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第3章 契約と運命
第170話 断たれた連携
しおりを挟む「真弓、了解!とりあえず、高台の対角線を探そう。近くにいる者は合流。一人で動くな。可能な限り囲みたい。誰がどう動く?ミケ、全員の位置を特定できるか?」
「ご、ごめんなさい。今、なんだか強い魔法使いに襲われていて…」
「そうか、援護に向かうか?」
「い、いえ。ロコさんとはだいぶ距離があるようなので…。なんとか逃げてそちらに向かいます」
「敵を引き連れてこられても困る。お前らの近くに仲間は誰がいる?」
「…一番近いのは、レイチェルさん。あと…」
「レイチェル、ミケと連絡を取り合って援護に向かえるか?」
「やってみるわ!あ、椿と…由紀子さん。今三人になったわ」
「先に報告で聞いていたな。そのくノ一は信頼できるんだな?」
「ええ…」
「じゃあ、その子にも同行を願おう。レイチェルの魔力が心配だ」
「はい…」
「ロコさん、俺とサクは少し遅れます。サクの治療を終えて、俺達は二人で湖に直接向かいます」
「よし、百合と真弓は私と合流。二人で北から攻める。ルークとサクは西から攻めろ。椿、綾香、ステファニーは合流して東から攻めてほしい。レイチェルたちは合流次第、湖を渡って南から来い。風の魔法を使うお前ならできるな?」
「はい」
こうして、それぞれの向かう方向が決まった。綾香は「火遁・狼煙上げ」によって椿に自らの位置を知らせた。それを受けた椿は、まっすぐに綾香とステファニーのもとへ向かった。
一方、百合と真弓は湖畔から一際目立つ高台を視認し、そこへ向けて電気を帯びた玉を創り出した。その玉を高台の方向へ放つと、今度は自らと真弓にその電気玉をぶつけた。
「これは?」
「電気魔法の応用で磁力を一時的に操るの。効果は十秒ほどだけだけど…」
その言葉の通り、二人は電気玉に引き寄せられるかのように宙を飛んでいった。
このようにして、合流した仲間たちはかつてない速さで戦地へと集結した。敵を逃さぬよう、迅速に包囲しようという作戦であった。
その頃、屋毒は水晶玉を通じて接近する機構の従者たちの動向を確認していた。そして、静かに魔法具を取り出す。
「…来たか。契約管理機構《コード・レジスト》」
屋毒は懐から魔法具を取り出した。
「ふん、これで悪魔の商人に借りができたな…。気に食わんが、仕方ない」
それは手のひらに収まるほどの小さな鉦《かね》であった。古代、巫女が森の精霊と語らうために使用したという魔法道具──響きの水鉦《すいしょう》。屋毒が一打ち鳴らすと、「キン」という音とともに鉦から一滴の雫がこぼれ落ちた。
地面に落ちたその雫は、まるで地に水が張ったかのように波紋を広げ、そのまま静かに土へと吸い込まれていった。
最も早く屋毒のもとへ到着したのはロコ・百合・真弓の三名。その後、椿・綾香・ステファニーが到着し、さらに十分ほど遅れてルークとサクが現場に姿を見せた。
「…よし、全員配置についたな。これから一斉に襲いかかる」
「…ん?ルーク、なんか…揺れてねえか?」
最初の揺れは小さく、地震かと思われた。しかし、その揺れは次第に大きくなり、突如として三十メートル近い巨体が姿を現した。緑色の光を放つその化け物は、鹿のような体に二つの巨大な目と大きな口を備え、その姿から放たれる魔力は凶悪そのものであった。吹き荒れる風は制御不能なほど激しく、周囲の者たちを襲った。
「な、なんだこいつは!?」
「…こ、これは!もしかして、木霊《こだま》喰らい!?」
ロコだけではない、誰もが驚き、恐怖を覚えた。だが、ステファニーだけはその存在に見覚えがある様子だった。
「ステファニー!木霊《こだま》喰らいって?」
「…詳しくはわからないけど、山の神や精霊を喰らう悪魔とも精霊とも呼ばれているわ」
屋毒の目が鋭く光る。
「くくくく…。その通り、これは木霊《こだま》喰らい。本来、精霊を呼び出す役割を持つこの魔法道具は、呪われ、悪霊を呼び起こす道具となった。お前たちの目の前にいるこいつは、悪霊だ」
屋毒の声が、まるで上空から響いてくるかのように、戦場全体に拡がった。魔法によって監視と拡声を行っているのだろう。
「お前たちからは逃げねえが、悪霊からは逃げさせてもらうぜ。あばよ。生きていたら、捕まってやるよ」
そう言い残し、屋毒は全力で戦場からの離脱を図った。
「まずい…!こいつは、私でも倒せない…!増援を呼ぶしかない!」
「ロコさん!屋毒が逃げます!」
「…っく!ルーク、サク、椿、そして綾香は屋毒を追え!残りは全員でこの悪霊を倒す!」
ロコはすぐに懐から魔法の札を取り出し、魔力を注ぎ込んだ。
「…新指揮官、増援依頼の魔法の札です」
「はい、サリュー執行官。向かいましょう」
ルークとサクは椿と綾香に合流するべく行動を開始する。しかし、その途中、三人の人影が彼らの前に現れた。
「…お前は、都で会ったな」
「ああ、覚えているよ。仮面の男。あの時はよく逃げてくれたな」
そこに立ち塞がったのは、マナコ三姉妹──長女ハナコ、次女マナコ、そして末妹ヤナコ。それぞれが巨大な槍、斧、剣を手にしていた。
「あれ?レイチェルが倒したとか言っていた気がするんだけどな」
「ふん、あの程度で倒した?ふざけるな!」
「…悪い、椿と綾香。先に行ってくれ。少しめんどくさい敵がいた」
「…了解!」
一方、レイチェルと由紀子は、ミケとポポンがいると思われる場所へと到着した。しかし、そこで彼女たちが目にしたのは、血にまみれたミケとポポンの姿だった。
「二人とも!」
「レイチェルさん、後ろ!」
振り向いた瞬間、巨大な光の斧がレイチェルの髪を裂いた。
「…あなたは?」
「エルルよ。あなたは、そいつらの仲間ね?」
「………援軍が必要ね」
レイチェルは魔法の札を取り出し、素早く魔力を込めた。
「アラナ、レイチェルからの呼び出しだ。行くよ」
「う、うん!」
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