百万の契約

青いピアノ

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第3章 契約と運命

第137話 屋毒捕獲作戦

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朝の霧北町、岩山の頂に風がヒュッと舞い、晴れと雲が織りなす空が広がる。乾燥した空気が肌を刺し、遠くの崖の向こうには、荒々しい西の荒地が不気味に横たわる。

「うへ~…。指揮官になったのに、こんな現場に来るだなんてついてないなあ」

「新指揮官、ここはまだ拠点設営地です。厳密には現場ではないですよ。それに、本来指揮官はこうやって外に出てみんなのサポートをするのも仕事の一つです」

そう話すのは新米指揮官でこれまでエレナ総監補佐のサポートをしてきた新という人間の男。彼は黒い学生帽のような帽子、黒のローブを見に纏い、茶色い髪が眉を覆い隠す、まだ新米の契約管理指揮官。

テントの側で焚き火ができるよう、大きめの石を面倒くさそうに運んでいる。

そんな新を優しく導くのは、盲目のエルフ、サリュー執行官・高官。マントをなびかせ、光の精霊が宿るミカルデの樹の杖を手に、軽やかに歩く彼女。かつて任務中に襲撃を受け重傷を負ったが、見事に復帰を果たしたばかりだ。

二人は屋毒捕獲作戦のため、霧ノ都最北の町、霧北町に来ていた。霧北町は岩肌の山に囲まれた町。二人はこの山の崖の向こう、西の荒地と呼ばれる紛争地を眺める。

「…それにしても、屋毒はとんでもないところに隠れたものです。西の荒地など、一歩でも踏み入れればどこからともなく襲われると言われるほど荒れ狂った土地」

「…なんでそんな荒れてるんですか?」

新は石を運び終え、ホコリをパンパンと払いながら目を丸くする。サリューは呆れた声で答える。

「新指揮官…本当にあなたって人は。少しくらい勉強してくださいね。いいですか、ここは六千平方キロメートルに及ぶ広大な土地。しかし、有力なリーダーが長らく不在しているのです。百年ほど前から、ここには一万とも十万とも言われる数の小さな村や集団があり、それぞれが歪みあっているのです。つまり、ここでは誰もが敵なのです。さらに土地は荒れ果て、作物も育たない。水も枯れた。魔獣もいる。誰も近づけない魔境とも呼ばれています」

「ひー…!なんだか恐ろしいなあ」

「ただ、その魔境にもオアシスがあるのです。西南部に広大に広がる樹海林。占い師、カナレットはそこで屋毒と名乗る男と椿管理官が対峙すると予言された」

そこまで話すと、風がフワッと銀髪を揺らした。

「さて、新指揮官。準備はできましたかな?私たちの役目は百合執行官率いるAチームとロコ執行官率いるBチームの遠隔サポート。ここを拠点に皆さんの道を案内し、道中の安全をサポートするのが我らの役目です」

「は、はい…」

新は気乗りしない様子で、でもサリューの凛とした姿勢に少し背筋が伸びる。

大きな岩に張り付けられた空間移動用の札。それらがパチパチと音を立てて青白く光る。

すると、あっという間に一同が集結した。

Aチーム
百合執行官(長官候補)、レイチェル・アストリッド執行官(長官候補)、矢倉真弓管理官、ステファニー・ハイアット執行官(長官候補)、椿管理官、大火観綾香契約見守り人

Bチーム
ロコ・ヴァレンティナ執行官・長官、ルーク・ヴァイスハイト執行官(長官候補)、サク管理官、ミケ管理官、サトル管理官、ポポン・デルタ管理官(長官候補)

『………!今、この場に長官二人、長官候補五人…!なんてメンバーだ…!』

新は普段任務では見られない光景に改めて驚くと、ごくりと息を呑んだ。

「おお…!?ここが最果ての地とも呼ばれる霧北町か?なんもねぇじゃないか!」

「ポポン、私らは町には行かないって言ったろ!」

「ポポンさんは相変わらず話聞かないよね…」

「さ、サトル…!そんなはっきりと…!?」

「ひゃー、乾燥してんなぁ!」

「椿…魔力のコントロールはもう大丈夫なのか?」

「ルークさん!はい、特訓ありがとうございました!」

「Bチームと会うのも久しぶりだよね!」

「あ、サリューさん。良かった、元気そう」

「本当ね、良かったわ」

「ステファニーさんはここまで来たことあるんですか?」

「初めてよ。いつもはもっと西の地域を担当しているの」

全員の元気そうな声を聞いて安心するサリューはニコリと笑みを浮かべ、はっきりとした口調で話し始めた。

「皆さん、お待ちしておりました。これから、作戦会議といきましょう」

『任務要約:
西の荒地のオアシスにて、屋毒の捕獲及び連行。その際、攻撃してくるものたちに対しては自衛の範囲内での反撃及び先制攻撃を許可する』
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