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夢を叶える蜘蛛
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「ところで、どんな能力なの?」
サラは隣の人物が気になり訊く。
「威力は出るけど条件があって面倒だよ。」
「天性か..見せてくれないの?」
「そう。着いたら見せるよ。」
天性とは生まれ持った才。サラマンダーのように自由に出したりすることができるものもあれば、クローガのように発動条件のつく能力もある。
ゆえに天性は後から条件を変える等のことができない。しかし条件付きは威力で補填されることが多い。
「恵んでくれ...」
ある老人がうめくように求める。路地は薄暗く、ヘドロのような悪臭と共に浮浪者が俯きながら座っている。
サラの家付近では見られないものの、少し離れればこの光景は当たり前である。
話していると突然クローガは立ち止まり、ある建物に目を向け思い出したように呟く。
「あ、ここだ。」
彼の見つめる先には鉄柵で囲まれたレンガ造りの施設。若干木々に囲まれていて、薄暗い。
異様なことに先程まであれほどいた浮浪者の影はその施設の周りに一つもない。
クローガは施設の門へと足を運んで、サラはついてゆく。守衛室に近づいたあと、クローガが顔を覗かせると1人のスーツの女性が立っていた。
顔は暗くてはっきりと見えない。
「クローガ様、サラ様、先行調査は完了しました。目標は東棟6階です。」
おそらく潜入していた隊員だろう。キューテストは少数先鋭のイメージが強いが、想像よりも大きな組織なのかもしれない。
「あと、これを。」
そう言って、白色の蜘蛛のようなものを差し出す。この女性の手のひらをカタカタと走り回っていて、ものすごく不気味だ。
「え、これは...?」
サラは虫がたいへん苦手で特に蜘蛛は人を睨みつけるので気持ちが悪く、引いていた。
「繊維蟲です。使い方をお教えします、まずどんな衣装でも想像します。」
右手を駆け回っていた蜘蛛は手首で突然動きを止めて、皮膚に溶け込む様子だった。やがて皮膚に黒色蜘蛛型のアザを残す。
すると身に纏っていたスーツの繊維がが体の周りをつむじ風のように飛び回って再び停止。女性の服はいつのまにかメイド服となった。
「これはある人物の能力です。皮膚に溶け込んだ状態だと念じれば、着ているものをどんな衣装にでも変えることができます。」
それを見たサラは目を輝かせて、白い蜘蛛を受け取る。
クローガは嫌そうな顔をしながら滑るように後退する。
「虫がとても好きなんだな...ごめんだが僕は無理だ。」
「違う!これは私の夢を叶えるかもしれないものだ!」
「キミの志望は魔王って聞いたけど...。」
「...もしかしたら魔王よりも重要かもしれない...。」
薄気味悪いにんまりとした顔をクローガに見せる。彼は再び恐ろしくなり、また一歩後退する。
守衛室の中の女性はクローガにも繊維蟲を手渡し、話を進める。
「まあなんでもいいですが。とりあえず手、出してください。」
彼女はクローガとサラが差し出した手に触る。数秒のうちにつむじ風に包まれて衣装が作戦用のものとなった。
「へえ...。」
彼らの服はスーツに。
「本日、友好企業の社内見学が来るんです。それであなたたちを通したことにします。中では研究者に紛れて欲しいですが...。」
「本物の見学者は?」
「死んでしまいました。」
淡々と生死を述べる彼女にクローガはため息をついてから言う。
「あんたらも不器用だな...。」
中の女性は、口元しか見えないものの不思議そうな表情を向けていた。
サラは隣の人物が気になり訊く。
「威力は出るけど条件があって面倒だよ。」
「天性か..見せてくれないの?」
「そう。着いたら見せるよ。」
天性とは生まれ持った才。サラマンダーのように自由に出したりすることができるものもあれば、クローガのように発動条件のつく能力もある。
ゆえに天性は後から条件を変える等のことができない。しかし条件付きは威力で補填されることが多い。
「恵んでくれ...」
ある老人がうめくように求める。路地は薄暗く、ヘドロのような悪臭と共に浮浪者が俯きながら座っている。
サラの家付近では見られないものの、少し離れればこの光景は当たり前である。
話していると突然クローガは立ち止まり、ある建物に目を向け思い出したように呟く。
「あ、ここだ。」
彼の見つめる先には鉄柵で囲まれたレンガ造りの施設。若干木々に囲まれていて、薄暗い。
異様なことに先程まであれほどいた浮浪者の影はその施設の周りに一つもない。
クローガは施設の門へと足を運んで、サラはついてゆく。守衛室に近づいたあと、クローガが顔を覗かせると1人のスーツの女性が立っていた。
顔は暗くてはっきりと見えない。
「クローガ様、サラ様、先行調査は完了しました。目標は東棟6階です。」
おそらく潜入していた隊員だろう。キューテストは少数先鋭のイメージが強いが、想像よりも大きな組織なのかもしれない。
「あと、これを。」
そう言って、白色の蜘蛛のようなものを差し出す。この女性の手のひらをカタカタと走り回っていて、ものすごく不気味だ。
「え、これは...?」
サラは虫がたいへん苦手で特に蜘蛛は人を睨みつけるので気持ちが悪く、引いていた。
「繊維蟲です。使い方をお教えします、まずどんな衣装でも想像します。」
右手を駆け回っていた蜘蛛は手首で突然動きを止めて、皮膚に溶け込む様子だった。やがて皮膚に黒色蜘蛛型のアザを残す。
すると身に纏っていたスーツの繊維がが体の周りをつむじ風のように飛び回って再び停止。女性の服はいつのまにかメイド服となった。
「これはある人物の能力です。皮膚に溶け込んだ状態だと念じれば、着ているものをどんな衣装にでも変えることができます。」
それを見たサラは目を輝かせて、白い蜘蛛を受け取る。
クローガは嫌そうな顔をしながら滑るように後退する。
「虫がとても好きなんだな...ごめんだが僕は無理だ。」
「違う!これは私の夢を叶えるかもしれないものだ!」
「キミの志望は魔王って聞いたけど...。」
「...もしかしたら魔王よりも重要かもしれない...。」
薄気味悪いにんまりとした顔をクローガに見せる。彼は再び恐ろしくなり、また一歩後退する。
守衛室の中の女性はクローガにも繊維蟲を手渡し、話を進める。
「まあなんでもいいですが。とりあえず手、出してください。」
彼女はクローガとサラが差し出した手に触る。数秒のうちにつむじ風に包まれて衣装が作戦用のものとなった。
「へえ...。」
彼らの服はスーツに。
「本日、友好企業の社内見学が来るんです。それであなたたちを通したことにします。中では研究者に紛れて欲しいですが...。」
「本物の見学者は?」
「死んでしまいました。」
淡々と生死を述べる彼女にクローガはため息をついてから言う。
「あんたらも不器用だな...。」
中の女性は、口元しか見えないものの不思議そうな表情を向けていた。
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