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第2章 契約と誓約
第97話 希望の魔力の正体
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カナレットは淡々と“希望の魔力”について語り出した。
「まず、魔力って何かというと、これはこの世界の全ての生物や無生物に宿る自然のエネルギーのこと。人々はそれを使って生きてるの。二人とも、その辺りはもう知ってるわよね。
魔力にはいくつかの要素があるの。
一、魔力量。
命と同じようなものよ。生物も無生物も、死ねば魔力は痕跡もなく消える。その量が多いほど生命力にあふれるとは限らないけれど、関係がないとも言えないわね。
生き物は成長とともに魔力量が増え、老いると減っていく。エルフやドラゴンみたいな高位の魔法生物は、生まれた時から魔力量が多くて長命。
自然界の山、大地、海にも膨大な魔力が眠っているわ。
魔法を使えば魔力は消費されるけど、生き物なら時間が経つか、魔力量の多い食べ物を摂ることで回復するわ。無生物は回復することもあるし、しないこともある。
人間は成人する頃には八十から百二十ほどの魔力を持ち、修行次第で三百以上になることもある。最初から三百以上ある生物は“魔法生物”と呼ばれて、エルフは生まれつき五百近く持ってるわ。
魔力量が五十を切ると“魔力欠乏症”になって、命に関わる危険な状態になるの。
二、魔力の純度。
これは魔力の“質”や“きれいさ”みたいなもの。自然のままの山や大地、精霊の純度が百とされていて、純度が高いほど魔力を効率的に扱えるわ。でも、これを高めるには厳しい修行が必要。
エルフでも純度九十がやっと、人間は普通で二十くらい。生まれつきある程度決まっていて、一つ上げるだけでもかなりの時間と努力が必要なの。
三、魔力の型。
血液型みたいなものだけど、数は桁違いに多いの。A型からZ型、その間にAA型~ZZ型、それにプラスかマイナスがついて、千四百四種類。
魔法動物はまた別の型を持ってるわ。自然の無生物(木々、草花、水、石など)はみんな共通してZZZ型で、“はじまりの魔力”とも呼ばれている。
この型がなぜ存在するのかはまだ謎よ。家族とも一致するとは限らないし、調べるには大がかりな機械が必要。
だから、基本的に人同士で魔力を与えたり受け取ったりはしないの。違う型の魔力を魔力欠乏症の人に与えると、最悪死に至ることもあるのよ。ただし、健康体なら吸収されずに済むので、一時的な不足分の補完には使われることもあるわね。
四、魔力の特性もしくは性質。
大半の生物は“無性質・無属性”の魔力を持ってるわ。得意不得意はあるけど、訓練すればどんな属性の魔法でも使えるようになる。
自然界には属性が偏った魔力もあって、たとえば火山地帯は火属性、海は水属性、草原や大地は風属性が強いの。魔法生物も属性に特化した子たちがいるけど、人間では珍しいわ。
そして、この“特性”の中に、特殊なものがある。
その一つが“希望の魔力”。
これは古代から記録に残っていて、苦しい時代や状況の中で現れる特別な魔力の総称よ。ただし、必ずしも“世界を救う”ような力じゃないの。あくまで“希望を与える”性質のもの。
たとえば、歴史で最も多く見られる“希望の魔力”は“赦しと癒やし”の特性を持っているわ。持ち主は精神と身体の両方に効く高位治癒魔法を使って、病や欲に苦しむ人々を癒やしてきたの。
そして椿、あなたの希望の魔力の特性は、“調和と交歓”と呼ばれている。
これは異なる魔力の型同士を繋ぎ、進化させ、融合させ、新しい魔力を生み出す力。魔力量や純度も大幅に向上させることができる。
でも、それには条件がある。他の希望の魔力と違って、相手が必要なの。信頼と心の結びつきを通じて、互いの魔力を共鳴させる。契約と誓約、そして儀式用の魔法陣が必要よ。
歴史にも、この力を持った者はほんの数人しかいない。
二百年前にいた男性は、信頼するパートナーとだけ儀式を行い、新しい魔力を生み出した。
五百年前の持ち主は、自分の力を理解できず、人生を終えた。
希望らしい結果は少ないけれど、それでもこの魔力が希望と呼ばれるのは、「調和」という概念にあるのよ。異なる魔力を結びつけるその可能性、そして新しい未来の可能性。それがあなたの力。
希望の魔力は遺伝や環境で生まれるものじゃなくて、運命で決まるの。最初は弱くて、開花しないこともある。でも、開花すればその力はあなたのものになる。
そしてその魔力は、魔力探知に優れた者にはすぐに分かるくらい異質。でも、怖くない。むしろ優しくて、明るくて、人を惹きつける。だから“希望”って呼ばれるのよ。呪いや憎しみの魔力とは真逆。
あなたの魔力は、朝霧郷にいたとき完全に開花したの。あとはあなたが、契約と誓約を交わせる相手と儀式をするかどうか、それだけ。
紫音が聞いた。「椿はすでに何人かの人と強い絆を築いている…。契約して儀式をすれば、その力が使えるのかしら?」
カナレットは微笑んだ。「そういうこと。簡単そうでしょ?でも、信頼と心の一致が必要よ。私の占いでは、あなたは大切な誰かとこの儀式を成功させる可能性があるわ」
けれど紫音は少し考え込んだ。「…そうはいっても、難しいかもしれない。朝霧には契約を嫌う人も多い。特に椿を大切に思う渚という人は、契約そのものに抵抗があるみたい。それでも、彼女が椿にとって契約が大切だと気づき、受け入れるような人柄なら、可能性はあるけど」
椿もうなずいた。「唯も契約に抵抗があった。機構内には誓約を好まない人も多い。意外と簡単じゃないのかもしれない」
紫音は静かに言った。「私は契約してもいい。お前の未知の力に興味がある。私なら、契約も誓約もできる。ただ、その儀式には――」
紫音の視線がカナレットに向く。
「魔法陣が必要…」
カナレットは頷いた。「ええ。儀式に必要なのは三つ。契約、誓約、そして“魔法陣”」
「……魔法陣はわかるんですか?」と椿が聞く。
「ええ。既に調べはだいたい終わっているわ。でも、一部古文書からは読み取れなくてね。完全には調べは終わっていない」
紫音が口を挟んだ。「それを手伝いましょう。こうもあっさりと希望の魔力についてわかったのは意外だったわ。でも、まだなにかできるのであれば、ぜひ」
「ありがとう」とカナレットは言った。「ちなみに、心が伴わない誓いは、魔力として認識されない。たとえば、無理やり契約や誓約をしても、魔力は融合しないわ。互いの想いが一致している必要があるの。信頼と、受け入れる覚悟。全てがそろって初めて力になる」
椿は、ふと唯の顔を思い浮かべた。そういえば、もう二週間以上、連絡が来ていない。彼女は元気なのだろうか。
紫音は立ち上がり、椿の前に進み出た。
「なら、準備が整い次第、私は試したい。いいだろう?椿」
「……うん」
どこかで決意が芽生え始めていた反面、椿はまだ戸惑いを抱えていた。
“希望”とは何か。 “運命”とは何か。 “力を持つ”とはどういうことか。 誰かのため
に、自分の力を使う覚悟とは――。
未だに誓約の意味を完全には理解できていないのに、本当にできるのか、不安でしかなかった。
「まず、魔力って何かというと、これはこの世界の全ての生物や無生物に宿る自然のエネルギーのこと。人々はそれを使って生きてるの。二人とも、その辺りはもう知ってるわよね。
魔力にはいくつかの要素があるの。
一、魔力量。
命と同じようなものよ。生物も無生物も、死ねば魔力は痕跡もなく消える。その量が多いほど生命力にあふれるとは限らないけれど、関係がないとも言えないわね。
生き物は成長とともに魔力量が増え、老いると減っていく。エルフやドラゴンみたいな高位の魔法生物は、生まれた時から魔力量が多くて長命。
自然界の山、大地、海にも膨大な魔力が眠っているわ。
魔法を使えば魔力は消費されるけど、生き物なら時間が経つか、魔力量の多い食べ物を摂ることで回復するわ。無生物は回復することもあるし、しないこともある。
人間は成人する頃には八十から百二十ほどの魔力を持ち、修行次第で三百以上になることもある。最初から三百以上ある生物は“魔法生物”と呼ばれて、エルフは生まれつき五百近く持ってるわ。
魔力量が五十を切ると“魔力欠乏症”になって、命に関わる危険な状態になるの。
二、魔力の純度。
これは魔力の“質”や“きれいさ”みたいなもの。自然のままの山や大地、精霊の純度が百とされていて、純度が高いほど魔力を効率的に扱えるわ。でも、これを高めるには厳しい修行が必要。
エルフでも純度九十がやっと、人間は普通で二十くらい。生まれつきある程度決まっていて、一つ上げるだけでもかなりの時間と努力が必要なの。
三、魔力の型。
血液型みたいなものだけど、数は桁違いに多いの。A型からZ型、その間にAA型~ZZ型、それにプラスかマイナスがついて、千四百四種類。
魔法動物はまた別の型を持ってるわ。自然の無生物(木々、草花、水、石など)はみんな共通してZZZ型で、“はじまりの魔力”とも呼ばれている。
この型がなぜ存在するのかはまだ謎よ。家族とも一致するとは限らないし、調べるには大がかりな機械が必要。
だから、基本的に人同士で魔力を与えたり受け取ったりはしないの。違う型の魔力を魔力欠乏症の人に与えると、最悪死に至ることもあるのよ。ただし、健康体なら吸収されずに済むので、一時的な不足分の補完には使われることもあるわね。
四、魔力の特性もしくは性質。
大半の生物は“無性質・無属性”の魔力を持ってるわ。得意不得意はあるけど、訓練すればどんな属性の魔法でも使えるようになる。
自然界には属性が偏った魔力もあって、たとえば火山地帯は火属性、海は水属性、草原や大地は風属性が強いの。魔法生物も属性に特化した子たちがいるけど、人間では珍しいわ。
そして、この“特性”の中に、特殊なものがある。
その一つが“希望の魔力”。
これは古代から記録に残っていて、苦しい時代や状況の中で現れる特別な魔力の総称よ。ただし、必ずしも“世界を救う”ような力じゃないの。あくまで“希望を与える”性質のもの。
たとえば、歴史で最も多く見られる“希望の魔力”は“赦しと癒やし”の特性を持っているわ。持ち主は精神と身体の両方に効く高位治癒魔法を使って、病や欲に苦しむ人々を癒やしてきたの。
そして椿、あなたの希望の魔力の特性は、“調和と交歓”と呼ばれている。
これは異なる魔力の型同士を繋ぎ、進化させ、融合させ、新しい魔力を生み出す力。魔力量や純度も大幅に向上させることができる。
でも、それには条件がある。他の希望の魔力と違って、相手が必要なの。信頼と心の結びつきを通じて、互いの魔力を共鳴させる。契約と誓約、そして儀式用の魔法陣が必要よ。
歴史にも、この力を持った者はほんの数人しかいない。
二百年前にいた男性は、信頼するパートナーとだけ儀式を行い、新しい魔力を生み出した。
五百年前の持ち主は、自分の力を理解できず、人生を終えた。
希望らしい結果は少ないけれど、それでもこの魔力が希望と呼ばれるのは、「調和」という概念にあるのよ。異なる魔力を結びつけるその可能性、そして新しい未来の可能性。それがあなたの力。
希望の魔力は遺伝や環境で生まれるものじゃなくて、運命で決まるの。最初は弱くて、開花しないこともある。でも、開花すればその力はあなたのものになる。
そしてその魔力は、魔力探知に優れた者にはすぐに分かるくらい異質。でも、怖くない。むしろ優しくて、明るくて、人を惹きつける。だから“希望”って呼ばれるのよ。呪いや憎しみの魔力とは真逆。
あなたの魔力は、朝霧郷にいたとき完全に開花したの。あとはあなたが、契約と誓約を交わせる相手と儀式をするかどうか、それだけ。
紫音が聞いた。「椿はすでに何人かの人と強い絆を築いている…。契約して儀式をすれば、その力が使えるのかしら?」
カナレットは微笑んだ。「そういうこと。簡単そうでしょ?でも、信頼と心の一致が必要よ。私の占いでは、あなたは大切な誰かとこの儀式を成功させる可能性があるわ」
けれど紫音は少し考え込んだ。「…そうはいっても、難しいかもしれない。朝霧には契約を嫌う人も多い。特に椿を大切に思う渚という人は、契約そのものに抵抗があるみたい。それでも、彼女が椿にとって契約が大切だと気づき、受け入れるような人柄なら、可能性はあるけど」
椿もうなずいた。「唯も契約に抵抗があった。機構内には誓約を好まない人も多い。意外と簡単じゃないのかもしれない」
紫音は静かに言った。「私は契約してもいい。お前の未知の力に興味がある。私なら、契約も誓約もできる。ただ、その儀式には――」
紫音の視線がカナレットに向く。
「魔法陣が必要…」
カナレットは頷いた。「ええ。儀式に必要なのは三つ。契約、誓約、そして“魔法陣”」
「……魔法陣はわかるんですか?」と椿が聞く。
「ええ。既に調べはだいたい終わっているわ。でも、一部古文書からは読み取れなくてね。完全には調べは終わっていない」
紫音が口を挟んだ。「それを手伝いましょう。こうもあっさりと希望の魔力についてわかったのは意外だったわ。でも、まだなにかできるのであれば、ぜひ」
「ありがとう」とカナレットは言った。「ちなみに、心が伴わない誓いは、魔力として認識されない。たとえば、無理やり契約や誓約をしても、魔力は融合しないわ。互いの想いが一致している必要があるの。信頼と、受け入れる覚悟。全てがそろって初めて力になる」
椿は、ふと唯の顔を思い浮かべた。そういえば、もう二週間以上、連絡が来ていない。彼女は元気なのだろうか。
紫音は立ち上がり、椿の前に進み出た。
「なら、準備が整い次第、私は試したい。いいだろう?椿」
「……うん」
どこかで決意が芽生え始めていた反面、椿はまだ戸惑いを抱えていた。
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