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第1章 契約と秩序
第40話 捕獲任務の契約
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椿と綾香、そしてレイチェルはあてられた四人部屋のベッドの上でそれぞれの手首の下、契約印に指を添える。
「……オープン」
魔力が流れると、薄く淡い光が浮かび上がった。
『任務要約:霧ノ都にて長年にわたり巧妙に身分を偽り、偽装契約及び公開契約に関わる重大な違反行為を重ねてきた商人、霧生玄蛙(きりゅう げんあ)――通称“表の顔”――およびその裏の名を持つ屋毒代琉(やどく かえる)――“裏の顔”――の正体と所在を特定し、速やかに捕縛せよ。
任務遂行者は以下の行動を取ること:
現地入り後、対象者の動向を極秘裏に調査。
対象者の両面の身分(霧生玄蛙/屋毒代琉)に関する証拠の収集。
既に接触または関与している可能性のある協力者・隠れ家・交易網の洗い出し。
捕獲の際は必要最低限の力を用い、可能な限り無傷での拘束を推奨。
本任務に従事する他の構成員との緊密な連携と情報共有を行い、任務の成功率を最大限に高めること。
補足: 対象者は極めて狡猾で変装や情報攪乱に長けており、一般市民への影響を避けるためにも、行動は慎重かつ迅速に行うこと。捕獲後は直ちに本部に引き渡すものとする。
捕獲対象者――霧生玄蛙(表の名)/屋毒代琉(裏の名)』
「……確認、完了しました」
レイチェルの声は落ち着いていたが、その目には僅かな緊張があった。静かに椿と綾香へ向き直る。
「沙耶香執行官と龍之介執行官が行方不明になったのは、つい最近のことです。管理官の拉致や殺害も増えており、現地での行動には十分注意してください」
その言葉に、綾香の表情がわずかに曇った。口を開きかけて、少し躊躇い、でもやはり言葉にする。
「……姉さん、行方不明なの?」
不安が滲む声。でもその奥には、別の感情もあった。
「…お姉さん…なんですね。…はい、彼女は数年前から行方不明で、原因不明なんです。関係があるかはわかりませんが、忍び狩りの対象にあった可能性も排除できません」
レイチェルが振り向くと、綾香は静かに遠くを見ていた。それを見た椿が口を開いた。
「綾香、忍び狩りのことはどこまで知ってる?」
「……おばあ様……それから…屋毒からも、少しだけ聞いたことがある。くノ一を、嫌悪するような人たちがいるって」
拳がわずかに震えていた。
椿はその姿を見て、ふいに過去の言葉を思い出す。綾香のおばあ様に言われたことだ。
――どうか私に代わって綾香を、この子を守ってやってください。
椿はふっと息をついて、明るく言った。
「でも…安心します。レイチェルさんは高官候補筆頭と聞いていますし、とにかく優秀って聞いています。ルークさんたちを逃がしたのも、レイチェルさんですよね?きっと僕らよりもずっと冷静に動けるし、頼もしいです」
それは信頼の眼差しだった。
レイチェルは一瞬、戸惑うように目を伏せた。優秀と言われ続けた記憶が蘇る。けれど、現実はどうだ。執行官になっても、ただの駒のひとつ。世界の安定に貢献できているのかも怪しい。
自分は、本当に役に立てているのか――
でも、椿の言葉に乗るように、心のどこかで何かが動いた。
そっと顔を上げ、ふわりと笑う。
「……ありがとうございます。私、頑張ります」
その言葉は風に乗り、帆の向こうに消えていった。
静かに、船が動く。
薄闇が港に降りる中、三人の影が重なり合い、ゆっくりと旅の始まりを告げた。
--------
ここまで読んでいただきありがとうございます!第2章に続きます!引き続きよろしくお願いします。
「……オープン」
魔力が流れると、薄く淡い光が浮かび上がった。
『任務要約:霧ノ都にて長年にわたり巧妙に身分を偽り、偽装契約及び公開契約に関わる重大な違反行為を重ねてきた商人、霧生玄蛙(きりゅう げんあ)――通称“表の顔”――およびその裏の名を持つ屋毒代琉(やどく かえる)――“裏の顔”――の正体と所在を特定し、速やかに捕縛せよ。
任務遂行者は以下の行動を取ること:
現地入り後、対象者の動向を極秘裏に調査。
対象者の両面の身分(霧生玄蛙/屋毒代琉)に関する証拠の収集。
既に接触または関与している可能性のある協力者・隠れ家・交易網の洗い出し。
捕獲の際は必要最低限の力を用い、可能な限り無傷での拘束を推奨。
本任務に従事する他の構成員との緊密な連携と情報共有を行い、任務の成功率を最大限に高めること。
補足: 対象者は極めて狡猾で変装や情報攪乱に長けており、一般市民への影響を避けるためにも、行動は慎重かつ迅速に行うこと。捕獲後は直ちに本部に引き渡すものとする。
捕獲対象者――霧生玄蛙(表の名)/屋毒代琉(裏の名)』
「……確認、完了しました」
レイチェルの声は落ち着いていたが、その目には僅かな緊張があった。静かに椿と綾香へ向き直る。
「沙耶香執行官と龍之介執行官が行方不明になったのは、つい最近のことです。管理官の拉致や殺害も増えており、現地での行動には十分注意してください」
その言葉に、綾香の表情がわずかに曇った。口を開きかけて、少し躊躇い、でもやはり言葉にする。
「……姉さん、行方不明なの?」
不安が滲む声。でもその奥には、別の感情もあった。
「…お姉さん…なんですね。…はい、彼女は数年前から行方不明で、原因不明なんです。関係があるかはわかりませんが、忍び狩りの対象にあった可能性も排除できません」
レイチェルが振り向くと、綾香は静かに遠くを見ていた。それを見た椿が口を開いた。
「綾香、忍び狩りのことはどこまで知ってる?」
「……おばあ様……それから…屋毒からも、少しだけ聞いたことがある。くノ一を、嫌悪するような人たちがいるって」
拳がわずかに震えていた。
椿はその姿を見て、ふいに過去の言葉を思い出す。綾香のおばあ様に言われたことだ。
――どうか私に代わって綾香を、この子を守ってやってください。
椿はふっと息をついて、明るく言った。
「でも…安心します。レイチェルさんは高官候補筆頭と聞いていますし、とにかく優秀って聞いています。ルークさんたちを逃がしたのも、レイチェルさんですよね?きっと僕らよりもずっと冷静に動けるし、頼もしいです」
それは信頼の眼差しだった。
レイチェルは一瞬、戸惑うように目を伏せた。優秀と言われ続けた記憶が蘇る。けれど、現実はどうだ。執行官になっても、ただの駒のひとつ。世界の安定に貢献できているのかも怪しい。
自分は、本当に役に立てているのか――
でも、椿の言葉に乗るように、心のどこかで何かが動いた。
そっと顔を上げ、ふわりと笑う。
「……ありがとうございます。私、頑張ります」
その言葉は風に乗り、帆の向こうに消えていった。
静かに、船が動く。
薄闇が港に降りる中、三人の影が重なり合い、ゆっくりと旅の始まりを告げた。
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ここまで読んでいただきありがとうございます!第2章に続きます!引き続きよろしくお願いします。
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