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第4章 契約世界への挑戦
第218話 増援現る
しおりを挟む「桜鏡の矢文!」
桜色の光の魔法陣の結界内に記された特定の名前と特定の体の部位を記憶し、その名前を持つ者の部位だけを狙って、桜色の光の矢を放つこの魔法は、たとえ隠れていても、強力な防御を施していても、対象を追尾し貫く力を持つ。
ドス!!
「あっ…!」
綾香は右足の太ももを射抜かれ、その場に崩れ落ちた。
「……っ!」
激痛が脳を突き抜けると同時に、耳鳴りが鳴り始める。
今の声――聞き覚えがある。けど、まさか、そんなはずはない。
ドクン、ドクンと心臓の鼓動が異常な速さで打ち鳴り、視界が滲んでいく。血の気が引き、手は震え、呼吸が浅くなる。現実感が剥がれ落ち、世界が音を立てて崩れていくようだった。
ゆっくりと顔を上げると――そこに立っていたのは、かつて共に戦った女。
「どう? 綾香……さすがにもう立てないでしょ?」
その声、その顔。その姿を見た瞬間、綾香の脳内に警報のような混乱が鳴り響いた。頭の奥で「違う」と叫ぶ声と、「やっぱり」と呟く声がぶつかり合う。
灰色のコートの下には、白を基調とした巫女装束に、桃色の帯。小さな鈴が風に揺れて、澄んだ音を立てる。かつて腰まで伸びていた黒髪は今や肩まで切り揃えられ、スミレ色の瞳が冷たく綾香を見下ろしていた。
「……嘘……。なんで?なんで私を狙うの……唯ちゃん……!?」
崩れた現実の中で、綾香の叫びだけが鮮烈に響いた。
にぃと口角をあげて不気味に笑う唯は冷たい声で言った。
「なんで?そりゃあ、綾香が誓約を軽視する忍びだからだよ。私、知らなかったんだ。忍びが悪い奴らだって。でもね、ツユたちに色々教わったの。誓約は自由で希望に溢れているけど、契約は人を縛る道具でしかない。その契約を重視して、誓約を軽視する忍びを許してはいけないんだ…ってね♪」
「何それ…!?私、誓約を軽視なんてしていないし、契約を重視してもいないよ!?」
「は…?契約見守り人になっておいて何言ってるの?」
「それは…!それを言うなら契約管理機構《コードレジスト》は!?唯ちゃんの好きな椿は!?」
「椿は誓約を交わしたから別かなー。あ、契約管理機構《コードレジスト》は、もちろん敵だよ?」
「…唯ちゃん?何を言ってるの!?椿と誓約を交わしたとか言っているけど、途中から連絡返さなくなったじゃん!!椿が…私たちが、どれだけ心配していたのかも分からないの!?」
「あーあー、うるさいなあ。誓約のことも知らないくせに。誓約はね、どんなに距離が離れていても、どんなに連絡が途絶えても忘れない気高い忠誠や愛を指すの。私たちの愛を勝手に語らないでくれる?」
「…!?唯ちゃん?本当に、どうしたの?」
すると、遠くから朧の声が響き渡った。
「唯!頼む!こっちに来てくれ!俺じゃあツユの傷を治せない!」
声に反応して振り向いていた唯は再び綾香に視線を落とすと、ため息をついて呟いた。
「…少しでも逃げようとしたら、殺すから。さっきの結界魔法は対象者を逃さないから」
唯はゆっくりと朧とツユの方へと歩みを進めた。
綾香は未だ信じられない様子で唯の背中を見つめる。すると、ようやく脚に痛みを覚えた。
唯がツユの状態を確認するように腰を落とすと、綾香の目の前にまたしても人が現れた。
「アラナちゃん?」
「シー!綾香ちゃん、私も契約見守り人だから、自由でしょ?こっそり、ついてきたの。一緒に逃げよう」
アラナは空間移動の魔法札を二枚手に取ると綾香と自分にかざした。光が二人を包み込むと、静かにその場から姿を消した。
その瞬間、唯は綾香が逃げたことに気がついた。しかし、綾香は既に唯の射程圏内にはいない。
「ちっ…。逃げたか。デカパイ忍者」
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