8 / 34
翼
しおりを挟む
「ねぇ今日も人間さんのお話聞かせてよ」
アーモンドの様なきれいな瞳の女の子が、髪を後ろで一つに束ねている赤い大きなリボンをピョンピョン跳ねさせながら近づいてくる。
「わかったよ。今日も人間の面白い話を聞かせてやろう」
木々に覆われた森の中で、世間の忘れ物の様に地べたに胡座をかいているアーモンドの様な固そうな瞳の老人が、コホンと一つ咳払いをして話始めた。
「いつからだろうか?
人間が空を飛ばなくなったのは。
大昔の人間は、立派な翼を広げて空を舞っていた。
本気で無邪気に太陽まで飛んでやろうと思っていたんだ。
もう少しだった。もう少し、眩しい、もう少し。
世界の始まりの様な神々しさで太陽が人間を心待ちにしている。もう少し。
だけどもね、人間は太陽に背を向けてしまった。
なぜかって?
怖くなったんだよ。想像を超える未知なモノを目の前にしてね。
人間は、この感情を理解できなかった。
太陽を目指してここまで来たはずが、目指していたモノを目の前にして、体が震える、呼吸のリズムが壊れる、どういうことだろう
。よく分からないが、己が無に帰す気がした、だから太陽に背を向けていた。
地上に降り立った人間の心に残ったのは、太陽の神々しさではなかった。初めて感じて、二度と感じたくないと思った、底の冷えた感情だった。
人間は空を飛ぶことをやめた。"アノ感情"を心に出現させたくないからね。
空を飛ぶことをやめたので、翼が邪魔になった。こんなモノはいらない。ただただ、"アノ感情"を出現させない生き方をしなくてはならないと心底思ったわけ、怖いという感情はそれほどに衝撃的だったんだね。
そこから人間は、空を飛ぶという過ちを二度と犯すべからず、翼を失くし、"アノ感情"を避ける生き方を心掛けてね、それが功を奏したのか、何十億年って長い間、地球を生き抜いたんだよ。終わり。」
いまは何時だろうか?いや時間なんて概念は人間のものだろう。
人間は絶滅した。太陽が地球との距離を埋めてしまったのだ。寸前で人間と逢うことが叶わなかった太陽が、我慢できずに人間に逢いに来てしまったんだ。
もしあの時に、"アノ感情"に負けず人間が太陽に逢っていたら、太陽が人間に逢うために地球に近づいてくることはなかったのではないだろうか。
いや、どっちみち同じことかもしれないな。怖いという感情を得たからこそ、人間は慎重に生きることを決心して、何十億年も生きられたのだから。
「そろそろ家に帰りなさい。遅くならないうちに」
「うん、わかった。お話面白かったよ。でも人間さんはなんでこんなに素晴らしいモノを手離しちゃったんだろう、不思議だなぁ」
女の子はアーモンドの様なきれいな瞳を宙に向けてから、立派な翼を広げ空を舞った。
赤い大きなリボンが徐々に見えなくなっていく。
アーモンドの様なきれいな瞳の女の子が、髪を後ろで一つに束ねている赤い大きなリボンをピョンピョン跳ねさせながら近づいてくる。
「わかったよ。今日も人間の面白い話を聞かせてやろう」
木々に覆われた森の中で、世間の忘れ物の様に地べたに胡座をかいているアーモンドの様な固そうな瞳の老人が、コホンと一つ咳払いをして話始めた。
「いつからだろうか?
人間が空を飛ばなくなったのは。
大昔の人間は、立派な翼を広げて空を舞っていた。
本気で無邪気に太陽まで飛んでやろうと思っていたんだ。
もう少しだった。もう少し、眩しい、もう少し。
世界の始まりの様な神々しさで太陽が人間を心待ちにしている。もう少し。
だけどもね、人間は太陽に背を向けてしまった。
なぜかって?
怖くなったんだよ。想像を超える未知なモノを目の前にしてね。
人間は、この感情を理解できなかった。
太陽を目指してここまで来たはずが、目指していたモノを目の前にして、体が震える、呼吸のリズムが壊れる、どういうことだろう
。よく分からないが、己が無に帰す気がした、だから太陽に背を向けていた。
地上に降り立った人間の心に残ったのは、太陽の神々しさではなかった。初めて感じて、二度と感じたくないと思った、底の冷えた感情だった。
人間は空を飛ぶことをやめた。"アノ感情"を心に出現させたくないからね。
空を飛ぶことをやめたので、翼が邪魔になった。こんなモノはいらない。ただただ、"アノ感情"を出現させない生き方をしなくてはならないと心底思ったわけ、怖いという感情はそれほどに衝撃的だったんだね。
そこから人間は、空を飛ぶという過ちを二度と犯すべからず、翼を失くし、"アノ感情"を避ける生き方を心掛けてね、それが功を奏したのか、何十億年って長い間、地球を生き抜いたんだよ。終わり。」
いまは何時だろうか?いや時間なんて概念は人間のものだろう。
人間は絶滅した。太陽が地球との距離を埋めてしまったのだ。寸前で人間と逢うことが叶わなかった太陽が、我慢できずに人間に逢いに来てしまったんだ。
もしあの時に、"アノ感情"に負けず人間が太陽に逢っていたら、太陽が人間に逢うために地球に近づいてくることはなかったのではないだろうか。
いや、どっちみち同じことかもしれないな。怖いという感情を得たからこそ、人間は慎重に生きることを決心して、何十億年も生きられたのだから。
「そろそろ家に帰りなさい。遅くならないうちに」
「うん、わかった。お話面白かったよ。でも人間さんはなんでこんなに素晴らしいモノを手離しちゃったんだろう、不思議だなぁ」
女の子はアーモンドの様なきれいな瞳を宙に向けてから、立派な翼を広げ空を舞った。
赤い大きなリボンが徐々に見えなくなっていく。
0
あなたにおすすめの小説
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる