百万の契約

青いピアノ

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第1章 契約と秩序

第38話 チーム分け

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機構本部の会議室は、白い壁に包まれただけの冷たく無機質な空間だった。総監補佐エレナ・クロウリーは、鋭い眼差しで全員を見据え、静寂を切り裂く。

円卓には、三人の契約執行官…ルーク・ヴァイスハイト 、ロコ・ヴァレンティナ、レイチェル・アストリッド。

契約管理官は四人集まった。サク、サトル、獣人女ミケ、椿。加えて、契約見守り人の大火観綾香が座る。

ルークは腕を組み、ロコはふんぞり返り、レイチェルはメモを取る。サクは貧乏ゆすり、サトルは姿勢を正し、ミケは耳を動かす。椿は穏やかな表情で聞き、綾香は無言で座り、右手の甲の花の印を握る。

エレナは壁に霧ノ都の地図を投影。

「現在、霧ノ都には屋毒と無関係と思われる管理対象契約が約二千件ある」

「二千件?すごい…!」

綾香が驚くと、ロコがすかさず口を開く。

「…少ないくらいだよ。人口三百万人の都市だぜ?全然少ないな。この街での私らへの信頼の低さよ」

「人口統計は難民が大量に流入したおよそ十五年前のもの。その後大量の餓死者に戦死者を出した。その数字は敵や味方に力を見せつけるために誇張してるかもしれんがな」

ルークが冷たく返すと、エレナは続けた。

「現地で今任務を遂行している者の数を言う。執行官四名、調停官二名、管理官二十名、見守り人六名がいる。彼らに通常任務とは別に商人たちの不審な動きを報告させているが、今のところ情報は乏しい。この他、屋毒の情報収集に専念するチーム――執行官高官サリュー、執行官百合、管理官真弓、管理官ナナ――を派遣済みだ。屋毒、表の名は霧生玄蛙、町民に"げんさん"として親しまれているが、顔を知る者はほぼいないため、こちらも苦戦中」

彼女は地図を拡大、エルフの森、三角山、朝霧郷を指す。

「屋毒の商売先の一部を監視する。エルフの森の奴隷市場、三角山の鉱山開発計画、雷雨大名が併合を狙う朝霧郷だ。秘宝を手にした大名は、都からわずか三十キロ北にあるこの都市を制圧併合すれば、兵の士気を高めるだろう。ともすると、商人や大名に近い者たちが派遣される可能性もある。そいつらを尾行すれば、屋毒への接触機会が高まる。……そこで、これからチームを組む。」

エレナの声は冷たく、揺るぎない。

「椿と綾香は既にペアだ。契約見守り人としての印は確認済み。他の編成を決めよう。誰か意見は?」

ルークが静かに口を開く。

「俺はサクと組む。昔から一緒に動いてるし、やりやすい」

サクが小さく頷く。

「ルークとなら動きやすい」

レイチェルが手を上げ、冷静に言う。医療担当官サナエの助言を思い出しながら。

「椿くんと綾香ちゃんに私が加わる」

ミケが尾を揺らし、笑う。

「私とサトルは二人で組みたい」

サトルが眼鏡を押し上げる。

「ミケと二人なら…。効率的だと思いますし」

ロコが舌打ちし、不機嫌に呟く。

「なんだ、余り物かよ。なんで私が浮くんだ?」

エレナの目が鋭く細まる。

「ロコ、ミケとサトルを率いろ。若手管理官二人では危険だ」

ロコが渋々頷く。

「ちっ、面倒くせえな…」

エレナが全員を見渡す。

「編成は決定だ。ルークとサクは鉱山、レイチェルと椿と綾香は朝霧郷、ロコとサトルとミケはエルフの森だ。屋毒の痕跡を掴め。公開契約システムを破る者を裁く。それが機構の使命だ。準備を急げ」

「…じゃあ、ここからは契約詳細詰めるかー。三チーム、いや、四チームの合同会議や連絡頻度、情報共有方法…あ、契約は集団契約か?個人契約の方がいいか…?」

ロコがすかさず口を開き、レイチェルとルークが議論に加わった。

『え、連絡方法とかも全部契約結ぶの…?』と、少し引いた様子の綾香。

椿はそれを察してそっと呟いた。

「契約ガチガチに組むと議論ばかりに時間がかかってしまうのが難なんだよ…」と椿も少し困った様子だった。

議論が進み、数時間全員で過ごした後、円卓の者たちが立ち上がり、霧ノ都の闇に挑む戦いが始まった。
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