226 / 295
第4章 契約世界への挑戦
第220話 思わぬ客
しおりを挟むムニっとした柔らかな感触が手のひらを満たし、どこか懐かしく、心地よい安堵感が広がった。ムニムニとその柔らかさを味わうように揉んでいると、知っている女性の胸だと気づき、意識が徐々に鮮明になってきた。同時にくすぐるような感覚と、湿った温もりが肌にまとわりつき、僕はハッと意識を覚ました。
「どうしたの?」
片手ではとても収まりきらない、豊満で柔らかな胸。優しく響く大人の女性の声。そして心をとけさせるような甘い香り。横たわる僕の横にいたのは、サナエさんだった。
驚いて勢いよく起き上がると、そこはまだ囚われていた地下城の簡素な石造りの一室。薄暗い蝋燭の光が、質素な部屋の輪郭をぼんやりと浮かび上がらせていた。
「え? あれ? なんでサナエさんが…?」と混乱していると、「あら、私もいるわよ」と聞き慣れたもう一つの声が響いた。
「え、エレシアさん?」
彼女は僕の足元に腰を下ろし、口元の濡れた光沢を手の甲でそっと拭った。
サナエさんが「…なんだか混乱してるみたいね。シャワーを浴びてから、ゆっくり話しましょう」と柔らかく囁くように提案し、僕たちは順番に簡素なシャワーを浴びた。
石鹸の清涼な香りが部屋に漂う中、僕たちは大きなベッドの上に腰を下ろし、話を始めた。
「…どこまで覚えてる? 魔法で意識を乱されていたみたいだけど」
「…何人もの女性と、雷雨の家臣と、魔力融合をしていたのは覚えています。途中でかけられていた魔法の効果が切れたけど、融合者の数が多すぎて、まるで機械的な作業のように時間が過ぎていった気がします。それで、魔法は解けていたのに、意識はまた朦朧としていて…」
「そう…。じゃあ、私たちが来て事情を説明したのも覚えてない?」
「う…。ごめんなさい。ほとんど意識がなかったかも…」
サナエとエリシアは顔を見合わせ、「やっぱりね」と囁き合うような微笑みを浮かべた。
「私とエリシアは、さっきここに着いたの。あなたとの契約を果たすために、そして、あなたの心を癒すためにね」
「え…? う、嬉しいですけど、よくここまで辿り着けましたね」
「…ステファニーのおかげよ。あなたが雷雨の部下に囚われて、機構側が矢毒捕獲による都への経済損失を補うため…つまり、都と機構の和解のために、あなたを二年間都に貸し出す契約が結ばれた。でも、それはあなたの意思じゃない。いくら機構への従事契約があるとはいえ、不公平でしょ。それに、あなたが交わした他の契約はどうなるの?って、機構幹部や彼女のつてを使って雷雨大名に交渉したの」
「…それで、僕と魔力融合契約を結んだお二人がここに?」
「そういうこと。ただ、魔力融合のデータは雷雨に共有しなきゃいけないんだけどね」
サナエがそう説明しながら、雷雨の部下から受け取った分厚い資料集を手に取った。二ページ目を開くと、これまでの椿の魔力融合の状況を話し始めた。
「…あなたはこの四週間で、二人の女性と十五回、六十人の女性と一回ずつ魔力融合をしたわ。そのおかげで、あなたの魔力量、魔力純度、魔力の型、魔力の性質が大きく向上・変化している。元々これを機構本部でやりたかったけど、希望者が集まらなかった。ある意味、データ収集としては、雷雨に感謝したいくらいね」
「た、確かに…。特に魔力量の増加はすごく感じます」
「それだけじゃないわ。エリシアさんとの融合で得た聖属性の魔力性質が薄まったの。逆かな、エリシアさんと再び魔力融合をすれば、エリシアさんの聖属性も薄まる可能性が十分にあるわ」
「本当ですか…!? じゃあ、エリシアさんの望みが叶うんですね」
「ええ、だからさっき、融合儀式の準備をしていたのよね? サナエさん」
「そう…。まあ、始めたばかりだったけど」
「…じゃあ、早く試しましょう!」
「張り切ってるのはいいけど、朝食後にしてもいいんじゃない?」とサナエは柔らかく微笑んだ。
そう言うと、三人は扉を三回叩いた。すると、扉の向こうから鍵を開ける音が聞こえ、ゆっくりと開いた。
椿の軟禁されている部屋を出ると、百平方メートルほどある部屋へと繋がっている。この部屋の端には質素な木製のテーブルと椅子が置かれ、小さな棚の上に水と紅茶を淹れたポットとパン、菓子があるだけだった。部屋の天井には蝋燭の火が灯された古びたシャンデリアがあるだけだった。
この部屋では四人の女看守が槍と短剣を持って椿の動きを監視する。また、このうちの一人は頻繁に椿と魔力融合をしている。この看守は椿と目があうと優しく微笑んだ。
三人は食堂で朝食を囲んで会話を楽しむ。椿の疲れ切っていた心は、二人の存在によって温かな光を取り戻していた。
「…それにしても、すごい力ね。希望の魔力、調和と交歓は。私の娘たちもようやく魔力融合に興味を示し始めたわ」とエリシアはコーヒーに砂糖とミルクを入れて混ぜ合わせながら言うと、サナエが続けた。
「はじまりの希望の魔力、聖属性の魔力はデメリットもある。なのに、調和と交歓は今のところ何もないものね」
「とは言っても、この力を使うのも楽じゃないですよ。融合には時間をかける必要がある。ただ儀式をすればいいというわけではないですからね…」
三人は椿の軟禁されている部屋に戻るとこれまでの孤独や不満をそっと溶かすように、椿はサナエとエリシアに甘え、絡み合うように三人は魔力融合儀式を再開した。
部屋に漂う熱い空気が肌を火照らせ、その熱気は真夜中まで途切れることなく続いた。
0
あなたにおすすめの小説
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる