心から思った。
…
……
………
夢のような実況が終わり、配信は元の雑談タイムに戻った。
知奈は放心状態になりそうになりながらも、最後の配信だからと必死に集中して見続ける。楽しくて、幸せで、かけがえのない時間を心に刻むために。
しかし、それは永遠に続かないと告げるように、ピピピピ…ピピピピ…という音が流れる。それに合わせてほづみの周りにある無数の機械が作動し始めた。
「ようやくプログラムの準備が出来たみたいだね」
ほづみは嬉しいような、そして少し寂しいような声で喋りはじめた。
「今、起動させてるのはラストプログラム。僕が外界に出る為の最終調整です」
「これから数週間、もしくは数ヵ月間、僕はポッドの中で眠り続けます」
「今度目が覚める時は、皮膚の定着も外界への適応も、無事完了しているでしょう」
「サンプルさんから頂いた外界の知識、そして楽しい思い出を胸に、僕は新しい世界へ旅立つんだ」
(……)
ついにお別れの時間がやってきてしまった。
コメント欄は”今までありがとう!”、”行かないで!” という書き込みで溢れている。
「ほづみ君……!」
知奈もその光景を見ながら泣きそうになる。
ついに画面上部にカウントダウンの表示が現れた。
「これはしばしの別れだからね。サンプルさんとはまた再会出来るから、その時はまたよろしくね」
刻一刻とカウントダウンが進む中、ほづみはいつもの通り優しい笑みを見せ続けている。
「本当に皆さん今までありがとうございました」
「ほづみ君こそありがとう!」
――みんな、またね!
ついにカウントが0になり、画面が黒くフェードアウトしていく。
「ほづみ君……!」
そしてそのまま告知されていた、スペシャルムービーが流れる。
今までの配信ダイジェストが流れ、それを思い出しながら寝ているほづみ・パトラクシェが映し出される。
待機画面ではずっと無表情だった顔が、とても幸せそうな顔になっている。
知奈はその顔を見てとても嬉しくなった。
「ありがとう……!」
そして、スペシャルムービーの最後、開始時と同じ育成ポッド用の調整画面となり、そこに信じられないモノがうっすらと映りだされた。
「えっ!?」
それを見た知奈は思わず大声を出した。
モニターの向こうに、VTuberファンどころか一般のオタクでも知っている”あのロゴマーク”が見えたからだ。
「スタジオトゥースリー……」
スタジオトゥースリー。
それは最近一部上場した世界最大級のVTuber運営会社であり、200名を超える所属ライバーが各種プラットフォームにて活動している。
『スタジオトゥースリー!?』
『ちょっとこれどういう事!?』
『えええええええええっ!!!!』
コメント欄も大騒ぎになっている。
ロゴが映ったのはわずか数秒間で、そのまま画面がフェードアウトして配信は終了してしまった。
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
知奈はすぐにスタジオトゥースリーのHPやSNSで情報を集めた。
当然、ほづみのTwitterは更新は無いものの、もう一方のスタジオトゥースリーの方から”匂わせ”の様なコメントが発表されていた。
今日の配信を考察している者も多いが、結論は殆どの人が同じだった。
――スタジオトゥースリーへの移籍
転生の可能性もあるが、その場合は隠すのが一般的だから、今回は移籍で間違いないだろう。
個人勢から企業Vになるのは普通にある事。もっとも外見そのままでの移籍は少し珍しいが無い事は無い。スタジオトゥースリーでも過去に2人、その流れでデビューしている。
「つまり、またほづみ君に会う事が出来る!」
知奈はそう確信した。ほづみ君が前の配信で言っていた言葉は本当だったのだと。
『大丈夫です。僕はあなたを悲しませるような事はしません』
「あはっ。あはははははっ!」
知奈はとても楽しくて、そしてとても嬉しくて声を出して笑った。笑い続けた。
そして、今までの事、これからの事に思いを馳せる。
* * *
今日という日、ううん。ロボバトが始まってから本当に色々な事があった。
泣いたり、笑ったり。時には怒ったり、悩んだり。なんやかんや大変だった。
でも、ほづみ君やみんなの応援があったからこそ、最後まで頑張って皆にとって最高の思い出が出来た。
今の私がいるのは皆のおかげ。そして私はまだまだ走れる。飛べるんだ。
これからの事はわからないけど、もし来年のロボバトに出場するのなら、私は全力で頑張る。それ相応の結果も残せると確信している。
ほづみ君、そしてみんなが私を応援してくれるなら!
だからね? ほづみ君……
「これからもねいねの事を見ててね。あなたの為に高く、高く羽ばたくから!」
知奈はそう言うと「おーっ!」と天に向かって両手を高らかに上げた。
----- 完 -----
最後まで読んでいただきありがとうございました!
もし面白い!と思ったら
お気に入りや感想、いただけると嬉しいです。
これからの励みになります。
また別のお話でお会いしましょう。
ありがとうございました!
この後、同好会メンバーはお祝いとして飲みに行くらしいが、知奈はもう一つ大イベントが残っている。
それはほづみ・パトラクシェの最後の配信をアーカイブで見る事だ。
皆はその事情を知っているので、片付け等全て他のメンバーで行い、知奈がすぐ帰れるよう手配してくれた。
「よーし、皆集まれ!」
今から帰る知奈を見送ろうと、会長は同好会メンバーを集めた。
「さぁ、ロボットアニメ同好会を優勝に導いた我らが天使に万歳三唱だ!」
『バンザーイ! バンザーイ! バンザーイ!』
「え…… えぇっ!?」
いきなりの万歳三唱に戸惑いながらも、知奈はありがとうございましたと頭を下げた。
鳴り響く拍手の中、山本と渡辺会長が知奈に話しかける。
「本当に最高のロボバトでした。ねいねさんありがとうございました」
「知奈、俺の話を聞いて良かっただろ!」
「は、はいっ!」
色々無理難題を吹っ掛けながらも、なんやかんやでそれを乗り越えていく。この二人はいつもこうなのだ。本当に困った凄い二人だ。
「ところで次回のロボバトは何を作りましょう。前回優勝枠で間違いなく出れますよ?」
「えっ……?」
「そりゃあ、次は合体変形だろ! ロボアニメの鉄板ではないか!」
「飛行ユニット搭載一択でしょ!」
「しかも脳波コントロール出来るサブユニットも、搭載しちゃいましょう!」
「山本さん、それは流石に……」
いつしか知奈の事をそっちのけでロボネタでワイワイ盛り上がる同好会。その光景を見て知奈はほほ笑む。
そう、趣味に全力な彼らだからこそ、私は最後まで頑張る事が出来たんだと知奈は改めて思った。
「それじゃ、私達行きますね。ありがとうございましたー!」
* * *
その後、知奈はみぅと一緒にタクシーに乗り、今日あった事について色々雑談していたが、少しずつほづみ・パトラクシェの事を考えてしまう。
おそらくそれが顔に出ていたのだろう。みぅは知奈の顔覗き込むようにして喋りかけてきた。
「ねいねちゃん……」
「ん?」
「残念だったね。配信が見れなくて」
それを聞いた知奈は首を大きく振った。
「ううん。確かに最後の配信をリアルタイムで見る事は出来なかったけど、ほづみ君からそれ以上のモノを貰えたんだもん。これで文句言ったらバチが当たるよ!」
タクシーは知奈の家の前に止まった。知奈は寂し気な表情で見ているみぅに知奈は話しかける。
「みぅ」
「何?ねいねちゃん」
「今日まで本当にありがとう。みぅが一緒じゃなかったらこのロボバトもつまらなくて途中で辞めたかもしれない。一緒に入れて楽しかったし、とっても嬉しかったよ」
「ねいねちゃ……」
みぅは思わず涙声になってしまう。
「泣かないのっ。またお店でね! その時に店長も一緒にいっぱいおしゃべりしましょう! おやすみなさい!」
「うんっ!おやすみなさい!」
そう言って知奈とみぅは別れた。
…
……
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* * *
「ただいまー」
知奈は自分の部屋に入ると、真っ先にPCの電源を入れて、ほづみのチャンネルページに飛んだ。これは仕事から帰ったらいつもやっている事。しかし、これも今日で最後なのだ。
今日は配信予定ではなくページ左上にある最新のアーカイブ動画をクリックする。
当然、配信コメントやスパチャを投げる事は出来ないが、その代わり心の中で”ありがとう”という言葉を呟きながら。
「……ん?」
知奈は、待機ムービーがいつもと違う事に気づいた。
いつもの、液体の中で髪を揺らしながら眠り続ける待機ムービではなく、無機質な育成ポッド用の調整画面がモニターに映っている。
CONNEXION…OK
Start system monitor and backup.
Outside air introduction control system.
とても最終回とは思えない新しい何かが動き出すような演出。
「な、なによこれ……」
そして待機ムービーがフェードアウトして、いつものようにほづみ・パトラクシェが登場する。
「こんばんはサンプルさん。今日はここでの最後の配信になるからいっぱい話したいな。よろしくね」
という挨拶の後、更に話は続いた。
「あ、最後に重大告知ムービーがあるから是非見てね。約束だよ」
待機場の特殊ムービーの事もあり、コメント欄がざわつく。
あの待機画面は何だったのか。そして重大告知ムービーとは何なのか。
ただ一つわかる事は、これは”普通の”最後の配信では無い事だ。
(私、ドキドキが止まらないよ)
知奈はネタバレを回避する為に、ネットは完全にシャットアウトしていた。だから、これから起きる事を知らない。
…
……
………
それから20分程経過しているが、配信内容自体はいつもの雑談配信だ。
人にとっては拍子抜けにも、焦らしにも見えるだろうが、知奈にとっては最高の配信だった。
そして、ロボバト決勝戦が始まる頃、ほづみはロボバトの話題を切り出した。
「あ。そろそろロボバト決勝戦が始まるね」
その言葉に反応してコメント欄はロボバト、そしてねいねの事について盛り上がっている。こうやってコメントが流れるのを見て、思わず知奈は赤面してしまう。
「……もし、サンプルさん達が良いのなら、少しだけ決勝戦の実況したいけどいいかな」
これまでの配信、そしてTVでの応援メッセージを通して、ほづみがねいね推しだという事をサンプルはみんな知っている。大多数のサンプルはOKを出した。
ほづみ・パトラクシェが、趣味に全力な人造人間なのを知っているからこその返事なのだろう。
「うそ……ありがとう……」
知奈は半泣きになりながら、みんなにお礼の言葉をつぶやく。
「皆さんありがとう」と言って、ほづみは突発のロボバト実況配信を始めた。
――それからの10分弱、”ねいね”にとって幸せの時間だった。知奈の涙が止まらない。
配信にはTVの画面は音は乗せられない。しかし、ほづみ君の実況や流れるコメントでどのシーンか容易に思い出せる。ピンチになった時の頑張れコール。そして最後の大逆転の時の盛り上がり。
この実況を聞いて改めて全力で頑張った事、そして勝てて良かったと”ねいね”は心から思った。
…
……
………
夢のような実況が終わり、配信は元の雑談タイムに戻った。
知奈は放心状態になりそうになりながらも、最後の配信だからと必死に集中して見続ける。楽しくて、幸せで、かけがえのない時間を心に刻むために。
しかし、それは永遠に続かないと告げるように、ピピピピ…ピピピピ…という音が流れる。それに合わせてほづみの周りにある無数の機械が作動し始めた。
「ようやくプログラムの準備が出来たみたいだね」
ほづみは嬉しいような、そして少し寂しいような声で喋りはじめた。
「今、起動させてるのはラストプログラム。僕が外界に出る為の最終調整です」
「これから数週間、もしくは数ヵ月間、僕はポッドの中で眠り続けます」
「今度目が覚める時は、皮膚の定着も外界への適応も、無事完了しているでしょう」
「サンプルさんから頂いた外界の知識、そして楽しい思い出を胸に、僕は新しい世界へ旅立つんだ」
(……)
ついにお別れの時間がやってきてしまった。
コメント欄は”今までありがとう!”、”行かないで!” という書き込みで溢れている。
「ほづみ君……!」
知奈もその光景を見ながら泣きそうになる。
ついに画面上部にカウントダウンの表示が現れた。
「これはしばしの別れだからね。サンプルさんとはまた再会出来るから、その時はまたよろしくね」
刻一刻とカウントダウンが進む中、ほづみはいつもの通り優しい笑みを見せ続けている。
「本当に皆さん今までありがとうございました」
「ほづみ君こそありがとう!」
――みんな、またね!
ついにカウントが0になり、画面が黒くフェードアウトしていく。
「ほづみ君……!」
そしてそのまま告知されていた、スペシャルムービーが流れる。
今までの配信ダイジェストが流れ、それを思い出しながら寝ているほづみ・パトラクシェが映し出される。
待機画面ではずっと無表情だった顔が、とても幸せそうな顔になっている。
知奈はその顔を見てとても嬉しくなった。
「ありがとう……!」
そして、スペシャルムービーの最後、開始時と同じ育成ポッド用の調整画面となり、そこに信じられないモノがうっすらと映りだされた。
「えっ!?」
それを見た知奈は思わず大声を出した。
モニターの向こうに、VTuberファンどころか一般のオタクでも知っている”あのロゴマーク”が見えたからだ。
「スタジオトゥースリー……」
スタジオトゥースリー。
それは最近一部上場した世界最大級のVTuber運営会社であり、200名を超える所属ライバーが各種プラットフォームにて活動している。
『スタジオトゥースリー!?』
『ちょっとこれどういう事!?』
『えええええええええっ!!!!』
コメント欄も大騒ぎになっている。
ロゴが映ったのはわずか数秒間で、そのまま画面がフェードアウトして配信は終了してしまった。
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
知奈はすぐにスタジオトゥースリーのHPやSNSで情報を集めた。
当然、ほづみのTwitterは更新は無いものの、もう一方のスタジオトゥースリーの方から”匂わせ”の様なコメントが発表されていた。
今日の配信を考察している者も多いが、結論は殆どの人が同じだった。
――スタジオトゥースリーへの移籍
転生の可能性もあるが、その場合は隠すのが一般的だから、今回は移籍で間違いないだろう。
個人勢から企業Vになるのは普通にある事。もっとも外見そのままでの移籍は少し珍しいが無い事は無い。スタジオトゥースリーでも過去に2人、その流れでデビューしている。
「つまり、またほづみ君に会う事が出来る!」
知奈はそう確信した。ほづみ君が前の配信で言っていた言葉は本当だったのだと。
『大丈夫です。僕はあなたを悲しませるような事はしません』
「あはっ。あはははははっ!」
知奈はとても楽しくて、そしてとても嬉しくて声を出して笑った。笑い続けた。
そして、今までの事、これからの事に思いを馳せる。
* * *
今日という日、ううん。ロボバトが始まってから本当に色々な事があった。
泣いたり、笑ったり。時には怒ったり、悩んだり。なんやかんや大変だった。
でも、ほづみ君やみんなの応援があったからこそ、最後まで頑張って皆にとって最高の思い出が出来た。
今の私がいるのは皆のおかげ。そして私はまだまだ走れる。飛べるんだ。
これからの事はわからないけど、もし来年のロボバトに出場するのなら、私は全力で頑張る。それ相応の結果も残せると確信している。
ほづみ君、そしてみんなが私を応援してくれるなら!
だからね? ほづみ君……
「これからもねいねの事を見ててね。あなたの為に高く、高く羽ばたくから!」
知奈はそう言うと「おーっ!」と天に向かって両手を高らかに上げた。
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