百万の契約

青いピアノ

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第4章 契約世界への挑戦

第220話 思わぬ客

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ムニっとした柔らかな感触が手のひらを満たし、どこか懐かしく、心地よい安堵感が広がった。ムニムニとその柔らかさを味わうように揉んでいると、知っている女性の胸だと気づき、意識が徐々に鮮明になってきた。同時にくすぐるような感覚と、湿った温もりが肌にまとわりつき、僕はハッと意識を覚ました。

「どうしたの?」

片手ではとても収まりきらない、豊満で柔らかな胸。優しく響く大人の女性の声。そして心をとけさせるような甘い香り。横たわる僕の横にいたのは、サナエさんだった。

驚いて勢いよく起き上がると、そこはまだ囚われていた地下城の簡素な石造りの一室。薄暗い蝋燭の光が、質素な部屋の輪郭をぼんやりと浮かび上がらせていた。

「え? あれ? なんでサナエさんが…?」と混乱していると、「あら、私もいるわよ」と聞き慣れたもう一つの声が響いた。

「え、エレシアさん?」

彼女は僕の足元に腰を下ろし、口元の濡れた光沢を手の甲でそっと拭った。

サナエさんが「…なんだか混乱してるみたいね。シャワーを浴びてから、ゆっくり話しましょう」と柔らかく囁くように提案し、僕たちは順番に簡素なシャワーを浴びた。

石鹸の清涼な香りが部屋に漂う中、僕たちは大きなベッドの上に腰を下ろし、話を始めた。

「…どこまで覚えてる? 魔法で意識を乱されていたみたいだけど」
「…何人もの女性と、雷雨の家臣と、魔力融合をしていたのは覚えています。途中でかけられていた魔法の効果が切れたけど、融合者の数が多すぎて、まるで機械的な作業のように時間が過ぎていった気がします。それで、魔法は解けていたのに、意識はまた朦朧としていて…」
「そう…。じゃあ、私たちが来て事情を説明したのも覚えてない?」
「う…。ごめんなさい。ほとんど意識がなかったかも…」

サナエとエリシアは顔を見合わせ、「やっぱりね」と囁き合うような微笑みを浮かべた。

「私とエリシアは、さっきここに着いたの。あなたとの契約を果たすために、そして、あなたの心を癒すためにね」

「え…? う、嬉しいですけど、よくここまで辿り着けましたね」
「…ステファニーのおかげよ。あなたが雷雨の部下に囚われて、機構側が矢毒捕獲による都への経済損失を補うため…つまり、都と機構の和解のために、あなたを二年間都に貸し出す契約が結ばれた。でも、それはあなたの意思じゃない。いくら機構への従事契約があるとはいえ、不公平でしょ。それに、あなたが交わした他の契約はどうなるの?って、機構幹部や彼女のつてを使って雷雨大名に交渉したの」
「…それで、僕と魔力融合契約を結んだお二人がここに?」
「そういうこと。ただ、魔力融合のデータは雷雨に共有しなきゃいけないんだけどね」

サナエがそう説明しながら、雷雨の部下から受け取った分厚い資料集を手に取った。二ページ目を開くと、これまでの椿の魔力融合の状況を話し始めた。

「…あなたはこの四週間で、二人の女性と十五回、六十人の女性と一回ずつ魔力融合をしたわ。そのおかげで、あなたの魔力量、魔力純度、魔力の型、魔力の性質が大きく向上・変化している。元々これを機構本部でやりたかったけど、希望者が集まらなかった。ある意味、データ収集としては、雷雨に感謝したいくらいね」
「た、確かに…。特に魔力量の増加はすごく感じます」
「それだけじゃないわ。エリシアさんとの融合で得た聖属性の魔力性質が薄まったの。逆かな、エリシアさんと再び魔力融合をすれば、エリシアさんの聖属性も薄まる可能性が十分にあるわ」
「本当ですか…!? じゃあ、エリシアさんの望みが叶うんですね」
「ええ、だからさっき、融合儀式の準備をしていたのよね? サナエさん」
「そう…。まあ、始めたばかりだったけど」
「…じゃあ、早く試しましょう!」
「張り切ってるのはいいけど、朝食後にしてもいいんじゃない?」とサナエは柔らかく微笑んだ。

そう言うと、三人は扉を三回叩いた。すると、扉の向こうから鍵を開ける音が聞こえ、ゆっくりと開いた。

椿の軟禁されている部屋を出ると、百平方メートルほどある部屋へと繋がっている。この部屋の端には質素な木製のテーブルと椅子が置かれ、小さな棚の上に水と紅茶を淹れたポットとパン、菓子があるだけだった。部屋の天井には蝋燭の火が灯された古びたシャンデリアがあるだけだった。

この部屋では四人の女看守が槍と短剣を持って椿の動きを監視する。また、このうちの一人は頻繁に椿と魔力融合をしている。この看守は椿と目があうと優しく微笑んだ。

三人は食堂で朝食を囲んで会話を楽しむ。椿の疲れ切っていた心は、二人の存在によって温かな光を取り戻していた。

「…それにしても、すごい力ね。希望の魔力、調和と交歓は。私の娘たちもようやく魔力融合に興味を示し始めたわ」とエリシアはコーヒーに砂糖とミルクを入れて混ぜ合わせながら言うと、サナエが続けた。

「はじまりの希望の魔力、聖属性の魔力はデメリットもある。なのに、調和と交歓は今のところ何もないものね」

「とは言っても、この力を使うのも楽じゃないですよ。融合には時間をかける必要がある。ただ儀式をすればいいというわけではないですからね…」

三人は椿の軟禁されている部屋に戻るとこれまでの孤独や不満をそっと溶かすように、椿はサナエとエリシアに甘え、絡み合うように三人は魔力融合儀式を再開した。

部屋に漂う熱い空気が肌を火照らせ、その熱気は真夜中まで途切れることなく続いた。
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