荒れた世界で桃色の魔王になります

三田奈 獄

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赤色に葬られず、虹色の魔性

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ーー「なあ、”魔王”は何故に“魔王”なンだと思う?」ーー

ーー「強さではないのか?」ーー


異形とクローガが会話をしている同刻、首都・永田(エーデン)では魔王ルフトとレインをはじめとするキューテストが戦闘を繰り広げていた。

すでにキューテストは1人を失っている状態である。

以下、戦闘中にあるキューテストと同刻に会話をしているクローガ、異形の会話が並列される。

キューテストはレインと双子のアウ、ロラの3名。劣勢であった。

「2人とも、距離を離して!」

ルフトは虹色に光る剣を右手に持つが、振るわない。代わりに剣の形にまとまった光子を縦横無尽に飛ばしていた。


ーーまあ一概に違うとも言えんガ...ーー


光の剣は彼の体の周辺から現れ続ける。飛ばしてくるまでの刹那に余裕はない。そのけたたましさは、まるで弾切れのしない機関銃のようであった。


ーーでは魔王は、なぜーー


そしてそれぞれの威力も無情。寸秒で2棟の商業ビルを破壊したそれは、当たれば無論即死であろう。


ーー欲望ダーー


また恐ろしいことにルフトは俯いたまま一歩も動いていなかった。蝕まれ続ける精神のみが直感でキューテスト達を狙い続けている。


ーー欲望?ーー


一方レインは守勢に回っていた。

彼女は自らの世界に誘った人物やモノの影を、使役することができる。レインは走って光の剣を避け続けていたものの、全てを避けることは不可能。

なので、手のひらから分厚い瓦礫の影を出現させて一時的な盾として使用する。


ーーある実験について話すヨ、ラウルスは、1人に1000人のグランを食わせたノサ。どうなったと思ウ....?ーー


光の剣が当たると、瓦礫は一瞬で粉末と化す。レインは時間を稼いでいた。最大威力を放つために。


ーー1000人か...魔王にはならなくても相当危険性が高い生物に成ったのでは?ーー


双子のアウとロラは同じ2つの能力を持っている。またどちらも天性。二つの天性を持って生まれることは稀有な事象である。

<ラストシャイン> 時間をかけて赤色矮星を作り出し、放つことができる。その瞬間火力はキューテストの中でも最高峰であるがゆえにこの場に連れられた。

<10Eテン・イー>数十メートル以内であれば自由に、あらゆる場所に転移することができる。また空中であっても、その座標に留まることが可能。


ーーいいヤ、”成らなかった“。ーー


双子が織りなすラストシャインを実行するまでの間、守りに強いレインは自身に注目を集めていた。


ーーオマエも感じるダロ、強者の気配。1000人喰らってもそういうのが一切なかったんダ。ーー


光の剣は線状に飛ばされている。自動で襲ってくるロボットのような攻撃は単純で見切れる。

しかし崩れたビル群で足場は悪く、避けるリズムがバラバラになってしまう。タイミングが悪ければ光の剣は自身に当たる。それはつまり死を意味する。


ーーしまいには、風邪をコジらせて死んだヨ。ーー


レインは双子に目を向ける。彼女たちはルフトの頭上に佇んでいる。
2人の前には直径3メートルはあるだろうか、太陽を彷彿とさせるようなギラつき、脈を打つ球体を作り出していた。


ーーつまり、欲望とは何なのだ?ーー


レインはそれが放たれることを悟る。

ルフトは頭上の矮星を一瞬だけ目視。ついに矮星は放たれて、静寂が訪れた。


ーー欲望とは”ガソリン“そしてグランとは”エンジン“。ーー

ーー 果てしない欲望と極まった器を持ち続ける存在、ソレが <魔王> だ。ーー

ーー...だが、“欲望”。情緒すぎるその言葉を嫌ったラウルスの研究者達はとって変わって別の名称をつけたんダ。ーー


大地を抉る赤色矮星は首都、永田エーデンを飲み込み、歴史の底へと沈めた。

キューテストは転移でラストシャインを免れた。

もはや土埃も舞っておらず。吹き抜ける風は生暖かく。巨大なクレーターを形成して、その中心で“勇者“は立ち上がる。


ーー“魔性”。ーー


風は渦めく。立ち上がった勇者ルフトは皆無の表情で上空のキューテストに目を向ける。

虹色に光る剣は周囲を照らしていた。身体には微塵の傷もついていない。
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